Microsoft Edge を macOS 10.15 Catalina で使い続けていると、「今後の更新には macOS 11 以降が必要です」というメッセージが表示されるようになっています。本記事では、Chromium 128 を境目とした Microsoft Edge の macOS Catalina サポート終了の意味と、個人・企業ユーザーが今すぐ取れる現実的な対策を、できるだけ具体的に解説します。
Microsoft Edge と Chromium、macOS サポート終了の関係
今回の「Microsoft Edge が macOS 10.15 Catalina のサポートを終了する」という動きは、Microsoft が突然独自に決めたものではありません。背景には、Edge の心臓部である Chromium のサポートポリシー変更があります。
Edge は Chromium ベースのブラウザ
現在の Microsoft Edge は、Google Chrome と同じオープンソースプロジェクトである Chromium をベースに開発されています。そのため、以下のような特徴があります。
- HTML レンダリングエンジンや JavaScript エンジンを Chromium と共有
- メジャーバージョン番号も Chromium とほぼ同期(例: Chromium 128 ⇔ Edge 128)
- OS サポートポリシーも、基本的には Chromium の方針に追従する
つまり、Chromium 側が「この OS バージョンは切り捨てます」と決めると、多くの場合その余波が Microsoft Edge にもそのまま波及します。
Chromium 128 が macOS 10.15 Catalina の最終サポート
Chromium の方針として、バージョン 128 を最後に macOS 10.15 Catalina のサポートを終了し、Chromium 129 以降は macOS 11 Big Sur 以上が必須となることが告知されています。それにあわせて、Chromium ベースの Microsoft Edge も同様に Catalina を切り捨てる流れになります。
これを簡単な対応表にすると次のようになります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 最終サポート OS | macOS 10.15 Catalina(Microsoft Edge 128 相当まで) |
| 今後の必須 OS | macOS 11 Big Sur 以降(Chromium / Edge 129 以降) |
| 想定タイミング | Chromium / Edge 128 のリリースが 2024 年夏ごろ、その後 129 以降では Catalina 非対応 |
| 公式発表 | 現時点で Microsoft から「Catalina サポート終了」の単独アナウンスは限定的 |
| 実際の挙動 | Catalina 上の Edge で「今後の更新には macOS 11 以降が必要」と警告が表示されることが確認されている |
このため、Microsoft から大々的なニュースリリースが出ていなくても、技術的・実務的には「Edge 128 が Catalina 最終バージョン」と考えておくのが安全です。
なぜ今 Catalina のサポートが切られるのか
「まだ普通に動いているのに、なぜここで切られるのか?」と感じる方も多いはずです。ここでは、OS 側とブラウザ側、それぞれの事情を整理します。
macOS 10.15 Catalina 自体がすでに Apple のサポート対象外
macOS はリリースから一定期間が経つと、Apple からのセキュリティアップデート提供が停止されます。Catalina はすでにそのラインを超えており、Apple 自体がセキュリティパッチを出していない状態です。
つまり、Catalina を使い続けるということは、OS レベルの脆弱性が見つかっても修正されない、というリスクを常に抱えたままになることを意味します。ブラウザだけ最新でも、OS 側が穴だらけでは本末転倒です。
ブラウザベンダー側の事情:テストコストと最新機能
ブラウザベンダー(Microsoft や Google)側から見ると、古い OS をサポートし続けることには次のようなコストが伴います。
- 古い OS 向けのビルド・テスト環境を維持し続ける必要がある
- 最新のセキュリティ機能や API が使えず、コードが複雑になる
- OS のバグを回避するための「古い回避策」を残し続けなければならない
その結果、「すでに OS ベンダー(Apple)がサポートしていない OS は切り捨て、リソースをより新しい環境に集中させる」という判断になりがちです。今回の Microsoft Edge の Catalina サポート終了も、まさにこの流れの一つと考えられます。
Catalina で Microsoft Edge はいつまで使えるのか
実際のユーザー目線で気になるのは「いつまで実用的に使えるのか」という点です。ここでは、挙動のイメージをもう少し具体的に説明します。
Edge 128 が実質的な最終バージョン
先述のとおり、Chromium 128 相当の Edge が Catalina を正式にサポートする最後のバージョンになります。Edge の自動更新が有効な状態で Catalina を使っている場合、次のような流れが想定されます。
- Edge 128 までは通常どおり自動更新される
- Edge 129 以降の更新を確認した際、OS バージョンチェックで弾かれる
- Edge 自体は起動できるが、バージョンは 128 からそれ以上進まない
- アップデート画面や通知に「今後の更新には macOS 11 以降が必要」といったメッセージが表示される
重要なのは、「急に Edge が削除される」わけではないという点です。あくまで「アップデートに失敗する(=古いまま固定される)」という挙動になります。
旧バージョンを使い続けるリスク
とはいえ、ブラウザを旧バージョンのまま使い続けることには、大きなリスクがあります。
- 新たに見つかったブラウザの脆弱性に対するセキュリティパッチが適用されない
- 新しい TLS・証明書・プロトコルなどへの追従が遅れ、一部サイトが表示できなくなる可能性
- Web アプリケーション側が「古いブラウザはサポート外」として機能制限を行う場合もある
特に、インターネットバンキングや社内グループウェアなど、機密性の高い情報を扱うサービスへのアクセスには、旧 Edge を使い続けるのは避けたいところです。
Catalina ユーザーが取りうる 3 つの現実的な選択肢
では、macOS 10.15 Catalina 上で Microsoft Edge を利用しているユーザーは、具体的にどのような選択肢を取れるのでしょうか。代表的な 3 パターンを、メリット・デメリットとともに整理します。
| 選択肢 | 詳細 | メリット | デメリット |
|---|---|---|---|
| OS をアップグレード | macOS 11 Big Sur 以降へ更新する | 最新の Edge を継続利用でき、OS・ブラウザともにセキュリティ更新を受け取れる | ハードウェア条件や業務アプリの互換性を事前に確認する必要がある |
| 別ブラウザへ乗り換え | Firefox ESR など、Catalina 対応が続くブラウザを利用する | Catalina のままでも、当面はブラウザのセキュリティ更新を受け取れる | Edge の機能(Microsoft アカウント連携、コレクション機能など)が使えなくなる |
| 旧 Edge を使い続ける(非推奨) | 最終対応版 Edge 128 にバージョンを固定して利用 | 何も設定変更しなくても、そのまま使い続けられる | セキュリティパッチが届かなくなり危険。将来ウェブ標準・証明書更新などで不具合が出る可能性が高い |
基本的には「OS アップグレード」か「別ブラウザへの乗り換え」のどちらかを選ぶのが現実的な解決策です。旧 Edge を使い続けるのは、セキュリティ上どうしても避けられない一時的な応急措置と考えましょう。
推奨パターン 1:macOS を Big Sur 以降にアップグレードする
最もシンプルで安全性が高いのは、macOS 自体を 11 Big Sur 以降へアップグレードし、最新 Edge をそのまま使い続けるパターンです。
アップグレード前に確認すべきポイント
OS アップグレードには、それなりの準備が必要です。特に業務で利用している Mac の場合、以下の点は必ず確認しておきましょう。
- ハードウェア要件:利用中の Mac が Big Sur 以降に対応しているか
- 業務アプリ・周辺機器の互換性:会計ソフトや業務システム、プリンタ・複合機などが対応しているか
- バックアップ:Time Machine やクローンツールで、アップグレード前の状態を丸ごと保存しておく
- ディスク空き容量:アップグレード用のインストールイメージ展開に十分な容量があるか
特に、古い 32bit アプリケーションに依存している場合、Catalina への移行時にすでに動かなくなっているはずですが、周辺機器ドライバや業務特化型ツールが OS バージョン依存のこともあります。業務利用なら、テスト用 Mac で先に検証するのが安全です。
OS アップグレードのメリット
アップグレードが無事完了すれば、次のようなメリットがあります。
- 最新の Microsoft Edge を継続利用できる
- Edge だけでなく、OS レベルのセキュリティアップデートも受け取れる
- 一部の最新 Web アプリやクラウドサービスでの互換性問題を避けられる
- 新しい macOS の機能(ユニバーサルコントロール、集中モードなど)も利用可能になる(対応バージョンの場合)
長期的に Mac を使い続けるのであれば、もっとも健全かつ王道の選択肢と言えるでしょう。
推奨パターン 2:Catalina のまま別ブラウザへ乗り換える
どうしても OS アップグレードが難しい場合(ハードウェア非対応、業務アプリが新 OS 非対応など)は、「Firefox ESR など Catalina をまだサポートしているブラウザ」へ乗り換える選択が有力です。
別ブラウザへ乗り換える際のポイント
Catalina 上での代替ブラウザ候補としては、例えば次のようなものがあります(あくまで例示)。
| ブラウザ | 特徴 | Edge からの乗り換え時のポイント |
|---|---|---|
| Firefox / Firefox ESR | 独自エンジン採用。ESR 版は長期サポートで企業利用にも向く | ブックマークやパスワードはエクスポート・インポートで移行可能。拡張機能は Firefox 用を再検索 |
| Safari(標準ブラウザ) | OS との統合度が高く、省電力・スムーズな動作が特徴 | Apple ID・iCloud を強く使う人には便利。ただし Catalina 自体のサポート終了には注意 |
| その他 Chromium 系ブラウザ | Brave など、独自機能を載せた Chromium ベースブラウザ | 将来的に同じように Catalina サポートを打ち切る可能性が高い点に留意 |
重要なのは、「Catalina 対応がどれくらい続くか」を定期的に確認することです。どのブラウザも、永遠に Catalina をサポートし続けるわけではありません。
Edge から乗り換える際の設定移行のコツ
Edge から別ブラウザへスムーズに乗り換えるには、次のポイントを押さえておくと便利です。
- ブックマーク(お気に入り)は HTML 形式でエクスポートしておく
- 保存パスワードは、可能であれば Microsoft アカウントやパスワードマネージャー側で同期しておく
- よく使う拡張機能(広告ブロッカー、翻訳、パスワード管理など)は、乗り換え先ブラウザでも同等のものを入れ直す
- Microsoft 365 や OneDrive など、Microsoft サービスはブラウザを問わず利用可能なことが多いので、ログイン情報を整理しておく
なお、Edge 独自機能のひとつである「IE モード」は、そもそも Windows 版向けの機能であり、Mac 版 Edge では使えません。そのため macOS 環境においては、「IE モードが使えなくなる影響」はあまり気にしなくても問題ないケースがほとんどです。
非推奨パターン:Catalina + 旧 Edge を使い続ける場合の注意
どうしても環境を変えられない事情がある場合、「Catalina 上で Edge 128 をそのまま使い続ける」という選択肢もゼロではありません。しかし、これはあくまでリスクを理解したうえでの暫定措置として割り切るべきです。
どんな場面なら「ギリギリ許容」か
例えば、次のような限定的な用途であれば、リスクを割り切って継続利用するケースもありえます。
- インターネットから完全に切り離された閉域ネットワーク内のみで利用される端末
- 検証用・検証環境として、一時的に古い挙動を再現したい場合
- どうしても短期間だけ、移行準備が整うまでの「つなぎ」として使う場合
とはいえ、通常のインターネット接続されている Mac で、日常的なブラウジングに旧 Edge を利用し続けるのはおすすめできません。
旧 Edge を使い続ける場合に最低限やっておきたいこと
やむを得ず旧 Edge を使い続ける場合でも、以下の対策は最低限実施しておきましょう。
- 管理者権限を日常利用しない(一般ユーザー権限で利用する)
- ウイルス対策・マルウェア対策ソフトを併用する
- 怪しいサイト・不明なメールのリンクを踏まない、添付ファイルを開かない
- ブラウザに保存しているパスワードは必要最小限にし、重要なものは専用パスワードマネージャーに移す
- 重要なサービス(ネットバンキング、業務システム等)へのアクセスには、別のより安全な端末・ブラウザを使う
あくまで「延命策」であり、最終的には OS またはブラウザの移行を前提にすることを忘れないようにしましょう。
企業環境での影響と対策:仮想化・VDI も選択肢に
企業や組織で Catalina Mac が多数残っている場合、単純に「全台を Big Sur 以降へアップグレード」できないケースも多々あります。その場合は、次のような中間解としての選択肢も検討に値します。
仮想化で新しい macOS / Windows 環境を用意する
物理マシンの OS を直接アップグレードできない場合、仮想マシン(VM)上に新しい環境を用意するというやり方があります。
- Parallels Desktop や VMware Fusion などの仮想化ソフトを利用
- 仮想マシン上で macOS 11 以降や Windows 10/11 を動かし、その中で最新 Edge を利用
- 既存の Catalina 環境は業務アプリ動作のためだけに最小限維持する
これにより、物理ハードウェアや既存業務アプリへの影響を抑えつつ、「ブラウザだけは最新かつ安全な環境」を確保することができます。
VDI / リモートデスクトップを活用する
さらに一歩進んだ方法として、VDI(仮想デスクトップ)やリモートデスクトップ環境を利用し、サーバー側の最新 OS 上の Edge に接続して使うという方法もあります。
- Catalina Mac は「表示端末」としてのみ使い、実際のブラウジングはサーバー上で行う
- ブラウザが扱うデータはサーバー側に留まり、端末側のリスクを低減できる
- 端末の更新・入れ替え計画と切り離してブラウザ環境を更新可能
初期コストやインフラ構築の手間はかかりますが、規模が大きい環境や高いセキュリティが求められる環境では、現実的な選択肢となり得ます。
自動更新とアンインストールに関する素朴な疑問
Q. 自動更新はどうなる? 強制的に Edge が消されたりしない?
A. 自動更新が有効になっていても、Catalina 環境で Edge が突然削除されることは通常ありません。先述のとおり、OS バージョンチェックによってアップデートが失敗し、バージョン 128 で「止まる」挙動になります。
そのため、ユーザーの操作なしに勝手にアンインストールされる心配は基本的には不要です。ただし、古いバージョンのまま長期間使い続けるリスクは残ります。
Q. Catalina 上の Edge はアンインストールすべき?
A. OS をアップグレードする予定がある場合は、そのままにしておいて構いません。Big Sur 以降に更新したあとに、Edge を最新化すれば再びサポートされた状態に戻ります。
一方で、「今後は別ブラウザに完全移行し、Edge は使わない」と決めた場合は、誤クリックによる利用を避けるためにアンインストールしてしまうのも一つの方法です。その場合は、事前にブックマークなど必要なデータをエクスポートしておきましょう。
セキュリティ観点からの結論:OS とブラウザはセットで考える
今回の Microsoft Edge の macOS 10.15 Catalina サポート終了は、単に「Edge のバージョンが 128 で止まる」という技術的な話に留まりません。「OS とブラウザのサポートライフサイクルをセットで考えるべき」という、より根本的な問題を突きつけています。
- Catalina 自体がすでに Apple からのセキュリティサポート対象外である
- それに追随して、主要ブラウザも順次サポート対象から外れていく
- 古い OS + 古いブラウザの組み合わせは、インターネット利用において致命的なリスクとなりうる
したがって、安全にブラウジングを続けたいのであれば、次のいずれかの道を選ぶことが推奨されます。
- macOS 11 Big Sur 以降へアップグレードして、最新の Microsoft Edge を使い続ける
- Catalina を継続利用する場合も、Firefox ESR などサポートが続いているブラウザへ乗り換える
「とりあえず動いているから大丈夫」と放置すると、ある日突然 Web サービスに接続できなくなったり、セキュリティインシデントのきっかけになったりするおそれがあります。Edge の Catalina サポート終了は、その前触れとして受け取り、今のうちに OS とブラウザの見直し計画を立てておくことを強くおすすめします。
ご自身や組織の Mac が Catalina のまま運用されている場合は、「Edge 128 で止まる」という事実をきっかけに、環境全体のアップデート方針を考え直すタイミングと捉えてみてください。

コメント