最近、新しいMicrosoft TeamsクライアントでOneNoteやExcelなどのリンクを開こうとすると、エラーが表示されて正常にアクセスできない現象が報告されています。本記事では、この不具合の原因や現時点での回避策を分かりやすく解説します。
Teams新クライアントでリンクが開けない問題の概要
新しくリリースされたMicrosoft Teamsクライアントを利用しているユーザーの一部から、Teams上で埋め込まれているOneNoteやExcel、またはこれらのファイル内に存在するハイパーリンクをクリックした際に、リンク先のコンテンツへ正常にアクセスできない不具合が報告されています。
リンク先がPDFファイルであれ、SharePoint上の別のドキュメントであれ、以下のようなエラーが発生し、アクセスを阻害するケースが多いようです。
実際に報告されているエラーの事例
以下のようなメッセージがTeamsの画面に表示され、正常に開けないという声が寄せられています。
Server Error in '/' Application.
Runtime Error
Description:
An exception occurred while processing your request...
同じリンクであっても、旧Teamsやブラウザー版(Microsoft EdgeやGoogle Chromeなど)でアクセスした場合には問題が発生しないという報告が多いことから、新しいTeamsクライアント固有の不具合である可能性が高いと考えられます。また、Microsoft 365管理センターのサービス正常性情報では「TM803695」というアドバイザリが確認されており、Microsoft側もこの問題を認識している状況です。
原因として挙げられている主な要素
リンク先を開けない原因としては、以下の要素が複合的に関与していると考えられています。
- Microsoft側の不具合(サービス障害やバグ)
- Microsoft 365管理センター上でアドバイザリが公開されていることから、サービス側の障害またはバグが存在している可能性が高いです。
- 新しいTeamsクライアント特有の問題であり、旧Teamsやブラウザーからのアクセスには支障がないという事実も根拠の一つとなっています。
- Safe Linksポリシーの影響
- Microsoft Defender for Office 365の機能である「Safe Links」によってリンクがスキャンされる過程で、正常にリダイレクトされずエラーが表示されるケースが考えられます。
- ただし、Safe Linksポリシーへの独自ドメイン追加などの対策を施しても問題が解決しない事例が報告されており、完全にSafe Linksだけが原因というわけではない可能性が高いです。
- Teamsクライアントの環境差異
- 同じデバイスでも旧Teamsクライアントを利用すると正常に機能する、またはブラウザー版で問題が発生しないという現象があることから、クライアント側のバージョンや実装部分に何らかの不具合が含まれていることが想定されます。
- 新しいUIやバックエンドの変更による想定外のコンフリクトも疑われます。
エラー要因と発生条件を整理した表
下記の表は、どのような条件で問題が発生しやすいかを簡単にまとめたものです。
要因 | 発生しやすい条件 | 対応状況 |
---|---|---|
Microsoftサービス障害 | 新しいTeamsクライアントの特定バージョンが配布された環境 | Microsoftがアドバイザリを公表、修正を検討中 |
Safe Linksの設定 | 独自ドメインや外部サイトへのアクセスが規制対象となっている場合 | ドメイン追加しても効果が見られない事例多発 |
クライアントの不具合 | 特定のリンク形式(PDFやSharePointドキュメントへのDeep Linkなど)に限る | 旧Teamsやブラウザーでは問題なし |
対処法と回避策
現時点では、Microsoft側で不具合を認識しており、サービス正常性情報のアップデートや修正パッチのリリースを待つことが基本的な対応策となります。ただし、業務上すぐにリンクを開かなければならない場合も多々あるでしょう。そういったシーンでは以下のような回避策や対処法が挙げられます。
1. Microsoftのアドバイザリやサポートをチェック
Microsoft 365管理センターの「サービス正常性」セクションや「メッセージセンター」にて、アドバイザリ情報(たとえばTM803695)が随時更新されています。そこでは、Microsoftがいつまでにどのような修正を行う予定なのか、あるいは一時的な回避策が提示されることもあります。もしMicrosoft側でサポート記事やフォーラムへの案内がある場合は、こまめに確認しましょう。
- Microsoftサポートへの問い合わせ
不具合の深刻度や影響範囲が大きい場合には、直接Microsoftサポートに問い合わせるのも有効です。管理センター経由でサポートチケットを発行することで、最新の情報や個別のワークアラウンドを提供してもらえる可能性があります。
2. Safe Linksポリシーの再確認
Safe Linksはセキュリティ強化のために用いられる機能ですが、設定によっては意図せずファイルやURLへのアクセスをブロックする場合があります。以下は例としてPowerShellを用いてSafe Linksのポリシーを確認・変更するコードサンプルです。
# ExchangeOnlineモジュールのインポート
Import-Module ExchangeOnlineManagement
# Microsoft 365への接続
Connect-ExchangeOnline -UserPrincipalName <管理者アカウント>
# Safe Linksのポリシー一覧を確認
Get-SafeLinksPolicy | Format-Table Name, Enabled, ExcludedUrls
# ポリシーの詳細を確認(例: Defaultポリシー)
Get-SafeLinksPolicy -Identity "Default" | FL
# 必要に応じてドメインを除外リストに追加(例)
Set-SafeLinksPolicy -Identity "Default" -ExcludedUrls "https://contoso.com","https://example.com"
もっとも、すでに報告されているように、ドメインの許可リスト追加やポリシー設定を変更しても、新しいTeamsクライアントでは相変わらずリンクエラーが発生するという声が多く上がっています。よって、Safe Linksの設定見直しだけでは根本的解決に至らないケースが大半のようです。
3. 旧Teamsやブラウザー版を利用する
最も手軽かつ効果的な暫定対応は、旧Teams(従来のTeamsクライアント)またはブラウザー版のTeamsを利用することです。具体的には以下のような手順で回避できます。
- 旧Teamsを起動する
新しいTeamsと旧Teamsの両方がインストールされている環境であれば、旧Teamsから同じチームやチャネルにアクセスしてみましょう。リンクをクリックした場合、エラーが発生しないケースが大半です。 - ブラウザー版Teamsに切り替える
EdgeやChromeなどのブラウザーでMicrosoft 365ポータルやTeamsにアクセスし、同様にチャネルやファイルを開くと正常にリンクが機能することが多いです。操作方法もほぼ同じなので、すぐに業務へ復帰できる利点があります。
4. OneNoteやExcelなどをTeams外で直接開く
Teamsのタブとして埋め込んでいるOneNoteやExcelの内部でリンクをクリックするとエラーが起こる場合には、あらかじめ該当のファイルをTeams以外(OneNoteデスクトップアプリやExcelデスクトップアプリ、またはWebブラウザー上のOneNote/Excel Online)で開き、その中からリンクを試してみてください。こちらも多くの事例でリンクが正常に機能するようです。
- OneNoteデスクトップアプリのメリット
デスクトップアプリでは、Office全般のアップデートが実行されるため、Teamsクライアントとは異なるフレームワークで動作します。認証トークンの扱いも異なり、リンク先アクセスがスムーズにいく場合があります。 - Excelデスクトップアプリから開く
同様にExcelもデスクトップアプリを使用することで、ハイパーリンクの遷移がTeamsと独立したプロセスで処理されるため、エラーを回避できる可能性が高くなります。
5. 「ブラウザーで開く」機能を活用する
Teamsから直接ファイルを閲覧する場合、画面上部に「ブラウザーで開く」や「SharePointで開く」などの選択肢が表示されることがあります。このオプションを選択すると、ブラウザーを通じて該当ドキュメントを開きます。その後にリンクをクリックすれば、エラーを回避できる場合が多いです。
管理者向けの推奨対応
組織内で同様の問題が多数報告されている場合には、管理者として以下の点を検討することが推奨されます。
問い合わせ窓口と情報共有
ユーザーから「リンクが開けない」という問い合わせを受けた際に、まずは本記事で紹介した回避策(旧Teamsまたはブラウザー版の利用、Teams外からのアクセス)を案内して一時的な対処を行ってもらいましょう。大半のケースはこれで問題を回避できます。また、組織全体に周知する場合、以下のような方法が考えられます。
- 社内ポータルサイトやTeamsの全社向けチャネルで告知
周知徹底するために、全社向けのアナウンスやリリースノートで現状報告と暫定策を案内します。 - ITヘルプデスクへのエスカレーション手順
ヘルプデスク担当者が分かりやすく対処できるよう、Q&Aやマニュアルを準備しておくとスムーズです。
Microsoft 365管理センターからのサポートチケット発行
早期解決が必要な場合、Microsoft 365管理センターの「サポート要求」を通じてチケットを発行し、問題の詳細や影響範囲を伝えることで、より迅速な対応や個別のワークアラウンドが提案される可能性があります。症状やエラーメッセージのスクリーンショット、クライアントのバージョン情報などをできるだけ具体的に提供しましょう。
- 提供する情報の例
- エラーメッセージの画面キャプチャ
- 不具合が発生するユーザー数や環境(Windows、Macなど)
- Teamsクライアントバージョンの詳細(ヘルプ > バージョン情報)
- リンク先のファイル形式や保存場所(OneDrive、SharePointなど)
- Safe Linksの設定状況と、すでに試した対策内容
実務で役立つ追加のヒント
ここでは、組織で運用する際にさらに考慮したいポイントや補足事項を紹介します。
1. 代替リンクの設定
特定のリンク形式(たとえばPDFファイルへの直接リンクなど)に限定して不具合が起きる場合、代替としてSharePointのリストページやOneDriveのファイル閲覧画面など、別のURLへアクセスさせる運用方法を検討できます。ユーザーにとっては多少手間が増えますが、エラー回避のためには有効です。
2. Teamsチャットのリンク貼り付け方を変える
ユーザー同士でやり取りする際、チャットに直接ファイルリンクを貼るのではなく、あらかじめSharePointやOneDrive上のファイルを「共有」機能を使ってリンクを生成し、共有リンクを貼る方が安定するケースもあります。共有リンクには必要な権限が含まれているため、認証エラーが起きにくいという利点があります。
3. 検証環境でのテスト
大規模組織の場合、全社導入前にテストテナントや検証用アカウントを利用してLinkエラーが再現するかどうかを確かめる方法が有効です。以下のような視点で検証しましょう。
- OSの種類(Windows 10/11、macOSなど)ごとの挙動
- Teamsクライアントのバージョン差異
- アカウントロールの違い(一般ユーザー、管理者アカウントなど)
- Safe LinksやDefender for Office 365のポリシーを変更した場合の影響
検証結果に応じて、IT部門としてユーザーに提供する回避策やガイドラインを明確に提示できます。
4. 長期的な視点での予防策
今回のように、新しいTeamsクライアント特有の不具合が出る場合、次回以降のアップデートでも類似の現象が起こらないとは限りません。継続的にTeamsやMicrosoft 365のリリースノート、メッセージセンター通知をチェックし、問題の早期発見と対策検討を行う運用体制を整えることが重要です。
5. ファイル添付とリンク共有の使い分け
実務上、Teamsチャネルやチャットでファイルを共有する際に、直接アップロードするかリンクを貼るかは状況によって選択されます。今後もリンクが機能しなくなる事態を想定するのであれば、添付ファイルとして共有する方法を検討することも一案です。ただし、添付は容量制限やバージョン管理の手間が生じるため、業務ニーズに合わせた使い分けが必要です。
まとめと今後の展望
新しいTeamsクライアントにおいて、OneNoteやExcelなどで埋め込んだリンクを開けない問題は、Microsoft 365管理センターでも公表されている不具合であり、多くのユーザーが影響を受けています。現在のところは根本的な修正が行われていないため、以下の点を押さえながら対応を進めるのが得策です。
- Microsoftが提供する最新情報をチェックし、修正パッチのリリースを待つ
- ブラウザー版や旧Teamsへの切り替えといった回避策を利用する
- Safe Linksポリシーを確認し、必要に応じて許可リストの最適化を行う
- 本格的な解決を急ぐ場合は、サポートチケットなどを通じてMicrosoftと連携する
将来的には、新しいTeamsクライアントの安定化が進み、こうしたリンクエラーも解消される見込みです。とはいえ、Microsoft 365のアップデートに伴って思わぬ不具合が発生することは珍しくありません。管理者やユーザーは、定期的にサービスの運用状況をチェックし、トラブルが起きた場合にも迅速に回避・解決できるフローを構築しておくことが大切です。
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