C++の標準ライブラリには、多様なデータ構造やユーティリティが含まれており、それぞれの使用場面によって適切な選択が求められます。本記事では、双方向リストを提供するstd::listと単方向リストを提供するstd::forward_listの違いと使い分けについて詳しく解説します。また、リソースの効率的な移動を可能にするstd::moveと、関数テンプレートで役立つstd::forwardの使い方とその違いについても説明します。これにより、C++プログラムのパフォーマンスを最大限に引き出す方法を理解できるでしょう。
std::listとstd::forward_listの違い
C++の標準ライブラリには、双方向リストであるstd::listと、単方向リストであるstd::forward_listが含まれています。これらのリストはそれぞれ異なる特性と用途を持っています。
std::listの特徴
std::listは双方向リンクリストを実装しており、以下のような特徴があります。
- ノードは前後のノードを指すポインタを持つ
- 任意の位置での要素の挿入や削除が高速
- 双方向のイテレーションが可能
std::forward_listの特徴
std::forward_listは単方向リンクリストを実装しており、以下のような特徴があります。
- ノードは次のノードを指すポインタのみを持つ
- メモリ使用量が少ない
- 単方向のイテレーションのみが可能
- 挿入や削除は、現在位置およびその次の位置でのみ効率的に行える
違いのまとめ
- std::listは双方向のイテレーションと任意位置での操作が可能で、操作が頻繁に必要な場合に適している。
- std::forward_listはメモリ効率が良く、順方向にのみ操作が必要な場合に適している。
このように、std::listとstd::forward_listは異なる特徴を持ち、適切に使い分けることでプログラムの効率を向上させることができます。
std::listの使い方
std::listは双方向リンクリストを提供し、要素の追加や削除が任意の位置で効率的に行えるデータ構造です。以下に基本的な使い方と例を紹介します。
std::listの基本操作
std::listの基本操作には、要素の追加、削除、アクセスがあります。以下は、std::listを使用する基本的な例です。
例1: 要素の追加
#include <iostream>
#include <list>
int main() {
std::list<int> myList;
// 末尾に要素を追加
myList.push_back(10);
myList.push_back(20);
myList.push_back(30);
// 先頭に要素を追加
myList.push_front(5);
// 要素の挿入(2番目の位置に15を挿入)
auto it = myList.begin();
++it;
myList.insert(it, 15);
// 出力
for(int n : myList) {
std::cout << n << " ";
}
return 0;
}
例2: 要素の削除
#include <iostream>
#include <list>
int main() {
std::list<int> myList = {5, 10, 15, 20, 25};
// 末尾の要素を削除
myList.pop_back();
// 先頭の要素を削除
myList.pop_front();
// 要素の削除(15を削除)
myList.remove(15);
// 出力
for(int n : myList) {
std::cout << n << " ";
}
return 0;
}
イテレーション
std::listは双方向イテレーションが可能です。以下に、イテレーターを使用してstd::listを走査する方法を示します。
例3: イテレーション
#include <iostream>
#include <list>
int main() {
std::list<int> myList = {5, 10, 15, 20, 25};
// 順方向にイテレーション
for(auto it = myList.begin(); it != myList.end(); ++it) {
std::cout << *it << " ";
}
std::cout << std::endl;
// 逆方向にイテレーション
for(auto rit = myList.rbegin(); rit != myList.rend(); ++rit) {
std::cout << *rit << " ";
}
return 0;
}
std::listのメリットとデメリット
- メリット:
- 双方向のイテレーションが可能
- 任意の位置での要素の追加・削除が効率的
- デメリット:
- メモリのオーバーヘッドが大きい(前後のポインタが必要)
これらの例を通じて、std::listの基本的な使い方を理解し、適切な場面で効果的に利用することができます。
std::forward_listの使い方
std::forward_listは単方向リンクリストを提供し、メモリ効率が高く、順方向のイテレーションに適したデータ構造です。以下に基本的な使い方と例を紹介します。
std::forward_listの基本操作
std::forward_listの基本操作には、要素の追加、削除、アクセスがあります。以下は、std::forward_listを使用する基本的な例です。
例1: 要素の追加
#include <iostream>
#include <forward_list>
int main() {
std::forward_list<int> myList;
// 先頭に要素を追加
myList.push_front(10);
myList.push_front(20);
myList.push_front(30);
// 要素の挿入(30の後に25を挿入)
auto it = myList.begin();
++it;
myList.insert_after(it, 25);
// 出力
for(int n : myList) {
std::cout << n << " ";
}
return 0;
}
例2: 要素の削除
#include <iostream>
#include <forward_list>
int main() {
std::forward_list<int> myList = {30, 25, 20, 10};
// 先頭の要素を削除
myList.pop_front();
// 要素の削除(25を削除)
myList.remove(25);
// 出力
for(int n : myList) {
std::cout << n << " ";
}
return 0;
}
イテレーション
std::forward_listは単方向のイテレーションのみが可能です。以下に、イテレーターを使用してstd::forward_listを走査する方法を示します。
例3: イテレーション
#include <iostream>
#include <forward_list>
int main() {
std::forward_list<int> myList = {30, 20, 10};
// 順方向にイテレーション
for(auto it = myList.begin(); it != myList.end(); ++it) {
std::cout << *it << " ";
}
return 0;
}
std::forward_listのメリットとデメリット
- メリット:
- メモリ使用量が少ない(次のノードへのポインタのみ)
- 挿入や削除がシンプルで高速(特に先頭付近)
- デメリット:
- 単方向のイテレーションのみ
- 任意の位置での操作が難しい
これらの例を通じて、std::forward_listの基本的な使い方を理解し、適切な場面で効果的に利用することができます。
std::listとstd::forward_listの使い分け
std::listとstd::forward_listの使い分けは、プログラムの要件に応じて異なるデータ構造を選択することで、効率的なメモリ使用や操作を実現することが重要です。以下に、具体的なシナリオをもとに、それぞれの適切な使い分けを説明します。
シナリオ1: 順方向のみの操作が多い場合
もし、リスト内の要素を順方向にしか操作しない場合や、メモリ使用量を最小限に抑えたい場合は、std::forward_listが適しています。
- 例: ログファイルの解析など、順方向にデータを読み取る場合
例1: std::forward_listの使用
#include <iostream>
#include <forward_list>
void processLog(const std::forward_list<std::string>& log) {
for (const auto& entry : log) {
std::cout << entry << std::endl;
}
}
int main() {
std::forward_list<std::string> log = {"Entry1", "Entry2", "Entry3"};
processLog(log);
return 0;
}
シナリオ2: 頻繁に挿入や削除を行う場合
双方向のイテレーションが必要で、頻繁にリストの任意の位置で挿入や削除を行う場合は、std::listが適しています。
- 例: ゲームのスコアボードや、タスク管理アプリケーションのタスクリスト
例2: std::listの使用
#include <iostream>
#include <list>
void manageTasks(std::list<std::string>& tasks) {
tasks.push_back("Task1");
tasks.push_back("Task2");
tasks.push_front("UrgentTask");
auto it = tasks.begin();
++it;
tasks.insert(it, "MediumTask");
for (const auto& task : tasks) {
std::cout << task << std::endl;
}
}
int main() {
std::list<std::string> tasks;
manageTasks(tasks);
return 0;
}
シナリオ3: メモリ効率を優先する場合
メモリ使用量を減らす必要があり、操作が先頭付近で行われることが多い場合、std::forward_listが有効です。
- 例: IoTデバイスのデータ収集など、メモリリソースが限られている環境
例3: std::forward_listの使用
#include <iostream>
#include <forward_list>
void collectData(std::forward_list<int>& data) {
data.push_front(1);
data.push_front(2);
data.push_front(3);
for (const auto& value : data) {
std::cout << value << std::endl;
}
}
int main() {
std::forward_list<int> data;
collectData(data);
return 0;
}
まとめ
- std::listは、双方向のイテレーションや任意位置での操作が必要な場合に適しています。
- std::forward_listは、メモリ効率が重要で、順方向のみの操作や先頭付近での操作が中心の場合に適しています。
これらのポイントを踏まえて、プログラムの要件に最適なデータ構造を選択することが重要です。
std::moveとstd::forwardの違い
C++には、効率的にリソースを移動させるためのユーティリティとしてstd::moveとstd::forwardがあります。これらはそれぞれ異なる目的で使用され、適切に使い分けることでプログラムのパフォーマンスを向上させることができます。
std::moveの特徴
std::moveは、オブジェクトの所有権を移動するための関数で、ムーブセマンティクスを実現します。std::moveを使用することで、リソースの再割り当てやコピーを避け、パフォーマンスを最適化します。
- 使用例: リソースをコピーするのではなく移動したい場合
- 特徴: オブジェクトの所有権を新しいオブジェクトに移す
例1: std::moveの使用
#include <iostream>
#include <string>
#include <utility> // std::moveを使用するためのヘッダー
int main() {
std::string str1 = "Hello, World!";
std::string str2 = std::move(str1);
std::cout << "str1: " << str1 << std::endl; // 空文字列になる
std::cout << "str2: " << str2 << std::endl; // "Hello, World!"になる
return 0;
}
std::forwardの特徴
std::forwardは、完璧転送(perfect forwarding)を実現するための関数で、関数テンプレートの引数をそのままの型で次の関数に転送するために使用されます。std::forwardは、引数の参照の種類(左辺値または右辺値)を保持しつつ、転送します。
- 使用例: テンプレート関数で引数をそのまま別の関数に渡す場合
- 特徴: 引数の参照性を維持しつつ転送する
例2: std::forwardの使用
#include <iostream>
#include <utility> // std::forwardを使用するためのヘッダー
void process(int& lref) {
std::cout << "左辺値参照: " << lref << std::endl;
}
void process(int&& rref) {
std::cout << "右辺値参照: " << rref << std::endl;
}
template <typename T>
void forwarder(T&& arg) {
process(std::forward<T>(arg));
}
int main() {
int a = 42;
forwarder(a); // 左辺値参照として処理
forwarder(42); // 右辺値参照として処理
return 0;
}
std::moveとstd::forwardの違いまとめ
- std::moveは、オブジェクトの所有権を効率的に移動させるために使用されます。
- std::forwardは、関数テンプレートで引数の参照性を保持しつつ転送するために使用されます。
適切にstd::moveとstd::forwardを使い分けることで、C++プログラムのパフォーマンスと効率を向上させることができます。
std::moveの使い方
std::moveは、オブジェクトの所有権を効率的に移動させるために使用されるユーティリティ関数です。以下に、std::moveの基本的な使い方と例を紹介します。
std::moveの基本操作
std::moveは、ムーブセマンティクスを活用することで、リソースの再割り当てやコピーを避け、パフォーマンスを最適化します。以下は、std::moveを使用する基本的な例です。
例1: ムーブコンストラクタの使用
#include <iostream>
#include <vector>
#include <utility> // std::moveを使用するためのヘッダー
class MyClass {
public:
std::vector<int> data;
// ムーブコンストラクタ
MyClass(std::vector<int>&& other) : data(std::move(other)) {
std::cout << "ムーブコンストラクタ呼び出し" << std::endl;
}
// コピーコンストラクタ
MyClass(const MyClass& other) : data(other.data) {
std::cout << "コピーコンストラクタ呼び出し" << std::endl;
}
};
int main() {
std::vector<int> vec = {1, 2, 3, 4, 5};
MyClass obj1(std::move(vec));
std::cout << "vecのサイズ: " << vec.size() << std::endl; // vecは空になる
return 0;
}
例2: ムーブ代入演算子の使用
#include <iostream>
#include <vector>
#include <utility> // std::moveを使用するためのヘッダー
class MyClass {
public:
std::vector<int> data;
// ムーブ代入演算子
MyClass& operator=(MyClass&& other) {
if (this != &other) {
data = std::move(other.data);
std::cout << "ムーブ代入演算子呼び出し" << std::endl;
}
return *this;
}
// コピー代入演算子
MyClass& operator=(const MyClass& other) {
if (this != &other) {
data = other.data;
std::cout << "コピー代入演算子呼び出し" << std::endl;
}
return *this;
}
};
int main() {
MyClass obj1;
obj1.data = {1, 2, 3, 4, 5};
MyClass obj2;
obj2 = std::move(obj1);
std::cout << "obj1のデータサイズ: " << obj1.data.size() << std::endl; // obj1は空になる
return 0;
}
std::moveのメリットとデメリット
- メリット:
- オブジェクトの所有権を効率的に移動し、リソースの再割り当てを回避
- パフォーマンスの向上(特に大きなデータ構造の場合)
- デメリット:
- ムーブ後のオブジェクトは未定義状態になるため、再利用には注意が必要
これらの例を通じて、std::moveの基本的な使い方を理解し、所有権の移動を効果的に活用することで、C++プログラムのパフォーマンスを最適化できます。
std::forwardの使い方
std::forwardは、完璧転送(perfect forwarding)を実現するために使用されるユーティリティ関数で、関数テンプレートの引数をそのままの型で次の関数に転送します。以下に、std::forwardの基本的な使い方と例を紹介します。
std::forwardの基本操作
std::forwardは、テンプレート関数で引数の参照性を保持しつつ転送する際に使用されます。これにより、関数テンプレートが引数の左辺値と右辺値を区別して正しく処理できます。
例1: 関数テンプレートでの使用
#include <iostream>
#include <utility> // std::forwardを使用するためのヘッダー
// 左辺値参照を受け取る関数
void process(int& lref) {
std::cout << "左辺値参照: " << lref << std::endl;
}
// 右辺値参照を受け取る関数
void process(int&& rref) {
std::cout << "右辺値参照: " << rref << std::endl;
}
// 完璧転送を行うテンプレート関数
template <typename T>
void forwarder(T&& arg) {
process(std::forward<T>(arg));
}
int main() {
int a = 42;
forwarder(a); // 左辺値参照として処理
forwarder(42); // 右辺値参照として処理
return 0;
}
テンプレートメソッドでのstd::forwardの使用
std::forwardは、テンプレートメソッドでも引数を正しく転送するために使用されます。以下は、std::forwardを使用してコンストラクタを呼び出す例です。
例2: コンストラクタ呼び出しでの使用
#include <iostream>
#include <utility> // std::forwardを使用するためのヘッダー
class MyClass {
public:
template <typename T>
MyClass(T&& arg) {
process(std::forward<T>(arg));
}
void process(int& lref) {
std::cout << "左辺値参照: " << lref << std::endl;
}
void process(int&& rref) {
std::cout << "右辺値参照: " << rref << std::endl;
}
};
int main() {
int a = 42;
MyClass obj1(a); // 左辺値参照として処理
MyClass obj2(42); // 右辺値参照として処理
return 0;
}
std::forwardのメリットとデメリット
- メリット:
- 完璧転送を実現し、テンプレート関数内で引数の正しい参照性を保持
- 汎用的なコードを記述するのに役立つ
- デメリット:
- テンプレートの知識が必要であり、コードの可読性が低下することがある
これらの例を通じて、std::forwardの基本的な使い方を理解し、関数テンプレートやテンプレートメソッドでの完璧転送を効果的に活用することができます。
std::moveとstd::forwardの使い分け
std::moveとstd::forwardは、それぞれ異なる目的で使用されるため、適切に使い分けることが重要です。以下に、具体的なシナリオをもとに、それぞれの適切な使い分けを説明します。
シナリオ1: リソースの効率的な移動
リソースを効率的に移動させたい場合は、std::moveを使用します。これは特に大きなデータ構造や動的メモリを持つオブジェクトに対して有効です。
- 例: ベクターや文字列などのリソースを所有権ごと他のオブジェクトに移す場合
例1: std::moveの使用
#include <iostream>
#include <string>
#include <utility> // std::moveを使用するためのヘッダー
void useResource(std::string&& resource) {
std::cout << "リソースの内容: " << resource << std::endl;
}
int main() {
std::string str = "リソース";
useResource(std::move(str)); // 所有権を移動
std::cout << "移動後のstr: " << str << std::endl; // strは空になる
return 0;
}
シナリオ2: テンプレート関数での引数転送
関数テンプレート内で引数を次の関数に転送する場合は、std::forwardを使用します。これにより、引数の参照性(左辺値または右辺値)を保持しつつ正しく転送できます。
- 例: 汎用的な関数テンプレートで、引数をそのまま別の関数に渡す場合
例2: std::forwardの使用
#include <iostream>
#include <utility> // std::forwardを使用するためのヘッダー
void process(int& lref) {
std::cout << "左辺値参照: " << lref << std::endl;
}
void process(int&& rref) {
std::cout << "右辺値参照: " << rref << std::endl;
}
template <typename T>
void forwarder(T&& arg) {
process(std::forward<T>(arg));
}
int main() {
int a = 42;
forwarder(a); // 左辺値参照として処理
forwarder(42); // 右辺値参照として処理
return 0;
}
シナリオ3: クラスメンバーのムーブ操作
クラスメンバーの所有権を効率的に移動する場合は、std::moveを使用します。これは、ムーブコンストラクタやムーブ代入演算子を実装する際に特に有効です。
- 例: クラスのメンバー変数を効率的に移動する場合
例3: ムーブコンストラクタでのstd::moveの使用
#include <iostream>
#include <vector>
#include <utility> // std::moveを使用するためのヘッダー
class MyClass {
public:
std::vector<int> data;
// ムーブコンストラクタ
MyClass(std::vector<int>&& other) : data(std::move(other)) {
std::cout << "ムーブコンストラクタ呼び出し" << std::endl;
}
};
int main() {
std::vector<int> vec = {1, 2, 3, 4, 5};
MyClass obj1(std::move(vec)); // 所有権を移動
std::cout << "vecのサイズ: " << vec.size() << std::endl; // vecは空になる
return 0;
}
まとめ
- std::moveは、オブジェクトの所有権を効率的に移動するために使用され、リソースの再割り当てを避けることができます。
- std::forwardは、テンプレート関数内で引数の参照性を保持しつつ次の関数に転送するために使用されます。
適切にstd::moveとstd::forwardを使い分けることで、C++プログラムのパフォーマンスと効率を向上させることができます。
応用例
std::list、std::forward_list、std::move、およびstd::forwardを組み合わせて使用することで、効率的で柔軟なプログラムを構築できます。ここでは、これらのコンセプトを統合した応用例を紹介します。
シナリオ: タスク管理システム
このシナリオでは、タスク管理システムを構築します。各タスクは、優先度付きのリストで管理され、タスクの移動や処理を効率的に行います。
クラス定義と基本機能の実装
#include <iostream>
#include <list>
#include <forward_list>
#include <string>
#include <utility> // std::move, std::forwardを使用するためのヘッダー
class Task {
public:
std::string name;
int priority;
Task(std::string n, int p) : name(std::move(n)), priority(p) {}
// ムーブコンストラクタ
Task(Task&& other) noexcept : name(std::move(other.name)), priority(other.priority) {}
// ムーブ代入演算子
Task& operator=(Task&& other) noexcept {
if (this != &other) {
name = std::move(other.name);
priority = other.priority;
}
return *this;
}
// コピー禁止
Task(const Task&) = delete;
Task& operator=(const Task&) = delete;
};
class TaskManager {
private:
std::list<Task> highPriorityTasks;
std::forward_list<Task> lowPriorityTasks;
public:
// 高優先度タスクを追加
void addHighPriorityTask(Task&& task) {
highPriorityTasks.push_back(std::move(task));
}
// 低優先度タスクを追加
void addLowPriorityTask(Task&& task) {
lowPriorityTasks.push_front(std::move(task));
}
// タスクを処理する
template <typename T>
void processTask(T&& task) {
std::cout << "Processing task: " << task.name << " with priority " << task.priority << std::endl;
}
// 全タスクを処理する
void processAllTasks() {
for (auto& task : highPriorityTasks) {
processTask(std::move(task));
}
highPriorityTasks.clear();
for (auto& task : lowPriorityTasks) {
processTask(std::move(task));
}
lowPriorityTasks.clear();
}
};
int main() {
TaskManager manager;
manager.addHighPriorityTask(Task("High Priority Task 1", 1));
manager.addHighPriorityTask(Task("High Priority Task 2", 2));
manager.addLowPriorityTask(Task("Low Priority Task 1", 3));
manager.addLowPriorityTask(Task("Low Priority Task 2", 4));
manager.processAllTasks();
return 0;
}
コードの説明
Task
クラス:- タスクの名前と優先度を保持します。
- ムーブコンストラクタとムーブ代入演算子を実装し、リソースの効率的な移動をサポートします。
- コピーコンストラクタとコピー代入演算子を削除し、所有権の一意性を確保します。
TaskManager
クラス:- 高優先度タスクは
std::list
で管理し、任意の位置での挿入・削除が容易です。 - 低優先度タスクは
std::forward_list
で管理し、メモリ効率を向上させます。 processTask
テンプレート関数は、std::forward
を使用してタスクを効率的に処理します。processAllTasks
関数は、全てのタスクを処理し、リストをクリアします。
まとめ
この応用例では、std::list、std::forward_list、std::move、およびstd::forwardを組み合わせることで、柔軟で効率的なタスク管理システムを実現しました。各データ構造とユーティリティ関数を適切に使用することで、プログラムのパフォーマンスを最適化できます。
演習問題
C++のstd::list、std::forward_list、std::move、およびstd::forwardの使い方と効果的な使い分けを理解するための演習問題をいくつか提示します。これらの問題を通じて、実際にコードを書いて実行し、理解を深めてください。
演習問題1: std::listの基本操作
以下のタスクを行うプログラムを作成してください。
std::list<int>
を作成し、5つの整数(1, 2, 3, 4, 5)を追加する。- リストの2番目と4番目の要素を削除する。
- リストの先頭に新しい整数(0)を追加する。
- リストの内容を出力する。
解答例
#include <iostream>
#include <list>
int main() {
std::list<int> myList = {1, 2, 3, 4, 5};
// 2番目と4番目の要素を削除
auto it = myList.begin();
std::advance(it, 1);
myList.erase(it);
it = myList.begin();
std::advance(it, 2);
myList.erase(it);
// 先頭に0を追加
myList.push_front(0);
// リストの内容を出力
for (int n : myList) {
std::cout << n << " ";
}
return 0;
}
演習問題2: std::forward_listの基本操作
以下のタスクを行うプログラムを作成してください。
std::forward_list<std::string>
を作成し、3つの文字列(”apple”, “banana”, “cherry”)を追加する。- 先頭の要素を削除する。
- 新しい文字列(”apricot”)を先頭に追加する。
- リストの内容を出力する。
解答例
#include <iostream>
#include <forward_list>
int main() {
std::forward_list<std::string> myList = {"apple", "banana", "cherry"};
// 先頭の要素を削除
myList.pop_front();
// 先頭に新しい要素を追加
myList.push_front("apricot");
// リストの内容を出力
for (const auto& str : myList) {
std::cout << str << " ";
}
return 0;
}
演習問題3: std::moveの使用
以下のタスクを行うプログラムを作成してください。
std::string
を2つ作成し、1つに文字列(”Hello, World!”)を設定する。std::move
を使用して、最初の文字列の内容を2番目の文字列に移動する。- 両方の文字列の内容を出力する。
解答例
#include <iostream>
#include <string>
#include <utility> // std::moveを使用するためのヘッダー
int main() {
std::string str1 = "Hello, World!";
std::string str2 = std::move(str1);
std::cout << "str1: " << str1 << std::endl; // 空文字列になる
std::cout << "str2: " << str2 << std::endl; // "Hello, World!"になる
return 0;
}
演習問題4: std::forwardの使用
以下のタスクを行うプログラムを作成してください。
- テンプレート関数を作成し、引数をそのまま別の関数に転送する。この関数は、引数の型に応じて異なる出力を行う。
- テンプレート関数を使用して、左辺値および右辺値を渡して処理する。
解答例
#include <iostream>
#include <utility> // std::forwardを使用するためのヘッダー
void process(int& lref) {
std::cout << "左辺値参照: " << lref << std::endl;
}
void process(int&& rref) {
std::cout << "右辺値参照: " << rref << std::endl;
}
template <typename T>
void forwarder(T&& arg) {
process(std::forward<T>(arg));
}
int main() {
int a = 42;
forwarder(a); // 左辺値参照として処理
forwarder(42); // 右辺値参照として処理
return 0;
}
まとめ
これらの演習問題を通じて、std::list、std::forward_list、std::move、およびstd::forwardの基本的な使い方とその使い分けについて理解を深めることができます。実際にコードを書いて動作を確認することで、これらのコンセプトをより深く理解してください。
まとめ
本記事では、C++の標準ライブラリに含まれるstd::listとstd::forward_list、およびstd::moveとstd::forwardの使い分けについて詳しく解説しました。それぞれのデータ構造とユーティリティ関数の特性を理解し、適切に選択することで、プログラムの効率とパフォーマンスを大幅に向上させることができます。std::listとstd::forward_listは、使用シナリオに応じたメモリ管理と操作の柔軟性を提供し、std::moveとstd::forwardは、リソースの効率的な移動とテンプレート関数の完璧転送を可能にします。これらのツールを効果的に組み合わせて使用することで、より洗練されたC++プログラムを作成することができるでしょう。
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