RustのBevyやAmethystを活用することで、ゲーム開発におけるビジュアルエフェクトが大きく向上します。特に、シェーダーを利用することで、ライティング効果や水面の反射、パーティクルエフェクト、画面のポストプロセス処理など、リアルタイムで高度なグラフィック処理を実現できます。Bevyは最新のエンティティコンポーネントシステム(ECS)を採用したRust製フレームワークであり、Amethystも同様にRust製のゲームエンジンとして知られています。
シェーダーはGPU上で動作し、効率的にグラフィックを処理するため、ゲーム開発においてパフォーマンスの高いビジュアル表現を可能にします。本記事では、BevyおよびAmethystでシェーダーを活用する方法をステップバイステップで解説し、ゲーム開発に役立つ特殊効果の実装手法を紹介します。
シェーダーとは何か
シェーダーは、GPU(グラフィックス処理ユニット)上で動作する小さなプログラムで、3Dグラフィックスや2Dグラフィックスの描画処理を制御します。特に、光の反射、色の変化、テクスチャの適用、特殊エフェクトなど、リアルタイムで高度なビジュアル処理を可能にする重要な要素です。
シェーダーの種類
シェーダーにはいくつかの種類があります。代表的なものとして次の2つが挙げられます。
- バーテックスシェーダー
3Dモデルの頂点の位置や色、法線ベクトルの変換を担当します。頂点データの変形やアニメーションを行う際に使用されます。 - フラグメントシェーダー(ピクセルシェーダー)
ピクセル単位で色やテクスチャを計算し、最終的な画面の見た目を決定します。光の反射や影の処理、透明度の設定などに利用されます。
シェーダーがゲーム開発で重要な理由
- リアルなビジュアル表現:光源、影、反射、水面の波紋など、リアルな描画を可能にします。
- 高パフォーマンス:GPU上で並列処理が行えるため、大量のピクセルや頂点を高速に処理できます。
- カスタマイズ性:独自のエフェクトやビジュアルスタイルを柔軟に実装できます。
Rustでのシェーダー利用
RustのゲームエンジンであるBevyやAmethystでは、WGSLやGLSLといったシェーダー言語が使用されます。これにより、安全かつ効率的にシェーダーを実装し、最新のグラフィックス表現をRustプロジェクトに取り入れることができます。
BevyとAmethystの概要
Rustでゲーム開発を行う際に選択される代表的なフレームワークとしてBevyとAmethystがあります。どちらもRust製のゲームエンジンですが、アーキテクチャや使い方、シェーダーサポートには違いがあります。
Bevyの特徴
Bevyは、最新のエンティティコンポーネントシステム(ECS)を採用したゲームエンジンです。モジュール性が高く、Rustらしい安全性とパフォーマンスを兼ね備えています。
- 使いやすいAPI:直感的で学習しやすい設計。シンプルなコードで複雑なシステムを構築可能です。
- シェーダーサポート:WGSLやGLSLシェーダーをサポートし、カスタムエフェクトの導入が容易です。
- ホットリロード機能:シェーダーやアセットの変更がリアルタイムで反映され、開発効率が向上します。
Amethystの特徴
Amethystは、柔軟性が高く、大規模なゲーム開発向けに設計されたエンジンです。機能が豊富で、特に3Dゲームに強みを持ちます。
- ECSベース:高性能なECSアーキテクチャを採用し、大量のエンティティを効率的に管理します。
- レンダリングシステム:
Rendy
という強力なレンダラーを使用しており、シェーダーのカスタマイズが可能です。 - マルチプラットフォーム:Windows、Linux、macOSをサポートし、幅広い環境で動作します。
BevyとAmethystのシェーダー活用の違い
- Bevyは最新のシェーダー言語であるWGSLをデフォルトでサポートし、WebGPUバックエンドに対応しています。
- Amethystは従来のGLSLシェーダーに対応し、より柔軟にカスタムレンダリングパイプラインを構築できます。
選び方のポイント
- Bevy:小規模から中規模のプロジェクトや、新しい技術を試したい場合に適しています。
- Amethyst:大規模な3Dゲームや高度なカスタマイズが必要な場合に適しています。
これらの特徴を理解し、自分のプロジェクトに合ったエンジンを選択することで、シェーダーを最大限に活用したゲーム開発が可能になります。
シェーダー言語とRustでの連携
Rustでシェーダーを利用する場合、主にWGSLやGLSLといったシェーダー言語が使用されます。これらのシェーダー言語はGPU上でグラフィックス処理を行うため、RustのゲームエンジンであるBevyやAmethystと連携して高度なビジュアル効果を実現できます。
WGSLとは
WGSL(WebGPU Shading Language)は、WebGPU用に設計されたシェーダー言語です。BevyではデフォルトでWGSLが採用されています。
- 特徴:シンプルで安全性が高い言語設計。Rustに似た文法で書きやすい。
- サポート:WebGPUバックエンドに最適化されており、ブラウザ上でも動作可能。
- 例:
@vertex
fn vs_main(@location(0) position: vec3<f32>) -> @builtin(position) vec4<f32> {
return vec4<f32>(position, 1.0);
}
@fragment
fn fs_main() -> @location(0) vec4<f32> {
return vec4<f32>(1.0, 0.0, 0.0, 1.0); // 赤色の出力
}
GLSLとは
GLSL(OpenGL Shading Language)は、OpenGL用に設計されたシェーダー言語で、Amethystでよく利用されます。
- 特徴:広く普及しており、多くのチュートリアルやドキュメントが存在。
- サポート:OpenGLおよびVulkanベースのレンダリングパイプラインで動作。
- 例:
#version 450
layout(location = 0) in vec3 position;
layout(location = 0) out vec4 fragColor;
void main() {
gl_Position = vec4(position, 1.0);
fragColor = vec4(0.0, 1.0, 0.0, 1.0); // 緑色の出力
}
Rustとシェーダーの連携方法
Rustでシェーダーを活用するには、次の手順でエンジンと連携します。
- シェーダーの作成:WGSLやGLSLでシェーダーコードを書く。
- Rustコードから読み込む:エンジンのAPIを使ってシェーダーファイルを読み込む。
- パイプラインの設定:シェーダーをレンダリングパイプラインに組み込む。
- 描画処理の実行:シェーダーを適用したオブジェクトを描画。
Bevyでのシェーダー読み込み例
use bevy::prelude::*;
use bevy::render::render_resource::ShaderRef;
fn setup(mut commands: Commands, asset_server: Res<AssetServer>) {
let shader_handle = asset_server.load("shaders/my_shader.wgsl");
commands.spawn_bundle(MaterialMeshBundle {
mesh: Mesh::from(shape::Cube { size: 1.0 }),
material: shader_handle,
..default()
});
}
Amethystでのシェーダー読み込み例
use amethyst::renderer::{Material, MaterialDefaults, Mesh, Rendy, Texture};
fn load_shader() -> Material {
Material {
albedo: Texture::from_path("textures/texture.png"),
shader: "shaders/my_shader.glsl".into(),
..MaterialDefaults::default()
}
}
Rustでのシェーダー連携のメリット
- 安全性:Rustの型安全性を保ちながらシェーダーを利用可能。
- 高パフォーマンス:GPUの能力を最大限に引き出す効率的な描画処理。
- 柔軟性:カスタムエフェクトや複雑なビジュアル表現を容易に実装。
シェーダー言語の選択とRustとの連携を理解することで、より高度なグラフィックスをRust製のゲームに組み込むことができます。
Bevyでシェーダーを使う手順
Bevyでシェーダーを利用すると、カスタムなビジュアル効果を簡単に実装できます。ここでは、Bevyでシェーダーを適用する手順をステップバイステップで解説します。
1. Bevyプロジェクトのセットアップ
まず、Bevyを使ったRustプロジェクトをセットアップします。Cargo.tomlにBevyの依存関係を追加します。
[dependencies]
bevy = "0.13"
2. シェーダーファイルの作成
シェーダーファイル(例:shaders/custom_shader.wgsl
)を作成し、カスタムの効果を記述します。
shaders/custom_shader.wgsl
@vertex
fn vs_main(@location(0) position: vec3<f32>) -> @builtin(position) vec4<f32> {
return vec4<f32>(position, 1.0);
}
@fragment
fn fs_main() -> @location(0) vec4<f32> {
return vec4<f32>(0.0, 0.5, 1.0, 1.0); // 青色の出力
}
3. シェーダーを読み込む
Rustコード内でシェーダーを読み込み、マテリアルとして設定します。
main.rs
use bevy::prelude::*;
use bevy::render::render_resource::ShaderRef;
fn main() {
App::new()
.add_plugins(DefaultPlugins)
.add_startup_system(setup)
.run();
}
fn setup(mut commands: Commands, asset_server: Res<AssetServer>) {
// シェーダーファイルを読み込む
let shader_handle = asset_server.load("shaders/custom_shader.wgsl");
// キューブメッシュとシェーダーマテリアルを生成
commands.spawn(MaterialMeshBundle {
mesh: Mesh::from(shape::Cube { size: 1.0 }),
material: shader_handle,
..default()
});
}
4. シェーダーをビルドして実行
以下のコマンドでプロジェクトをビルドして実行します。
cargo run
正しく設定されていれば、画面に青色のキューブが表示されます。
5. ホットリロードの活用
Bevyはシェーダーのホットリロード機能をサポートしています。シェーダーファイルを変更すると、アプリケーションを再起動しなくてもリアルタイムで変更が反映されます。これにより、効率的にシェーダーを調整できます。
6. カスタムパラメータの追加
シェーダーにカスタムパラメータを追加することで、動的に効果を変化させられます。例えば、シェーダーに色の変数を追加し、Rustから値を渡すことが可能です。
WGSLシェーダーの例
@group(0) @binding(0) var<uniform> color: vec4<f32>;
@fragment
fn fs_main() -> @location(0) vec4<f32> {
return color;
}
7. Rustからパラメータを設定
use bevy::prelude::*;
use bevy::render::render_resource::ShaderRef;
fn setup(mut commands: Commands, asset_server: Res<AssetServer>) {
let shader_handle = asset_server.load("shaders/custom_shader.wgsl");
commands.spawn(MaterialMeshBundle {
mesh: Mesh::from(shape::Cube { size: 1.0 }),
material: shader_handle,
..default()
});
}
Amethystでシェーダーを使う手順
Amethystでは、GLSLシェーダーを用いてカスタムビジュアル効果を実装できます。Amethystのレンダリングシステムは、カスタムシェーダーを柔軟に組み込むための仕組みを提供しています。ここでは、Amethystでシェーダーを適用するための手順を解説します。
1. Amethystプロジェクトのセットアップ
まず、Amethystを使ったRustプロジェクトをセットアップします。Cargo.tomlにAmethystの依存関係を追加します。
[dependencies]
amethyst = "0.15" # 最新バージョンを確認してください
2. シェーダーファイルの作成
GLSLシェーダーファイルを作成し、カスタムエフェクトを記述します。以下は簡単な頂点シェーダーとフラグメントシェーダーの例です。
shaders/custom_vertex.glsl
#version 450
layout(location = 0) in vec3 position;
layout(location = 1) in vec2 tex_coords;
layout(location = 0) out vec2 v_tex_coords;
void main() {
gl_Position = vec4(position, 1.0);
v_tex_coords = tex_coords;
}
shaders/custom_fragment.glsl
#version 450
layout(location = 0) in vec2 v_tex_coords;
layout(location = 0) out vec4 fragColor;
void main() {
fragColor = vec4(v_tex_coords, 1.0, 1.0); // テクスチャ座標に基づく色
}
3. マテリアルの作成
シェーダーを使用するマテリアルを作成します。Amethystでは、Material
構造体を用いてシェーダーを適用します。
materials.rs
use amethyst::renderer::{Material, Texture};
pub fn create_custom_material(texture: Texture) -> Material {
Material {
albedo: texture,
..Material::default()
}
}
4. シェーダーのロード
シェーダーファイルをロードし、マテリアルに適用します。
main.rs
use amethyst::{
assets::{AssetStorage, Loader},
prelude::*,
renderer::{types::TextureData, Material, RenderingBundle, Texture},
utils::application_root_dir,
};
mod materials;
struct Example;
impl SimpleState for Example {}
fn main() -> amethyst::Result<()> {
let app_root = application_root_dir()?;
let resources_directory = app_root.join("assets");
let mut game_data = DispatcherBuilder::default()
.with_bundle(RenderingBundle::<DefaultBackend>::new())?;
let mut game = Application::new(resources_directory, Example, game_data)?;
game.run();
Ok(())
}
5. カスタムパイプラインの設定
Amethystでは、カスタムシェーダーを利用するために、レンダリングパイプラインに新しいパスを追加する必要があります。レンダーパスの設定ファイルを作成し、シェーダーを適用します。
render_config.ron
RenderConfig(
passes: [
DrawCustom {
vertex_shader: "shaders/custom_vertex.glsl",
fragment_shader: "shaders/custom_fragment.glsl",
},
],
)
6. シーンにマテリアルを適用
作成したマテリアルをシーン内のエンティティに適用します。
use amethyst::ecs::prelude::*;
use amethyst::renderer::rendy::mesh::{MeshBuilder, Position};
fn setup_scene(world: &mut World) {
let mesh = MeshBuilder::new()
.with_vertices(vec![Position([0.0, 0.0, 0.0]), Position([1.0, 0.0, 0.0]), Position([0.0, 1.0, 0.0])])
.build();
let texture_handle = load_texture(world, "textures/example.png");
let material = materials::create_custom_material(texture_handle);
world.create_entity().with(mesh).with(material).build();
}
7. ビルドと実行
以下のコマンドでビルドして実行します。
cargo run
まとめ
これでAmethystでGLSLシェーダーを利用し、カスタムなビジュアルエフェクトを実装できるようになりました。シェーダーを活用することで、ゲームにリアルなライティングや独自のビジュアルスタイルを追加できます。
代表的な特殊効果の実装例
BevyやAmethystでシェーダーを活用することで、ゲームのビジュアルを大幅に向上させる特殊効果を実装できます。ここでは、代表的なシェーダーによる特殊効果をいくつか紹介し、基本的な実装方法を解説します。
1. ライティング効果
概要:光源によるリアルな陰影や反射を表現する効果です。
GLSLの例:
#version 450
layout(location = 0) in vec3 frag_pos;
layout(location = 1) in vec3 normal;
layout(location = 0) out vec4 frag_color;
uniform vec3 light_pos;
uniform vec3 view_pos;
uniform vec3 light_color;
uniform vec3 object_color;
void main() {
// 法線ベクトルを正規化
vec3 norm = normalize(normal);
// 光源からフラグメントへのベクトル
vec3 light_dir = normalize(light_pos - frag_pos);
// 拡散反射
float diff = max(dot(norm, light_dir), 0.0);
vec3 diffuse = diff * light_color;
// 視点ベクトルと反射ベクトル
vec3 view_dir = normalize(view_pos - frag_pos);
vec3 reflect_dir = reflect(-light_dir, norm);
// スペキュラ反射
float spec = pow(max(dot(view_dir, reflect_dir), 0.0), 32.0);
vec3 specular = spec * light_color;
vec3 result = (diffuse + specular) * object_color;
frag_color = vec4(result, 1.0);
}
2. パーティクルエフェクト
概要:火花や煙、爆発などの効果を粒子システムで表現します。
特徴:
- 大量の小さな粒子を生成し、それぞれに動きを与えます。
- GPUで並列処理することで、大量の粒子でもパフォーマンスを維持できます。
Bevyでの基本的なパーティクルシステムの手順
- パーティクルのメッシュとマテリアルを作成。
- タイマーで粒子を定期的に生成。
- シェーダーで粒子に動きや色の変化を与える。
3. 水面の反射と波紋効果
概要:水面の波紋や鏡のような反射をシェーダーで実現します。
GLSLの例:
#version 450
layout(location = 0) in vec2 tex_coords;
layout(location = 0) out vec4 frag_color;
uniform sampler2D water_texture;
uniform float time;
void main() {
float wave = sin(tex_coords.x * 10.0 + time) * 0.02;
vec2 displaced_coords = vec2(tex_coords.x, tex_coords.y + wave);
frag_color = texture(water_texture, displaced_coords);
}
4. ポストプロセスエフェクト
概要:画面全体に適用するエフェクトで、色調補正やぼかし、グレースケールなどを実現します。
簡単なグレースケールエフェクトのGLSL例
#version 450
layout(location = 0) in vec2 tex_coords;
layout(location = 0) out vec4 frag_color;
uniform sampler2D screen_texture;
void main() {
vec4 color = texture(screen_texture, tex_coords);
float gray = dot(color.rgb, vec3(0.299, 0.587, 0.114));
frag_color = vec4(vec3(gray), 1.0);
}
5. フレネル効果
概要:物体の端で光が強く反射する効果で、ガラスや水の表現に使われます。
GLSLの例
#version 450
layout(location = 0) in vec3 view_dir;
layout(location = 0) out vec4 frag_color;
void main() {
float fresnel = pow(1.0 - dot(normalize(view_dir), vec3(0.0, 0.0, 1.0)), 3.0);
frag_color = vec4(vec3(fresnel), 1.0);
}
まとめ
これらの特殊効果は、BevyやAmethystでシェーダーを活用することで簡単に実装できます。ライティング、パーティクル、水面反射、ポストプロセスエフェクトなど、シェーダーを用いることでリアルで美しいビジュアルが実現できます。プロジェクトの要件に応じて、これらの効果を適切に組み込んでみましょう。
シェーダーのパフォーマンス最適化
シェーダーはGPUで高速に動作しますが、複雑な処理や最適化されていないコードはパフォーマンス低下の原因となります。BevyやAmethystでシェーダーを活用する際には、パフォーマンスを意識した最適化が重要です。ここでは、シェーダーのパフォーマンスを向上させるための主なテクニックを紹介します。
1. 計算の最適化
シェーダー内の計算回数を減らし、冗長な計算を避けることで処理速度を向上させます。
- 不要な計算の削減:定数や事前計算できる値は、シェーダー外で計算してから渡す。
- ループ回数の削減:ループ処理は極力避け、固定回数で処理する。
- 共通の計算をまとめる:同じ計算を複数箇所で行わず、変数に一度代入して再利用する。
最適化例:
// 非効率的な例
float dist = length(position - light_pos);
float attenuation = 1.0 / (dist * dist);
// 最適化後
vec3 delta = position - light_pos;
float dist_sq = dot(delta, delta);
float attenuation = 1.0 / dist_sq;
2. テクスチャアクセスの最適化
テクスチャアクセスは比較的コストが高いため、回数を減らす工夫が必要です。
- テクスチャのバッチ処理:複数のテクスチャを1つの大きなテクスチャにまとめてアクセスする。
- ミップマップの利用:高解像度テクスチャの遠方表示ではミップマップを活用する。
- 不要なサンプリングの回避:サンプルする回数を最小限に抑える。
3. ブランチの回避
シェーダーでの条件分岐(if
文やelse
文)はGPUの並列処理に悪影響を与えるため、避けるようにします。
非効率的な例:
if (value > 0.5) {
color = vec3(1.0, 0.0, 0.0);
} else {
color = vec3(0.0, 1.0, 0.0);
}
最適化後:
color = mix(vec3(0.0, 1.0, 0.0), vec3(1.0, 0.0, 0.0), step(0.5, value));
4. 精度の調整
必要に応じてデータ型の精度を調整し、計算コストを削減します。
highp
(高精度)よりもmediump
(中精度)やlowp
(低精度)を使用する。- 高精度が必要な場合を除き、
float
ではなくhalf
やfixed
を検討する。
例:
mediump vec3 color;
lowp float intensity;
5. レンダリングパスの最適化
- 不要なドローコールの削減:ドローコールをまとめ、描画回数を減らす。
- 早期深度テスト:不要なフラグメントシェーダーの実行を回避するため、深度バッファを活用する。
6. 頂点数の削減
- LOD(Level of Detail)の導入:遠くのオブジェクトに対しては低解像度のメッシュを使用する。
- ジオメトリの簡略化:複雑すぎるジオメトリはパフォーマンスを低下させるため、適切に調整する。
7. プロファイリングとデバッグ
- GPUプロファイラの使用:
RenderDoc
やNsight Graphics
などのツールを使用し、ボトルネックを特定する。 - シェーダーデバッグ:シェーダーのパフォーマンスをデバッグし、効率的なコードに修正する。
まとめ
シェーダーのパフォーマンス最適化は、ゲームの描画速度や安定性を向上させるために重要です。計算の効率化、テクスチャアクセスの削減、ブランチの回避など、これらのテクニックを意識してシェーダーを設計することで、BevyやAmethystでの高パフォーマンスなゲーム開発が可能になります。
トラブルシューティングとデバッグ方法
シェーダーの開発では、ビジュアルやパフォーマンスに関する問題が頻繁に発生します。BevyやAmethystでシェーダーを実装する際、問題が発生した場合に素早く解決するためのトラブルシューティング方法とデバッグ手法を紹介します。
1. シェーダーのコンパイルエラーの解決
シェーダーが正しくコンパイルされない場合、以下の点を確認しましょう。
- エラーメッセージを確認:エラーメッセージは具体的な問題の箇所を示しています。エラー番号や行番号を確認しましょう。
- シンタックスエラー:文法ミスやスペルミスがないか確認します。特にカンマ、セミコロン、括弧の閉じ忘れに注意。
- バージョン指定:GLSLの場合、シェーダーのバージョン指定(例:
#version 450
)が正しいか確認します。
例:
#version 450
layout(location = 0) in vec3 position;
void main() {
gl_Position = vec4(position, 1.0);
}
2. ブラックスクリーンの問題
画面が真っ黒になる場合、以下の原因が考えられます。
- シェーダーの出力が無効:フラグメントシェーダーが正しい色を出力しているか確認しましょう。
- テクスチャの読み込み失敗:テクスチャパスや読み込み処理が正しいか確認します。
- 深度バッファの問題:オブジェクトがカメラのクリッピング範囲外になっていないか確認します。
簡単なデバッグ方法:
フラグメントシェーダーで固定の色を出力し、シェーダーが動作しているか確認します。
void main() {
gl_FragColor = vec4(1.0, 0.0, 0.0, 1.0); // 赤色を出力
}
3. シェーダーのパフォーマンス問題
シェーダーが遅い場合、以下を確認しましょう。
- 計算負荷の高い処理:ループや複雑な計算がないか確認し、必要であれば最適化します。
- テクスチャサンプリングの最適化:不要なテクスチャアクセスを減らします。
- プロファイリングツール:
RenderDoc
やNsight Graphics
を使用し、ボトルネックを特定します。
4. ビジュアルの崩れやノイズ
- 法線ベクトルの誤り:法線が正しく計算・正規化されているか確認します。
- 座標系の誤り:モデル空間、ワールド空間、ビュー空間での座標変換が正しいか検証します。
- テクスチャUV座標の誤り:UV座標が範囲(0.0〜1.0)内に収まっているか確認します。
5. デバッグ出力を使う
シェーダー内で中間結果を視覚的に確認するため、色を使ってデバッグ出力を行います。
法線の可視化例:
layout(location = 1) in vec3 normal;
void main() {
gl_FragColor = vec4(normal * 0.5 + 0.5, 1.0); // 法線を色として出力
}
6. シェーダーのホットリロードの活用
BevyやAmethystではシェーダーのホットリロード機能を活用して、リアルタイムで修正結果を確認できます。コードを変更するたびにアプリケーションを再起動する必要がなく、効率的にデバッグが可能です。
7. よくあるエラーと解決策
エラー | 原因 | 解決策 |
---|---|---|
undefined variable | 変数が宣言されていない | 変数の宣言やスコープを確認する |
type mismatch | 型の不一致 | 変数や関数の型を一致させる |
division by zero | ゼロ除算 | 除算前にゼロでないことを確認する |
invalid texture coordinates | UV座標が範囲外 | UV座標を0.0〜1.0に正規化する |
まとめ
シェーダーのデバッグやトラブルシューティングは、エラーメッセージを読み解き、シンプルなテストケースを作成することで効率的に行えます。問題を特定したら、段階的に修正を加え、視覚的なデバッグ手法を活用することで、問題解決がスムーズになります。
まとめ
本記事では、RustのゲームエンジンであるBevyとAmethystを用いたシェーダーによる特殊効果の実装方法について解説しました。シェーダーの基本概念から、シェーダー言語(WGSLやGLSL)の使い方、ライティングやパーティクル、ポストプロセスなどの代表的な特殊効果の実装例、さらにパフォーマンス最適化やデバッグ方法まで幅広く紹介しました。
シェーダーを適切に活用することで、リアルなビジュアルや独自のエフェクトをRustのゲームプロジェクトに組み込むことができます。シェーダーのパフォーマンスを最適化し、トラブルシューティングの手法を身につけることで、より効率的なゲーム開発が可能になります。
BevyやAmethystとシェーダーの力を最大限に引き出し、魅力的なゲーム体験を実現しましょう。
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