Teams会議で質問が出たものの、誰も答えないまま話題が変わってしまうことは珍しくありません。Microsoftは、この「未回答の質問」をFacilitatorが自動検出し、Web検索で回答するかを参加者に提案する新機能をMicrosoft 365ロードマップに追加しました。
重要なのは、Facilitatorが勝手にWeb検索を実行するわけではない点です。会議チャットに検索の提案が投稿され、参加者が「Yes」を選んだ場合に限り、情報を取得して会議内で共有します。一般提供は2026年9月の予定です。
Teams Facilitatorが未回答質問を検出する新機能とは
Microsoft 365ロードマップID「558341」として登録された「Microsoft Teams: Facilitator detects and answers questions」は、Teams会議中に出た質問が回答されなかった場合、Facilitatorがその状況を検出してWeb検索を提案する機能です。
たとえば、参加者が「LLMとは何ですか」と質問したものの、そのまま議論が進んだ場合、Facilitatorが会議チャットに回答を探すかどうかを尋ねます。参加者が「Yes」を選択すると、FacilitatorがWeb上の情報を取得し、会議参加者に共有します。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| ロードマップID | 558341 |
| 対象製品 | Microsoft Teams、Microsoft Copilot(Microsoft 365) |
| 主な動作 | 未回答の質問を検出し、Web検索を提案 |
| 検索開始条件 | 参加者が「Yes」を選択 |
| 対象クラウド | Worldwide(Standard Multi-Tenant) |
| 対象プラットフォーム | Android、Desktop、iOS、Mac、Web |
| リリースリング | Targeted Release、General Availability |
| 一般提供予定 | 2026年9月 |
| 開発状況 | In development |
2026年7月28日時点のロードマップでは、一般提供予定が2026年9月とされています。ただし、Microsoft 365ロードマップの日付は見込みであり、延期や提供範囲の変更が行われる可能性があります。
会議中にWeb回答が共有されるまでの流れ
新機能の動作は、次のような流れになると考えられます。
- 参加者が会議中に質問する
- ほかの参加者から回答が出ない
- Facilitatorが未回答の質問として検出する
- 会議チャットにWeb検索の提案を投稿する
- 参加者が「Yes」を選ぶ
- Facilitatorが情報を取得して共有する
この仕組みのポイントは、質問の検出は自動でも、Web検索の実行には人の確認が入ることです。
単に発言が途切れただけなのか、後で担当者が答える予定なのか、それとも本当に外部情報が必要なのかは、AIだけでは正確に判断できない場合があります。「Yes」という確認を挟むことで、不要な検索や会議チャットへの過剰な投稿を抑えられます。
従来のCopilotやFacilitatorとの違い
現在のFacilitatorにも、会議中のAIメモ作成、議題の追跡、決定事項や未解決事項の整理、会議チャット上の質問への回答といった機能があります。今回追加されるのは、参加者から明示的に指示されるのを待たず、未回答の質問をFacilitator側から見つけて支援を申し出る機能です。(マイクロソフトサポート)
| 利用方法 | 誰が処理を始めるか | 特徴 |
|---|---|---|
| Teams会議でCopilotに質問する | 参加者 | ユーザーが質問を入力する必要がある |
| Facilitatorをメンションする | 参加者 | 会議チャットから明示的に依頼する |
| 未回答質問の自動検出 | Facilitator | AIが未回答状態に気づいて検索を提案する |
| ブラウザで手動検索する | 参加者 | Teamsを離れて検索し、結果を持ち帰る必要がある |
従来は、参加者の誰かが疑問を覚えていて、Copilotやブラウザで検索しなければなりませんでした。新機能では、質問そのものが忘れられることを防ぎやすくなります。
活用しやすい会議の具体例
部門横断会議で専門用語を確認する
開発部門、営業部門、法務部門などが参加する会議では、一部の参加者にしか分からない専門用語が出やすくなります。
たとえば、次のような質問です。
- 「RAGとは何ですか」
- 「ゼロトラストとVPNは何が違いますか」
- 「NAT64はどのような仕組みですか」
- 「SLAとSLOの違いは何ですか」
その場で説明できる人がいなくても、FacilitatorがWeb検索を提案すれば、会議を大きく中断せずに共通認識を作れます。
最新の公開情報を確認する
製品のサポート期限、公開されている規格、一般的な市場用語など、社内資料だけでは判断できない質問にも向いています。
ただし、Web検索の結果はあくまで参考情報です。価格、提供地域、法令、製品仕様、サポート期限など、変更されやすい情報は公式サイトで再確認する必要があります。
質問の持ち帰りを減らす
従来は、会議終了後に次のような作業が発生していました。
- 未回答質問を議事録から拾い直す
- 調査担当者を決める
- ブラウザで検索する
- メールやTeamsチャットで結果を共有する
- 次回会議で説明する
低リスクな公開情報であれば、会議中に回答候補を共有することで、こうした持ち帰り作業を減らせます。
Web検索を使う質問と人に確認する質問の判断基準
未回答だからといって、すべての質問をWeb検索で解決すべきではありません。検索を実行するかは、質問の性質で判断します。
| 質問の種類 | 推奨判断 | 理由 |
|---|---|---|
| 一般的な用語の意味 | Web検索を使いやすい | 公開情報で確認できる |
| 公開されている製品概要 | Web検索を使いやすい | 公式情報を探しやすい |
| 公開規格や技術方式 | Web検索を使いやすい | 一次情報と照合できる |
| 自社の運用ルール | 社内担当者に確認 | Web上には正解がない |
| 契約内容や顧客との合意 | 担当者に確認 | 個別条件で結論が変わる |
| 法的な判断 | 法務担当者に確認 | 一般情報だけでは判断できない |
| 人事評価や個人情報 | Web検索しない | 機密性とプライバシーの問題がある |
| 未発表製品や社内計画 | Web検索しない | 検索語に機密情報が含まれる恐れがある |
運用ルールとしては、次のように定めると分かりやすくなります。
FacilitatorのWeb回答は参考情報として扱い、社内決定、契約、法務、セキュリティ、個人情報に関する判断には使用しない。
利用前に確認したいライセンスと設定
Microsoft 365 Copilotライセンス
現行のFacilitatorでは、会議にFacilitatorを追加したり、会議中に有効化したりするユーザーにMicrosoft 365 Copilotライセンスが必要です。
ライセンスのない組織内参加者は、他のユーザーが行ったプロンプトやFacilitatorの回答、会議ノートを閲覧できますが、自分からFacilitatorに指示することはできません。(Microsoft Learn)
今回の未回答質問機能についても、一般提供時の正式なライセンス条件を確認する必要があります。
Teams管理センターでFacilitatorを許可する
FacilitatorはTeamsアプリとして管理されます。管理者はTeams管理センターで、組織全体または特定のユーザーグループに対して利用を許可できます。
確認場所は次のとおりです。
- Teams管理センターにサインインする
- 「Teamsアプリ」を開く
- 「アプリを管理」を選択する
- 「Facilitator」を検索する
- 状態が許可になっているか確認する
- 必要に応じてアプリ中心の管理で対象ユーザーを指定する
Facilitatorは既定で許可されますが、組織ですべてのアプリをブロックしている場合は利用できません。(Microsoft Learn)
TeamsのLoopエクスペリエンス
FacilitatorのAI生成ノートにはLoopが使われます。そのため、TeamsでLoopエクスペリエンスが無効になっているテナントでは、Facilitatorを正常に利用できません。
AI生成ノートは、Facilitatorを開始したユーザーのOneDrive内にある「Meetings」フォルダーへ.loopファイルとして保存されます。(Microsoft Learn)
Web検索ポリシーも事前に確認する
Microsoft 365 CopilotのWeb検索は、Cloud Policy service for Microsoft 365にある「Allow web search in Copilot」ポリシーで管理できます。
管理者は、ユーザーまたはグループ単位で次のような設定を選択できます。
- Microsoft 365 CopilotとCopilot Chatの両方でWeb検索を許可する
- 両方でWeb検索を無効にする
- CopilotのWorkモードでは無効にし、WebモードとCopilot Chatでは許可する
管理者がWeb検索を無効にした場合、ユーザー側から有効に戻すことはできません。(Microsoft Learn)
未回答質問機能とこのポリシーがどのように連動するかは、ロードマップ項目だけでは詳しく説明されていません。ただし、新機能はWeb検索を使用するため、一般提供前にポリシーの状態を確認し、Targeted Release環境で実際の動作を検証するのが安全です。
Web検索時にどの情報がBingへ送られるのか
Microsoft 365 Copilotは、ユーザーの質問をそのままBingへ送信するのではなく、Web検索に必要な語句を抽出して検索クエリを生成します。
Microsoftの説明では、通常、次の情報はBing検索サービスへ送信されるクエリに含まれません。
- ユーザーのプロンプト全文
- Microsoft 365ファイルの全文
- ユーザー名
- ドメイン名
- テナントIDなどのMicrosoft Entra ID識別情報
一方で、短い質問ではプロンプトと検索語がほぼ同じになる可能性があります。また、文書を明示的に参照した質問では、文書内の情報を基に検索語が生成される場合があります。(Microsoft Learn)
そのため、会議中の質問に顧客名、未発表の製品名、障害内容、契約条件などが含まれている場合は、安易に「Yes」を押さない運用が必要です。
Microsoftは、生成されたWeb検索クエリについて、Bingの改善、広告プロファイルの作成、ユーザー追跡、生成AI基盤モデルの学習には使用しないと説明しています。ただし、生成されたWeb検索クエリにはMicrosoft 365のデータ保護補遺、HIPAA、EU Data Boundaryが適用されない点にも注意が必要です。規制対象業務では、情報管理部門や法務部門による事前確認が欠かせません。(Microsoft Learn)
一般提供後の操作イメージ
現行のFacilitatorは、会議を作成するときに有効化できます。
- Teamsの「カレンダー」を開く
- 新しい会議を作成する
- 「オプション」を開く
- 「Copilotとその他のAI」を選択する
- 「CopilotとFacilitatorを許可」を設定する
- Facilitatorをオンにする
- 設定を適用する
会議中に有効化する場合は、会議コントロールの「その他の操作」から「Facilitatorをオンにする」を選択します。現行仕様では、会議中にFacilitatorをオンまたはオフにできるのは、Web版またはデスクトップ版Teamsを利用している開催者と発表者です。モバイル参加者は、生成されるノートを閲覧できます。(マイクロソフトサポート)
未回答質問の新機能が提供された後は、Facilitatorから検索提案が投稿された際に、次の点を確認してから「Yes」を選びます。
- 検出された質問が実際の質問と一致しているか
- 社内情報ではなく、公開情報で答えられるか
- 会議の進行を止めて確認する価値があるか
- 回答を意思決定の根拠にしてよい内容か
- 顧客名や未公開情報が検索語に含まれないか
現行Facilitatorの制限にも注意する
2026年8月時点の現行Facilitatorには、いくつかの制限があります。
外部会議では利用を前提にしない
現行の管理者向け文書では、外部チャットと外部会議はFacilitatorのサポート対象外とされています。社外の取引先や別テナントのユーザーが参加する会議では、事前に利用可否を確認してください。(Microsoft Learn)
会議の言語を正しく設定する
Facilitatorをオンにすると、会議で話す言語の選択を求められます。選択した言語と実際の発話言語が一致しない場合、AI生成ノートが作成されないことがあります。
現行のAI生成ノートは、基本的に1つの言語で進行する会議を想定しています。複数言語を混在させると、選択した言語で話された部分だけが記録される可能性があります。未回答質問の検出精度にも影響する可能性があるため、会議開始時の言語設定は重要です。(Microsoft Learn)
AIの回答を確定情報として扱わない
Microsoft自身も、生成AIの回答が常に完全に正しいとは限らず、ユーザーが内容を確認する必要があると説明しています。(Microsoft Learn)
特に次の情報は、回答に表示された内容だけで判断しないでください。
- 法令や行政制度
- 製品のサポート期限
- ライセンス条件
- 金額や料金
- セキュリティ仕様
- 医療や健康に関する情報
- 契約や知的財産に関する情報
重要な情報は、公式ドキュメントや一次情報を開いて確認します。
管理者が一般提供前に準備すること
2026年9月の一般提供に備える場合は、次の順番で準備するとスムーズです。
設定状況を棚卸しする
まず、次の項目を確認します。
- Microsoft 365 Copilotライセンスの割り当て状況
- Teams管理センターでのFacilitator許可状態
- アプリ中心の管理による対象ユーザー
- TeamsのLoopエクスペリエンス
- CopilotのWeb検索ポリシー
- OneDriveへの会議ノート保存
- 会議チャットとAI生成ノートの保持ポリシー
Facilitatorとの会議内インタラクションはTeamsチャット、AI生成ノートはOneDriveを対象に保持ポリシーを設計できます。Microsoft Purviewを利用している組織は、両方を別々に確認する必要があります。(Microsoft Learn)
Targeted Releaseで少人数から検証する
ロードマップにはTargeted Releaseが記載されています。対象ユーザーを限定し、次のような会議で試すと問題を発見しやすくなります。
- IT部門内の定例会議
- Copilot推進チームの会議
- 公開情報だけを扱う勉強会
- 機密情報を扱わない製品説明会
- 議題と質問が明確な短時間会議
検証時は、検索提案の頻度、誤検出、回答の正確性、会議進行への影響、参加者が「Yes」を押す判断基準を記録します。
利用ルールを先に決める
機能を展開する前に、最低限のルールを共有しておきます。
- 公開情報で答えられる質問に限定する
- 顧客名や未公開情報を含む質問では検索しない
- AI回答は参考情報として扱う
- 重要事項は一次情報で確認する
- 社内ルールは担当部署に確認する
- 不要な検索提案には反応しない
- 誤った回答を会議の決定事項として記録しない
技術設定だけでなく、「どの場面でYesを押すか」を決めることが、実務導入では重要です。
Teams会議の疑問をその場で解消しやすくなる
未回答質問を検出するFacilitatorの新機能は、会議中に生じた小さな疑問を放置せず、その場で解決するための仕組みです。
Facilitatorが自動的に質問を見つけますが、Web検索は参加者が「Yes」を選んだ後に実行されます。この確認ステップにより、AIの積極性と人間による判断を両立しています。
導入を検討する組織は、一般提供を待つだけでなく、Microsoft 365 Copilotライセンス、Facilitatorアプリ、Loop、Web検索ポリシー、Purviewの保持設定を確認しておきましょう。そのうえでTargeted Releaseを使って少人数で検証し、検索してよい質問と人に確認すべき質問の基準を定めることが、2026年9月に向けた次の行動になります。

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