Rustでカスタムエラー型のテスト方法を徹底解説

Rustでプログラムを構築する際、エラー処理は避けて通れない重要な課題です。特に、プロジェクトが大規模になるほど、エラーの管理が複雑になります。Rustの強力な型システムは、エラーの明示的な扱いを可能にし、予測不可能な動作を防ぐ助けとなります。本記事では、カスタムエラー型の利点に注目し、それを利用したテスト方法を解説します。これにより、プロジェクトの信頼性と保守性を大幅に向上させることができます。

目次

Rustのエラー処理の基本


Rustは、安全で信頼性の高いプログラムを構築するために、エラー処理に関する強力な機能を提供しています。その中心となるのがResult型とOption型です。

Result型


Result型は、操作が成功した場合と失敗した場合の両方を表現するための列挙型です。以下の形で使用します:

enum Result<T, E> {
    Ok(T),
    Err(E),
}
  • Ok(T)は操作が成功したときの結果を含みます。
  • Err(E)は操作が失敗したときのエラーを含みます。

例として、ファイルを開く関数を見てみましょう:

use std::fs::File;

fn open_file(path: &str) -> Result<File, std::io::Error> {
    File::open(path)
}

Option型


Option型は値の存在または不在を表現するための型です。これは、ある値がSomeに包まれている場合と、値が存在しない場合のNoneを表現します。

enum Option<T> {
    Some(T),
    None,
}

例として、配列から特定の要素を取得する場合を見てみます:

fn find_element(vec: &Vec<i32>, target: i32) -> Option<usize> {
    vec.iter().position(|&x| x == target)
}

エラー処理の利点


Rustのエラー処理モデルは以下のような利点を提供します:

  1. 明示的なエラー管理ResultOptionを使うことで、エラーや値の有無をコンパイル時に明確にすることができます。
  2. 安全性の向上:エラーの取りこぼしや予期せぬ動作を防ぎます。
  3. 保守性の向上:型システムを利用することで、エラー処理コードが読みやすく、拡張しやすくなります。

これらの基本を押さえることで、エラー処理のためのより高度な設計(例えばカスタムエラー型)へと進む基盤が整います。

カスタムエラー型を作成する理由

Rustには標準で多くのエラー型が用意されていますが、プロジェクトの規模や要件によってはカスタムエラー型を作成する必要があります。以下では、カスタムエラー型を利用する理由を詳しく解説します。

プロジェクトに特化したエラーの表現


標準ライブラリのエラー型(例:std::io::Error)は汎用的で、多くのケースに対応できます。しかし、特定のアプリケーションやドメインに特化したエラーを扱うには、それでは不十分な場合があります。カスタムエラー型を作成することで、エラーの内容をより正確かつ詳細に表現することが可能になります。

例えば、Webアプリケーションでは次のようなカスタムエラー型を作ることで、問題の特定が容易になります:

enum WebAppError {
    NotFound(String),
    Unauthorized,
    InternalError(String),
}

複数のエラー型を一元管理


Rustのエラー処理では、異なるエラー型を一貫して扱う必要が生じることがあります。カスタムエラー型を利用することで、複数のエラー型を1つにまとめて管理しやすくなります。

use std::io;
use reqwest::Error as ReqwestError;

#[derive(Debug)]
enum MyAppError {
    IoError(io::Error),
    NetworkError(ReqwestError),
}

これにより、エラーの発生源を統一的に扱えるようになります。

エラーの詳細情報の追加


標準のエラー型では不足する場合がある、コンテキスト情報やメタデータを含めることができます。これにより、デバッグやロギングの際に役立つ情報を含むエラーを作成できます。

struct CustomError {
    code: u32,
    message: String,
}

let error = CustomError {
    code: 404,
    message: "Resource not found".to_string(),
};

エラーのフォーマットと出力のカスタマイズ


std::fmt::Displayトレイトを実装することで、カスタムエラー型の表示形式を自由に定義できます。これにより、ユーザーにエラー情報をわかりやすく提供できます。

use std::fmt;

impl fmt::Display for WebAppError {
    fn fmt(&self, f: &mut fmt::Formatter<'_>) -> fmt::Result {
        match self {
            WebAppError::NotFound(msg) => write!(f, "Not Found: {}", msg),
            WebAppError::Unauthorized => write!(f, "Unauthorized access"),
            WebAppError::InternalError(msg) => write!(f, "Internal Error: {}", msg),
        }
    }
}

より良い開発者体験


カスタムエラー型を使用することで、エラーの種類が明確化し、コードの読みやすさとメンテナンス性が向上します。また、IDEやコンパイラによる型チェックの恩恵を受けやすくなります。

まとめ


カスタムエラー型は、プロジェクトに特化したエラー管理を可能にし、開発者が問題を特定しやすくなるだけでなく、コード全体の保守性と拡張性を向上させます。次に進むセクションでは、具体的なカスタムエラー型の実装方法について見ていきます。

カスタムエラー型の実装例

カスタムエラー型はRustのプロジェクトにおいて、エラーを明確に表現し、効率的に管理するための重要なツールです。ここでは、具体的な実装方法を例を用いて説明します。

シンプルなカスタムエラー型の定義


以下は、Webアプリケーションを想定したカスタムエラー型の例です:

#[derive(Debug)]
enum WebAppError {
    NotFound(String),
    Unauthorized,
    InternalError(String),
}

この型では、次のようなエラーを表現できます:

  • NotFound: リソースが見つからない場合
  • Unauthorized: 認証が失敗した場合
  • InternalError: 内部エラーが発生した場合

Errorトレイトの実装


Rustのエコシステムでエラー型として扱うには、std::error::Errorトレイトを実装する必要があります。このトレイトを実装することで、エラーを一貫して処理できるようになります。

use std::fmt;
use std::error::Error;

impl fmt::Display for WebAppError {
    fn fmt(&self, f: &mut fmt::Formatter<'_>) -> fmt::Result {
        match self {
            WebAppError::NotFound(msg) => write!(f, "Not Found: {}", msg),
            WebAppError::Unauthorized => write!(f, "Unauthorized access"),
            WebAppError::InternalError(msg) => write!(f, "Internal Error: {}", msg),
        }
    }
}

impl Error for WebAppError {}

この例では、Displayトレイトを実装してエラーの出力形式を定義し、Errorトレイトを実装してエラー型としての特性を持たせています。

複数のエラー型を統合する例


複数のエラー型を一元的に管理するために、別のエラー型を統合する設計を示します:

#[derive(Debug)]
enum MyAppError {
    IoError(std::io::Error),
    ParseError(std::num::ParseIntError),
    AppError(WebAppError),
}

impl fmt::Display for MyAppError {
    fn fmt(&self, f: &mut fmt::Formatter<'_>) -> fmt::Result {
        match self {
            MyAppError::IoError(err) => write!(f, "I/O Error: {}", err),
            MyAppError::ParseError(err) => write!(f, "Parse Error: {}", err),
            MyAppError::AppError(err) => write!(f, "Application Error: {}", err),
        }
    }
}

impl Error for MyAppError {}

このようにすることで、異なるエラー型を一つの型で扱えるようになります。

エラー型を活用した関数


カスタムエラー型を活用してエラーを返す関数を作成します:

fn read_file(path: &str) -> Result<String, MyAppError> {
    use std::fs;
    use std::io;

    let content = fs::read_to_string(path).map_err(MyAppError::IoError)?;
    Ok(content)
}

fn parse_number(input: &str) -> Result<i32, MyAppError> {
    let number = input.trim().parse::<i32>().map_err(MyAppError::ParseError)?;
    Ok(number)
}

これにより、エラーが発生した場合でもMyAppError型として一元的に扱えます。

テスト可能な設計


後のセクションで紹介するテスト方法を活用することで、このカスタムエラー型を適切に検証し、コードの信頼性をさらに向上させることができます。

まとめ


カスタムエラー型の実装は、エラー処理を一貫性のあるものにし、プロジェクト全体の保守性とデバッグ効率を向上させます。この基本設計を基に、さらにテストの方法について次のセクションで解説していきます。

カスタムエラー型の単体テスト

カスタムエラー型を効果的に運用するには、適切な単体テストが欠かせません。ここでは、カスタムエラー型が期待通りに動作することを確認するためのテスト方法を解説します。

単体テストの基礎


Rustでは、標準の#[test]アトリビュートを使用して単体テストを記述します。以下のカスタムエラー型を例に、各種テスト方法を紹介します。

#[derive(Debug, PartialEq)]
enum WebAppError {
    NotFound(String),
    Unauthorized,
    InternalError(String),
}

エラー生成のテスト


カスタムエラー型が正しく生成されることを確認するテストを作成します。

#[cfg(test)]
mod tests {
    use super::*;

    #[test]
    fn test_not_found_error() {
        let error = WebAppError::NotFound("Resource not found".to_string());
        assert_eq!(error, WebAppError::NotFound("Resource not found".to_string()));
    }

    #[test]
    fn test_unauthorized_error() {
        let error = WebAppError::Unauthorized;
        assert_eq!(error, WebAppError::Unauthorized);
    }
}

これらのテストは、エラー型が正しく構築されるかを確認します。

エラー表示のテスト


エラー型のDisplay実装が正しく動作するかをテストします。

use std::fmt;

impl fmt::Display for WebAppError {
    fn fmt(&self, f: &mut fmt::Formatter<'_>) -> fmt::Result {
        match self {
            WebAppError::NotFound(msg) => write!(f, "Not Found: {}", msg),
            WebAppError::Unauthorized => write!(f, "Unauthorized access"),
            WebAppError::InternalError(msg) => write!(f, "Internal Error: {}", msg),
        }
    }
}

#[cfg(test)]
mod display_tests {
    use super::*;

    #[test]
    fn test_display_not_found() {
        let error = WebAppError::NotFound("Resource not found".to_string());
        assert_eq!(format!("{}", error), "Not Found: Resource not found");
    }

    #[test]
    fn test_display_unauthorized() {
        let error = WebAppError::Unauthorized;
        assert_eq!(format!("{}", error), "Unauthorized access");
    }
}

これにより、エラーの表示形式が期待通りであることを確認できます。

関数でのエラー利用のテスト


カスタムエラー型を返す関数が正しく動作するかをテストします。

fn fetch_resource(id: u32) -> Result<String, WebAppError> {
    if id == 0 {
        Err(WebAppError::NotFound("Resource ID 0 not found".to_string()))
    } else if id == 1 {
        Err(WebAppError::Unauthorized)
    } else {
        Ok("Resource content".to_string())
    }
}

#[cfg(test)]
mod function_tests {
    use super::*;

    #[test]
    fn test_fetch_not_found() {
        let result = fetch_resource(0);
        assert_eq!(result, Err(WebAppError::NotFound("Resource ID 0 not found".to_string())));
    }

    #[test]
    fn test_fetch_unauthorized() {
        let result = fetch_resource(1);
        assert_eq!(result, Err(WebAppError::Unauthorized));
    }

    #[test]
    fn test_fetch_success() {
        let result = fetch_resource(2);
        assert_eq!(result, Ok("Resource content".to_string()));
    }
}

このテストでは、エラー発生時と成功時の両方のケースを検証しています。

カバレッジの向上


単体テストでは、エラー型のすべての分岐を網羅することを目指します。特にmatch式の全パターンがテストされていることを確認してください。

まとめ


カスタムエラー型の単体テストは、型の正確性や実装の健全性を保証し、プロジェクトの信頼性を高めます。次のセクションでは、関数全体を対象としたより大規模なテスト方法について解説します。

エラー型を用いた関数のテスト方法

カスタムエラー型を活用する関数は、エラーが適切に発生し、正しく処理されるかを確認する必要があります。このセクションでは、エラー型を利用した関数のテスト方法を詳しく解説します。

エラー型を返す関数の基本設計


以下は、カスタムエラー型を返す関数の例です。この関数は、データベースからエントリを取得するシナリオを想定しています。

#[derive(Debug, PartialEq)]
enum DatabaseError {
    ConnectionFailed,
    RecordNotFound(String),
}

fn fetch_record(id: u32) -> Result<String, DatabaseError> {
    match id {
        0 => Err(DatabaseError::ConnectionFailed),
        1 => Err(DatabaseError::RecordNotFound("ID 1 not found".to_string())),
        _ => Ok("Record content".to_string()),
    }
}

この関数では、エラーの原因に応じて異なるカスタムエラー型を返します。

テストケースの設計


関数のテストでは、正常系と異常系の両方を網羅することが重要です。それぞれのケースを順に確認していきます。

正常系のテスト


関数が正しい値を返す場合の挙動をテストします。

#[cfg(test)]
mod tests {
    use super::*;

    #[test]
    fn test_fetch_record_success() {
        let result = fetch_record(2);
        assert_eq!(result, Ok("Record content".to_string()));
    }
}

異常系のテスト


異常な入力や状況で関数が正しいエラーを返すかを確認します。

#[test]
fn test_fetch_record_connection_failed() {
    let result = fetch_record(0);
    assert_eq!(result, Err(DatabaseError::ConnectionFailed));
}

#[test]
fn test_fetch_record_not_found() {
    let result = fetch_record(1);
    assert_eq!(
        result,
        Err(DatabaseError::RecordNotFound("ID 1 not found".to_string()))
    );
}

エラー型の特性を確認するテスト


エラー型の内容やフォーマットをさらに詳しく確認するテストを追加することで、信頼性を向上させます。

#[test]
fn test_error_message_format() {
    if let Err(error) = fetch_record(1) {
        match error {
            DatabaseError::RecordNotFound(msg) => assert_eq!(msg, "ID 1 not found"),
            _ => panic!("Unexpected error type"),
        }
    }
}

このテストでは、エラー型の特定のフィールドの値を検証しています。

マルチケーステスト


入力値に応じた複数のケースを効率的にテストするため、テストデータを配列で管理する方法を採用できます。

#[test]
fn test_fetch_record_various_cases() {
    let test_cases = vec![
        (0, Err(DatabaseError::ConnectionFailed)),
        (1, Err(DatabaseError::RecordNotFound("ID 1 not found".to_string()))),
        (2, Ok("Record content".to_string())),
    ];

    for (input, expected) in test_cases {
        assert_eq!(fetch_record(input), expected);
    }
}

この方法を使用すると、コードの重複を減らしつつ、多くのケースを網羅できます。

まとめ


エラー型を用いた関数のテストは、正常系と異常系を包括的に検証することで、コードの信頼性を確保します。次のセクションでは、Rustのテストフレームワークを活用してさらに効率的なテスト方法を解説します。

Rustのテストフレームワークの活用

Rustには、エラー型を含むコードの品質を保証するために強力なテストフレームワークが標準で備わっています。このセクションでは、Rustのテストフレームワークを活用して、カスタムエラー型をテストする方法を解説します。

標準テストフレームワークの概要


Rustの標準テストフレームワークは、次の機能を提供します:

  • ユニットテスト:モジュールや関数ごとのテスト。
  • インテグレーションテスト:プロジェクト全体の挙動を確認。
  • ドキュメントテスト:ドキュメント内のコード例を検証。

これらを組み合わせることで、エラー型に関連する全てのシナリオを網羅的にテストできます。

ユニットテストの実装


ユニットテストは、#[test]アトリビュートを付与するだけで簡単に作成できます。カスタムエラー型をテストする場合、エラー生成やエラー内容を確認するテストを設計します。

#[cfg(test)]
mod tests {
    use super::*;

    #[test]
    fn test_custom_error_generation() {
        let error = MyCustomError::InvalidInput("Invalid data".to_string());
        assert_eq!(
            error.to_string(),
            "Invalid Input: Invalid data"
        );
    }
}

テストケースのパラメータ化


複数のケースを効率的にテストするには、データ駆動型のテストを採用できます。

#[test]
fn test_multiple_error_cases() {
    let test_cases = vec![
        (0, Err(MyCustomError::NotFound("ID 0 not found".to_string()))),
        (1, Err(MyCustomError::Unauthorized)),
        (2, Ok("Valid data".to_string())),
    ];

    for (input, expected) in test_cases {
        assert_eq!(process_data(input), expected);
    }
}

この方法により、同じロジックを様々な入力でテストできます。

インテグレーションテスト


インテグレーションテストは、プロジェクト全体の動作を検証するために使用します。Rustでは、プロジェクトのtestsディレクトリにテストファイルを配置することで自動的にインテグレーションテストとして認識されます。

#[test]
fn test_end_to_end() {
    let result = app_process_request("/nonexistent");
    assert_eq!(
        result,
        Err(MyCustomError::NotFound("Resource not found".to_string()))
    );
}

この例では、アプリケーション全体の振る舞いを検証しています。

ドキュメントテスト


Rustでは、ドキュメントコメント内にテスト可能なコードを記述することができます。これにより、ドキュメントと実際の動作が同期することを保証します。

/// # Example
/// ```
/// let error = MyCustomError::InvalidInput("Invalid input".to_string());
/// assert_eq!(error.to_string(), "Invalid Input: Invalid input");
/// ```
#[derive(Debug)]
pub enum MyCustomError {
    InvalidInput(String),
    NotFound(String),
}

cargo testを実行すると、このコード例もテストされます。

エラー型テストのベストプラクティス

  1. 全てのケースを網羅:カスタムエラー型の全ての分岐がテストされることを確認します。
  2. 境界条件の確認:エッジケースや不正な入力も検証します。
  3. ドキュメントの同期:ドキュメントテストでコードの正確性を維持します。

まとめ


Rustのテストフレームワークを活用することで、カスタムエラー型を含むコードの信頼性を大幅に向上させることができます。次のセクションでは、テストの自動化やCI/CDとの統合における注意点を解説します。

自動化テストにおける注意点

カスタムエラー型を用いたテストを効率的かつ確実に実行するためには、自動化が欠かせません。Rustのテスト機能を活用し、継続的インテグレーション(CI/CD)と統合する際の注意点を解説します。

テスト自動化の重要性


自動化テストは、コードの変更が既存の動作に影響を与えていないかを迅速に検証するために必要です。これにより、手作業によるテストの手間を省き、開発速度と信頼性を向上させます。

テストの構成と管理


自動化に適したテスト構造を設計するため、以下のポイントに注意してください:

ユニットテストの分離


小さなテスト単位に分割し、エラー型や関数ごとにテストを作成します。これにより、個別の問題を素早く特定できます。

#[cfg(test)]
mod tests {
    use super::*;

    #[test]
    fn test_invalid_input_error() {
        let result = validate_input("");
        assert_eq!(result, Err(MyCustomError::InvalidInput("Input is empty".to_string())));
    }
}

インテグレーションテストの実装


testsディレクトリ内にインテグレーションテストを配置して、プロジェクト全体の動作を検証します。

#[test]
fn test_integration_with_custom_error() {
    let response = process_request("/invalid-path");
    assert_eq!(response, Err(MyCustomError::NotFound("Path not found".to_string())));
}

CI/CD環境でのテストの実行


CI/CDパイプラインで自動化テストを実行する際には、以下の点を考慮します:

依存環境のセットアップ


テストに必要な依存関係(データベース、外部APIなど)が適切にセットアップされていることを確認します。Rustプロジェクトでは、cargo testに追加のスクリプトを組み込むことが一般的です。

jobs:
  test:
    runs-on: ubuntu-latest
    steps:
      - uses: actions/checkout@v3
      - name: Install Rust
        uses: actions-rs/toolchain@v1
        with:
          toolchain: stable
      - name: Run Tests
        run: cargo test

テストの並列実行


cargo testはデフォルトで並列実行をサポートしていますが、競合状態を防ぐために共有リソースの使用を慎重に設計してください。

cargo test -- --test-threads=1

テスト結果のレポート化


テスト結果を記録し、失敗時の詳細情報を簡単に確認できるようにするツール(例:cargo test --format json)を利用します。

自動化における注意点

  1. エラー型の網羅性
    全てのエラー分岐がテストされているか確認します。未テストの分岐があると、不具合の原因となります。
  2. 外部依存のモック化
    テストの信頼性を確保するために、外部APIやデータベースはモック化することを推奨します。
  3. 長時間実行のテスト管理
    長時間かかるテストは、#[ignore]アトリビュートを使い、手動で実行する形にすることで効率化できます。
#[test]
#[ignore]
fn test_long_running() {
    // 長時間実行されるテストコード
}

テストのカバレッジ確認


Rustには、テストカバレッジを測定するツール(例:cargo-tarpaulin)があります。これを使ってエラー型を含むコード全体のテスト網羅率を可視化し、不足部分を補完しましょう。

cargo install cargo-tarpaulin
cargo tarpaulin --out Html

まとめ


Rustの自動化テストを効率化することで、カスタムエラー型を含むコードの品質を高められます。CI/CDと統合する際には、環境設定や依存関係の管理に注意し、テストの信頼性と再現性を確保してください。次のセクションでは、カスタムエラー型を応用したリカバリ設計について解説します。

応用:エラー型とリカバリの設計

エラーは単なる失敗ではなく、プログラムを正しく機能させるための重要な情報源です。ここでは、カスタムエラー型を活用して、エラーからのリカバリを設計する方法を解説します。

リカバリ可能なエラーの設計


カスタムエラー型を設計する際、エラーがリカバリ可能かどうかを明示することで、エラー処理の柔軟性を向上させます。次のようにエラー型にリカバリ情報を含めます:

#[derive(Debug, PartialEq)]
enum FileError {
    NotFound(String),
    PermissionDenied(String),
    Recoverable(String),
}

この設計では、Recoverable型を追加することで、リカバリ可能なエラーとそれ以外を区別できます。

リカバリ戦略の実装


エラーをキャッチした後にリカバリを試みる戦略を実装します。以下の例では、ファイルが見つからない場合に新しいファイルを作成します:

use std::fs;
use std::io;

fn read_or_create_file(path: &str) -> Result<String, FileError> {
    match fs::read_to_string(path) {
        Ok(content) => Ok(content),
        Err(err) if err.kind() == io::ErrorKind::NotFound => {
            fs::write(path, "Default content").map_err(|_| FileError::PermissionDenied(path.to_string()))?;
            Ok("Default content".to_string())
        }
        Err(_) => Err(FileError::Recoverable("Unexpected error occurred".to_string())),
    }
}

この例では、NotFoundエラーを検知すると新しいファイルを作成してリカバリを試みます。

非リカバリエラーの処理


非リカバリ可能なエラーについては、エラーを明示的にロギングし、適切な終了処理を行います。

fn handle_error(err: FileError) {
    match err {
        FileError::NotFound(_) => println!("Log: File not found"),
        FileError::PermissionDenied(_) => eprintln!("Error: Permission denied"),
        FileError::Recoverable(msg) => println!("Attempting recovery: {}", msg),
    }
}

エラーからの再試行


リトライ可能な操作に対して、一定回数再試行するロジックを追加できます。

fn fetch_with_retry(url: &str, retries: u32) -> Result<String, String> {
    let mut attempts = 0;

    while attempts < retries {
        attempts += 1;
        match reqwest::blocking::get(url) {
            Ok(response) => return Ok(response.text().unwrap_or_default()),
            Err(_) => {
                println!("Retrying... Attempt {}", attempts);
                continue;
            }
        }
    }

    Err("Failed to fetch after retries".to_string())
}

この例では、HTTPリクエストが失敗した場合に指定回数再試行します。

リカバリ可能なエラーのテスト


リカバリ戦略が正しく動作することを確認するためにテストを設計します。

#[cfg(test)]
mod tests {
    use super::*;

    #[test]
    fn test_recovery_file_creation() {
        let result = read_or_create_file("nonexistent.txt");
        assert_eq!(result, Ok("Default content".to_string()));
    }

    #[test]
    fn test_non_recoverable_error() {
        let result = read_or_create_file("/protected/file.txt");
        assert!(matches!(result, Err(FileError::PermissionDenied(_))));
    }
}

リカバリ戦略のベストプラクティス

  1. エラー分類の明確化
    エラー型を設計する際、リカバリ可能かどうかを明示します。
  2. ログと通知
    エラーの詳細を記録し、必要に応じてアラートを送信します。
  3. リトライとタイムアウト
    再試行回数を制限し、無限ループを防ぎます。

まとめ


カスタムエラー型とリカバリ戦略を組み合わせることで、アプリケーションの堅牢性と柔軟性を向上させることができます。この設計を活用すれば、エラーが発生しても予期せぬ動作を最小限に抑え、ユーザーにとってスムーズな体験を提供できます。次のセクションでは、この記事全体の内容を総括します。

まとめ

本記事では、Rustにおけるカスタムエラー型の重要性と、そのテストや応用方法について解説しました。エラー型の基本設計からリカバリ戦略の実装、テストフレームワークの活用まで、幅広い内容を網羅しました。カスタムエラー型を活用することで、プロジェクトの信頼性を向上させ、エラー処理を一貫性のあるものにできます。

正確なエラー分類とリカバリ設計を組み合わせることで、エラーを予防可能な問題として扱い、システム全体の安定性を大きく向上させられます。この知識を活用し、効率的かつ堅牢なRustプログラムを構築してください。

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