C++のデフォルトコンストラクタの定義と使い方を徹底解説

C++のデフォルトコンストラクタは、クラスのオブジェクトを初期化するために使用される特別なメンバ関数です。特に、オブジェクトが生成される際に引数を受け取らずに呼び出されるコンストラクタを指します。デフォルトコンストラクタは、自動的に生成される場合もあれば、明示的に定義される場合もあります。本記事では、C++のデフォルトコンストラクタの役割、その定義方法、応用例、および注意点について詳しく解説します。初心者から上級者まで、C++のデフォルトコンストラクタを理解し、効果的に活用するための知識を提供します。

目次
  1. デフォルトコンストラクタの概要
  2. デフォルトコンストラクタの定義方法
    1. クラス宣言内での定義
    2. クラス宣言外での定義
    3. コンストラクタの初期化リストの使用
  3. 暗黙的デフォルトコンストラクタ
    1. 暗黙的デフォルトコンストラクタの自動生成
    2. 自動生成の条件
    3. 暗黙的デフォルトコンストラクタの注意点
  4. 明示的デフォルトコンストラクタの定義
    1. 明示的デフォルトコンストラクタの定義方法
    2. 明示的なデフォルトコンストラクタの必要性
    3. デフォルトコンストラクタの明示的削除
  5. コンストラクタのオーバーロード
    1. コンストラクタのオーバーロードの基本
    2. オーバーロードの利点
    3. コンストラクタのオーバーロードとデフォルト引数
    4. 注意点
  6. デフォルトコンストラクタとメモリ管理
    1. 動的メモリの割り当て
    2. リソース管理
    3. メモリリークの防止
    4. まとめ
  7. デフォルトコンストラクタの例と応用
    1. 基本的なデフォルトコンストラクタの例
    2. デフォルトコンストラクタを使用したオブジェクトの配列
    3. クラスメンバのデフォルトコンストラクタ呼び出し
    4. デフォルトコンストラクタを利用したシングルトンクラス
    5. まとめ
  8. デフォルトコンストラクタの制限と注意点
    1. 自動生成される条件
    2. メンバの初期化
    3. コンパイラ生成のデフォルトコンストラクタの限界
    4. 禁止されたデフォルトコンストラクタ
    5. デフォルトコンストラクタの継承
    6. まとめ
  9. 演習問題
    1. 演習問題1: 基本的なデフォルトコンストラクタの定義
    2. 演習問題2: コンストラクタのオーバーロード
    3. 演習問題3: 動的メモリ管理
    4. 演習問題4: デフォルトコンストラクタの削除
    5. 演習問題5: 基底クラスと派生クラス
    6. 解答例
  10. まとめ

デフォルトコンストラクタの概要

デフォルトコンストラクタは、クラスのインスタンスを初期化するための特別なメンバ関数です。このコンストラクタは引数を受け取らないため、特定の初期値を設定する必要がない場合に使用されます。C++では、クラスを宣言した際に明示的にデフォルトコンストラクタを定義しない場合、コンパイラが自動的にデフォルトコンストラクタを生成します。この自動生成されたコンストラクタは、クラスのメンバをデフォルト値に初期化します。デフォルトコンストラクタは、特にオブジェクトの配列を作成する際や、クラスメンバを初期化する際に重要な役割を果たします。

デフォルトコンストラクタの定義方法

C++でデフォルトコンストラクタを定義する方法は簡単です。デフォルトコンストラクタは、クラス内で引数を持たないメンバ関数として定義されます。以下に、デフォルトコンストラクタの基本的な定義方法を示します。

クラス宣言内での定義

クラスの宣言内で直接デフォルトコンストラクタを定義する方法です。例えば、以下のようにクラス MyClass のデフォルトコンストラクタを定義します。

class MyClass {
public:
    MyClass() {
        // 初期化コード
    }
};

クラス宣言外での定義

クラスの宣言内でデフォルトコンストラクタを宣言し、クラスの外部で定義する方法もあります。以下に例を示します。

class MyClass {
public:
    MyClass();  // デフォルトコンストラクタの宣言
};

// デフォルトコンストラクタの定義
MyClass::MyClass() {
    // 初期化コード
}

コンストラクタの初期化リストの使用

デフォルトコンストラクタでは、メンバ初期化リストを使用してクラスメンバを初期化することも可能です。以下にその例を示します。

class MyClass {
private:
    int value;
public:
    MyClass() : value(0) {  // 初期化リストを使用
        // 他の初期化コード
    }
};

このようにして、デフォルトコンストラクタを定義することで、オブジェクトが生成される際の初期化処理を柔軟に行うことができます。

暗黙的デフォルトコンストラクタ

C++では、クラスに明示的なコンストラクタが定義されていない場合、コンパイラが自動的に暗黙的なデフォルトコンストラクタを生成します。この暗黙的デフォルトコンストラクタは、クラスのすべてのメンバをそのデフォルト値で初期化します。以下に、暗黙的デフォルトコンストラクタについて詳しく解説します。

暗黙的デフォルトコンストラクタの自動生成

クラスにユーザー定義のコンストラクタが一つも存在しない場合、コンパイラは自動的にデフォルトコンストラクタを生成します。例えば、以下のクラスには暗黙的デフォルトコンストラクタが生成されます。

class SimpleClass {
private:
    int value;
    double data;
public:
    // デフォルトコンストラクタは自動的に生成される
};

この場合、SimpleClass のインスタンスが生成されると、valuedata は未初期化のままになります。

自動生成の条件

暗黙的デフォルトコンストラクタが生成される条件は以下の通りです。

  • クラスにユーザー定義のコンストラクタが存在しない。
  • 基底クラス(親クラス)にユーザー定義のコンストラクタがない。
  • クラスのすべてのメンバが自動的に初期化可能である。

以下に、暗黙的デフォルトコンストラクタが生成されない例を示します。

class Base {
public:
    Base(int x) {}  // ユーザー定義のコンストラクタ
};

class Derived : public Base {
public:
    // Derivedのデフォルトコンストラクタは生成されない
};

この場合、Base クラスにはユーザー定義のコンストラクタが存在するため、Derived クラスのデフォルトコンストラクタは自動生成されません。

暗黙的デフォルトコンストラクタの注意点

暗黙的デフォルトコンストラクタは便利ですが、以下の点に注意が必要です。

  • クラスメンバがポインタや動的メモリを管理する場合、暗黙的デフォルトコンストラクタでは適切に初期化されないことがあります。
  • 必要に応じて、明示的にデフォルトコンストラクタを定義し、メンバの初期化処理を行うことが推奨されます。

暗黙的デフォルトコンストラクタは、自動生成されることにより、初期化の手間を省くことができますが、クラスの設計によっては明示的な初期化が必要になる場合があります。

明示的デフォルトコンストラクタの定義

C++では、必要に応じてプログラマが明示的にデフォルトコンストラクタを定義することができます。これにより、クラスメンバの初期化や特定の初期化ロジックを実装することが可能になります。以下に、明示的デフォルトコンストラクタの定義方法とその利点について解説します。

明示的デフォルトコンストラクタの定義方法

明示的デフォルトコンストラクタは、クラス内で引数を持たないメンバ関数として定義されます。以下に例を示します。

class MyClass {
private:
    int value;
public:
    MyClass() : value(0) {  // デフォルトコンストラクタの定義
        // 他の初期化コード
    }
};

このように定義することで、オブジェクトが生成された際に value0 に初期化されます。

明示的なデフォルトコンストラクタの必要性

明示的にデフォルトコンストラクタを定義する必要がある場合は以下の通りです。

  1. メンバの初期化:
    • クラスメンバに初期値を設定したい場合、明示的なデフォルトコンストラクタを定義することで、確実に初期化できます。
    class Point { private: int x, y; public: Point() : x(0), y(0) {} // 初期化リストを使用して初期化 };
  2. 動的メモリ管理:
    • ポインタや動的メモリを管理するクラスでは、明示的なデフォルトコンストラクタを使用してメモリを初期化することが重要です。
    class Buffer { private: char* data; public: Buffer() { data = new char[1024]; // 動的メモリの割り当て } ~Buffer() { delete[] data; // メモリの解放 } };
  3. 特定の初期化ロジック:
    • クラスの初期化に特定のロジックが必要な場合、明示的にデフォルトコンストラクタを定義してそのロジックを実装します。
    class Logger { public: Logger() { // ログファイルのオープンや初期化コード std::cout << "Logger initialized" << std::endl; } };

デフォルトコンストラクタの明示的削除

場合によっては、クラスのインスタンス化を禁止するためにデフォルトコンストラクタを明示的に削除することも可能です。以下に例を示します。

class NoDefault {
public:
    NoDefault() = delete;  // デフォルトコンストラクタを削除
};

このように定義されたクラスは、デフォルトコンストラクタを使用してインスタンス化することができなくなります。

明示的デフォルトコンストラクタを適切に定義することで、クラスの初期化処理を柔軟かつ確実に行うことができます。これにより、バグの防止やコードの可読性向上にも寄与します。

コンストラクタのオーバーロード

C++では、同じクラス内で異なる引数リストを持つ複数のコンストラクタを定義することができ、これをコンストラクタのオーバーロードと呼びます。コンストラクタのオーバーロードを活用することで、クラスのインスタンス化時に柔軟な初期化方法を提供できます。以下に、コンストラクタのオーバーロードについて詳しく解説します。

コンストラクタのオーバーロードの基本

コンストラクタのオーバーロードを行う際には、異なる引数リストを持つ複数のコンストラクタを定義します。例えば、以下のクラス Rectangle では、引数なし、引数2つ、引数4つの3つのコンストラクタを定義しています。

class Rectangle {
private:
    int x, y, width, height;

public:
    // デフォルトコンストラクタ
    Rectangle() : x(0), y(0), width(1), height(1) {}

    // 幅と高さを指定するコンストラクタ
    Rectangle(int w, int h) : x(0), y(0), width(w), height(h) {}

    // 位置とサイズを指定するコンストラクタ
    Rectangle(int x, int y, int w, int h) : x(x), y(y), width(w), height(h) {}
};

このように定義することで、Rectangle クラスのインスタンスをさまざまな方法で初期化できます。

Rectangle r1;               // デフォルトコンストラクタを使用
Rectangle r2(10, 20);       // 幅と高さを指定して初期化
Rectangle r3(5, 5, 15, 25); // 位置とサイズを指定して初期化

オーバーロードの利点

コンストラクタのオーバーロードには以下の利点があります。

  1. 柔軟な初期化:
    • クラスのインスタンスを多様な方法で初期化できるため、使用シナリオに応じた適切な初期化が可能になります。
  2. コードの可読性向上:
    • 必要な初期化パラメータだけを指定することで、コードの可読性が向上します。
  3. デフォルト値の提供:
    • コンストラクタのオーバーロードを使うことで、デフォルト値を提供しつつ、必要に応じて詳細な初期化が可能になります。

コンストラクタのオーバーロードとデフォルト引数

コンストラクタのオーバーロードとデフォルト引数を組み合わせることで、さらに柔軟な初期化が可能です。以下に例を示します。

class Circle {
private:
    int x, y, radius;

public:
    // コンストラクタのオーバーロードとデフォルト引数
    Circle(int r = 1) : x(0), y(0), radius(r) {}
    Circle(int x, int y, int r) : x(x), y(y), radius(r) {}
};

この場合、以下のようにインスタンスを初期化できます。

Circle c1;            // デフォルト引数を使用して初期化
Circle c2(10);        // 半径を指定して初期化
Circle c3(5, 5, 15);  // 位置と半径を指定して初期化

注意点

コンストラクタのオーバーロードを使用する際には、引数リストが曖昧にならないように注意が必要です。曖昧な場合、コンパイラがどのコンストラクタを呼び出すべきか判断できなくなり、エラーが発生することがあります。

コンストラクタのオーバーロードは、クラスの設計に柔軟性を持たせ、初期化処理を簡潔にするための強力な手段です。適切に活用することで、クラスの使い勝手を大幅に向上させることができます。

デフォルトコンストラクタとメモリ管理

デフォルトコンストラクタは、クラスのオブジェクトが生成される際の初期化を担当しますが、メモリ管理の観点でも重要な役割を果たします。特に、動的メモリの割り当てや解放、リソースの管理に関わる場合、デフォルトコンストラクタの設計は慎重に行う必要があります。ここでは、デフォルトコンストラクタとメモリ管理の関連について詳しく解説します。

動的メモリの割り当て

クラス内でポインタメンバを使用する場合、デフォルトコンストラクタで動的メモリを割り当てることが一般的です。以下にその例を示します。

class Buffer {
private:
    char* data;
    int size;
public:
    Buffer() : size(1024) {
        data = new char[size];  // 動的メモリの割り当て
    }

    // デストラクタでメモリを解放
    ~Buffer() {
        delete[] data;
    }
};

この Buffer クラスでは、デフォルトコンストラクタで1024バイトのメモリを割り当て、デストラクタでそのメモリを解放しています。

リソース管理

RAII(Resource Acquisition Is Initialization)という設計原則に従って、リソースの管理をデフォルトコンストラクタで行うことが推奨されます。これは、リソースの取得と解放を確実に行うための方法です。以下に、ファイルリソースを管理するクラスの例を示します。

#include <fstream>

class FileManager {
private:
    std::fstream file;
public:
    FileManager(const std::string& filename) {
        file.open(filename, std::ios::in | std::ios::out | std::ios::app);
        if (!file.is_open()) {
            throw std::runtime_error("Failed to open file");
        }
    }

    ~FileManager() {
        if (file.is_open()) {
            file.close();
        }
    }
};

このクラスでは、ファイルのオープンとクローズをデフォルトコンストラクタとデストラクタで管理しています。

メモリリークの防止

デフォルトコンストラクタで動的メモリを割り当てる際には、メモリリークを防ぐために注意が必要です。特に例外が発生した場合、適切にメモリを解放する仕組みを設けることが重要です。スマートポインタを使用することで、メモリ管理を簡素化し、安全にすることができます。

#include <memory>

class SafeBuffer {
private:
    std::unique_ptr<char[]> data;
    int size;
public:
    SafeBuffer() : size(1024), data(new char[size]) {}
};

この例では、std::unique_ptr を使用して動的メモリを管理することで、メモリリークのリスクを減らしています。

まとめ

デフォルトコンストラクタは、オブジェクトの初期化だけでなく、メモリやリソースの管理にも重要な役割を果たします。動的メモリの割り当てやリソース管理を行う際には、デフォルトコンストラクタとデストラクタを適切に設計することが必要です。RAIIの原則やスマートポインタの活用により、安全で効率的なメモリ管理が可能になります。

デフォルトコンストラクタの例と応用

デフォルトコンストラクタは、クラスのオブジェクトを効率的に初期化するために広く使用されます。ここでは、デフォルトコンストラクタの具体例とその応用について詳しく解説します。

基本的なデフォルトコンストラクタの例

まずは、基本的なデフォルトコンストラクタの例を示します。以下は、Person クラスのデフォルトコンストラクタです。

class Person {
private:
    std::string name;
    int age;
public:
    // デフォルトコンストラクタ
    Person() : name("Unknown"), age(0) {}
};

この Person クラスでは、デフォルトコンストラクタを使用して name を “Unknown” に、age を 0 に初期化しています。

デフォルトコンストラクタを使用したオブジェクトの配列

デフォルトコンストラクタを使用すると、オブジェクトの配列を簡単に初期化できます。以下に例を示します。

class Point {
private:
    int x, y;
public:
    // デフォルトコンストラクタ
    Point() : x(0), y(0) {}
};

// Pointオブジェクトの配列を作成
Point points[10];  // 10個のPointオブジェクトがデフォルトコンストラクタで初期化される

この例では、points 配列の各要素がデフォルトコンストラクタを使用して初期化されます。

クラスメンバのデフォルトコンストラクタ呼び出し

クラスメンバが別のクラスのインスタンスである場合、そのクラスのデフォルトコンストラクタが自動的に呼び出されます。以下に例を示します。

class Address {
private:
    std::string city;
    std::string street;
public:
    // デフォルトコンストラクタ
    Address() : city("Unknown"), street("Unknown") {}
};

class Employee {
private:
    std::string name;
    Address address;  // クラスメンバ
public:
    // デフォルトコンストラクタ
    Employee() : name("John Doe") {}
};

この Employee クラスでは、address メンバの Address クラスのデフォルトコンストラクタが自動的に呼び出されます。

デフォルトコンストラクタを利用したシングルトンクラス

デフォルトコンストラクタを利用してシングルトンクラスを実装することもできます。シングルトンパターンは、クラスのインスタンスが一つだけであることを保証します。

class Singleton {
private:
    // プライベートなデフォルトコンストラクタ
    Singleton() {}
public:
    // インスタンス取得メソッド
    static Singleton& getInstance() {
        static Singleton instance;
        return instance;
    }

    // コピーコンストラクタと代入演算子を削除
    Singleton(const Singleton&) = delete;
    Singleton& operator=(const Singleton&) = delete;
};

この Singleton クラスでは、プライベートなデフォルトコンストラクタを使用してインスタンスの生成を制限し、getInstance メソッドで唯一のインスタンスを提供しています。

まとめ

デフォルトコンストラクタは、クラスのオブジェクトを効率的に初期化するための重要なツールです。基本的な初期化から複雑なリソース管理、シングルトンパターンの実装まで、さまざまなシナリオで役立ちます。デフォルトコンストラクタの正しい理解と活用により、コードの柔軟性と保守性を向上させることができます。

デフォルトコンストラクタの制限と注意点

デフォルトコンストラクタは非常に便利ですが、使用する際にはいくつかの制限と注意点があります。これらを理解しておくことで、予期せぬ動作やバグを防ぐことができます。ここでは、デフォルトコンストラクタに関する主な制限と注意点について解説します。

自動生成される条件

デフォルトコンストラクタが自動生成される条件は限定されています。以下の条件のいずれかに該当する場合、デフォルトコンストラクタは自動生成されません。

  1. クラスが他のコンストラクタを持っている場合
  2. クラスが基底クラスのデフォルトコンストラクタを呼び出す必要があるが、それが存在しない場合
  3. クラスが削除されたデフォルトコンストラクタを持つメンバを含む場合

例えば、以下のクラスではデフォルトコンストラクタが自動生成されません。

class Base {
public:
    Base(int x) {}  // パラメータ付きコンストラクタ
};

class Derived : public Base {
public:
    Derived() = delete;  // デフォルトコンストラクタの削除
};

メンバの初期化

デフォルトコンストラクタを使用すると、クラスのメンバはデフォルト値で初期化されます。しかし、初期化される内容はメンバの型によって異なります。

  • 基本データ型(int, doubleなど):未初期化
  • ポインタ:未初期化
  • クラス型:そのクラスのデフォルトコンストラクタで初期化

以下の例では、value は未初期化のままとなります。

class Example {
private:
    int value;
public:
    Example() {}  // デフォルトコンストラクタ
};

コンパイラ生成のデフォルトコンストラクタの限界

コンパイラが生成するデフォルトコンストラクタは、クラスのメンバをデフォルト値で初期化するだけです。より複雑な初期化が必要な場合は、明示的にデフォルトコンストラクタを定義する必要があります。

class Complex {
private:
    int* data;
public:
    Complex() {
        data = new int[100];  // 複雑な初期化
    }

    ~Complex() {
        delete[] data;  // メモリの解放
    }
};

禁止されたデフォルトコンストラクタ

デフォルトコンストラクタを禁止したい場合、= delete を使用して削除できます。これにより、クラスのインスタンス化を防ぐことができます。

class NoDefault {
public:
    NoDefault() = delete;  // デフォルトコンストラクタを削除
};

このクラスは、デフォルトコンストラクタを持たないため、NoDefault のオブジェクトをデフォルトで生成することはできません。

デフォルトコンストラクタの継承

基底クラスのデフォルトコンストラクタが削除されている場合、派生クラスもデフォルトコンストラクタを持てなくなります。

class Base {
public:
    Base() = delete;  // デフォルトコンストラクタを削除
};

class Derived : public Base {
public:
    Derived() = delete;  // 自動的にデフォルトコンストラクタが削除される
};

まとめ

デフォルトコンストラクタは便利な機能ですが、制限や注意点を理解して適切に使用することが重要です。自動生成される条件やメンバの初期化方法、コンパイラ生成の限界を把握し、必要に応じて明示的に定義することで、安全で効率的なプログラムを作成できます。

演習問題

デフォルトコンストラクタに関する理解を深めるために、以下の演習問題を解いてみましょう。これらの問題を通じて、デフォルトコンストラクタの定義や使用方法について実践的に学ぶことができます。

演習問題1: 基本的なデフォルトコンストラクタの定義

以下の Student クラスにデフォルトコンストラクタを追加し、name"Unknown" に、age0 に初期化するようにしてください。

class Student {
private:
    std::string name;
    int age;
public:
    // ここにデフォルトコンストラクタを追加
};

演習問題2: コンストラクタのオーバーロード

Book クラスにデフォルトコンストラクタを追加し、次のコンストラクタをオーバーロードしてください。

  • タイトルを初期化するコンストラクタ(title を引数として受け取る)
  • タイトルと著者を初期化するコンストラクタ(titleauthor を引数として受け取る)
class Book {
private:
    std::string title;
    std::string author;
public:
    // ここにコンストラクタを追加
};

演習問題3: 動的メモリ管理

DynamicArray クラスにデフォルトコンストラクタを追加し、動的メモリを使用して10個の整数を格納する配列 arr を初期化してください。また、デストラクタを追加して動的メモリを解放するようにしてください。

class DynamicArray {
private:
    int* arr;
public:
    // デフォルトコンストラクタを追加
    // デストラクタを追加
};

演習問題4: デフォルトコンストラクタの削除

以下の NoDefaultConstructor クラスのデフォルトコンストラクタを削除して、インスタンス化できないようにしてください。

class NoDefaultConstructor {
public:
    // デフォルトコンストラクタを削除
};

演習問題5: 基底クラスと派生クラス

以下のコードを完成させてください。Base クラスのデフォルトコンストラクタが削除されているため、Derived クラスでもデフォルトコンストラクタを削除してください。

class Base {
public:
    Base() = delete;
};

class Derived : public Base {
public:
    // デフォルトコンストラクタを削除
};

解答例

各演習問題の解答例を以下に示します。自分で考えた後に確認してみてください。

演習問題1 解答例

class Student {
private:
    std::string name;
    int age;
public:
    Student() : name("Unknown"), age(0) {}
};

演習問題2 解答例

class Book {
private:
    std::string title;
    std::string author;
public:
    Book() : title("Untitled"), author("Unknown") {}
    Book(std::string t) : title(t), author("Unknown") {}
    Book(std::string t, std::string a) : title(t), author(a) {}
};

演習問題3 解答例

class DynamicArray {
private:
    int* arr;
public:
    DynamicArray() {
        arr = new int[10];
    }
    ~DynamicArray() {
        delete[] arr;
    }
};

演習問題4 解答例

class NoDefaultConstructor {
public:
    NoDefaultConstructor() = delete;
};

演習問題5 解答例

class Base {
public:
    Base() = delete;
};

class Derived : public Base {
public:
    Derived() = delete;
};

これらの演習を通じて、デフォルトコンストラクタに関する理解を深め、実践的なスキルを身につけてください。

まとめ

C++のデフォルトコンストラクタは、クラスのオブジェクトを初期化するために重要な役割を果たします。自動生成される暗黙的デフォルトコンストラクタから、明示的に定義するデフォルトコンストラクタまで、さまざまな方法で活用できます。コンストラクタのオーバーロードやメモリ管理、リソース管理と組み合わせることで、柔軟で効率的なクラス設計が可能になります。デフォルトコンストラクタの制限や注意点を理解し、正しく利用することで、安全で保守性の高いコードを書くことができます。この記事で学んだ知識を活かして、さらに高度なC++プログラミングに挑戦してください。

コメント

コメントする

目次
  1. デフォルトコンストラクタの概要
  2. デフォルトコンストラクタの定義方法
    1. クラス宣言内での定義
    2. クラス宣言外での定義
    3. コンストラクタの初期化リストの使用
  3. 暗黙的デフォルトコンストラクタ
    1. 暗黙的デフォルトコンストラクタの自動生成
    2. 自動生成の条件
    3. 暗黙的デフォルトコンストラクタの注意点
  4. 明示的デフォルトコンストラクタの定義
    1. 明示的デフォルトコンストラクタの定義方法
    2. 明示的なデフォルトコンストラクタの必要性
    3. デフォルトコンストラクタの明示的削除
  5. コンストラクタのオーバーロード
    1. コンストラクタのオーバーロードの基本
    2. オーバーロードの利点
    3. コンストラクタのオーバーロードとデフォルト引数
    4. 注意点
  6. デフォルトコンストラクタとメモリ管理
    1. 動的メモリの割り当て
    2. リソース管理
    3. メモリリークの防止
    4. まとめ
  7. デフォルトコンストラクタの例と応用
    1. 基本的なデフォルトコンストラクタの例
    2. デフォルトコンストラクタを使用したオブジェクトの配列
    3. クラスメンバのデフォルトコンストラクタ呼び出し
    4. デフォルトコンストラクタを利用したシングルトンクラス
    5. まとめ
  8. デフォルトコンストラクタの制限と注意点
    1. 自動生成される条件
    2. メンバの初期化
    3. コンパイラ生成のデフォルトコンストラクタの限界
    4. 禁止されたデフォルトコンストラクタ
    5. デフォルトコンストラクタの継承
    6. まとめ
  9. 演習問題
    1. 演習問題1: 基本的なデフォルトコンストラクタの定義
    2. 演習問題2: コンストラクタのオーバーロード
    3. 演習問題3: 動的メモリ管理
    4. 演習問題4: デフォルトコンストラクタの削除
    5. 演習問題5: 基底クラスと派生クラス
    6. 解答例
  10. まとめ