Compare AWS and Azure Compute Servicesの変更点|Azure移行で確認すべきCompute比較

AWSからMicrosoft Azureへ移行する、またはAWSとAzureを併用する場合、「EC2ならAzure Virtual Machines」「LambdaならAzure Functions」と単純に置き換えるだけでは不十分です。2026年6月2日に更新されたAzure Architecture Centerの公式情報では、「Compare AWS and Azure Compute Services」が6月の更新記事として掲載され、VM、コンテナー、PaaS、ハイブリッド、サーバーレスまで含めた比較が整理されました。結論から言うと、今回の更新はAzureの設定を自動変更するものではありませんが、AWS移行やマルチクラウド設計で使う「サービス対応表」「移行設計書」「運用チェックリスト」を見直すべき内容です。(Microsoft Learn)

特に確認したいのは、Azure Virtual Machines、Virtual Machine Scale Sets、Azure Advisor、Azure Managed Disks、Azure Container Apps、Azure Kubernetes Service、Azure App Service、Azure Arc、Azure Functionsなどの選定基準です。既存のAWS構成をそのままAzureへ写すのではなく、ワークロードの実行形態、可用性、スケーリング、ストレージ性能、運用責任の範囲を見直すことが重要です。

目次

今回の公式更新で押さえるべきポイント

Azure Architecture Centerの「What’s new」では、2026年6月の更新記事として「Compare AWS and Azure Compute Services」が掲載されています。対象ページ自体のメタデータでは日付が2026年6月1日、Azure Architecture Centerの更新一覧ページでは最終更新が2026年6月2日と表示されています。公開・反映タイミングの差はありますが、2026年6月2日時点で確認すべき公式更新として扱うのが実務上は自然です。(Microsoft Learn)

GitHub上の更新履歴では、この更新は「古いサービスの修正」「PaaS、ハイブリッド、サーバーレス関連セクションの追加」を含むものとして記録されています。マージコミットでは1ファイルに対して114行の追加、53行の削除が確認でき、単なる文言修正ではなく、比較表の範囲を広げる更新だったことが分かります。(GitHub)

管理者や開発者にとって重要なのは、「AWSとAzureのサービス名を対応させる表」ではなく、「どのAzureサービスを選ぶと、現在のAWSワークロードの運用要件を満たせるか」を判断する材料として読むことです。Microsoftの移行ガイドでも、AWSとAzureの対応関係は完全な機能一致を示すものではないと説明されています。(Microsoft Learn)

変更点の全体像:VM中心の比較から実務向けのCompute比較へ拡張

今回の「Compare AWS and Azure Compute Services」では、AzureとAWSの中核的なコンピューティングサービスが、複数のカテゴリに分けて比較されています。対象は仮想マシンだけではありません。コンテナー、PaaS、ハイブリッド、エッジ、サーバーレスまで含む構成になっています。(Microsoft Learn)

領域主なAWSサービス主なAzureサービス実務上の確認ポイント
仮想マシン・サーバーAmazon Lightsail、Amazon EC2、AWS ParallelClusterAzure App Service、Azure Virtual Machines、Azure CycleCloudインスタンスタイプ名ではなく、CPU、メモリ、ディスク、課金、運用範囲で選定する
オートスケーリングAWS Auto ScalingAzure Virtual Machine Scale Sets、Azure App Service autoscalingAWSのスケーリング条件をそのまま移植せず、Azure Monitorのメトリック前提で再設計する
リソース最適化AWS Compute Optimizer、AWS Trusted AdvisorAzure Advisorコストだけでなく、信頼性、セキュリティ、運用、パフォーマンスの推奨を確認する
VMディスク・ストレージAmazon EBS、EC2 instance store、EFSAzure Managed Disks、Azure VM local/temporary disks、Azure Files永続ディスクと一時ディスクを取り違えない。IOPSとスループットも検証する
コンテナーECS、Fargate、ECR、EKSAzure Container Apps、Azure Container Instances、Azure Container Registry、AKSKubernetesが必要か、マネージドなコンテナー実行で足りるかを先に決める
PaaS WebアプリElastic Beanstalk、App Runner、Amplify HostingAzure App Service、Azure Container Apps、Azure Static Web AppsWebアプリ、コンテナーAPI、フロントエンド配信で移行先を分ける
ハイブリッド・エッジAWS Outposts、Systems Manager、Wavelength、Local ZonesAzure Local、Azure Arc、Azure private MEC、Azure Edge Zonesオンプレミス管理、低遅延、データ所在地要件を分けて考える
サーバーレスAWS Lambda、Step Functions、EventBridgeAzure Functions、Durable Functions、Logic Apps、Event Grid関数、ワークフロー、イベントルーティングを一括で置き換えない

この表で特に重要なのは、Azure Container Apps、AKS、Azure Functions、Logic Apps、Azure Arcなど、クラウド移行後の運用モデルに直結するサービスが明確に比較対象へ入っている点です。たとえば、Amazon ECSはAzure Container Apps、Amazon EKSはAKS、AWS LambdaはAzure Functions、AWS Step FunctionsはDurable FunctionsまたはLogic Appsと比較されています。(Microsoft Learn)

管理者が確認すべき影響範囲

AWS移行プロジェクトのサービス対応表を更新する

既にAWSからAzureへの移行計画を作っている場合、まず見直すべきなのはサービス対応表です。古い資料では、AWSのサービス名とAzureのサービス名を1対1で並べているだけのケースがあります。しかし、今回の比較では「似ているが同じではない」サービスが多く含まれます。

たとえば、Amazon LightsailにはAzure側の専用同等サービスがあるわけではありません。公式比較では、WebアプリならAzure App Service、シンプルなVM構成ならBシリーズのAzure Virtual MachinesとMicrosoft Marketplaceイメージを使う考え方が示されています。これは、単純な名前対応ではなく、用途に応じてAzure側の実装を選ぶ必要があるということです。(Microsoft Learn)

VMサイズとディスク性能を再評価する

Amazon EC2とAzure Virtual MachinesはどちらもオンデマンドVMを提供しますが、インスタンスサイズのカテゴリが似ていても、RAM、CPU、ストレージ性能は一致しません。移行時に「m系だからD系」「c系だからF系」のように機械的に置き換えると、性能不足や過剰なコストにつながります。(Microsoft Learn)

特にディスクは注意が必要です。公式比較では、Amazon EBSに相当するものとしてAzure Managed Disksが整理され、Standard HDD、Standard SSD、Premium SSD、Premium SSD v2、Ultra Disk Storageなどの階層が示されています。また、Azure VMのlocal/temporary disksは低遅延用途には使えますが、VMの割り当て解除や再配置で失われる非永続ストレージです。ログの一時バッファやキャッシュには向いていても、業務データの保存先には向きません。(Microsoft Learn)

確認すべき項目は次の通りです。

確認項目見るべきポイント
VMサイズvCPU、メモリ、ディスク種別、ネットワーク帯域、GPU要否
OS・イメージMarketplaceイメージ、ライセンス、拡張機能、パッチ適用方式
ディスクManaged DisksのSKU、IOPS、スループット、暗号化、バックアップ
一時ストレージキャッシュ用途か、永続データを置いていないか
可用性Availability Zones、可用性セット、スケールセットの利用要否
監視Azure Monitor、Log Analytics、アラート、メトリック名の差分

開発者が確認すべき移行・展開上の注意点

コンテナーは「AKS一択」ではない

AWS側でコンテナーを使っているからといって、Azure移行先が必ずAKSになるとは限りません。公式比較では、Amazon ECSはAzure Container Apps、AWS FargateはAzure Container InstancesまたはAzure Container Apps、Amazon EKSはAKSと対応づけられています。さらにAKSには、制御とカスタマイズを重視するAKS Standardと、運用負荷を下げるAKS Automaticという2つのモードがあると説明されています。(Microsoft Learn)

判断基準はシンプルです。

ワークロードAzureでの候補選び方
KubernetesマニフェストやHelm資産をそのまま活かしたいAKSクラスター設計、ノードプール、ネットワーク、アップグレード運用まで管理できる場合
コンテナー化されたAPIやバックグラウンド処理を手軽に動かしたいAzure Container AppsKubernetesの直接管理より、スケール、サービス検出、トラフィック管理をマネージドに寄せたい場合
短時間の単発コンテナーを実行したいAzure Container Instances常時稼働基盤ではなく、ジョブや一時処理をすばやく実行したい場合
コンテナーイメージをAzure内で管理したいAzure Container Registryプライベートネットワーク、脆弱性スキャン、geo-replicationの要件を確認する場合

開発チームが失敗しやすいのは、EKSで動いていたものをAKSに置けば完了と考えることです。実際には、Ingress、サービスメッシュ、シークレット管理、イメージレジストリ、監視、CI/CD、Podのスケーリング条件まで見直す必要があります。

サーバーレス移行ではイベント設計を見直す

AWS Lambdaの移行先としてAzure Functionsが挙げられていますが、周辺サービスまで含めると設計は変わります。AWS Step Functionsに相当する選択肢としては、コードで状態管理するDurable Functionsと、ローコードでワークフローを構成できるLogic Appsがあります。AWS EventBridgeに近いイベントルーティングの選択肢としてはAzure Event Gridが整理されています。(Microsoft Learn)

LambdaのコードをAzure Functionsへ移すだけでは不十分です。次の項目を確認してください。

確認項目注意点
トリガーHTTP、Queue、Blob、Event Gridなど、イベント発火元をAzure側で再設計する
実行時間タイムアウト、コールドスタート、同時実行、スケール上限を確認する
状態管理Step Functions相当の処理をDurable FunctionsにするかLogic Appsにするか判断する
認証・権限IAMロール前提の処理を、Managed IdentityやAzure RBACに置き換える
監視CloudWatch Logs相当の確認先としてApplication InsightsやLog Analyticsを整備する
冪等性再試行や重複イベントで二重更新が起きないようにする

イベント駆動のアプリケーションでは、サービス単位の置き換えよりも「どのイベントを、どの順序で、どの失敗時動作で処理するか」を設計し直すことが重要です。

PaaS、ハイブリッド、エッジの比較追加が意味すること

今回の更新で実務上ありがたいのは、PaaS Webアプリやハイブリッド・エッジの比較が明確になった点です。たとえば、AWS Elastic BeanstalkはAzure App Service、AWS App RunnerはAzure App ServiceのLinuxコンテナーまたはAzure Container Apps、AWS Amplify HostingはAzure Static Web Appsに近い選択肢として整理されています。(Microsoft Learn)

これは、アプリケーション移行時に「VMへリホストする」以外の選択肢を検討しやすくなるという意味があります。既存アプリをそのまま動かすだけならVM移行が早い場合もありますが、運用負荷を下げたいならApp ServiceやContainer Apps、フロントエンド中心ならStatic Web Appsの方が適しているケースがあります。

ハイブリッド領域では、AWS Outpostsに対してAzure Local、AWS Systems Managerによる非AWSリソース管理に対してAzure Arc、AWS WavelengthやLocal Zonesに対してAzure private MECやAzure Edge Zonesが比較対象になっています。オンプレミス、他クラウド、エッジ拠点をAzureの管理プレーンへ統合する設計では、Azure Arcの採用可否が重要な検討項目です。(Microsoft Learn)

移行・展開で失敗しやすいポイント

AWSからAzureへのCompute移行では、表面上のサービス対応よりも、運用上の前提差分でつまずくことが多くあります。

失敗しやすいポイント起きる問題回避策
サービス名だけで移行先を決める必要な機能が足りない、または過剰構成になるワークロード要件からAzureサービスを選び直す
EC2サイズをAzure VMサイズへ機械的に変換するCPU、メモリ、I/O、ネットワーク性能が合わない本番相当データで負荷試験を行う
一時ディスクを永続ディスクのように扱うVM再配置や割り当て解除でデータを失う一時領域と永続データを明確に分離する
Auto Scaling設定をそのまま移植するスケールアウトが遅い、または不要に増えるAzure Monitorのメトリックとしきい値で再設計する
ECSやEKSの構成をAKSへ丸ごと移すネットワーク、Ingress、監視、アップグレードで詰まるAKS、Container Apps、ACIを用途別に選ぶ
Lambdaのコードだけ移すイベント連携、認証、再試行、状態管理が破綻するFunctions、Event Grid、Durable Functions、Logic Appsをまとめて設計する
コスト最適化を移行後に後回しにする使われないVMや過剰サイズのリソースが残るAzure Advisor、予算、タグ、アラートを初期設定する
旧資料の対応表を使い続ける現行の推奨サービスや名称とずれる公式比較表と社内標準を定期的に突き合わせる

特に注意したいのは、比較表を「正解表」として扱わないことです。Microsoftの移行ガイドでも、AWSとAzureのコンポーネント比較はワークロード内での機能を完全に表すものではないと注意されています。比較表は移行先候補を絞る入口であり、最終判断には検証が必要です。(Microsoft Learn)

管理者・開発者向けチェックリスト

今回の更新を受けて、Azure管理者、クラウドアーキテクト、開発者は次の順番で確認すると効率的です。

現行AWS環境の棚卸し

まず、AWS側で使っているCompute関連サービスを洗い出します。EC2、EBS、Auto Scaling、ECS、EKS、Fargate、Lambda、Step Functions、EventBridge、Elastic Beanstalk、App Runner、Amplify Hostingなどを、アカウント単位ではなくワークロード単位で整理してください。

あわせて、次の情報も取得します。

項目取得すべき情報
性能平均CPU、ピークCPU、メモリ使用率、ディスクIOPS、スループット
可用性AZ構成、障害時の復旧目標、メンテナンス許容時間
スケーリングスケールアウト条件、最小・最大台数、ピーク時間帯
セキュリティIAMロール、シークレット、ネットワーク分離、暗号化
運用監視、ログ、バックアップ、パッチ適用、障害対応手順
コスト月額、予約・Savings Plans、未使用リソース、ピーク時課金

Azure側の候補を1つに絞りすぎない

移行初期段階では、Azureサービスを1つに決め打ちしない方が安全です。たとえば、AWS Fargateで動いているAPIは、Azure Container Apps、AKS、Azure App Service for Linux containersのいずれも候補になり得ます。判断軸は「どれが似ているか」ではなく、「どれなら運用チームが継続的に管理できるか」です。

AWS側の利用形態Azure候補判断基準
EC2中心の業務アプリAzure Virtual Machines、Virtual Machine Scale SetsOS管理や既存ミドルウェアを維持したい
軽量WebアプリAzure App Serviceインフラ管理を減らし、ランタイム管理をAzureへ寄せたい
コンテナーAPIAzure Container AppsKubernetesを直接運用せず、コンテナーをマネージドに動かしたい
Kubernetes基盤AKSKubernetes API、Helm、GitOps、サービスメッシュを活かしたい
イベント駆動処理Azure Functions、Event Gridイベント処理を小さな関数単位で構成したい
状態を持つワークフローDurable Functions、Logic Appsコード中心かローコード中心かで選び分ける
ハイブリッド運用Azure Arc、Azure Localオンプレミスや他クラウドをAzure管理に統合したい

検証環境で確認してから本番展開する

Compute移行は、IaCテンプレートを作ってデプロイできた時点では完了ではありません。アプリケーションの起動時間、スケールアウト時間、ディスク性能、ログ出力、障害時の復旧、コスト推移まで確認して、初めて移行設計として成立します。

検証では、最低でも次の観点を含めてください。

検証観点確認内容
性能検証ピーク時アクセス、バッチ処理、ディスクI/O、ネットワーク遅延
障害検証VM停止、Pod再起動、関数の再試行、リージョン・ゾーン障害の想定
セキュリティ検証Managed Identity、Azure RBAC、Key Vault、Private Endpoint
運用検証ログ検索、アラート通知、バックアップ、復旧手順
コスト検証スケール時の課金、アイドル時のコスト、予約・節約プランの適用余地
リリース検証Blue/Green、Canary、ロールバック、CI/CDパイプライン

今すぐ行うべき次のアクション

まず、社内のAWS→Azure対応表を今回の公式比較に合わせて更新してください。特に、VM、ディスク、コンテナー、PaaS Webアプリ、サーバーレス、ハイブリッドの各領域で、古いサービス名や単純な1対1対応が残っていないかを確認します。

次に、移行対象のワークロードを「VMで動かすもの」「PaaSへ寄せるもの」「コンテナーとして動かすもの」「サーバーレスへ再設計するもの」に分類します。この分類が曖昧なまま移行を進めると、Azure上でVMが増えすぎたり、逆にPaaSへ寄せすぎて既存運用に合わなかったりします。

最後に、PoCの範囲を小さく切って検証します。最初から全システムを移すのではなく、代表的なEC2ワークロード、代表的なコンテナーAPI、代表的なLambda処理を1つずつAzureで再現し、性能、監視、セキュリティ、運用負荷を比較してください。

今回の「Compare AWS and Azure Compute Services」の更新は、Azureの新機能発表そのものではなく、AWS利用者がAzureのComputeサービスを選定するための公式ガイドの整理です。だからこそ、設計書、移行計画、運用標準、CI/CDテンプレートに影響します。読み終えたら、まずは自社のAWSサービス一覧とAzure候補サービスを並べ、1対1対応ではなく「要件に合うAzure構成」へ置き換える作業から始めるのが現実的です。

この記事を書いた人

実務の現場で詰まりがちなポイントを地図にするITブログ「IT trip」を運営。Windows/Office(Teams・Excel)からSQL、サーバ運用、ガジェットまで、再現性のある手順と“なぜそうなるか”を丁寧に解説します。読んだらすぐ試せること、そして迷った人の次の一歩が見えることを大切にしています。

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