Microsoft Defender for Endpointの「Streamlined Connectivity」は、端末の保護機能を入れ替える更新ではなく、オンボーディング時に使用するクラウド接続先を簡素化する仕組みです。
結論からいうと、既存のStandard接続端末を直ちに再オンボードする必要はありません。一方で、商用環境では*.endpoint.security.microsoft.comへの通信を許可し、TLSインスペクションやユーザー認証付きプロキシが介在していないか確認する必要があります。Microsoftは既存URLを廃止する予定はないとしていますが、Standard接続を継続する端末を含め、新しい統合ドメインへの到達性を確保するよう案内しています。(Microsoft Learn)
2026年7月8日時点の公式情報を基に、保護対象、対応OS、管理者設定、監査・検知への影響、移行の優先順位を整理します。
Microsoft Defender for EndpointのStreamlined Connectivityとは
Streamlined Connectivityは、Microsoft Defender for Endpointが利用する複数の接続先を、主に1つのワイルドカードドメインへ集約する接続方式です。
日本企業の一般的な商用テナントでは、次のドメインを使用します。
*.endpoint.security.microsoft.com
米国政府クラウドでは*.endpoint.security.microsoft.usが使用されますが、公式情報ではプレビューとして案内されています。(Microsoft Learn)
StandardとStreamlinedの違いを整理すると、次のようになります。
| 比較項目 | Standard | Streamlined |
|---|---|---|
| 主な接続先 | サービスごとに複数のURLを許可 | 統合ドメインまたは専用IP範囲を使用 |
| Defenderの保護機能 | 従来どおり | Standardと同じ |
| 新規端末の導入 | Standard用パッケージを使用 | Streamlined用パッケージを使用 |
| 既存端末への反映 | そのまま継続可能 | 再オンボードと再起動などが必要 |
| 自動移行 | なし | 既存端末は自動で切り替わらない |
| 旧URLの扱い | 引き続き利用可能 | 移行完了後に段階的な整理が可能 |
Streamlined Connectivityによって変わるのは、基本的に通信先のURLやIPアドレスです。Defender for Endpointの機能やエンドユーザーの操作体験が変わるわけではありません。(Microsoft Learn)
統合ドメインに集約されるサービス
*.endpoint.security.microsoft.comには、次の主要サービスが集約されます。(Microsoft Learn)
| サービス | 主な役割 | 通信できない場合に想定される影響 |
|---|---|---|
| クラウド提供の保護 | クラウド側の保護機能との通信 | クラウドを利用した判定や保護が十分に機能しない可能性 |
| マルウェアサンプル送信ストレージ | 不審ファイルのサンプル送信 | 詳細なクラウド分析に必要なサンプルを送信できない可能性 |
| Auto-IRサンプルストレージ | 自動調査・修復で使用するサンプルの処理 | 自動調査・修復の一部処理に影響する可能性 |
| Defender for Endpointのコマンド&コントロール | 端末とクラウド間の制御通信 | 応答操作や状態確認が遅延・失敗する可能性 |
| サイバーおよび診断データ | EDRテレメトリや診断情報の送信 | デバイスのタイムラインや調査データが欠落・遅延する可能性 |
重要なのは、すべてのMicrosoft関連通信が統合ドメインだけで完結するわけではない点です。
証明書失効リスト、Windows Update、Microsoft Defender SmartScreenなどは、環境や構成に応じて別の接続先が必要です。統合ドメインを許可した直後に既存の許可URLをすべて削除すると、一部機能だけ通信できなくなるおそれがあります。(Microsoft Learn)
影響を受けるライセンスと端末
公式ページでは、Streamlined Connectivityの対象として次のサービスが挙げられています。(Microsoft Learn)
- Microsoft Defender for Endpoint Plan 1
- Microsoft Defender for Endpoint Plan 2
- Microsoft Defender for Business
- Microsoft Defender Vulnerability Management
対応OSと例外
すべてのDefender for Endpoint端末を同じ方法で移行できるわけではありません。特に古いWindowsとMicrosoft Monitoring Agentを使用しているサーバーは、事前の分類が必要です。(Microsoft Learn)
| 端末・OS | Streamlined対応 | 管理者が確認すべき点 |
|---|---|---|
| Windows 11 | 対応 | センサー、Defender Antivirus、Windows Updateの適用状況を確認 |
| Windows 10 バージョン1809以降 | 対応 | 必要な更新プログラムとコンポーネント要件を確認 |
| Windows Server 2019以降 | 対応 | サーバー用オンボーディングパッケージを使用 |
| Windows Server 2012 R2/2016 | 条件付き対応 | Defender for Endpointのモダン統合ソリューションが必要 |
| macOS | 対応 | サポート対象OSとMDE製品バージョンを確認 |
| Linux | 対応 | サポート対象ディストリビューションとMDE製品バージョンを確認 |
| Azure Stack HCI OS 23H2以降 | 対応 | ネットワーク経路と更新状態を確認 |
| Windows 10 バージョン1607~1803 | 制限あり | 長いURLリストが必要。既存端末は再オンボードではなく、いったんオフボードが必要 |
| MMAを使用する旧OS・サーバー | 非対応 | StandardまたはMMA用の接続方式を継続 |
Windows Server 2012 R2やWindows Server 2016を運用している場合、「OS名だけを見て対応」と判断してはいけません。MMAのままなのか、モダン統合エージェントへ移行済みなのかによって対応が分かれます。
Windows端末の最低コンポーネント要件
公式情報では、Windows端末について次の最低要件が示されています。(Microsoft Learn)
| コンポーネント | 最低要件 |
|---|---|
| SENSE | 10.8040.*、または2022年3月8日以降の対応更新 |
| Antimalware Client | 4.18.2211.5 |
| エンジン | 1.1.19900.2 |
| セキュリティインテリジェンス | 1.391.345.0 |
これらはあくまでStreamlined Connectivityを利用するための技術的な最低ラインです。実運用では、サポート期間内のOSを使用し、月例更新やDefenderコンポーネントを最新状態に保つことが前提になります。
管理者が確認すべきネットワーク設定
統合ドメインを全対象端末から到達可能にする
最優先で確認したいのは、次のドメインにTCP 443で接続できることです。
*.endpoint.security.microsoft.com
Microsoftは、Standard接続を継続する場合でも、現在および将来の機能のために、この統合ドメインへ到達できる状態を求めています。既存端末をすぐに移行しない場合でも、ファイアウォールやプロキシの許可リスト確認は必要です。(Microsoft Learn)
TLSインスペクションをバイパスする
Defender for Endpointのサービス接続ではTLSと証明書ピンニングが使用されるため、通信内容を復号するHTTPSインスペクションはサポートされません。
また、接続はユーザーではなく端末から開始されます。プロキシでユーザー認証を必須にすると、サインイン前の端末やサービスアカウントで動作する通信が失敗する可能性があります。(Microsoft Learn)
ネットワーク担当者には、単に「Microsoftのドメインを許可する」と依頼するのではなく、次の条件をまとめて伝えることが重要です。
- TCP 443の送信通信を許可する
- TLS/HTTPSインスペクションの対象外にする
- ユーザー認証付きプロキシを経由させない
- DNSでワイルドカード配下のホスト名を解決できるようにする
- 拠点、VPN、リモートアクセス、クラウドプロキシなど経路ごとに確認する
ワイルドカードを使えない場合はIP方式を検討する
ネットワーク製品がワイルドカードドメインに対応していない場合は、Defender for Endpoint専用の静的IP範囲やAzureサービス タグを利用できます。
主に使用するサービス タグは次の2つです。(Microsoft Learn)
| サービス タグ | 対象 |
|---|---|
MicrosoftDefenderForEndpoint | クラウド保護、サンプル送信、Auto-IR、コマンド&コントロール |
OneDsCollector | Defender for Endpointのサイバーおよび診断データ |
IP方式では、EDRのサイバーおよび診断データを扱うOneDsCollectorを別途許可しなければなりません。
また、OneDsCollectorの通信はDefender for Endpointだけに限定されず、他のMicrosoftサービスの診断データを含む場合があります。許可範囲を厳密に管理している組織では、セキュリティ部門とネットワーク部門で影響を確認してから採用してください。(Microsoft Learn)
静的IPを設定ファイルへ直接書き続けるより、更新されるサービス タグを基準にルールを管理する方が、将来のIP変更へ対応しやすくなります。
対応要否を判断する基準
既存端末を一斉に移行する必要はありません。自社の状態を次の表に当てはめて、優先順位を決めます。
| 現在の状況 | 対応優先度 | 推奨する対応 |
|---|---|---|
| 新しい端末を近くオンボードする | 高 | ネットワークを検証し、Streamlinedパッケージの利用を検討 |
*.endpoint.security.microsoft.comを遮断している | 最優先 | Standard継続の端末を含めて許可ルールを追加 |
| TLSインスペクションを適用している | 最優先 | Defender関連通信を復号対象から除外 |
| ユーザー認証付きプロキシのみ許可している | 最優先 | 端末・サービス通信が認証なしで到達できる経路を用意 |
| Standard接続で問題なく稼働している | 中 | 統合ドメインを許可し、計画的にパイロット移行 |
| URL許可リストの保守負担が大きい | 中~高 | Streamlinedへの移行効果が高い |
| MMA端末が残っている | 中 | すぐにStreamlinedへ移行せず、統合エージェントへの移行計画を作成 |
| ワイルドカードドメインを許可できない | 高 | IP範囲とサービス タグ方式を設計 |
| 閉域網や厳格なプロキシ環境で運用している | 高 | 本番展開前に拠点・経路別の接続試験を実施 |
既存のStandard接続端末は自動ではStreamlinedへ切り替わりません。また、旧URLの廃止予定も示されていないため、「通知を受けたら全端末を緊急再オンボードする」という判断は適切ではありません。(Microsoft Learn)
Streamlined Connectivityへ移行する手順
現在の接続方式を棚卸しする
Microsoft DefenderポータルのAdvanced Huntingでは、DeviceInfoテーブルのConnectivityType列から接続方式を確認できます。
次のクエリを使うと、デバイスごとの最新状態を一覧化できます。
DeviceInfo
| summarize arg_max(
Timestamp,
DeviceName,
OSPlatform,
OSVersion,
ConnectivityType
) by DeviceId
| project
Timestamp,
DeviceName,
OSPlatform,
OSVersion,
ConnectivityType
| order by ConnectivityType asc, DeviceName asc
ConnectivityTypeには、主に次の値が表示されます。
| 値 | 意味 |
|---|---|
Streamlined | Streamlined方式でEDRのコマンド&コントロール通信に成功 |
Standard | Standard方式で接続 |
| 空欄 | 再オンボードを試行していない端末など |
空欄は必ずしも異常を意味しません。また、Streamlinedパッケージを配布しただけでは移行完了とは判断できません。EDRのコマンド&コントロールチャネルへ正常に接続した後、Streamlinedとして記録されます。(Microsoft Learn)
ネットワークを先に変更する
オンボーディングパッケージを配布する前に、統合ドメイン、残存する必須サービス、プロキシ、TLSインスペクションの設定を変更します。
順序を逆にすると、再オンボード直後に端末がクラウドへ接続できなくなる可能性があります。
代表端末でパイロット展開する
最初から全端末へ配布せず、次の条件を含む小規模なテストグループを作成します。
- Windowsクライアント
- Windows Server
- macOSまたはLinux
- 本社ネットワーク
- 拠点ネットワーク
- VPNや在宅勤務環境
- 認証プロキシやクラウドプロキシを経由する端末
- VDIや非永続端末
各OS・各通信経路から2~5台程度を選ぶと、問題の切り分けがしやすくなります。
既存のオンボーディングポリシーと新しいStreamlinedポリシーを同じ端末へ重複適用しないよう、テスト端末を従来ポリシーの割り当て対象から除外してください。Microsoftも、小規模な端末から検証し、既存ポリシーとの競合を避けながら段階展開することを推奨しています。(Microsoft Learn)
Streamlined用パッケージを取得する
Microsoft Defenderポータルで、次の順に移動します。
System
> Settings
> Endpoints
> Device management
> Onboarding
対象OSを選択し、Connectivity typeでStreamlinedを指定して、利用する展開方法に対応したオンボーディングパッケージを取得します。(Microsoft Learn)
Intune、グループポリシー、Microsoft Configuration Manager、ローカルスクリプトなど、現在の管理方式に合わせてパッケージを展開します。
再起動またはサービス再起動を実施する
既存端末をStreamlined方式へ切り替える場合、OSごとに次の処理が必要です。(Microsoft Learn)
| OS | 移行後の処理 |
|---|---|
| Windows | 端末を再起動 |
| macOS | 端末を再起動、またはDefender for Endpointサービスを再起動 |
| Linux | sudo systemctl restart mdatpを実行 |
Windows 10 バージョン1607、1703、1709、1803は通常の再オンボードに対応しません。これらの端末を移行する場合は、完全にオフボードしてからStreamlinedパッケージでオンボードする必要があります。(Microsoft Learn)
移行後の監査・検知を確認する方法
Streamlined Connectivityそのものは、Defender for Endpointの検知ルールや保護機能を変更するものではありません。正常に通信できていれば、機能やエンドユーザー体験は従来と同じです。(Microsoft Learn)
ただし、ネットワーク設定を誤ると、EDRテレメトリ、クラウド保護、サンプル送信、応答コマンド、自動調査などに影響する可能性があります。そのため、単にポリシーの配布成功だけを見るのではなく、実際の通信とデータフローを確認する必要があります。
MDE Client Analyzerで事前確認する
未オンボード端末でStreamlined方式をテストする場合は、Streamlined用オンボーディングパッケージの情報を読み込ませて実行します。
mdeclientanalyzer.cmd -o <path-to-onboarding-cmd>
未オンボード端末で通常どおりClient Analyzerを実行すると、Standard方式のURLセットがテストされます。Streamlined方式を検証するには、-oまたはテナント地域を指定する-gオプションが必要です。日本の管理者が地域指定を誤るリスクを避けるには、オンボーディングパッケージを読み込む-oの使用が分かりやすい方法です。(Microsoft Learn)
Advanced Huntingで実際の接続方式を確認する
パイロット端末のConnectivityTypeがStreamlinedへ変化していることを確認します。
ポリシーを配布済みでも、Standardのまま、または空欄の場合は、再起動、ポリシー競合、プロキシ、ファイアウォール、コンポーネント要件を確認してください。
Windowsイベントログを確認する
Windowsでは、次のログを確認します。
Applications and Services Logs
> Microsoft
> Windows
> SENSE
> Operational
SENSEのイベントID 4は、Defender for Endpointのコマンド&コントロールチャネルへの正常な接続を記録します。メッセージ内の接続先にendpoint.security.microsoft.comが含まれているか確認してください。
イベントID 5には、該当する接続エラーが記録されます。(Microsoft Learn)
ポータル上のデータフローを確認する
移行後は、少なくとも次の項目を確認します。
- デバイスがDevice Inventoryに継続して表示されている
- 移行前後でDevice IDが変わっていない
- デバイスのTimelineへ新しいイベントが届いている
- Microsoftの検知テストが成功する
- Live Responseへ接続できる
- 自動調査・修復を利用する環境では関連機能が動作する
- クラウド提供の保護が正常に通信できる
Microsoftも、Device Inventory、Timeline、Live Response、自動調査・修復、クラウド保護などを使った移行後の確認を案内しています。(Microsoft Learn)
失敗しやすいポイント
統合ドメイン以外のURLをすぐに削除する
Streamlined方式でも、SmartScreen、証明書失効リスト、Windows Updateなどの接続先が別途必要になる場合があります。
旧URLを削除するのは、全対象端末の移行と機能検証が完了してからにしてください。
Advanced Featuresを有効にすれば既存端末も移行すると考える
IntuneやMicrosoft Defender for Cloud向けのStreamlined設定を有効にしても、既存端末が自動で再オンボードされるわけではありません。
既存端末には、新しいオンボーディングポリシーやスクリプトの適用が必要です。(Microsoft Learn)
パッケージを配布した時点で移行成功と判断する
ポリシーの配布成功は、クラウド接続の成功を保証しません。
ConnectivityType、Client Analyzer、SENSEイベント、ポータルのTimelineまで確認して、初めて移行完了と判断します。
StandardとStreamlinedのポリシーを重複させる
同じ端末に複数のオンボーディングポリシーを割り当てると、設定の競合や結果の判定ミスにつながります。
パイロット端末は従来ポリシーから除外し、どのパッケージが適用されているか追跡できる状態にします。(Microsoft Learn)
TLSインスペクションの除外を忘れる
URLが許可されていても、途中でTLS通信を復号して再暗号化すると、証明書ピンニングの検証に失敗する可能性があります。
ファイアウォールの許可ログだけでなく、プロキシやSecure Web Gatewayの復号設定も確認してください。
MMA端末を一括移行の対象に含める
Windows Server 2012 R2やWindows Server 2016では、モダン統合ソリューションへ移行済みの端末と、MMAを使用している端末が混在しやすくなります。
OSバージョンだけではなく、エージェント方式を棚卸ししてから移行対象を決定してください。(Microsoft Learn)
管理者が優先すべき対応
今回の情報に対して、管理者が優先すべき作業は次の順番です。
| 優先順位 | 対応 |
|---|---|
| 最優先 | *.endpoint.security.microsoft.comへの到達性を確認する |
| 最優先 | TLSインスペクションとユーザー認証付きプロキシの除外を確認する |
| 高 | Advanced Huntingで現在のConnectivityTypeを棚卸しする |
| 高 | MMA、古いWindows、統合エージェント利用端末を分類する |
| 中 | 各OS・各ネットワーク経路からパイロット端末を選ぶ |
| 中 | Streamlined用パッケージを小規模展開する |
| 中 | Client Analyzer、イベントログ、Timeline、検知テストで検証する |
| 低~中 | 全端末の検証後、不要になった旧URLルールを段階的に整理する |
既存のStandard端末が正常に動作している場合、緊急の全台移行は不要です。まず統合ドメインへの通信とTLSインスペクション除外を確認し、接続方式を棚卸ししてください。
その後、代表端末でStreamlined Connectivityを検証し、ConnectivityTypeと実際のテレメトリを確認しながら段階的に展開するのが、安全性と運用効率を両立できる進め方です。

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