RustでCLIツールをDockerイメージとしてデプロイする手順を徹底解説

Rustは安全性とパフォーマンスを兼ね備えたプログラミング言語として人気が高まっています。特にCLI(コマンドラインインターフェース)ツールの開発には、Rustの効率性と信頼性が非常に適しています。しかし、作成したCLIツールを他の環境で簡単に実行できるようにするには、コンテナ技術を利用するのが効果的です。Dockerを使えば、開発したCLIツールをパッケージ化し、環境に依存せずどこでも実行できるようになります。

本記事では、Rustで作成したCLIツールをDockerイメージとしてデプロイする方法について、初心者でも分かりやすく解説します。Rustのツール作成からDockerfileの作成、コンテナのビルド・実行、さらにDocker Hubへの公開までの手順をステップバイステップで紹介します。これにより、CLIツールを効率的に配布し、運用できるスキルが身につきます。

目次
  1. RustでCLIツールを作成する方法
    1. プロジェクトのセットアップ
    2. CLIツールのコードを作成
    3. CLIツールをビルド
    4. CLIツールを実行
    5. 依存関係の追加(オプション)
  2. Dockerイメージの概要と利点
    1. Dockerイメージとは何か
    2. Dockerを利用する利点
    3. Dockerイメージの実行例
  3. Dockerfileの作成方法
    1. Dockerfileの基本構成
    2. Dockerfileの説明
    3. Dockerfileの配置
    4. Dockerfileの準備ができたら
  4. ビルドとコンテナの作成手順
    1. Dockerイメージのビルド
    2. ビルドしたDockerイメージの確認
    3. コンテナの作成と実行
    4. Dockerコンテナの確認
    5. コンテナの強制停止
    6. まとめ
  5. DockerコンテナでCLIツールを実行
    1. 基本的なコンテナ実行コマンド
    2. 引数を変更して実行
    3. 対話型モードで実行
    4. コンテナに環境変数を渡して実行
    5. ボリュームをマウントして実行
    6. まとめ
  6. Dockerイメージを最適化する方法
    1. 1. マルチステージビルドの活用
    2. 2. ベースイメージを軽量化
    3. 3. 不要なファイルの削除
    4. 4. Rustバイナリの静的リンク
    5. 5. Dockerイメージのレイヤーを最適化
    6. まとめ
  7. Docker Hubにイメージをプッシュする手順
    1. 1. Docker Hubのアカウントを作成
    2. 2. Dockerにログイン
    3. 3. Dockerイメージにタグを付ける
    4. 4. Docker Hubにイメージをプッシュ
    5. 5. Docker Hubでイメージを確認
    6. 6. イメージの共有とダウンロード
    7. 7. プライベートリポジトリの設定(オプション)
    8. まとめ
  8. CLIツールをKubernetesでデプロイする
    1. Kubernetesデプロイの概要
    2. 1. Kubernetesクラスタの準備
    3. 2. YAMLファイルの作成
    4. 3. KubernetesにJobを適用
    5. 4. Jobの実行確認
    6. 5. Podのログ確認
    7. 6. Jobのクリーンアップ
    8. 7. 環境変数やConfigMapの利用(オプション)
    9. まとめ
  9. まとめ

RustでCLIツールを作成する方法

RustでCLIツールを作成する基本的な手順について解説します。ここでは、簡単なCLIアプリケーションを作成し、コマンドラインから引数を受け取るシンプルな例を紹介します。

プロジェクトのセットアップ

まず、Rustのプロジェクトを作成します。以下のコマンドで新しいプロジェクトを生成します。

cargo new my_cli_tool
cd my_cli_tool

my_cli_toolという名前のディレクトリが作成され、以下の構成になります。

my_cli_tool/
├── Cargo.toml
└── src/
    └── main.rs

CLIツールのコードを作成

src/main.rsに以下のコードを記述します。引数を受け取って簡単な処理をするCLIツールです。

use std::env;

fn main() {
    let args: Vec<String> = env::args().collect();

    if args.len() < 2 {
        eprintln!("使い方: {} <名前>", args[0]);
        std::process::exit(1);
    }

    let name = &args[1];
    println!("こんにちは、{}さん!", name);
}

このコードは、引数で渡された名前を受け取って挨拶を表示するシンプルなツールです。

CLIツールをビルド

以下のコマンドでビルドします。

cargo build --release

ビルドが成功すると、target/releaseディレクトリに実行可能ファイルが生成されます。

CLIツールを実行

以下のコマンドでツールを実行し、引数を渡します。

./target/release/my_cli_tool Rust

出力結果:

こんにちは、Rustさん!

依存関係の追加(オプション)

より高度なCLIツールを作成する場合、clapクレートを使用するのが一般的です。Cargo.tomlに以下を追加します。

[dependencies]
clap = "4.0"

これにより、コマンドライン引数の解析が簡単になります。

RustでCLIツールを作成する基本はこれで完了です。次に、作成したCLIツールをDockerでパッケージ化してみましょう。

Dockerイメージの概要と利点

Dockerイメージは、アプリケーションやその依存関係、環境設定をまとめたパッケージです。Rustで作成したCLIツールをDockerイメージとしてパッケージ化することで、環境に依存せず一貫した動作が保証されます。ここでは、Dockerイメージの概要とCLIツールをDocker化する利点について解説します。

Dockerイメージとは何か

Dockerイメージは、アプリケーションのコード、ライブラリ、設定ファイル、ランタイムなどが含まれた、読み取り専用のテンプレートです。これをもとにコンテナが起動されます。イメージはレイヤー構造になっており、変更や追加が効率的に管理されます。

RustのCLIツールの場合、Dockerイメージには以下の内容が含まれます:

  • Rustのバイナリ(ビルド済みのCLIツール)
  • 依存関係(必要なライブラリやランタイム)
  • OS環境(例:Ubuntu、Alpine Linux)

Dockerを利用する利点

Dockerを使ってRustのCLIツールをパッケージ化すると、以下の利点が得られます。

1. 環境依存の解消

Dockerはコンテナ内に必要な環境をすべて含んでいるため、どのOSやマシンでも同じように動作します。ホストマシンにRustがインストールされていなくてもCLIツールを実行できます。

2. 配布とデプロイが容易

Dockerイメージはシンプルなファイルとして配布でき、Docker Hubなどのリポジトリで共有できます。デプロイもdocker runコマンドで簡単に行えます。

3. 一貫した実行環境

開発、テスト、デプロイ環境で完全に同じイメージを使えるため、環境の違いによる問題が起きにくくなります。

4. 軽量なコンテナ

Dockerコンテナは仮想マシンよりも軽量で、起動が高速です。CLIツールのようなシンプルなアプリケーションには最適です。

Dockerイメージの実行例

RustのCLIツールをDockerイメージとしてビルドし、以下のコマンドでコンテナとして実行できます。

docker run --rm my_cli_tool_image Rust

出力結果:

こんにちは、Rustさん!

Dockerイメージを利用することで、RustのCLIツールを効率よく配布・運用できるようになります。次は、Dockerfileを作成してRust CLIツールをコンテナ化する手順を解説します。

Dockerfileの作成方法

Rustで作成したCLIツールをDockerイメージとしてパッケージ化するには、Dockerfileを作成する必要があります。Dockerfileは、Dockerイメージをビルドするための命令が記述されたテキストファイルです。ここでは、基本的なDockerfileの作成手順と内容について解説します。

Dockerfileの基本構成

Rust CLIツールをDockerイメージとしてビルドするためのシンプルなDockerfileを紹介します。

Dockerfile:

# ベースイメージとしてRust公式イメージを使用
FROM rust:1.73 AS builder

# 作業ディレクトリを作成
WORKDIR /usr/src/my_cli_tool

# プロジェクトファイルをコピー
COPY . .

# リリースビルド
RUN cargo build --release

# 軽量なランタイム用ベースイメージにバイナリをコピー
FROM debian:bullseye-slim

# バイナリをコピー
COPY --from=builder /usr/src/my_cli_tool/target/release/my_cli_tool /usr/local/bin/my_cli_tool

# 実行可能権限を付与
RUN chmod +x /usr/local/bin/my_cli_tool

# デフォルトのコマンド
ENTRYPOINT ["/usr/local/bin/my_cli_tool"]

Dockerfileの説明

  1. ベースイメージの指定
   FROM rust:1.73 AS builder


Rust公式のイメージを使用し、ビルド用の環境を用意します。

  1. 作業ディレクトリの作成
   WORKDIR /usr/src/my_cli_tool


プロジェクトの作業ディレクトリを指定します。

  1. ソースコードのコピー
   COPY . .


現在のディレクトリの内容をコンテナ内にコピーします。

  1. リリースビルド
   RUN cargo build --release


最適化されたリリースビルドを行います。

  1. 軽量なランタイムイメージ
   FROM debian:bullseye-slim


実行環境には、軽量なDebianベースのイメージを使用します。

  1. バイナリのコピー
   COPY --from=builder /usr/src/my_cli_tool/target/release/my_cli_tool /usr/local/bin/my_cli_tool


ビルド済みのバイナリをランタイムイメージにコピーします。

  1. 権限の設定
   RUN chmod +x /usr/local/bin/my_cli_tool


バイナリに実行権限を付与します。

  1. エントリーポイントの設定
   ENTRYPOINT ["/usr/local/bin/my_cli_tool"]


コンテナ起動時に実行するコマンドを指定します。

Dockerfileの配置

Dockerfileは、Rustプロジェクトのルートディレクトリに配置します。

my_cli_tool/
├── Cargo.toml
├── src/
│   └── main.rs
└── Dockerfile

Dockerfileの準備ができたら

Dockerfileが完成したら、次はこのDockerfileを使ってDockerイメージをビルドし、コンテナを作成する手順に進みます。

ビルドとコンテナの作成手順

Dockerfileが準備できたら、Rustで作成したCLIツールをDockerイメージとしてビルドし、コンテナを作成・実行する手順を説明します。

Dockerイメージのビルド

まず、Dockerfileがあるディレクトリで以下のコマンドを実行し、Dockerイメージをビルドします。

docker build -t my_cli_tool_image .
  • -t my_cli_tool_image:作成するDockerイメージにmy_cli_tool_imageという名前を付けます。
  • .:現在のディレクトリにあるDockerfileを使用します。

ビルドが成功すると、以下のような出力が表示されます。

Successfully tagged my_cli_tool_image:latest

ビルドしたDockerイメージの確認

ビルドしたDockerイメージが存在するかを確認するには、以下のコマンドを実行します。

docker images

出力例:

REPOSITORY          TAG       IMAGE ID       CREATED          SIZE
my_cli_tool_image   latest    d1b2c3d4e5f6   10 seconds ago   25MB

コンテナの作成と実行

ビルドしたDockerイメージを使ってコンテナを作成し、CLIツールを実行します。以下のコマンドを使用します。

docker run --rm my_cli_tool_image Rust
  • --rm:コンテナ実行後に自動的に削除します。
  • my_cli_tool_image:使用するDockerイメージの名前です。
  • Rust:CLIツールに渡す引数です。

出力例:

こんにちは、Rustさん!

Dockerコンテナの確認

コンテナが正しく作成されているか確認するには、以下のコマンドを使用します。

docker ps -a

コンテナの一覧が表示され、直前に実行したコンテナが確認できます。

コンテナの強制停止

コンテナが長時間実行されている場合は、以下のコマンドで強制的に停止できます。

docker stop <コンテナIDまたは名前>

まとめ

これでRust CLIツールをDockerイメージとしてビルドし、コンテナとして実行する手順が完了しました。次は、DockerコンテナでCLIツールを実行する詳細な方法について解説します。

DockerコンテナでCLIツールを実行

Dockerイメージをビルドしたら、コンテナを作成してCLIツールを実行することができます。ここでは、さまざまな方法でRustのCLIツールをDockerコンテナ内で実行する手順を解説します。

基本的なコンテナ実行コマンド

以下のコマンドでDockerコンテナを実行し、Rust CLIツールを動かします。

docker run --rm my_cli_tool_image Rust
  • docker run:コンテナを起動します。
  • --rm:コンテナが終了した後、自動的に削除します。
  • my_cli_tool_image:Dockerイメージの名前です。
  • Rust:CLIツールに渡す引数です。

出力結果例:

こんにちは、Rustさん!

引数を変更して実行

引数を変更してコンテナを実行することもできます。以下のコマンドで別の名前を渡してみましょう。

docker run --rm my_cli_tool_image Alice

出力結果:

こんにちは、Aliceさん!

対話型モードで実行

対話型モードでコンテナを実行し、コンテナ内でコマンドを操作する場合は、以下のオプションを使用します。

docker run -it --rm my_cli_tool_image /bin/bash

これにより、コンテナのシェルに入ることができます。ここでCLIツールを直接実行することも可能です。

my_cli_tool Rust

コンテナに環境変数を渡して実行

環境変数をコンテナに渡してCLIツールを実行する場合は、以下のように-eオプションを使用します。

docker run --rm -e USER_NAME=Bob my_cli_tool_image

コード内で環境変数を使用するには、std::envを利用します。

main.rs の例:

use std::env;

fn main() {
    let name = env::var("USER_NAME").unwrap_or_else(|_| "ゲスト".to_string());
    println!("こんにちは、{}さん!", name);
}

出力結果:

こんにちは、Bobさん!

ボリュームをマウントして実行

ホストマシンのファイルをコンテナ内にマウントしてCLIツールに渡したい場合、以下のように-vオプションを使います。

docker run --rm -v $(pwd):/data my_cli_tool_image /data/input.txt

このコマンドでは、現在のディレクトリをコンテナ内の/dataにマウントし、input.txtというファイルをCLIツールに渡しています。

まとめ

これでDockerコンテナを使ったRust CLIツールの実行方法を理解できました。引数、環境変数、ボリュームのマウントなど、さまざまな実行方法を活用することで、柔軟な操作が可能です。次は、Dockerイメージを最適化する方法について解説します。

Dockerイメージを最適化する方法

Rustで作成したCLIツールをDockerイメージとしてデプロイする際、イメージサイズが大きいと配布やデプロイが遅くなります。ここでは、Dockerイメージを最適化し、サイズを小さくするための具体的な方法を解説します。

1. マルチステージビルドの活用

Dockerのマルチステージビルドを使用することで、ビルド時に必要な依存関係を本番用のランタイムから除外できます。これにより、最終的なイメージサイズを大幅に削減できます。

最適化したDockerfileの例

# ビルド用のステージ
FROM rust:1.73 AS builder

WORKDIR /usr/src/my_cli_tool

COPY . .

# リリースビルドを実行
RUN cargo build --release

# 実行用の軽量イメージ
FROM debian:bullseye-slim

# バイナリを軽量イメージにコピー
COPY --from=builder /usr/src/my_cli_tool/target/release/my_cli_tool /usr/local/bin/my_cli_tool

# 実行権限を付与
RUN chmod +x /usr/local/bin/my_cli_tool

# デフォルトのコマンド
ENTRYPOINT ["/usr/local/bin/my_cli_tool"]

解説

  • ビルド用のrust:1.73イメージでバイナリをコンパイル。
  • 軽量なdebian:bullseye-slimにバイナリのみをコピーして実行環境を作成。

2. ベースイメージを軽量化

DebianやUbuntuの代わりに、さらに軽量なAlpine Linuxをベースイメージとして使用することでサイズを削減できます。

Alpine Linuxを使用したDockerfile

# ビルド用ステージ
FROM rust:1.73 AS builder

WORKDIR /usr/src/my_cli_tool

COPY . .

RUN cargo build --release

# 実行用の軽量Alpineイメージ
FROM alpine:latest

COPY --from=builder /usr/src/my_cli_tool/target/release/my_cli_tool /usr/local/bin/my_cli_tool

RUN chmod +x /usr/local/bin/my_cli_tool

ENTRYPOINT ["/usr/local/bin/my_cli_tool"]

サイズ比較

  • Debianベース:約 25 MB
  • Alpineベース:約 6 MB

3. 不要なファイルの削除

Dockerイメージ内に不要なファイル(ソースコード、ドキュメント、キャッシュ)が含まれないようにしましょう。例えば、targetディレクトリの中間ファイルを削除します。

RUN cargo build --release && rm -rf /usr/src/my_cli_tool/target/debug

4. Rustバイナリの静的リンク

Rustのバイナリを静的にリンクすることで、依存関係がなくなり、最終的なイメージサイズを削減できます。

Cargo設定ファイル Cargo.toml

[profile.release]
panic = 'abort'

ビルドコマンド:

cargo build --release --target x86_64-unknown-linux-musl

5. Dockerイメージのレイヤーを最適化

Dockerfileの命令をまとめることで、レイヤー数を減らし、イメージサイズを削減できます。

最適化例

RUN apt-get update && apt-get install -y \
    libssl-dev \
    && rm -rf /var/lib/apt/lists/*

まとめ

これらの最適化テクニックを活用することで、Rust CLIツールのDockerイメージを大幅に軽量化できます。最適化されたイメージは、デプロイ速度やネットワーク転送効率が向上し、リソースの節約にもつながります。次は、Docker Hubにイメージをプッシュする手順について解説します。

Docker Hubにイメージをプッシュする手順

作成したRustのCLIツールをDockerイメージとして他の人と共有したり、デプロイ環境に配布するには、Docker Hubにイメージをプッシュ(アップロード)するのが便利です。ここでは、Docker Hubにイメージをプッシュする手順を解説します。

1. Docker Hubのアカウントを作成

Docker Hubを利用するには、まず公式サイトでアカウントを作成します。

  1. Docker Hubにアクセスします。
  2. 無料のアカウントを登録します。
  3. アカウント作成後、ユーザー名(Docker ID)を確認します。

2. Dockerにログイン

ターミナルで以下のコマンドを実行して、Docker Hubにログインします。

docker login
  • ユーザー名とパスワードの入力を求められるので、Docker Hubの認証情報を入力します。

成功すると、以下のメッセージが表示されます。

Login Succeeded

3. Dockerイメージにタグを付ける

Docker Hubにプッシュするには、イメージにDocker Hubユーザー名とリポジトリ名を含むタグを付ける必要があります。

以下のコマンドでタグを付けます:

docker tag my_cli_tool_image <Dockerユーザー名>/my_cli_tool:latest

例:

docker tag my_cli_tool_image johndoe/my_cli_tool:latest

4. Docker Hubにイメージをプッシュ

タグ付けしたイメージをDocker Hubにプッシュします。

docker push <Dockerユーザー名>/my_cli_tool:latest

例:

docker push johndoe/my_cli_tool:latest

プッシュが成功すると、以下のような出力が表示されます:

The push refers to repository [docker.io/johndoe/my_cli_tool]
latest: digest: sha256:... size: 1234

5. Docker Hubでイメージを確認

Docker Hubのプロフィールページにアクセスすると、プッシュしたイメージがリポジトリ一覧に表示されます。

6. イメージの共有とダウンロード

Docker Hubに公開したイメージは、他の人が以下のコマンドでダウンロードできます。

docker pull <Dockerユーザー名>/my_cli_tool:latest

例:

docker pull johndoe/my_cli_tool:latest

ダウンロードしたイメージを実行:

docker run --rm johndoe/my_cli_tool Rust

7. プライベートリポジトリの設定(オプション)

デフォルトでは、Docker Hubにプッシュしたイメージは公開されます。プライベートリポジトリとして非公開にしたい場合は、リポジトリ設定で「Private」に切り替えます。無料アカウントではプライベートリポジトリは1つまで利用可能です。

まとめ

これでRustのCLIツールをDockerイメージとしてDocker Hubにプッシュし、共有できるようになりました。Docker Hubを活用することで、チームメンバーや外部ユーザーとの効率的な連携が可能になります。次は、Kubernetesを使ってCLIツールをデプロイする手順を解説します。

CLIツールをKubernetesでデプロイする

Dockerイメージとしてパッケージ化したRust CLIツールを、Kubernetesクラスタ上でデプロイする方法を解説します。Kubernetesはコンテナのオーケストレーションツールで、大規模なシステムや複数のコンテナ管理に適しています。

Kubernetesデプロイの概要

KubernetesでCLIツールを実行するには、主に以下のリソースが必要です:

  1. Deployment:Podを管理し、必要に応じて複数のレプリカを作成します。
  2. Job:一度きりのタスクやバッチ処理に適したリソースです。
  3. ConfigMap/Secret:設定や機密情報をCLIツールに渡すために使用します。

ここでは、CLIツールをKubernetesのJobとしてデプロイする手順を説明します。

1. Kubernetesクラスタの準備

ローカル環境でKubernetesクラスタを用意するには、MinikubeDocker Desktopを使用するのが簡単です。

Minikubeを起動する例:

minikube start

クラスタが正しく動作しているか確認します。

kubectl get nodes

2. YAMLファイルの作成

Rust CLIツールを実行するKubernetesのJobリソースを作成します。

cli-tool-job.yaml:

apiVersion: batch/v1
kind: Job
metadata:
  name: rust-cli-tool-job
spec:
  template:
    spec:
      containers:
      - name: rust-cli-tool
        image: <Dockerユーザー名>/my_cli_tool:latest
        args: ["Rust"]
      restartPolicy: Never
  backoffLimit: 4

説明

  • kind: Job:一度きりのタスクを実行するためのリソース。
  • image:Docker HubにプッシュしたRust CLIツールのイメージを指定。
  • args:CLIツールに渡す引数(例:Rust)。
  • restartPolicy: Never:コンテナが失敗しても再起動しない設定。
  • backoffLimit:再試行回数の上限を設定(例:4回まで)。

3. KubernetesにJobを適用

作成したYAMLファイルを使って、KubernetesクラスタにJobを適用します。

kubectl apply -f cli-tool-job.yaml

適用が成功すると以下のメッセージが表示されます。

job.batch/rust-cli-tool-job created

4. Jobの実行確認

Jobの状態を確認します。

kubectl get jobs

出力例:

NAME                 COMPLETIONS   DURATION   AGE
rust-cli-tool-job    1/1           5s         10s

5. Podのログ確認

CLIツールの出力結果を確認するために、Podのログを表示します。

kubectl get pods

Pod名を確認し、以下のコマンドでログを表示します。

kubectl logs <pod名>

出力例:

こんにちは、Rustさん!

6. Jobのクリーンアップ

不要になったJobやPodを削除するには、以下のコマンドを実行します。

kubectl delete job rust-cli-tool-job

7. 環境変数やConfigMapの利用(オプション)

CLIツールに環境変数を渡す場合は、YAMLファイルに以下を追加します。

env:
  - name: USER_NAME
    value: "Alice"

ConfigMapを使う場合:

envFrom:
  - configMapRef:
      name: cli-tool-config

まとめ

これでRustのCLIツールをKubernetesクラスタにデプロイし、Jobとして実行する手順を理解できました。Kubernetesを利用することで、タスクの自動化やスケーラビリティの向上が可能になります。次は、本記事のまとめを行います。

まとめ

本記事では、Rustで作成したCLIツールをDockerイメージとしてパッケージ化し、さらにKubernetesでデプロイする手順について詳しく解説しました。RustのCLIツールを効率的に配布・実行するために、以下のステップをカバーしました。

  1. RustでCLIツールを作成する方法:基本的なCLIツールの作成手順とコード例。
  2. Dockerイメージの概要と利点:Dockerを利用するメリットと基本概念。
  3. Dockerfileの作成方法:マルチステージビルドを用いた効率的なDockerfileの作成。
  4. ビルドとコンテナの作成手順:Dockerイメージのビルドとコンテナの実行方法。
  5. DockerコンテナでCLIツールを実行:引数や環境変数を渡して柔軟に実行する方法。
  6. Dockerイメージを最適化する方法:軽量化や効率化のテクニック。
  7. Docker Hubにイメージをプッシュ:イメージを共有・配布する手順。
  8. Kubernetesでデプロイ:Kubernetesクラスタ上でCLIツールをJobとしてデプロイする方法。

これらの手順をマスターすることで、RustのCLIツールをどの環境でも一貫してデプロイ・管理できるスキルが身につきます。DockerとKubernetesを活用することで、効率的な開発・運用ワークフローを実現し、スケーラブルなシステムを構築することが可能になります。

コメント

コメントする

目次
  1. RustでCLIツールを作成する方法
    1. プロジェクトのセットアップ
    2. CLIツールのコードを作成
    3. CLIツールをビルド
    4. CLIツールを実行
    5. 依存関係の追加(オプション)
  2. Dockerイメージの概要と利点
    1. Dockerイメージとは何か
    2. Dockerを利用する利点
    3. Dockerイメージの実行例
  3. Dockerfileの作成方法
    1. Dockerfileの基本構成
    2. Dockerfileの説明
    3. Dockerfileの配置
    4. Dockerfileの準備ができたら
  4. ビルドとコンテナの作成手順
    1. Dockerイメージのビルド
    2. ビルドしたDockerイメージの確認
    3. コンテナの作成と実行
    4. Dockerコンテナの確認
    5. コンテナの強制停止
    6. まとめ
  5. DockerコンテナでCLIツールを実行
    1. 基本的なコンテナ実行コマンド
    2. 引数を変更して実行
    3. 対話型モードで実行
    4. コンテナに環境変数を渡して実行
    5. ボリュームをマウントして実行
    6. まとめ
  6. Dockerイメージを最適化する方法
    1. 1. マルチステージビルドの活用
    2. 2. ベースイメージを軽量化
    3. 3. 不要なファイルの削除
    4. 4. Rustバイナリの静的リンク
    5. 5. Dockerイメージのレイヤーを最適化
    6. まとめ
  7. Docker Hubにイメージをプッシュする手順
    1. 1. Docker Hubのアカウントを作成
    2. 2. Dockerにログイン
    3. 3. Dockerイメージにタグを付ける
    4. 4. Docker Hubにイメージをプッシュ
    5. 5. Docker Hubでイメージを確認
    6. 6. イメージの共有とダウンロード
    7. 7. プライベートリポジトリの設定(オプション)
    8. まとめ
  8. CLIツールをKubernetesでデプロイする
    1. Kubernetesデプロイの概要
    2. 1. Kubernetesクラスタの準備
    3. 2. YAMLファイルの作成
    4. 3. KubernetesにJobを適用
    5. 4. Jobの実行確認
    6. 5. Podのログ確認
    7. 6. Jobのクリーンアップ
    8. 7. 環境変数やConfigMapの利用(オプション)
    9. まとめ
  9. まとめ