パソコンを起動しようとしたら「PINが無効」「顔認証が使えない」「Microsoftアカウントにサインインできない」などのメッセージが表示されると、すぐ作業に入りたいのに何もできずに困ってしまいますよね。今回は、そのようなサインインエラーが起きた際に実施すべき具体的な手順や回復ドライブの作成方法、さらにバッファオーバーランエラーへの対処までをまとめてご紹介します。
Windowsサインインエラーとスタックベースのバッファオーバーランとは
Windows 10やWindows 11などのOSでサインインエラーが発生すると、「Something happened and your pin isn’t available.」や「デバイスにサインインできません」などのメッセージが表示され、顔認証やPINが利用できなくなるケースがあります。これが起こると、Microsoftアカウントのパスワードをリセットしても問題が解決しなかったり、再起動を繰り返しても同じ画面で止まったりするため、かなり厄介です。
加えて「スタックベースのバッファオーバーラン」というエラーは、システムファイルの破損やセキュリティ上の問題などが関係している場合があります。Windowsが正常に起動しない状況下では、まずはアカウントの状態をチェックし、それでも改善しない場合は回復ドライブを使った修復や再インストールを検討する必要があります。
エラーが発生しやすい代表的な症状
- Windows起動時に「PINが利用できません」と表示される
- Windows Helloの顔認証もエラー表示で使えない
- アプリストアへ誘導されるが、何も起こらない
- 「SHIFTキーを押しながら再起動」してもトラブルシューティング画面が出ない
- アカウントを修正したりパスワードを変えてもログインできない
これらの症状は、Windows自体が正常なサインイン処理を実行できない状態に陥っていると考えられます。
エラーの原因と考えられるシナリオ
主な原因としては、以下のようなシナリオが想定されます。
- Microsoftアカウントのロックや異常
何らかの理由でアカウントがロックされている、または誤ったパスワードを何度も入力したことで本人確認が必要になっている場合があります。 - システムファイルの破損
Windows Hello関連のシステムファイルやPINを管理するNgcフォルダーが破損し、ログインプロセスが正常に進まない状態です。 - Windows Hello設定の不具合
ドライバーや更新プログラムとの相性問題、デバイス固有の顔認証ドライバー不具合などでWindows Helloが動作しなくなるケースがあります。 - OS自体の深刻なトラブル(バッファオーバーランエラー含む)
スタックベースのバッファオーバーランエラーなど、Windowsのプログラムを深い部分で阻害しているエラーが起きており、通常のログイン手順が実行されない場合です。
アカウントの状態を確認する:最初の一歩
まずは「自分のMicrosoftアカウントが問題なく動作しているか」をチェックすることが最優先です。もしアカウントにロックがかかっていたり、パスワードリセットが完了していないと、他の対策をしてもログインできません。
Microsoft公式サポートの「Sign-in helper」を使う
Microsoft公式サイトには「I can’t sign in to my Microsoft account」(英語の場合)というサポートページがあり、そこからアカウントロックやパスワードに関する対処法を案内しています。また、日本語環境でも同等の情報にアクセスできるので、アカウントのロック状況や多要素認証設定の問題を確認してみましょう。
別デバイスでのログインテスト
他のパソコンやスマートフォン、またはタブレットからブラウザでhttps://account.microsoft.comにアクセスして、同じMicrosoftアカウントでログイン可能かどうかを試してみましょう。
- ログインに成功すれば、アカウント自体は問題ない可能性が高いです。
- もしログインができない場合は、アカウントの復旧またはパスワードリセットが必要なので、サポートガイドに従って手続きを進めてください。
ログイン不可時に役立つ回復ドライブの作成と使い方
「SHIFTキーを押しながら再起動」を行ってもトラブルシューティングメニューに入れない場合、次に頼りになるのが「USB回復ドライブ」や「リカバリメディア」です。これを使うことでWindowsが起動しなくても修復オプションを実行できたり、初期化が可能になります。
USB回復ドライブを作る手順
※作成には、正常に動作するWindows PCと4GB以上(推奨8GB以上)のUSBメモリが必要です。Surfaceなど機種によっては専用の回復イメージが用意されている場合もあります。
- 検索欄から「回復ドライブの作成」と入力
Windows 10/11のスタートメニュー検索で「回復ドライブの作成」を探し、ツールを起動します。 - 「回復ドライブの作成」を起動し、USBメモリを接続
ウィザードに従い、回復ドライブに含める項目(「システムファイルを回復ドライブにバックアップします」など)をチェックします。 - USBメモリを選択し作成開始
作成には時間がかかることがあります。完了したらUSBメモリを安全に取り外します。
回復ドライブからのブート方法
- トラブルが発生しているPCの電源を切る。
- 回復ドライブを挿して、UEFIまたはBIOS画面でブート順序を変更する(機種によっては起動時にF2やDel、F12などを押す)。
- 回復ドライブから起動すると、Windowsの回復環境(WinRE)が立ち上がり、「システムの修復」「以前のビルドに戻す」「PCを初期状態に戻す」などのオプションを選択できるようになります。
システムファイルを修復する:SFCとDISMの活用
サインインエラーを根本から直すには、Windowsのシステムファイルに不整合がないかを確認・修復することも重要です。ここで代表的なコマンドであるSFC(システムファイルチェッカー)とDISMを紹介します。
コマンドプロンプトで実行する例
回復ドライブから起動した後、コマンドプロンプトを開いて以下のように実行してください。
sfc /scannow
上記のコマンドでシステムファイルを検査し、破損しているファイルを自動修復します。さらに、修復に不十分な場合は下記のDISMコマンドも有効です。
DISM /Online /Cleanup-Image /RestoreHealth
ただし、回復環境下では「/Online」オプションが使えない場合もあるため、その場合はマウントしたWindowsイメージを指定する必要があります。例えば、回復環境でドライブ文字が異なる状況下で実行する場合は、以下のようにパラメータを変更してください。
DISM /Image:D:\ /Cleanup-Image /RestoreHealth
※D:は実際のWindowsがインストールされているボリュームのドライブ文字に置き換えてください。
修復完了後の動作確認
- コマンドを最後まで実行し、エラーがなければPCを再起動する
- 再起動後に正常にサインイン画面が表示されるかを確認する
- PINや顔認証が利用できない場合は、再設定または一旦オフにして再構成してみる
PINや顔認証設定をリセットする:Ngcフォルダーの扱い
もしWindowsにログインできる状態に戻った場合は、問題が再発しないようにPINや顔認証の設定を見直しましょう。Windows Helloのデータは「Ngcフォルダー」という場所に保管されているため、これが破損しているとエラーが継続する可能性があります。
Ngcフォルダーのリネーム・削除手順
- Windowsに管理者アカウントでログインする
- エクスプローラーで以下のディレクトリにアクセス
C:\Windows\ServiceProfiles\LocalService\AppData\Local\Microsoft\Ngc
- 「Ngc」フォルダーを右クリックして、フォルダー名を「Ngc.old」などに変更
- Windowsを再起動し、再度PINや顔認証を設定してみる
注意点
- 「Ngc」フォルダーはシステムフォルダーのため、アクセス権限を変更しないと操作できない場合があります。操作が許可されない場合は、フォルダーのプロパティから「所有権の変更」などを行う必要があります。
- PINや顔認証の再設定を行う際は、Microsoftアカウントのパスワードが正しく入力できる状態であることを確認してください。
Windowsの初期化やクリーンインストール:最終手段
ここまでの方法で改善が見られない場合、Windowsの初期化(リセット)やクリーンインストールを実行することを検討しましょう。初期化をすると、大切なデータやアプリ設定が消去される可能性があるので、あらかじめバックアップを取っておく必要があります。
USB回復ドライブを使った初期化手順
- 回復ドライブを使ってWindows回復環境を起動する
- 「PCを初期状態に戻す」や「このPCをリセットする」を選ぶ
- 「すべて削除」または「ファイルを残す」等のオプションを選択(不具合が深刻な場合は「すべて削除」を推奨)
- ウィザードを進め、最終的に初期化を実行する
Surfaceやメーカー独自の復旧イメージ
Surfaceシリーズなど、メーカーが独自の復旧イメージを配布している場合があります。例えば、Microsoft公式サイトからSurface用の回復イメージをダウンロードしてきて、それを使ってリカバリする方法も有効です。機種ごとの手順が若干異なるので、公式ドキュメントを参考にしてください。
バッファオーバーランエラーへの対処とセキュリティ面の注意
「スタックベースのバッファオーバーラン」は、本来プログラミングにおいて配列などの領域を超えて書き込むエラーを指し、セキュリティホールになるリスクも高いエラーです。Windowsが表示する場合は、システムやドライバー関連ファイルの破損の可能性があるため、以下のポイントも考慮してください。
デバイスドライバーの更新や削除
- セーフモードや回復環境を利用して不安定なドライバーを削除または更新する
- メーカーの公式サイトから最新のドライバーをダウンロードして上書きする
ウイルス対策とスキャン
- バッファオーバーランを狙ったマルウェア感染の可能性を疑う場合、アンチウイルスソフトでの完全スキャンを実施する
- ネットワークに接続できる場合はMicrosoft Defenderのオフラインスキャンなども試してみる
Windowsサインインエラーの回避策:今後の予防ポイント
サインインエラーが起きると、復旧にかなりの時間と手間がかかります。事前にトラブルを防ぐための対策や、万一に備えたバックアッププランを押さえておきましょう。
定期的なパスワード変更と多要素認証の活用
Microsoftアカウントのパスワードを定期的に変更し、スマートフォンの認証アプリやSMS認証などの多要素認証を導入することで、アカウントロックのリスクを低減できます。
バックアップの重要性
大切なデータはOneDriveや外付けHDD、クラウドストレージなどにバックアップしておくことが必須です。Windowsのシステムイメージ作成機能も定期的に利用すると、障害が発生したときの復旧がスムーズになります。
バックアップチェックリスト例
項目 | 例 | 推奨頻度 |
---|---|---|
個人ファイル | ドキュメント、デスクトップ、写真など | 毎日~毎週 |
システムイメージ | Windowsとインストール済みアプリ | 毎月~更新ごと |
USB回復ドライブ | 回復環境やブート情報 | 年1回または大幅なOSアップデート時 |
まとめ:最善策はアカウントとシステムの両面で対処すること
Windowsサインイン時に「顔認証やPINが使えない」「アプリストアへ誘導されるが何も起こらない」などの問題が起きた場合、まずはMicrosoftアカウントの状態をチェックしましょう。アカウント自体がロックされていないか、パスワードリセットが正常に行われたかを確認するだけで解決するケースもあります。
もしSHIFTキーを押しながらの再起動でもトラブルシューティング画面が出てこないような深刻な状態なら、USB回復ドライブやリカバリメディアを利用してシステム修復・再インストールを行うことが効果的です。SFCやDISMコマンドでシステムファイルを修復し、それでも改善しなければ初期化やクリーンインストールも視野に入れてください。復旧後はNgcフォルダーのリセットやWindows Helloの再設定で、問題の再発を防止します。
いざというときにすぐ対処できるよう、回復ドライブやバックアップの準備を怠らないことがトラブル回避の鍵です。スタックベースのバッファオーバーランエラーが疑われるなら、ドライバーの更新やウイルススキャンをしっかり行い、システムの健全性を保ってください。
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