Microsoft PurviewのSharePoint/OneDrive向け自動ラベルは、2026年8月5日時点では、1テナント当たり1日最大10万ファイルです。Microsoftは、この上限を最大50万ファイルへ引き上げる計画を発表しましたが、まだ提供は始まっていません。
Microsoft 365 Roadmap ID 567890では、プレビューを2026年9月、一般提供(GA)を2026年10月に予定しています。現在の状態は「In development」であり、「Launched」ではありません。したがって、現時点の運用設計や処理日数の見積もりには、引き続き1日10万ファイルを使用する必要があります。
Purview自動ラベルは1日何件?現行は10万ファイル
Microsoft Purview Information Protectionのサービス側自動ラベルでは、SharePointとOneDriveに保存されているファイルを条件に基づいて判定し、秘密度ラベルを自動適用できます。
現行上限と今後の計画を整理すると、次のとおりです。
| 項目 | 現在 | 拡大後の予定 |
|---|---|---|
| 1日当たりの自動ラベル上限 | 最大10万ファイル | 最大50万ファイル |
| 上限の単位 | テナント全体 | テナント全体 |
| プレビュー | 未提供 | 2026年9月予定 |
| 一般提供(GA) | 未提供 | 2026年10月予定 |
| Roadmapの状態 | In development | 提供開始前 |
| 対象クラウド | Worldwide Standard Multi-Tenant | Worldwide Standard Multi-Tenant |
| Roadmap ID | 567890 | 567890 |
Roadmapの更新日時は2026年7月29日23時7分(UTC)です。Microsoftは上限を「100,000から最大500,000ファイルへ増加する」と説明しています。
50万ファイルは将来の予定値であり、現在利用できる上限ではありません。 プレビューや一般提供の予定月に入っただけで、自動的に全テナントで利用可能になるとは限らない点にも注意が必要です。
50万ファイルへの拡大で何が変わるのか
今回の変更が実施されると、Purview自動ラベルの1日当たり最大処理量は、現在の5倍になります。
増加分は1日40万ファイルです。大量のSharePointサイトやOneDriveを管理している組織では、秘密度ラベルの適用待ちを短縮できる可能性があります。
単純計算による処理日数の違いは、次のとおりです。
| ラベル適用対象 | 現行の最大10万件/日 | 拡大後の最大50万件/日 |
|---|---|---|
| 100万ファイル | 最短10日 | 最短2日 |
| 500万ファイル | 最短50日 | 最短10日 |
| 1,000万ファイル | 最短100日 | 最短20日 |
これは、対象ファイルのすべてがポリシー条件に一致し、毎日上限まで処理されると仮定した理論値です。実際の所要時間は、対象サイト数、ファイル形式、検索インデックスの状態、既存ラベル、ポリシー条件、サービス側の処理状況などによって変わります。
また、Roadmapで使われている「最大50万ファイル」は、ストレージにあるファイルを50万件までしか検索できないという意味ではありません。公式ドキュメントでは、現行上限を「自動的にラベル付けされるファイル数」と説明しています。(Microsoft Learn)
50万件はポリシーごとではなくテナント全体の上限
Purviewの自動ラベル上限は、ポリシー単位やSharePointサイト単位ではありません。同じテナントで動作するすべての自動ラベルポリシーを合計した、テナント全体の1日当たり上限です。
Microsoft Purviewポータルの自動ラベル画面には、すべてのポリシーでその日にラベル付けされたファイル数の合計が表示されます。現在は、この合計値を1日10万ファイルの上限と比較して、処理枠に余裕があるか確認できます。(Microsoft Learn)
例えば、3つのポリシーが次の件数を処理した場合、合計で上限を消費します。
| ポリシー | 1日のラベル適用数 |
|---|---|
| 個人情報検出ポリシー | 4万ファイル |
| 契約書分類ポリシー | 3万ファイル |
| 財務情報検出ポリシー | 3万ファイル |
| 合計 | 10万ファイル |
現行環境では、この例だけでテナント全体の1日当たり最大件数に達します。上限が50万ファイルへ拡大されれば、同じ条件で残り40万ファイル分の処理余力が生まれる計算です。
対象はSharePointとOneDriveのサービス側自動ラベル
Roadmap ID 567890の対象は、SharePointとOneDriveに保存されているファイルに対する自動ラベル処理です。
これは、Officeアプリ上でユーザーの操作に応じてラベルを推奨・適用するクライアント側自動ラベルとは異なります。
| 種類 | 主な動作場所 | 特徴 |
|---|---|---|
| クライアント側自動ラベル | Word、Excel、PowerPoint、Outlook | ファイル編集中やメール作成中に判定する |
| サービス側自動ラベル | Microsoft 365のサービス | SharePoint/OneDrive上の保存済みファイルを判定する |
サービス側の自動ラベルポリシーは、ユーザーが利用しているOfficeアプリのバージョンに依存せず、バックグラウンドで処理されます。今回の50万ファイル化は、このサービス側処理のうち、SharePointとOneDriveを対象とした容量拡大です。(Microsoft Learn)
Exchange Onlineも自動ラベルポリシーの対象にできますが、Roadmap ID 567890では、Exchangeの上限拡大は明記されていません。
自動ラベルを適用できる主なファイル形式
SharePointとOneDriveの自動ラベルが対応する主な形式は、次のとおりです。
- Wordの
.docx - Excelの
.xlsx - PowerPointの
.pptx
一方で、SharePointリスト項目への添付ファイルは自動ラベルの対象外です。また、別のユーザーやアプリで開かれているファイルは、その時点では自動ラベルを適用できない場合があります。(Microsoft Learn)
PDF対応を有効にすると、自動ラベル対象になるファイル数が大幅に増える可能性があります。Microsoftも、PDF対応を有効にした場合、既存ポリシーで自動ラベルされるファイルが増え、現行の1日10万ファイル上限に影響することを注意事項として案内しています。(Microsoft Learn)
そのため、PDFを大量に保存しているテナントでは、50万ファイルへの拡大による効果が比較的大きくなる可能性があります。
既存ファイルがすべて自動的に処理されるとは限らない
処理上限が50万ファイルに増えても、SharePointやOneDriveに保存されている過去のファイルが、無条件ですべて再スキャンされるわけではありません。
Microsoftのドキュメントでは、新しい自動ラベルポリシーを有効にしても、既存の保存済みファイルは自動的に再スキャンされず、古い未変更ファイルを分類するにはオンデマンド分類が必要になる場合があると説明されています。(Microsoft Learn)
つまり、次の2つは分けて考える必要があります。
- 自動ラベルサービスが1日に処理できる最大件数
- 既存ファイルを判定対象として認識させる方法
50万ファイル化は前者の改善です。過去データをまとめてラベル付けしたい場合は、対象ファイルがポリシーの評価対象になる条件やオンデマンド分類の必要性も確認してください。
大規模テナントで期待できるメリット
ラベル適用待ちを短縮しやすくなる
現在、テナント全体で1日10万ファイル近くを継続的に処理している場合、新規ファイルや変更ファイルの増加によって、ラベル適用待ちが発生しやすくなります。
上限が50万ファイルへ拡大されれば、日常的に発生するファイルを処理しながら、既存コンテンツのラベル付けも進めやすくなります。
ファイル移行後の保護を早められる
ファイルサーバーや他のクラウドストレージからSharePoint Onlineへ大量移行した直後は、短期間に多くのファイルが追加されます。
移行対象に個人情報、契約書、財務資料などが含まれる場合、秘密度ラベルの適用速度は情報保護上の重要な要素です。最大処理量が5倍になれば、移行後にラベル未適用の状態が続く期間を短縮できる可能性があります。
ただし、移行直後からラベルを確実に適用したい場合は、移行前のラベル付け、移行後のオンデマンド分類、自動ラベルポリシーの対象範囲を組み合わせて設計する必要があります。
Microsoft 365 Copilot導入前のデータ整備に役立つ
Microsoftは今回の上限拡大について、より多くの保存済みデータを早くラベル付けし、Microsoft 365 Copilotに向けたデータ環境の準備を進めやすくすると説明しています。
秘密度ラベルを適用すれば、機密度の高いファイルを識別し、ラベルに設定した暗号化や保護を適用できます。ただし、ラベルを付けただけで過剰共有がすべて解消されるわけではありません。共有範囲、アクセス権、DLPポリシーなども併せて確認することが重要です。
処理量が増えるほど誤検知対策が重要になる
50万ファイル化は処理速度を高めますが、ポリシー条件が不適切な場合は、誤ったラベルもより速く大量に適用される可能性があります。
例えば、「マイナンバーを含むファイル」という条件を作成する際、検出件数や信頼度を適切に設定していないと、業務上のテストデータや説明資料まで機密ファイルとして分類されることがあります。
サービス側自動ラベルでは、ポリシーを本番稼働させる前にシミュレーションを実行します。Microsoftは、シミュレーション結果を確認し、誤検知があればルールや対象サイトを調整してから本番展開する流れを案内しています。シミュレーションの完了には最大12時間程度かかる場合があります。(Microsoft Learn)
上限拡大前に、次の点を確認しておくと安全です。
- 検出したい秘密情報の種類が適切か
- 必要な検出件数と信頼度が設定されているか
- 「AND」と「OR」の条件が意図どおりか
- 対象外にすべきサイトやOneDriveが除外されているか
- 既存の手動ラベルや上位ラベルを上書きしないか
- 暗号化を伴うラベルの権限設定が適切か
ポリシー数や対象場所数の上限は別に考える
今回のRoadmapで発表されたのは、1日当たりの自動ラベル処理容量の拡大です。ポリシー数や対象場所数の上限変更は記載されていません。
現行ドキュメントでは、SharePoint/OneDrive向け自動ラベルについて、次の制限が案内されています。
- 1テナント当たり最大100ポリシー
- 個別に場所を指定する場合、1ポリシー当たり最大100か所
- 「すべて」を対象にする設定は、100か所の制限から除外
そのため、50万ファイルへ拡大された後も、大量のSharePointサイトを個別指定する運用では、場所数の上限を別途考慮する必要があります。(Microsoft Learn)
管理者が2026年9月までに準備すべきこと
現在の1日当たり処理数を確認する
Microsoft Purviewポータルで、現在の自動ラベル処理量を確認します。
操作場所は次のとおりです。
Microsoft Purviewポータル → ソリューション → Information Protection → ポリシー → 自動ラベルポリシー
メイン画面では、テナント全体でその日にラベル付けされたファイル数を確認できます。現在の処理量が10万件に近い場合は、上限拡大の効果が大きいテナントと判断できます。(Microsoft Learn)
ラベル付け待ちのファイル数を把握する
自動ラベルポリシーの進行状況では、ラベル付け対象のファイル、直近7日間に影響を受けたファイル、累計の処理数などを確認できます。
集計情報は即時反映ではなく、更新に時間がかかる場合があります。ポリシー別の画面、アクティビティエクスプローラー、コンテンツエクスプローラーも併用し、対象件数と失敗件数を確認してください。(Microsoft Learn)
優先順位の高いサイトから段階的に展開する
最初から全SharePointサイトと全OneDriveを対象にすると、誤検知の影響範囲が大きくなります。
まずは、次のような場所から始める方法が現実的です。
- 人事部門の文書サイト
- 契約書を保管する法務サイト
- 財務資料を保管する経理サイト
- 個人情報を扱う顧客管理サイト
- 役員や管理職のOneDrive
Microsoftも、小さな対象範囲から始め、シミュレーションと条件調整を繰り返しながら複数サイトやOneDriveへ広げる方法を案内しています。(Microsoft Learn)
Roadmapとメッセージセンターを再確認する
Microsoft 365 Roadmapに記載されるリリース時期は予定であり、変更される可能性があります。Roadmapページでも、提供予定日を含む情報は変更される場合があると説明されています。(マイクロソフト)
2026年9月と10月になったら、少なくとも次の項目を再確認してください。
- Roadmap ID 567890の状態
- プレビュー開始月の変更有無
- 一般提供開始月の変更有無
- 対象クラウドの変更有無
- Microsoft 365管理センターのメッセージセンター通知
- Microsoft Learnに記載された現行上限
誤解しやすいポイント
| 誤解 | 正しい理解 |
|---|---|
| 現在すでに1日50万件処理できる | 現在の公式上限は1日10万ファイル |
| 50万件はポリシーごとの上限 | テナント内の全ポリシーを合計した上限 |
| 50万ファイルを必ず毎日処理できる | 最大値であり、実際の処理量や所要時間を保証する値ではない |
| SharePoint上の全ファイル形式が対象 | 主にPDFと.docx、.xlsx、.pptxが対象 |
| 過去の全ファイルが自動的に再スキャンされる | 古い未変更ファイルではオンデマンド分類が必要になる場合がある |
| 保持ラベルの自動適用上限も50万件になる | 今回の対象はInformation Protectionの秘密度ラベル |
| すべてのMicrosoft 365クラウドが対象 | RoadmapではWorldwide Standard Multi-Tenantのみ記載 |
| 2026年10月1日に必ず利用可能になる | Roadmapは月単位の予定であり、変更や段階展開の可能性がある |
50万ファイル化に合わせて設定変更は必要か
Roadmap ID 567890には、管理者が上限拡大を有効化するための設定手順は記載されていません。
そのため、現時点では「設定をオンにすれば50万件になる」「プレビューへ手動登録する必要がある」とは断定できません。プレビュー開始時に公開されるMicrosoft Learnの更新内容やメッセージセンター通知を確認する必要があります。
既存ポリシーを先に変更するのではなく、現在の処理量、失敗件数、対象ファイル数を記録しておくことが重要です。上限拡大後に同じ指標を比較すれば、実際に処理能力が改善したか判断しやすくなります。
まとめ
Purview自動ラベルのSharePoint/OneDrive向け上限は、現時点では1テナント当たり1日最大10万ファイルです。最大50万ファイルへの拡大は、2026年9月にプレビュー、2026年10月に一般提供が予定されていますが、Roadmapの状態はまだ「In development」です。
管理者は、50万ファイルを前提に運用を開始するのではなく、まず現在の10万ファイル上限を基準にしてください。そのうえで、テナント全体の処理量とラベル付け待ちを確認し、シミュレーションによる誤検知対策、既存ファイルのオンデマンド分類、対象サイトの優先順位付けを進めておくと、上限拡大を有効に活用できます。

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