Visual Studio 2022は高機能で便利なのですが、Unreal Engineと組み合わせる際にコンパイラのバージョンが合わずに困ってしまうことがあります。私も以前、最新のVisual Studioを導入したところ、想定外のビルドエラーに何度も悩まされた経験があります。この記事では、そんな問題を解消するコンパイラダウングレードの方法を、丁寧に解説していきます。
そもそもVisual Studio 2022のコンパイラバージョンが合わない理由
コンパイラバージョンが合わないと、Unreal Engineのビルド時に互換性のエラーが出たり、特定のヘッダーやライブラリに対応していない可能性があります。新しいVisual Studioを使うメリットはもちろんありますが、プロジェクトに最適化されていないバージョンを使用することで、ビルドが通らなくなったり実行時エラーが頻発したりすることがあるのです。特にUnreal Engine側が特定のMSVCバージョンを要求しているケースでは、指定されたコンパイラ(例:14.38.33130)を使わないとエディタのビルドやパッケージングがスムーズに進まないこともあります。
Unreal Engine開発で遭遇しがちなトラブル
私が経験したのは、Unreal Engine 4系を使用していたときにビルドエラーが多発し、調べてみたらVisual Studio 2022のコンパイラが想定よりも新しく、ライブラリのバージョンが合わなくなっていたことが原因でした。具体的には、ビルドログに見慣れない警告やエラーが増え、どうやっても解消できずに手詰まりになりました。そこで、指定されているコンパイラバージョンに合わせてダウングレードしたら、あっさりエラーが減り開発がスムーズに進むようになったのです。
バージョンの食い違いによる症状
コンパイラとUnreal Engine側のバージョンが食い違うと、下記のような問題に直面しがちです。
1. 特定のヘッダー参照でエラー
2. ランタイム中に不明なクラッシュ
3. ビルド時間が異常に長引く
4. プロジェクトのパッケージサイズが予期せず増大
こうしたトラブルは地味にストレスがたまりますので、早めにコンパイラの整合性を取ることがとても重要です。

私の場合、ビルドが通ったとしてもランダムにクラッシュする症状が発生していたため、作業効率が大幅に落ちて大変でした。コンパイラのバージョンを合わせることの大切さを痛感しましたね。
Visual Studio 2022のコンパイラバージョンを確認する方法
まずは、現在インストールされているMSVC(Microsoft C++コンパイラ)のバージョンを確認しましょう。Visual Studio Installerやコマンドプロンプトから簡単にバージョン情報を取得できます。
Visual Studio Installerでの確認
1. WindowsのスタートメニューなどからVisual Studio Installerを起動する
2. インストールされているVisual Studio 2022の横にある[変更(Modify)]をクリック
3. 設定されているコンポーネント一覧を見て、MSVCのバージョン番号を探す
Developer Command Promptでの確認
1. Visual Studio 2022用のDeveloper Command Promptを開く
2. 以下のコマンドを入力
cl
3. 最初に表示されるバージョン情報をチェック
例えば、14.34や14.36など、数字が大きいほど新しいバージョンになります。Unreal Engineから指定がある場合は、該当する数字(例:14.38.33130)になっているかをしっかり確認しましょう。
Visual Studio Installerを使ったダウングレード手順
ここでは一番オーソドックスな方法として、Visual Studio Installerを使ったダウングレード手順を解説します。多くの方がこれでスムーズに古いコンパイラを導入できると思います。
Visual Studio Installerの起動とコンポーネントの選択
1. Windowsのスタートメニューから「Visual Studio Installer」を起動
2. 表示された一覧から、使用中のVisual Studio 2022の[変更(Modify)]をクリック
3. ワークロードやコンポーネントが一覧表示されるので、下の方までスクロール
4. MSVC v143 – VS 2022 C++ xxxxx (v14.38-17.x)のように、14.38を含むコンポーネントを探してチェックを入れる
コンポーネント名の例
MSVC v143 – VS 2022 C++ Spectre-mitigated libs (v14.38-17.8)
MSVC v143 – VS 2022 C++ x64/x86 build tools (v14.38)
コンポーネントによってはSpectre-mitigated版と通常版などがあります。基本的に必要な方だけをインストールすれば大丈夫ですが、何を選ぶべきか分からない場合はとりあえず両方インストールしておくのも一つの手です。
インストール後の設定確認
コンポーネントのインストールが終わったら、Visual Studio自体を再起動してください。そして、プロジェクトのプロパティを開き、Platform Toolsetなどを設定して目的のコンパイラバージョンを使用するようにします。
Platform Toolsetの指定方法
1. Visual Studioでプロジェクトを開く
2. ソリューションエクスプローラーからプロジェクトを右クリックし、[プロパティ]を選択
3. [構成プロパティ] > [全般] をクリック
4. Platform Toolsetを[Visual Studio 2022 (v143)]などに設定し、選択可能なら該当バージョンを選ぶ
5. [OK]で確定し、プロジェクトをビルド
これでMSVC v14.38のコンパイラを使用してビルドできるはずです。
Visual Studioのダウンロードアーカイブを活用する方法
上記の方法で古いコンパイラバージョンが見つからない場合、Visual Studio公式のダウンロードアーカイブから特定バージョンを取得し、再インストールまたは別フォルダへインストールする方法もあります。
ダウンロードアーカイブでの探し方
1. Microsoft公式サイトのVisual Studioダウンロードページへアクセス
2. 下部やアーカイブリンクから過去のVisual Studioバージョン一覧へ移動
3. 対応するバージョン(例えばVisual Studio 2022の特定ビルド)をダウンロード
別フォルダへのセットアップ
Visual Studioは同時に複数のバージョンをインストールすることが可能です。既に最新のVisual Studio 2022をお使いの場合、別の場所に古いバージョンをインストールして並行して使うといった方法もあります。
インストール時のポイント
– インストーラでインストールフォルダを変更する
– インストール後、ショートカットを分けて使う
– 開発環境を切り替えたいときは、対象のVisual Studioを明示的に起動
このようにしておけば、古いコンパイラが必要なプロジェクトと最新コンパイラが必要なプロジェクトを同時に進めることができるので便利です。



私の知人は複数のゲームプロジェクトを抱えていて、一方は最新のC++機能が必須、もう一方はUnreal Engine 4の特定バージョンにしばらく固定という状況でした。そこで2つのVisual Studioをインストールして使い分けていましたよ。
ダウングレード時によくあるトラブル対処法
コンパイラバージョンを下げる際、想定外のエラーや不具合が出るケースもあります。そのトラブルシュートの一部を紹介します。
ビルド時にコンパイラが見つからない
たまに、古いツールセットをインストールしたはずなのにVisual Studio上で選択肢に表示されないことがあります。この場合は以下を試してください。
Visual Studio再起動
Visual Studio Installerから追加コンポーネントをインストールした後、Visual Studioを再起動していないと認識されないことがあります。まずは単純にVisual Studioを終了して再度開きましょう。
プロパティ設定ファイルの削除
プロジェクト内の.vcxprojファイルや中間ファイルが古い設定のままであるケースがあります。一度中間ファイルと.suoファイル(ユーザーごとの設定ファイル)を削除し、再度ソリューションを開いてみてください。
Unreal Engineのプロジェクトセッティングに誤差がある
Unreal Engineの場合、エディタの[エンジン設定]や[プロジェクト設定]でビルドツールの指定を確認してみましょう。複数のバージョンのVisual Studioを同時にインストールしていると、エンジン側が誤って新しいコンパイラを呼び出してしまうことがあります。



私がはまった原因は、Unreal EngineのDefaultEngine.iniで指定しているToolchainが古い設定ファイルと合致していなかったことでした。一度設定ファイルをリセットしたらあっさり認識されました。
ダウングレード後のメリットと注意点
コンパイラを古いバージョンにすることで、Unreal Engineと相性が良くなりビルドエラーやクラッシュが減るメリットがあります。ただし、その分だけ新しいC++標準や最適化機能を活かせない場合もあるので気を付けましょう。
ダウングレード後の検証
実際にコンパイラを切り替えたら、必ずプロジェクトをクリーンビルドし、ビルドが正常に通るかどうか確認してください。さらに実行テストを行い、以前あったエラーやクラッシュが減っているか確かめることが重要です。
テーブルで見るMSVCバージョンと主な特徴
Visual Studio 2022はリリースのたびにMSVCバージョンが更新されています。主なバージョンと特徴を簡単な表にまとめました。
バージョン番号 | 特徴 |
---|---|
14.38.33130 | Unreal Engine 4.xや一部のUE5.0系でも使用実績があり、安定性に定評がある |
14.35~14.37 | 機能アップデートが増え、C++20の一部をサポート。UEとの互換情報はまちまち |
14.39~(最新のもの) | 最新のC++準拠、最適化が強化。UEとの整合性が取れない場合がある |
自分のプロジェクトに合ったバージョンを選ぶコツ
プロジェクトが依存しているライブラリやミドルウェアが特定のバージョンを要求しているかどうかが最重要ポイントです。Unreal Engineの場合はドキュメントや公式フォーラムを参考にして、対応しているコンパイラを確認しましょう。
チーム開発時の注意
チームメンバー全員が同じコンパイラバージョンを使うのが望ましいです。バラバラのバージョンを使うと、エラーが特定の環境のみで発生するなど、デバッグがとてもややこしくなります。



チームでやり取りするとき、誰かが最新のVisual Studioを自動更新してしまってコンパイラが変わり、一時的にビルドが通らなくなった経験があります。みんなでバージョンをそろえるのは大事ですね。
まとめ
Visual Studio 2022のコンパイラを14.38.33130などの古いバージョンにダウングレードする方法は、主に以下の流れになります。
まとめの流れ
1. まずはVisual Studio Installerでインストールされているコンポーネントを確認
2. 必要な古いMSVCバージョン(14.38など)を追加インストール
3. プロジェクト設定やUnreal Engineの設定で古いコンパイラを選択
4. ビルドして動作確認、トラブルがあれば中間ファイルの削除や設定見直し
これで大抵の互換性問題は解消できるはずです。どうしても古いバージョンが見つからない場合は、公式アーカイブからの再インストールや別インストールを検討してみてください。私自身、何度かこの方法で昔のプロジェクトを維持しながら新しい技術にも触れるという形で開発を乗り切ってきました。皆さんもぜひ、プロジェクトに合ったコンパイラバージョンを選んで快適に開発を進めてください。



最後に、何より大切なのは環境を整えること。最新が常に最良とは限りません。プロジェクト規模やチーム構成を考慮して、適切なコンパイラバージョンを選んでみてくださいね。
よくある質問(FAQ)
Q. Unreal Engine 5.1でも同じように古いコンパイラが必要ですか?
A. 一部のUE5.1プロジェクトでも古いバージョンが安定するケースがあります。ただしUE5.1以降はより新しいコンパイラのサポートが充実しているため、まずはデフォルトで試して不都合があればダウングレードする形でも良いでしょう。
Q. Visual Studio Communityエディションでも同じ手順で行えますか?
A. はい、Communityエディションでも同様にVisual Studio Installerからコンパイラのバージョンを管理できます。ProfessionalやEnterpriseと手順はほぼ変わりません。
Q. 古いコンパイラを入れておくとPCが重くなりますか?
A. 多少ストレージを消費するだけで、大きなパフォーマンス低下はありません。必要に応じて、不要になったバージョンはアンインストールすると良いでしょう。
Q. 別のPCに同じプロジェクトを移す際の注意点は?
A. チームメンバーや別PCに移動する場合は、移動先PCにも同じコンパイラバージョンがインストールされているか確認しましょう。Visual Studioのバージョンがずれていると再度エラーが発生する可能性があります。
最後のヒントと今後の展望
コンパイラバージョンは一見地味な問題に見えますが、Unreal Engineのような大型フレームワークと連携する場合は非常に重要です。バージョンを合わせることで生産性が大きく向上し、開発者にとって精神的にも楽になります。
今後を見据えたバージョン管理
Visual Studioがアップデートされるたびに、MSVCのバージョンも徐々に上がっていきます。将来的にはUnreal Engineも新しいコンパイラを前提とした最適化が進むはずです。しかし、過去プロジェクトを長期間メンテナンスしなければならない場合などは、古いコンパイラの使用が必須となります。
こうした状況に対応するためにも、Visual Studio Installerで複数バージョンのコンパイラを導入し、必要に応じて切り替えるワークフローを確立しておくことが望ましいでしょう。
チームでのルール決め
1. プロジェクトごとに推奨ツールセットを明記する
2. チームメンバーに同一バージョンのインストールを周知する
3. ツールチェーンのバージョンアップ計画を立て、定期的に更新する
こうしたルールを設けることで、メンバー間の環境差が原因となるトラブルをぐっと減らすことができます。



私の会社ではプロジェクト開始時に使用するコンパイラバージョンを明確化し、1年に1度だけアップグレードの機会を設けるというルールを決めています。日々のビルドトラブルが減ってかなり快適になりました。
記事のまとめと次のステップ
Visual Studio 2022のコンパイラバージョンを14.38.33130などにダウングレードする方法は、環境整備の観点でも非常に重要なポイントです。Unreal Engineやその他の大型フレームワークを使う際に、バージョンの不一致は大きな混乱を招きます。本記事で紹介した方法を参考に、ぜひ安定した開発環境を手に入れてください。
次に試したいこと
1. Visual Studio Installerでバージョンの違うコンパイラを複数インストールしてみる
2. UE4系とUE5系でビルドがどう変わるか試してみる
3. 公式ドキュメントやフォーラムでコンパイラ対応状況を定期的にチェックする
最終的には、最新バージョンを常に使う方が得策なケースもあります。しかし、現状のプロジェクトでどうしても古いバージョンが必要という場合に、この記事が少しでもお役に立てれば幸いです。私自身、複数プロジェクトを抱える中でダウングレードの恩恵をひしひしと感じているので、きっと皆さんの開発もスムーズになるはずです。



ぜひダウングレードの手順をマスターして、Unreal Engineや他の大規模プロジェクトで快適な開発ライフを送ってください。コンパイラが変わるだけでこんなに違うのかと実感できると思います。
参考リンク
Microsoft公式ドキュメント
– Visual Studioインストーラーの使い方
– MSVCツールセットのバージョン一覧とダウンロードアーカイブ
Unreal Engine公式フォーラム
– バージョンごとの対応表(エンジンバージョンとMSVCの相性)
– 具体的なビルドエラー事例と解決策の共有
項目 | 内容 |
---|---|
開発環境 | Windows 10/11 |
必要なツール | Visual Studio 2022、Unreal Engine |
ターゲットのコンパイラバージョン | 14.38.33130 |
よく見るエラー例 | ビルド時のヘッダー不一致、ランタイムクラッシュなど |
解決の鍵 | Visual Studio Installerでのコンポーネント管理 |
サポートコミュニティ
もし何度試してもうまくいかない場合は、Microsoft Q&AやUnreal Engineコミュニティで質問するのもおすすめです。バージョン指定で悩んでいる開発者は多いので、同じような事例がすぐ見つかるはずです。



私も過去にフォーラムで「このバージョンのコンパイラがリストに出てこないのですが…」と問いかけたら、公式からすぐに対処法のヒントをもらえて助かったことがあります。
おわりに
Visual Studio 2022から古いバージョンのコンパイラにダウングレードするのは、一見難しそうですが、Visual Studio Installerの利用やアーカイブのダウンロードによって比較的簡単に実現できます。Unreal Engineをはじめとするゲームエンジンや大規模なC++プロジェクトでは、コンパイラバージョンが合っているかどうかが開発効率に大きく影響を与えます。ぜひ今回の記事を参考にして、快適な開発環境を整えてください。
コメント