MDASHのMAI-AugmentedスキャンをDefenderポータルから実行する方法

MDASHのMAI-Augmentedスキャンは、プライベートプレビューの対象環境であれば、Defender CLIだけでなくMicrosoft Defenderポータルからも開始できます。操作経路は、Exposure ManagementのMDASHイニシアチブからManage scansを開き、対象リポジトリを選択してMAI-Augmented profile (Preview)を指定する流れです。

ただし、これは一般提供された機能ではありません。MDASHのオンボーディング、GitHubコネクタ、必要なMicrosoft Foundryモデル、スキャン実行権限がそろった対象テナントでのみ利用できます。通常のMicrosoft Defenderのマルウェアスキャンとは異なり、接続したソースコードリポジトリの脆弱性を調べる機能です。(Microsoft Learn)

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目次

MDASHのMAI-AugmentedスキャンをDefenderポータルで開始する方法

Defenderポータルからの実行経路は、次のとおりです。

Exposure Management
  > Initiatives
  > Codename MDASH - Agentic code scanner (preview)
  > Open initiative page
  > Manage scans
  > 対象リポジトリ
  > Start scan
  > MAI-Augmented profile (Preview)
  > Scan repo

画面の表示名は、ポータルの言語設定やプレビュー中の更新によって多少異なる可能性があります。本記事ではMicrosoft公式ドキュメントの英語表記を併記します。

Defenderポータルにサインインする

Microsoft Defenderポータルを開き、MDASHを利用するテナントでサインインします。

日常的にスキャンを開始する担当者には、Microsoft Defender unified RBACの次の権限が必要です。

Agentic code security
  > AI Scan Security
  > Run scan (Manage)

Run scan (Manage)は、DefenderポータルからのオンデマンドスキャンとDefender CLIスキャンを実行するための権限です。結果を閲覧する担当者には、別途Scan results (Read)が必要です。(Microsoft Learn)

MDASHのイニシアチブを開く

左側のナビゲーションから、次の順に移動します。

  1. Exposure Managementを開く
  2. Initiativesを選択する
  3. Codename MDASH - Agentic code scanner (preview)を開く
  4. Open initiative pageを選択する

MDASHのイニシアチブは、エージェント型AIコードスキャンで検出したコードレベルの脆弱性を集約する専用画面です。通常の非AIスキャナーによる検出結果を表示するページではありません。(Microsoft Learn)

Manage scansを開く

MDASHイニシアチブページの上部で、Settingsの近くにあるManage scansを選択します。

サイドパネルには、テナントで有効化されたSCMコネクタを通じて検出されたリポジトリが表示されます。GitHubコネクタを使用している場合は、オンボード済みのGitHubリポジトリが対象です。

確認できる主な情報は次のとおりです。

項目確認する内容
Repository nameスキャン対象のリポジトリ名
Repository sizeリポジトリのおおよその規模
Organization name所属するGitHub組織
SCM typeGitHubなどのソースコード管理サービス
Scan status — last scan前回スキャンの状態
Tokens consumed in the last scan前回スキャンで消費したトークン数

リポジトリサイズと前回のトークン消費量は、スキャン前に処理規模を見積もる材料として利用できます。(Microsoft Learn)

対象リポジトリを選択する

一覧からスキャンしたいリポジトリを選択し、Start scanを押します。

対象リポジトリが表示されない場合は、先にGitHubコネクタの状態を確認してください。GitHubコネクタを有効化してから、オンデマンドスキャンが利用可能になるまで最大1時間かかる場合があります。(Microsoft Learn)

MAI-Augmented profileを選択する

確認ダイアログが表示されたら、スキャンプロファイルとして次のいずれかを選択します。

スキャンプロファイル構成適した場面
GPT-General profile基本となる複数のGPTモデル通常のエージェント型コードスキャン
MAI-Augmented profile(Preview)GPT-Generalのモデル構成にMAI-Cyber-1-Flashを追加サイバーセキュリティ特化モデルを加えて検査したい場合

MAI-Augmented profile (Preview)を選び、Scan repoを押すとスキャンが送信されます。

MAI-Augmentedプロファイルでは、基本プロファイルで使用するモデルに、サイバーセキュリティ向けのMAI-Cyber-1-Flashが追加されます。2026年7月の更新以前は主にDefender CLIから選択する構成でしたが、プライベートプレビュー対象環境ではDefenderポータルのオンデマンドスキャンでも選択できるようになりました。(Microsoft Learn)

プロファイルの選択は今回のスキャンにだけ適用される

確認ダイアログで選択したプロファイルは、そのスキャンだけに適用されます

MAI-Augmentedを一度選んでも、テナント全体やリポジトリの既定プロファイルが恒久的に変更されるわけではありません。次回スキャン時には、あらためて使用するプロファイルを確認する必要があります。(Microsoft Learn)

スキャンの状態を確認する

スキャンを送信すると、開始を知らせる通知が表示されます。新しい実行履歴はMDASHイニシアチブのScansタブに追加され、処理状況を確認できます。(Microsoft Learn)

スキャン完了後は、主に次の画面を使い分けます。

確認したい内容使用する画面
MDASH全体のコードセキュリティ状況Overview
現在対応すべき個別の検出結果Security recommendations
実行日時、状態、トークン数、実行元Scans
特定スキャン時点の検出結果Scansから対象実行を開く
Portal実行とCLI実行の区別SourceまたはTrigger列

Defenderポータルから開始したスキャンはリモートスキャンとして扱われ、CLIからの実行と区別できます。MDASHイニシアチブ上の表示対象は直近90日間であるため、長期間保存する必要がある結果はCSVやSARIFなどで別途保管する運用も検討してください。(Microsoft Learn)

実行前に確認すべき前提条件

Manage scansを開くだけでは、MAI-Augmentedスキャンを必ず実行できるとは限りません。次の条件を事前に確認します。

プライベートプレビューの対象テナントである

今回のDefenderポータル対応は、一般提供機能ではなくプライベートプレビューです。

そのため、通常のMicrosoft Security Exposure Managementライセンスを所有しているだけでは、MAI-Augmentedプロファイルが表示されない可能性があります。組織がCodename MDASHと該当プレビューの対象になっているかを確認してください。(Microsoft Learn)

Codename MDASHのオンボーディングが完了している

MDASHの初期オンボーディングでは、主に次の準備が必要です。

  • Microsoft Entra IDのGlobal AdministratorまたはSecurity Administrator
  • 組織を代表してプレビュー条件に同意できる権限
  • Azureサブスクリプションとリソースグループ
  • MDASH専用のMicrosoft Foundryリソース
  • FoundryプロジェクトのエンドポイントとAPIキー
  • 必要なモデルをデプロイする権限
  • Microsoft Defender unified RBACの設定

Defenderポータルのオンボーディング画面では、Microsoft Foundryの接続情報を入力して検証し、検証に成功した後で保存します。(Microsoft Learn)

MAI-Augmentedに必要なモデルがデプロイされている

Microsoft公式ドキュメント上のプロファイル構成は、次のように整理できます。

GPT-General profile
├─ gpt-5.4
├─ gpt-5.3-codex
└─ gpt-5.4-mini

MAI-Augmented profile
├─ gpt-5.4
├─ gpt-5.3-codex
├─ gpt-5.4-mini
└─ MAI-Cyber-1-Flash

必要なモデルが不足しているプロファイルにはインラインエラーが表示され、選択できません。MAI-Augmentedを使う場合は、基本となる3モデルだけでなく、MAI-Cyber-1-Flashのデプロイ状態も確認します。(Microsoft Learn)

プレビュー中はモデル名、利用可能リージョン、必要なクォータなどが更新される可能性があります。実際の構築時には、その時点のMicrosoft LearnとFoundryポータルに表示される要件を優先してください。

GitHubコネクタが作成・有効化されている

Defenderポータルからのリモートスキャンでは、GitHubコネクタによってオンボードされたリポジトリを使用します。

GitHubコネクタの作成には、少なくとも次の権限が必要です。

対象必要な権限
Microsoft側Microsoft Entra IDのSecurity Administrator以上
GitHub側接続するGitHub OrganizationのOwner
スキャンのみGitHubへのReadアクセスで実行可能
Issue・Pull Request作成オプションのWriteアクセスが必要

ソースコードの検出とスキャンだけであれば、GitHub側のWriteアクセスは必須ではありません。Writeアクセスは、GitHubへIssueやPull Requestなどを書き戻す用途で必要になります。(Microsoft Learn)

MAI-AugmentedとGPT-Generalの選び方

MAI-Augmentedが選択できるからといって、すべてのリポジトリで毎回使用する必要はありません。プライベートプレビューでは、対象と目的を絞って比較する方が運用判断をしやすくなります。

MAI-Augmentedを試しやすいケース

次のようなリポジトリから段階的に試すと、効果とリソース消費を比較しやすくなります。

  • 認証、認可、決済など重要な処理を含む
  • 外部入力を多く受け取るWeb API
  • インターネットへ公開するサービス
  • C、C++、Java、C#などで構築された重要システム
  • 従来の静的解析では判断しにくい複雑なデータフローを含む
  • リリース前に追加のセキュリティレビューを行いたい

MDASHは複数モデルと専門化されたAIエージェントを組み合わせ、検出、検証、重複排除などを段階的に処理する仕組みです。MAI-Augmentedは、その処理にサイバーセキュリティ特化モデルを追加するスキャンプロファイルです。(Microsoft Learn)

最初から全リポジトリに適用しない

プレビュー評価では、次の順序が現実的です。

  1. 小規模な検証用リポジトリを選ぶ
  2. GPT-Generalでスキャンする
  3. 同じリポジトリをMAI-Augmentedでスキャンする
  4. 検出件数だけでなく、重大度、信頼度、トークン消費量を比較する
  5. セキュリティ担当者が検出内容の妥当性を確認する
  6. 重要リポジトリへ段階的に広げる

単純な検出件数の多さだけで優劣を判断してはいけません。実際に修正すべき脆弱性を見つけられたか、誤検出の確認工数が増えていないか、処理時間やトークン消費が許容範囲かを評価します。

比較結果はScansタブから確認する

Security recommendationsタブは、原則としてリポジトリとブランチごとの最新スキャン結果を表示します。

GPT-GeneralとMAI-Augmentedの結果を比較するときは、Scansタブから各実行履歴を開いてください。各スキャンの詳細画面では、実行時点の検出結果、重大度、トークン消費、実行時間、レポートなどを確認できます。(Microsoft Learn)

DefenderポータルとDefender CLIの違い

MAI-Augmentedは、DefenderポータルとDefender CLIの両方から利用できる構成になりました。ただし、適した用途は異なります。

比較項目DefenderポータルDefender CLI
主な対象コネクタでオンボードしたリポジトリローカルにクローンしたリポジトリ
実行方法Manage scansから手動実行コマンドで実行
ローカル導入不要CLIバイナリが必要
適した用途セキュリティ担当者による単発検査開発者の手元、スクリプト、CI/CD
プロファイル指定確認ダイアログで選択--model-profileで指定
結果確認Defenderポータルターミナル、SARIF、Defenderポータル

Defender CLIでMAI-Augmentedを指定する場合は、次の形式です。

defender scan ai-scan submit . --model-profile mai-augmented-profile

Defenderポータルは、ローカル環境へCLIをインストールせず、接続済みリポジトリをセキュリティ部門から直接検査したい場合に向いています。一方、定期実行や開発パイプラインへの組み込みにはDefender CLIが適しています。(Microsoft Learn)

MAI-Augmentedを選択できない場合の確認ポイント

MAI-Augmented profileが表示されない

次の項目を確認します。

  • テナントがプライベートプレビューの対象になっているか
  • Codename MDASHのオンボーディングが完了しているか
  • 対象テナントでポータル向け機能が展開済みか
  • 正しいMDASHイニシアチブを開いているか
  • Defenderポータルへ正しいディレクトリでサインインしているか

通常環境で表示されないこと自体は、必ずしも設定ミスではありません。一般提供前の機能であるため、対象外テナントには表示されない可能性があります。(Microsoft Learn)

プロファイルは表示されるが選択できない

確認ダイアログにインラインエラーが表示されている場合は、Microsoft Foundryのモデル構成を確認します。

特に、次の4モデルが必要です。

gpt-5.4
gpt-5.3-codex
gpt-5.4-mini
MAI-Cyber-1-Flash

モデル名だけでなく、接続しているFoundryプロジェクト、デプロイ状態、クォータ、ネットワークアクセス、MDASHとの接続検証も確認してください。必要なモデルがデプロイされていないプロファイルは選択できません。(Microsoft Learn)

Manage scansが表示されない

主に次の点を切り分けます。

  • GitHubコネクタが有効になっているか
  • コネクタ有効化から最大1時間経過しているか
  • Run scan (Manage)権限が割り当てられているか
  • Microsoft Security Exposure ManagementとMicrosoft Defender for CloudのデータソースがRBAC割り当てに含まれているか
  • プライベートプレビューの対象環境か

RBACロールを作成するときは、ユーザーだけでなくデータソースの割り当ても確認してください。公式手順では、Microsoft Defender for CloudとMicrosoft Security Exposure Managementの両方を選択する構成が示されています。(Microsoft Learn)

対象リポジトリが一覧に出ない

GitHubコネクタ側で、次の内容を確認します。

  • 正しいGitHub Organizationを接続しているか
  • 対象リポジトリがGitHub Appのアクセス範囲に含まれているか
  • コネクタがActivate済みか
  • GitHub側でアプリの権限が取り消されていないか
  • 有効化から最大1時間経過しているか

既存のAzureポータル側GitHubコネクタと、Defenderポータル側コネクタを同じGitHub Organizationへ重複して接続できない場合もあります。既存接続を解除すると関連するDefender for DevOps機能へ影響する可能性があるため、安易に削除せず現在の利用状況を確認してください。(Microsoft Learn)

スキャンがキューから進まない

DefenderポータルとDefender CLIを合計して、テナント内に10件のスキャンがキュー待ちになっている場合は警告が表示されます。警告後も送信できますが、送信から72時間以内に開始されなかったキューは自動的に整理され、一部のスキャンが実行されない可能性があります。(Microsoft Learn)

大量のリポジトリを一度に送信するのではなく、優先度の高いリポジトリから順に実行し、Scansタブで進行状況を確認する運用が適しています。

プライベートプレビューで運用する際の注意点

一般提供済みの標準機能として扱わない

MAI-AugmentedのDefenderポータル対応は、対象テナント限定のプライベートプレビューです。

社内手順書や顧客向け資料では、「Microsoft Defenderポータルならすべての環境で利用できる」と記載しないよう注意してください。利用可否はテナント、リージョン、プレビュー参加状況、モデルの提供状況などに左右されます。(Microsoft Learn)

AIの検出結果をそのまま脆弱性確定としない

MDASHでは、重大度やAIによる検証状況に応じて、検出結果が次のように分類されます。

分類実務上の扱い
Validated by AI scanner優先的に開発者へ確認・修正を依頼する
Flagged for review人による追加調査を行う
Low priority影響を確認し、必要に応じて保留する

AIが検証した結果であっても、アプリケーションの実行条件、既存の防御策、到達可能性などを確認してから修正方針を決めます。特にFlagged for reviewは、機械的に脆弱性確定とせず、人による調査が必要です。(Microsoft Learn)

評価記録を残す

プレビュー検証では、少なくとも次の情報を記録します。

  • リポジトリ名とブランチ
  • 実行日時
  • 使用したスキャンプロファイル
  • スキャンのRun ID
  • 所要時間
  • トークン消費量
  • CriticalおよびHighの検出件数
  • Validated by AI scannerの件数
  • 人が確認して真の脆弱性と判断した件数
  • 修正に至った件数
  • GPT-Generalとの違い

この記録があれば、MAI-Augmentedを継続利用する価値があるか、どのリポジトリへ適用すべきかを具体的に判断できます。

まずは小規模なリポジトリで動作を確認する

MDASHのMAI-AugmentedスキャンをDefenderポータルから開始する手順は、次の5点に整理できます。

  1. プライベートプレビューとMDASHの利用条件を確認する
  2. Microsoft Foundryの必要モデルとGitHubコネクタを準備する
  3. 実行担当者へRun scan (Manage)を付与する
  4. Manage scansからリポジトリを選ぶ
  5. MAI-Augmented profile (Preview)を指定して実行する

最初は、影響範囲を把握しやすい小規模なリポジトリでGPT-GeneralとMAI-Augmentedをそれぞれ実行してください。検出件数だけでなく、実際に修正へつながった割合、確認工数、処理時間、トークン消費量まで比較することで、本番リポジトリへ展開するかを判断しやすくなります。

この記事を書いた人

実務の現場で詰まりがちなポイントを地図にするITブログ「IT trip」を運営。Windows/Office(Teams・Excel)からSQL、サーバ運用、ガジェットまで、再現性のある手順と“なぜそうなるか”を丁寧に解説します。読んだらすぐ試せること、そして迷った人の次の一歩が見えることを大切にしています。

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