Rustは、その強力な型システムと安全性により、Webアプリケーション開発において注目を集めています。その中でも、エラーハンドリングは非常に重要な要素です。特にWebアプリケーションでは、ユーザー体験を損なうことなく問題を適切に処理し、システムの健全性を保つことが求められます。本記事では、Rust特有のエラーハンドリングの基本概念から、実際のWebアプリケーション設計での実践例までを幅広く取り上げ、より効率的でメンテナンスしやすいアプリケーションを構築するための方法を解説します。Rustを使用したWebアプリケーションの開発を考えているすべての開発者に役立つ内容を提供します。
Rustのエラーハンドリングの基本概念
Rustのエラーハンドリングは、コンパイル時の安全性を最大化し、実行時の不具合を最小限に抑える設計となっています。その中心にあるのが、Result型とOption型です。これらは、エラーや欠損値の管理を型システムに統合することで、安全性を保証します。
Result型
Result型は、操作の成功または失敗を表すために使用されます。以下のようにResult<T, E>
という形で定義され、成功時はOk(T)
、失敗時はErr(E)
を返します。
fn divide(a: f64, b: f64) -> Result<f64, String> {
if b == 0.0 {
Err(String::from("Division by zero"))
} else {
Ok(a / b)
}
}
上記の例では、分母が0の場合にエラーを返し、それ以外では計算結果を返すように設計されています。
Option型
Option型は、値が存在するかどうかを示すために使われます。これは、Option<T>
として定義され、値がある場合はSome(T)
、ない場合はNone
を返します。
fn get_user(id: i32) -> Option<&'static str> {
if id == 1 {
Some("Alice")
} else {
None
}
}
この例では、指定したIDが1の場合に名前を返し、それ以外ではNone
を返します。
パニックの回避
Rustでは、パニック(プログラムのクラッシュ)を避けるために、可能な限りResult型やOption型を使用します。パニックは開発中のデバッグに便利ですが、本番環境では慎重に扱うべきです。
unwrapとexpectの危険性
Result型やOption型の値を強制的に取得するunwrap
やexpect
は便利ですが、エラーやNone
の場合にパニックを引き起こします。そのため、これらの使用は開発段階に限定し、実運用コードでは避けるべきです。
let value = divide(10.0, 0.0).unwrap(); // 実行時エラーが発生
Rustのエラーハンドリングの基本概念を理解することで、安全かつ効率的なコードを書くための基盤を築けます。次のセクションでは、Result型とOption型の具体的な使い分けについて詳しく説明します。
Result型とOption型の使い分け
Rustでは、エラーや欠損値を安全に処理するために、Result型とOption型を適切に使い分けることが重要です。それぞれの役割や適用場面を理解することで、より効果的なエラーハンドリングが可能になります。
Result型の用途
Result型は、操作が成功または失敗する可能性がある場合に使用します。失敗時にはエラー情報を提供できるため、複雑な処理に適しています。
fn read_file(file_path: &str) -> Result<String, std::io::Error> {
std::fs::read_to_string(file_path)
}
上記の例では、ファイル読み込みに成功すればOk(String)
を返し、失敗すればErr(std::io::Error)
を返します。エラーの詳細を提供できる点がResult型の大きな強みです。
Result型の一般的な使用例
- ファイル操作(読み書きの成功・失敗)
- ネットワーク通信(接続やデータ送受信のエラー)
- 計算処理(分母が0の除算エラーなど)
Option型の用途
Option型は、値の有無を示す場合に使用します。エラー情報が不要で、「値があるかないか」だけを判断したい場面に適しています。
fn find_user(id: i32) -> Option<&'static str> {
match id {
1 => Some("Alice"),
2 => Some("Bob"),
_ => None,
}
}
この例では、指定したIDに対応するユーザー名があればSome
を返し、なければNone
を返します。Option型は処理がシンプルな場合に適しています。
Option型の一般的な使用例
- データベースからの値の取得(存在しない場合もあるレコード)
- 構造体フィールドの値がオプショナルである場合
- コレクションの要素検索結果
使い分けの指針
以下の基準をもとに、Result型とOption型を使い分けます。
- エラー情報が必要か?
- 必要ならResult型を使用。
- 不要ならOption型を使用。
- エラーの詳細が重要か?
- 重要ならResult型で具体的なエラーを返す。
- 単に値が存在するかどうかが重要ならOption型を選択。
例: ファイルからユーザーを取得する場合
Result型とOption型の両方を組み合わせることで、柔軟な設計が可能です。
fn get_user_from_file(file_path: &str) -> Result<Option<String>, std::io::Error> {
let content = std::fs::read_to_string(file_path)?;
Ok(content.lines().next().map(String::from))
}
この例では、ファイル読み込みに失敗した場合はErr
を返し、成功した場合でもデータがなければOk(None)
を返します。
まとめ
Result型とOption型の使い分けを適切に行うことで、コードの可読性と安全性を向上させることができます。次のセクションでは、エラーを分類し、ログを記録する方法について説明します。
エラーの分類とログの重要性
エラーハンドリングを効率的に行うためには、エラーを適切に分類し、重要な情報をログに記録することが重要です。これにより、エラーの原因を迅速に特定し、再発防止やシステム改善につなげることができます。
エラーの分類
エラーは、発生する場面や影響に基づいて分類することで、適切な対応策を取る基盤を構築できます。Rustでの一般的なエラー分類を以下に示します。
1. リカバリー可能なエラー
リカバリー可能なエラーは、適切な処理を行えば継続可能なエラーです。例えば、ネットワーク接続の一時的な失敗や、ユーザー入力のバリデーションエラーなどが該当します。
fn fetch_data(url: &str) -> Result<String, reqwest::Error> {
reqwest::blocking::get(url)?.text()
}
このような場合、再試行のロジックやユーザーへの入力指示を行うことで対応可能です。
2. 致命的なエラー
致命的なエラーは、処理を継続できない状況を示します。例として、構成ファイルが見つからない場合や、重要なリソースへのアクセスが拒否される場合があります。
fn read_config(path: &str) -> Result<Config, ConfigError> {
if !Path::new(path).exists() {
return Err(ConfigError::MissingFile);
}
// 省略
}
このようなエラーは早期に検出し、適切なエラーメッセージを記録した上でプログラムを終了するのが一般的です。
3. バグや想定外のエラー
予期せぬエラーは、システム設計のミスや未処理の例外に起因します。Rustではパニックを利用してこれらのエラーを検出し、ログに記録することが推奨されます。
fn unexpected_behavior() {
panic!("Unexpected behavior encountered");
}
ログの重要性
エラーが発生した際にログを適切に記録することで、問題の再現性を高め、トラブルシューティングが容易になります。Rustには、log
クレートやtracing
クレートなどの強力なログツールが提供されています。
ログの基本的な使用例
use log::{error, info, warn};
fn process_data(data: &str) {
if data.is_empty() {
warn!("Data is empty, proceeding with default values.");
} else {
info!("Processing data: {}", data);
}
}
ログレベル
ログは重要度に応じて以下のレベルで分類されます。
- Error: 修復不可能なエラー
- Warn: 注意を要する問題
- Info: 通常の操作情報
- Debug: デバッグ情報
- Trace: 詳細なトレース情報
ログとエラー分類の連携
リカバリー可能なエラーではwarn
やinfo
レベルのログを記録し、致命的なエラーではerror
レベルで詳細を記録することが重要です。これにより、システム状態の把握と迅速な対応が可能になります。
まとめ
エラーを適切に分類し、ログを活用することで、システムの可用性と保守性を向上させることができます。次のセクションでは、アプリケーション全体でのエラー処理戦略について解説します。
アプリケーションレイヤーでのエラー処理戦略
Webアプリケーションでは、エラーハンドリングをアプリケーション全体の設計に組み込むことが重要です。適切なエラー処理戦略を構築することで、コードの可読性と保守性を向上させ、ユーザー体験を改善できます。
レイヤーごとのエラー処理
アプリケーションは通常、複数のレイヤー(例: データアクセス、ビジネスロジック、コントローラー)で構成されています。各レイヤーでエラーを適切に処理することで、エラーハンドリングを一貫性のあるものにできます。
1. データアクセスレイヤー
データベースとのやり取りや外部APIの呼び出しを行うレイヤーでは、エラーを正確に分類し、上位レイヤーに伝搬します。
fn fetch_user_from_db(user_id: i32) -> Result<User, DatabaseError> {
// データベースクエリ
let user = query_user(user_id).map_err(DatabaseError::QueryFailed)?;
Ok(user)
}
この例では、エラーをデータベース特有のDatabaseError
型に変換して返します。
2. ビジネスロジックレイヤー
ビジネスロジックレイヤーでは、ドメイン特有のエラー型を使用して、処理の失敗を明確に表現します。
fn validate_user(user: &User) -> Result<(), ApplicationError> {
if user.age < 18 {
return Err(ApplicationError::Underage);
}
Ok(())
}
このように、エラーをアプリケーションの文脈で表現することで、より分かりやすい設計になります。
3. コントローラーレイヤー
コントローラーでは、最終的なレスポンスを生成します。ここでは、エラーをユーザーフレンドリーな形で処理することが求められます。
fn get_user_handler(user_id: i32) -> Result<HttpResponse, HttpError> {
let user = fetch_user_from_db(user_id).map_err(HttpError::from)?;
validate_user(&user).map_err(HttpError::from)?;
Ok(HttpResponse::Ok().json(user))
}
この例では、内部で発生したエラーをHTTPレスポンスに適切に変換しています。
エラー伝搬の仕組み
Rustでは、?
演算子を用いることで、エラーを簡潔に上位に伝搬できます。これにより、エラー処理コードを冗長にせずに記述できます。
fn process_request(user_id: i32) -> Result<(), ApplicationError> {
let user = fetch_user_from_db(user_id)?;
validate_user(&user)?;
Ok(())
}
このコードでは、エラーが発生すると直ちに関数から抜け出し、呼び出し元にエラーを伝搬します。
エラー処理の集中化
アプリケーション全体で一貫したエラーハンドリングを行うために、集中化されたエラー処理メカニズムを導入します。たとえば、Webフレームワークのミドルウェアを使用してエラーを処理する方法があります。
use actix_web::{error, middleware, App};
fn main() {
App::new()
.wrap(middleware::Logger::default())
.app_data(web::JsonConfig::default().error_handler(|err, _| {
error::InternalError::from_response(err, HttpResponse::BadRequest().finish()).into()
}));
}
この例では、Actix Webのミドルウェアを利用して、共通のエラー処理ロジックを設定しています。
まとめ
アプリケーションレイヤーでのエラー処理を戦略的に設計することで、エラー発生時の影響を最小限に抑え、システムの信頼性を向上させることができます。次のセクションでは、カスタムエラー型の実装方法について解説します。
カスタムエラー型の実装方法
Rustのエラーハンドリングでは、カスタムエラー型を利用することで、エラーの内容を明確に表現し、コードの可読性と保守性を向上させることができます。ここでは、カスタムエラー型の実装方法を具体例とともに説明します。
カスタムエラー型の基本
Rustでは、enum
を用いてカスタムエラー型を定義するのが一般的です。これにより、異なる種類のエラーを1つの型にまとめて扱うことができます。
#[derive(Debug)]
enum ApplicationError {
NotFound,
InvalidInput(String),
DatabaseError(String),
}
この例では、アプリケーションで発生する可能性のあるエラーを3種類定義しています。それぞれのエラーには、状況に応じた追加情報を含めることもできます。
標準トレイトの実装
カスタムエラー型を使いやすくするために、std::error::Error
とstd::fmt::Display
トレイトを実装することが推奨されます。これにより、エラー型を標準のエラーハンドリングメカニズムと統合できます。
use std::fmt;
impl fmt::Display for ApplicationError {
fn fmt(&self, f: &mut fmt::Formatter<'_>) -> fmt::Result {
match self {
ApplicationError::NotFound => write!(f, "Resource not found"),
ApplicationError::InvalidInput(msg) => write!(f, "Invalid input: {}", msg),
ApplicationError::DatabaseError(msg) => write!(f, "Database error: {}", msg),
}
}
}
impl std::error::Error for ApplicationError {}
これにより、カスタムエラー型を?
演算子や他のエラーハンドリング方法とシームレスに使用できます。
カスタムエラー型の活用例
以下は、カスタムエラー型を使用してデータベース操作を処理する例です。
fn get_user(id: i32) -> Result<User, ApplicationError> {
if id <= 0 {
return Err(ApplicationError::InvalidInput("ID must be positive".to_string()));
}
// データベースクエリ(擬似例)
match query_user(id) {
Some(user) => Ok(user),
None => Err(ApplicationError::NotFound),
}
}
このコードでは、無効な入力やデータが見つからなかった場合に、適切なカスタムエラーを返します。
カスタムエラー型の階層化
アプリケーションが複雑になるにつれて、カスタムエラー型をモジュールごとに定義し、それらを統合する設計が役立ちます。
#[derive(Debug)]
enum DatabaseError {
ConnectionFailed,
QueryFailed(String),
}
#[derive(Debug)]
enum ApplicationError {
InvalidInput(String),
Database(DatabaseError),
}
この設計により、エラーのスコープを限定しながら、一貫性のあるエラーハンドリングが可能になります。
外部ライブラリの活用
thiserror
クレートを利用すると、カスタムエラー型の実装を簡素化できます。このクレートは、標準的なトレイトの実装を自動生成するマクロを提供します。
use thiserror::Error;
#[derive(Debug, Error)]
enum ApplicationError {
#[error("Resource not found")]
NotFound,
#[error("Invalid input: {0}")]
InvalidInput(String),
#[error("Database error: {0}")]
DatabaseError(String),
}
この方法を使うことで、エラー型の定義がさらに簡潔になります。
まとめ
カスタムエラー型を活用することで、エラーを明確に表現し、アプリケーション全体のエラーハンドリングを統一的に行うことができます。次のセクションでは、サードパーティライブラリでのエラーハンドリングの方法について解説します。
サードパーティライブラリのエラーハンドリング
Rustのエコシステムには、多くのサードパーティライブラリが存在し、それらを活用することでアプリケーション開発を効率化できます。これらのライブラリは、独自のエラー型を提供することが多く、それらを適切に扱うことがエラーハンドリングの重要なポイントです。
主要なライブラリのエラーハンドリング例
1. Reqwest(HTTPリクエストライブラリ)
reqwest
は、HTTPリクエストを処理するための人気のあるライブラリです。このライブラリでは、独自のreqwest::Error
型を利用してエラーを表現します。
use reqwest::blocking::Client;
fn fetch_data(url: &str) -> Result<String, reqwest::Error> {
let client = Client::new();
let response = client.get(url).send()?;
let body = response.text()?;
Ok(body)
}
この例では、?
演算子を用いることで、reqwest::Error
型のエラーを簡潔に処理しています。
2. Serde(シリアライズ/デシリアライズライブラリ)
serde
は、データのシリアライズやデシリアライズに使用されます。このライブラリでは、serde_json::Error
型をエラーとして返します。
use serde::{Deserialize, Serialize};
use serde_json;
#[derive(Serialize, Deserialize, Debug)]
struct User {
id: i32,
name: String,
}
fn parse_json(data: &str) -> Result<User, serde_json::Error> {
let user: User = serde_json::from_str(data)?;
Ok(user)
}
この例では、JSONデータの解析中に発生するエラーをserde_json::Error
として扱っています。
3. Tokio(非同期ランタイム)
非同期処理で使用されるtokio
では、非同期関数内でのエラーハンドリングが重要になります。エラーは通常、Result
型でラップされます。
use tokio::fs::File;
use tokio::io::{self, AsyncReadExt};
async fn read_file_async(file_path: &str) -> Result<String, io::Error> {
let mut file = File::open(file_path).await?;
let mut contents = String::new();
file.read_to_string(&mut contents).await?;
Ok(contents)
}
この例では、tokio::io::Error
を用いて非同期処理中のエラーを処理しています。
サードパーティライブラリエラーの統合
複数のライブラリを使用する場合、異なるエラー型を統一する必要が出てきます。このとき、thiserror
やanyhow
などのクレートを利用すると便利です。
thiserrorによるエラー統一
use thiserror::Error;
#[derive(Debug, Error)]
enum ApplicationError {
#[error("HTTP error: {0}")]
HttpError(#[from] reqwest::Error),
#[error("Serialization error: {0}")]
SerializationError(#[from] serde_json::Error),
}
これにより、reqwest::Error
やserde_json::Error
を簡単にApplicationError
型に変換できます。
anyhowによる汎用エラーハンドリング
anyhow
は、任意のエラー型を統一的に扱うためのクレートです。
use anyhow::Result;
fn fetch_and_parse(url: &str) -> Result<User> {
let body = reqwest::blocking::get(url)?.text()?;
let user: User = serde_json::from_str(&body)?;
Ok(user)
}
この例では、エラー型を意識せずに一括して処理できるため、コードが簡潔になります。
サードパーティライブラリのエラーハンドリングのポイント
- 各ライブラリのエラー型を把握し、それに応じた処理を行う。
- エラー型が複数ある場合は、カスタムエラー型で統一する。
thiserror
やanyhow
を利用してエラーハンドリングを効率化する。
まとめ
サードパーティライブラリのエラーハンドリングを適切に行うことで、外部ツールを安全かつ効率的に活用できます。次のセクションでは、非同期アプリケーションにおけるエラーハンドリングについて解説します。
非同期アプリケーションでのエラーハンドリング
非同期アプリケーションでは、並行処理中に発生するエラーの特性に応じたハンドリングが求められます。Rustでは、非同期処理を支援するasync
/await
構文やtokio
などの非同期ランタイムを利用し、効率的なエラーハンドリングが可能です。
非同期環境特有の課題
非同期処理では以下のような課題が発生するため、それぞれに対する対策が必要です。
1. 複数タスクでのエラー管理
複数のタスクが並行して実行される場合、どのタスクでエラーが発生したのかを把握する必要があります。
2. エラーの伝搬と集中管理
非同期タスク内で発生したエラーを、親タスクや呼び出し元で効率的に集約・管理する必要があります。
非同期エラーハンドリングの実践例
エラー伝搬の基本
非同期関数でも、通常の同期関数と同じようにResult
型を使用してエラーを伝搬します。
use tokio::fs::File;
use tokio::io::{self, AsyncReadExt};
async fn read_file_async(file_path: &str) -> Result<String, io::Error> {
let mut file = File::open(file_path).await?;
let mut contents = String::new();
file.read_to_string(&mut contents).await?;
Ok(contents)
}
この例では、ファイルの読み込み中に発生したエラーを?
演算子で呼び出し元に伝搬しています。
複数タスクのエラー処理
複数の非同期タスクを並列に実行する場合、それぞれのタスクで発生するエラーを個別に処理するか、まとめて処理する方法があります。
use tokio;
async fn task_one() -> Result<(), &'static str> {
Err("Task one failed")
}
async fn task_two() -> Result<(), &'static str> {
Ok(())
}
#[tokio::main]
async fn main() {
let result = tokio::try_join!(task_one(), task_two());
match result {
Ok(_) => println!("All tasks succeeded"),
Err(e) => eprintln!("One of the tasks failed: {}", e),
}
}
この例では、tokio::try_join!
を利用して複数のタスクを実行し、エラーを集中管理しています。
タスクエラーの分類と再試行
一時的なエラーが原因でタスクが失敗した場合、再試行を行うことで問題を解決できる場合があります。
use tokio::time::{sleep, Duration};
async fn fetch_with_retry() -> Result<String, &'static str> {
for _ in 0..3 {
match async_operation().await {
Ok(result) => return Ok(result),
Err(_) => sleep(Duration::from_secs(1)).await,
}
}
Err("Operation failed after 3 retries")
}
async fn async_operation() -> Result<String, &'static str> {
Err("Network error")
}
このコードは、非同期操作が失敗した場合に再試行を行うロジックを示しています。
集中エラーハンドリング
非同期アプリケーション全体で一貫したエラーハンドリングを行うため、集中管理の仕組みを導入することが重要です。たとえば、非同期Webアプリケーションフレームワーク(例: Actix Web)では、エラーハンドリング用のミドルウェアを利用できます。
use actix_web::{middleware, App, HttpServer};
#[actix_web::main]
async fn main() -> std::io::Result<()> {
HttpServer::new(|| {
App::new()
.wrap(middleware::Logger::default())
.wrap(middleware::ErrorHandlers::default())
})
.bind("127.0.0.1:8080")?
.run()
.await
}
このコードでは、Actix Webのミドルウェアを利用してエラーハンドリングロジックを集中化しています。
まとめ
非同期環境では、複数タスクのエラーを効率的に管理し、必要に応じて再試行や集中管理を行うことが重要です。次のセクションでは、エラーハンドリングのベストプラクティスについて説明します。
エラーハンドリングのベストプラクティス
効率的で安全なエラーハンドリングは、アプリケーションの信頼性と保守性を大幅に向上させます。以下では、Rustのエラーハンドリングを最適化するためのベストプラクティスを解説します。
1. エラー型を明確に設計する
エラー型を適切に設計することで、コードの可読性とデバッグ効率が向上します。enum
を活用して複数のエラーを一つの型に統合することを推奨します。
#[derive(Debug)]
enum ApplicationError {
Io(std::io::Error),
Parse(std::num::ParseIntError),
}
impl From<std::io::Error> for ApplicationError {
fn from(err: std::io::Error) -> ApplicationError {
ApplicationError::Io(err)
}
}
impl From<std::num::ParseIntError> for ApplicationError {
fn from(err: std::num::ParseIntError) -> ApplicationError {
ApplicationError::Parse(err)
}
}
この例では、異なるエラー型をApplicationError
に統一しています。
2. エラーを迅速に伝搬する
エラーが発生した場合は、早期に処理を中断してエラーを呼び出し元に伝搬します。?
演算子を使用することで、エラー伝搬を簡潔に記述できます。
fn read_number_from_file(file_path: &str) -> Result<i32, ApplicationError> {
let content = std::fs::read_to_string(file_path)?;
let number: i32 = content.trim().parse()?;
Ok(number)
}
この例では、read_to_string
とparse
のエラーを簡潔に処理しています。
3. ログを適切に活用する
エラーが発生した場合、原因特定を容易にするために、詳細なログを記録します。log
クレートを使用することで、エラーログの出力を簡単に実現できます。
use log::{error, info};
fn handle_error_example() {
if let Err(e) = do_some_work() {
error!("An error occurred: {}", e);
} else {
info!("Work completed successfully");
}
}
ログを活用することで、エラー原因の特定が容易になります。
4. ユーザーに分かりやすいエラーメッセージを提供する
エラーをユーザーに提示する際は、技術的な詳細ではなく、分かりやすく適切なメッセージを提示します。
use std::fmt;
#[derive(Debug)]
enum ApplicationError {
NotFound,
PermissionDenied,
}
impl fmt::Display for ApplicationError {
fn fmt(&self, f: &mut fmt::Formatter<'_>) -> fmt::Result {
match self {
ApplicationError::NotFound => write!(f, "The requested resource was not found."),
ApplicationError::PermissionDenied => write!(f, "You do not have permission to access this resource."),
}
}
}
この設計により、ユーザーに適切なメッセージを伝えられます。
5. 再試行可能なエラーは再試行を設計に組み込む
一時的なエラーの場合は再試行の仕組みを組み込みます。例えば、ネットワークの接続エラーに対応する場合です。
fn retry_example() -> Result<(), ApplicationError> {
for _ in 0..3 {
match network_request() {
Ok(_) => return Ok(()),
Err(e) => log::warn!("Retrying due to error: {}", e),
}
}
Err(ApplicationError::NotFound)
}
この例では、再試行を3回まで試みます。
6. エラーをテストする
エラーハンドリングが期待通りに機能するか確認するために、ユニットテストや統合テストを実施します。
#[test]
fn test_error_handling() {
let result = read_number_from_file("nonexistent_file.txt");
assert!(result.is_err());
}
エラーハンドリングのテストは、アプリケーションの品質を保証する重要なステップです。
まとめ
- エラー型を適切に設計し、一貫した処理を行う。
?
演算子やログを活用して効率的にエラーを管理。- ユーザー向けのエラーメッセージと再試行ロジックを設計に組み込む。
次のセクションでは、エラーハンドリング全体を振り返り、まとめを行います。
まとめ
本記事では、RustでのWebアプリケーションのエラーハンドリングにおける重要なポイントを解説しました。Rustの型安全なResult
型とOption
型を活用し、エラーを適切に分類、ログを記録しながら、ユーザーにとって分かりやすいエラーメッセージを提供する方法を紹介しました。また、非同期環境やサードパーティライブラリを利用する場合のエラーハンドリングの工夫も取り上げました。
エラーハンドリングは、アプリケーションの信頼性とメンテナンス性を左右する重要な要素です。適切な設計と実装を通じて、安全で効率的なWebアプリケーションを構築する第一歩を踏み出しましょう。Rustのエラーハンドリングを理解し、実践することで、より強固なシステムを作り上げることができます。
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