Apacheでmod_cache_diskを使用したディスクキャッシュ設定完全ガイド

Apacheサーバーのパフォーマンス向上にはキャッシュの適切な設定が不可欠です。特にアクセス数の多いWebサイトやアプリケーションでは、キャッシュを活用することでサーバーの負荷を軽減し、ユーザーに対して高速な応答を提供できます。

Apacheにはさまざまなキャッシュモジュールがありますが、中でもmod_cache_diskは、キャッシュデータをディスク上に保存することでメモリ使用量を抑えつつ、高速な読み出しを可能にするモジュールです。これにより、動的なコンテンツを効率的にキャッシュし、再利用できるため、全体的なパフォーマンス向上に寄与します。

本記事では、mod_cache_diskの概要からインストール方法、具体的な設定方法、さらにはパフォーマンスを最適化するためのチューニング方法まで、詳細に解説します。Apacheサーバーをより高速化し、安定した運用を目指す方に向けた内容となっています。

目次
  1. mod_cache_diskとは?概要と利点
    1. mod_cache_diskの役割
    2. mod_cache_diskの利点
  2. mod_cacheとmod_cache_diskの違い
    1. mod_cacheの概要
    2. mod_cache_diskの役割
    3. 両者の主な違い
    4. mod_cache_diskの強み
  3. mod_cache_diskの導入準備
    1. 必要な環境と条件
    2. 事前確認
    3. 必要なパッケージのインストール
  4. mod_cache_diskのインストール方法
    1. Debian/Ubuntu系でのインストールと有効化
    2. CentOS/RHEL系でのインストールと有効化
    3. ソースコードからのインストール
    4. mod_cache_diskの有効化と動作確認
  5. キャッシュ設定の基本構成
    1. キャッシュディレクトリの作成
    2. Apacheの設定ファイルへのキャッシュ構成追加
    3. 設定パラメータの説明
    4. 設定の反映と確認
  6. キャッシュポリシーの設定方法
    1. キャッシュポリシーの基本構成
    2. 主要なディレクティブの説明
    3. 特定のMIMEタイプをキャッシュ対象にする
    4. 設定の反映
  7. パフォーマンス最適化のためのチューニング方法
    1. 1. キャッシュディレクトリ構成の最適化
    2. 2. キャッシュサイズの管理
    3. 3. 不要なキャッシュの除外
    4. 4. キャッシュコントロールヘッダーの適切な管理
    5. 5. 圧縮とキャッシュの併用
    6. 6. ファイルのプリキャッシュ
    7. 設定の反映
  8. トラブルシューティングとよくある問題
    1. 1. キャッシュが動作しない
    2. 2. キャッシュが更新されない
    3. 3. キャッシュヒット率が低い
    4. 4. 予期しないキャッシュ
    5. 5. エラーログの確認
    6. 設定の反映
  9. まとめ

mod_cache_diskとは?概要と利点


mod_cache_diskは、Apache HTTPサーバーのキャッシュモジュールで、リクエストされたコンテンツをディスクに保存することで、後続のリクエストに対して高速に応答する役割を果たします。これはApacheのキャッシュフレームワークであるmod_cacheのサブモジュールの一つであり、特に動的に生成されたコンテンツをキャッシュする際に有効です。

mod_cache_diskの役割


mod_cache_diskは、頻繁にアクセスされるコンテンツをディスク上に保存し、次回以降のリクエスト時にはキャッシュから直接コンテンツを提供します。これにより、バックエンドでの処理を回避でき、サーバーの負荷軽減と応答時間の短縮が可能となります。

mod_cache_diskの利点

  1. メモリの節約
    コンテンツをディスクに保存するため、大量のキャッシュを保持してもメモリの消費を抑えることができます。
  2. サーバー負荷の軽減
    同じリクエストに対して毎回バックエンドで処理を行う必要がなく、サーバーリソースの消費を減らします。
  3. 動的コンテンツのキャッシュ
    mod_cache_diskは静的コンテンツだけでなく、動的に生成されるページやAPIレスポンスなどもキャッシュ可能です。これにより、ユーザーの体感速度が向上します。
  4. スケーラビリティの向上
    トラフィックが増加した場合でも、キャッシュが存在することで負荷分散の効果が期待でき、サーバーの安定性が向上します。

mod_cache_diskの導入は、パフォーマンスを重視するApacheサーバーの運用において、大きなメリットをもたらします。次のセクションでは、mod_cache_diskと他のキャッシュモジュールの違いについて詳しく解説します。

mod_cacheとmod_cache_diskの違い


Apacheにはキャッシュ機能を提供する複数のモジュールが存在しますが、mod_cacheとmod_cache_diskはそれぞれ異なる役割を担っています。両者は密接に関連していますが、用途やキャッシュの保存場所に大きな違いがあります。

mod_cacheの概要


mod_cacheは、Apacheでキャッシュ機能を提供するフレームワークモジュールです。これ自体はキャッシュの具体的な保存方法を持たず、キャッシュのポリシーを定義する役割を果たします。mod_cacheは「キャッシュするかどうか」という判断を行いますが、キャッシュの保存場所や方法は他のサブモジュールが担当します。

mod_cache_diskの役割


mod_cache_diskは、mod_cacheのサブモジュールで、キャッシュをディスク上に保存する役割を担います。mod_cacheが「キャッシュ可能」と判断したデータは、mod_cache_diskによってディスク上に書き込まれ、再利用可能になります。

両者の主な違い

項目mod_cachemod_cache_disk
役割キャッシュポリシーを決定ディスクへのキャッシュ保存を担当
キャッシュの保存場所メモリまたは他のストレージモジュールディスク
主な用途静的および動的コンテンツの判別動的コンテンツの長期保存
メモリ使用量小(保存は他のモジュール依存)メモリ消費が少ない
キャッシュの持続性Apache再起動時に消える再起動後もキャッシュが保持される

mod_cache_diskの強み

  • 持続的なキャッシュ:サーバーが再起動してもキャッシュが失われないため、長期的なパフォーマンス向上に貢献します。
  • ディスク容量に応じたスケール:メモリに比べて容量の大きいディスクを活用することで、大量のキャッシュを保持可能です。

mod_cacheはキャッシュ戦略の全体設計を担い、mod_cache_diskが具体的な保存先として機能するという関係性を理解することが、効果的なキャッシュ運用の鍵となります。次のセクションでは、mod_cache_diskの導入準備について詳しく解説します。

mod_cache_diskの導入準備


mod_cache_diskを導入するには、Apache環境が適切に整備されている必要があります。導入にあたっては、モジュールの互換性やディスクの容量、適切なキャッシュディレクトリの準備が不可欠です。以下では、mod_cache_diskを使用するための事前準備について説明します。

必要な環境と条件


mod_cache_diskを使用するには、以下の環境と条件が満たされていることを確認してください。

  1. Apacheのインストール
  • Apache 2.4以降が推奨されます。
  • 最新のセキュリティアップデートが適用されていることを確認します。
  1. 必要なモジュール
  • mod_cache および mod_cache_disk モジュールがインストールされている必要があります。
  • 標準的なApacheのパッケージには含まれていることが多いですが、インストールされていない場合は追加で導入します。
  1. ディスク容量の確保
  • キャッシュ用のディレクトリを作成し、十分なディスク容量を確保します。
  • 推奨されるディレクトリパス例:
    /var/cache/apache2/
  • 少なくともアクセス頻度の高いコンテンツ分の容量が必要です。
  1. アクセス権限の設定
  • Apacheプロセスがキャッシュディレクトリに読み書きできるよう、適切な権限を設定します。
    sudo chown -R www-data:www-data /var/cache/apache2/ sudo chmod -R 755 /var/cache/apache2/

事前確認

  • モジュールの確認
    以下のコマンドでmod_cacheとmod_cache_diskが利用可能か確認します。
  apachectl -M | grep cache  


出力例:

  cache_module (shared)  
  cache_disk_module (shared)  


モジュールが存在しない場合は次の手順でインストールします。

必要なパッケージのインストール


Debian/Ubuntu系では以下のコマンドで必要なモジュールをインストールします。

sudo apt update  
sudo apt install apache2  
sudo a2enmod cache  
sudo a2enmod cache_disk  
sudo systemctl restart apache2  


CentOS/RHEL系では以下を使用します。

sudo yum install httpd  
sudo httpd -M | grep cache  

次のセクションでは、mod_cache_diskの具体的なインストール手順について詳しく解説します。

mod_cache_diskのインストール方法


mod_cache_diskのインストールは、Apacheサーバーに標準で用意されているモジュールを有効化することで簡単に行えます。ここでは、Debian/Ubuntu系およびCentOS/RHEL系の主要なLinuxディストリビューションごとに、インストールと有効化の手順を詳しく解説します。

Debian/Ubuntu系でのインストールと有効化

  1. Apacheのインストール(未インストールの場合)
   sudo apt update  
   sudo apt install apache2  
  1. 必要なモジュールの有効化
   sudo a2enmod cache  
   sudo a2enmod cache_disk  
  1. Apacheの再起動
   sudo systemctl restart apache2  
  1. インストール確認
    以下のコマンドでmod_cache_diskが正しく有効になっていることを確認します。
   apachectl -M | grep cache  


出力例:

   cache_module (shared)  
   cache_disk_module (shared)  

CentOS/RHEL系でのインストールと有効化

  1. Apacheのインストール(未インストールの場合)
   sudo yum install httpd  
  1. 必要なモジュールの確認
   sudo httpd -M | grep cache  


モジュールが存在しない場合は以下のコマンドでインストールします。

   sudo yum install mod_cache  
   sudo yum install mod_cache_disk  
  1. Apacheの再起動
   sudo systemctl restart httpd  
  1. インストール確認
   httpd -M | grep cache  


出力例:

   cache_module (shared)  
   cache_disk_module (shared)  

ソースコードからのインストール


ソースコードからApacheを構築している場合は、--enable-cache --enable-cache-diskオプションを使用してビルドします。

./configure --enable-cache --enable-cache-disk  
make  
sudo make install  

mod_cache_diskの有効化と動作確認


インストールが完了したら、Apacheの設定ファイル(/etc/apache2/apache2.conf/etc/httpd/conf/httpd.conf)に以下の記述を追加し、mod_cache_diskを有効化します。

<IfModule mod_cache_disk.c>  
    CacheRoot /var/cache/apache2/mod_cache_disk  
    CacheEnable disk /  
    CacheDirLevels 2  
    CacheDirLength 1  
</IfModule>  

次のセクションでは、キャッシュ設定の基本構成について詳しく説明します。

キャッシュ設定の基本構成


mod_cache_diskをApacheで利用するには、適切なキャッシュディレクトリの作成や設定ファイルの記述が必要です。このセクションでは、基本的なキャッシュ設定の方法について詳しく解説します。

キャッシュディレクトリの作成


キャッシュはディスク上の特定のディレクトリに保存されます。まずはキャッシュ用のディレクトリを作成し、Apacheが読み書きできるように権限を設定します。

  1. キャッシュディレクトリの作成
   sudo mkdir -p /var/cache/apache2/mod_cache_disk  
  1. 適切な権限の設定
    Apacheプロセス(通常はwww-dataまたはapacheユーザー)がこのディレクトリにアクセスできるようにします。
   sudo chown -R www-data:www-data /var/cache/apache2/mod_cache_disk  
   sudo chmod -R 755 /var/cache/apache2/mod_cache_disk  

Apacheの設定ファイルへのキャッシュ構成追加


キャッシュ設定はApacheのメイン設定ファイル(/etc/apache2/apache2.confや仮想ホスト設定ファイル)に追加します。
以下は基本的なキャッシュ設定の例です。

<IfModule mod_cache_disk.c>  
    # キャッシュルートディレクトリ  
    CacheRoot /var/cache/apache2/mod_cache_disk  

    # キャッシュを有効化するパス(ここではルート)  
    CacheEnable disk /  

    # キャッシュディレクトリの階層レベルと長さ  
    CacheDirLevels 2  
    CacheDirLength 1  

    # キャッシュサイズの最大値(例:500MB)  
    CacheMaxFileSize 524288000  

    # キャッシュの最小サイズ(1KB)  
    CacheMinFileSize 1024  

    # キャッシュの有効期限(1日)  
    CacheDefaultExpire 86400  

    # ヘッダーのキャッシュコントロールを無視しない設定  
    CacheIgnoreCacheControl Off  
    CacheIgnoreNoLastMod Off  
</IfModule>  

設定パラメータの説明

  • CacheRoot: キャッシュファイルを保存するディレクトリ。事前に作成しておく必要があります。
  • CacheEnable: mod_cache_diskを使用してキャッシュを有効にするディレクトリやURLを指定します。
  • CacheDirLevels: キャッシュディレクトリの階層レベルを指定します。階層が深いほど、多数のキャッシュファイルを管理しやすくなります。
  • CacheDirLength: 各ディレクトリの名前の長さを指定します。
  • CacheMaxFileSize: キャッシュするファイルの最大サイズをバイト単位で指定します。
  • CacheMinFileSize: 最小キャッシュサイズをバイト単位で指定します。
  • CacheDefaultExpire: キャッシュのデフォルト有効期限を秒単位で指定します。

設定の反映と確認


設定を反映するためにApacheを再起動します。

sudo systemctl restart apache2  

次のセクションでは、キャッシュポリシーの設定方法について詳しく解説します。

キャッシュポリシーの設定方法


mod_cache_diskを効果的に利用するためには、キャッシュポリシーを適切に設定し、どのコンテンツをキャッシュし、どの程度の期間保持するかを細かく制御する必要があります。このセクションでは、キャッシュポリシーの基本的な設定方法を解説します。

キャッシュポリシーの基本構成


キャッシュポリシーはApacheの設定ファイル(/etc/apache2/apache2.conf もしくは仮想ホスト設定ファイル)に記述します。以下は典型的なキャッシュポリシーの例です。

<IfModule mod_cache.c>  
    <IfModule mod_cache_disk.c>  
        CacheRoot /var/cache/apache2/mod_cache_disk  
        CacheEnable disk /  

        # キャッシュ対象から除外するファイルやパスの指定  
        CacheDisable /admin  
        CacheDisable /login  

        # デフォルトのキャッシュ有効期限(1日)  
        CacheDefaultExpire 86400  

        # ユーザーが設定したキャッシュヘッダーを尊重  
        CacheIgnoreCacheControl Off  
        CacheIgnoreNoLastMod Off  

        # 一定期間変更のないファイルをキャッシュ  
        CacheLastModifiedFactor 0.5  

        # ETagヘッダーを利用してキャッシュの再検証  
        CacheStoreExpired On  

        # キャッシュサイズの上限設定  
        CacheMaxFileSize 524288000  
        CacheMinFileSize 1024  
    </IfModule>  
</IfModule>  

主要なディレクティブの説明

  • CacheDisable: 指定したURLパスのキャッシュを無効にします。セキュリティ上、管理画面やログインページなどはキャッシュから除外するのが一般的です。
  • CacheDefaultExpire: キャッシュのデフォルト有効期限を秒単位で指定します。クライアントから明示的なキャッシュ制御ヘッダーがない場合に適用されます。
  • CacheIgnoreCacheControl: ユーザーのキャッシュ制御ヘッダーを無視するかどうかを設定します。Offの場合は尊重し、Onで無視します。
  • CacheIgnoreNoLastMod: Last-Modifiedヘッダーがない場合でもキャッシュを行うかどうかを制御します。
  • CacheLastModifiedFactor: Last-Modifiedの時間に対して、どの程度の期間キャッシュを保持するかを指定します。1.0で2倍の期間、0.5で半分の期間キャッシュされます。
  • CacheStoreExpired: 期限切れのキャッシュを保持するかどうかを設定します。Onにすると再検証までキャッシュを保持します。
  • CacheMaxFileSize: キャッシュ可能なファイルの最大サイズを指定します。
  • CacheMinFileSize: キャッシュするファイルの最小サイズを指定します。

特定のMIMEタイプをキャッシュ対象にする


特定のMIMEタイプをキャッシュ対象とするには、以下のように設定します。

<IfModule mod_cache.c>  
    <IfModule mod_cache_disk.c>  
        CacheRoot /var/cache/apache2/mod_cache_disk  
        CacheEnable disk /  

        <FilesMatch "\.(html|css|js|jpg|png|gif)$">  
            ExpiresDefault "access plus 1 week"  
        </FilesMatch>  
    </IfModule>  
</IfModule>  


これにより、HTML、CSS、JavaScript、画像ファイルがキャッシュされ、1週間保持されます。

設定の反映


設定を反映させるためにApacheを再起動します。

sudo systemctl restart apache2  

次のセクションでは、パフォーマンス最適化のためのチューニング方法について詳しく解説します。

パフォーマンス最適化のためのチューニング方法


mod_cache_diskの効果を最大限に引き出すためには、適切なチューニングが不可欠です。キャッシュヒット率を高め、ディスクI/Oの負荷を抑えつつ、応答時間を短縮するための具体的な設定方法を紹介します。

1. キャッシュディレクトリ構成の最適化


キャッシュディレクトリの構成を適切に設定することで、ディスクアクセスのパフォーマンスを向上させることができます。

CacheRoot /var/cache/apache2/mod_cache_disk  
CacheDirLevels 3  
CacheDirLength 2  
  • CacheDirLevels:キャッシュディレクトリの階層を設定します。3に設定することで、多くのファイルが一つのディレクトリに集中するのを防ぎ、ディスクアクセス速度が向上します。
  • CacheDirLength:ディレクトリ名の文字数を指定します。2に設定すると、サブディレクトリ名が2文字になります。

2. キャッシュサイズの管理


キャッシュがディスクを圧迫しないよう、キャッシュサイズの上限を設定します。

CacheMaxFileSize 104857600  # 100MB  
CacheMinFileSize 1024       # 1KB  
CacheDefaultExpire 604800   # 7日  
CacheMaxExpire 2592000      # 30日  
  • CacheMaxFileSize:キャッシュするファイルの最大サイズを設定します。大きすぎるファイルはキャッシュせず、バックエンドから直接提供します。
  • CacheMinFileSize:キャッシュするファイルの最小サイズを設定します。極端に小さいファイルはディスクI/Oに負荷をかけるため、キャッシュしません。
  • CacheMaxExpire:キャッシュの最大有効期限を設定します。古いキャッシュが溜まりすぎないように管理します。

3. 不要なキャッシュの除外


管理画面や動的なコンテンツはキャッシュ対象外にすることで、セキュリティや動作の安定性が向上します。

CacheDisable /admin  
CacheDisable /login  
CacheDisable /api  

4. キャッシュコントロールヘッダーの適切な管理


クライアント側のキャッシュ制御とサーバー側のキャッシュ設定を連携させることで、柔軟なキャッシュ運用が可能になります。

CacheIgnoreCacheControl Off  
CacheIgnoreNoLastMod Off  
CacheStoreExpired On  
  • CacheIgnoreCacheControl:クライアントのキャッシュ制御ヘッダーを尊重します。
  • CacheStoreExpired:期限切れのキャッシュも一時的に保存し、再検証リクエスト時に迅速に対応します。

5. 圧縮とキャッシュの併用


mod_deflateやmod_gzipと併用することで、転送量を削減し、キャッシュの有効性を高めます。

<IfModule mod_deflate.c>  
    AddOutputFilterByType DEFLATE text/html text/plain text/xml text/css text/javascript application/javascript  
</IfModule>  

6. ファイルのプリキャッシュ


特定の重要なファイルを事前にキャッシュすることで、ユーザーの初回アクセス時の応答速度を向上させます。

curl -s https://example.com/index.html > /dev/null  
curl -s https://example.com/main.css > /dev/null  

設定の反映


チューニング後は、Apacheを再起動して設定を反映させます。

sudo systemctl restart apache2  

次のセクションでは、トラブルシューティングとよくある問題について解説します。

トラブルシューティングとよくある問題


mod_cache_diskを導入後、キャッシュが期待通りに機能しない場合があります。キャッシュの不具合はサーバーのパフォーマンスやユーザーエクスペリエンスに影響を与えるため、迅速に対処することが重要です。このセクションでは、mod_cache_diskの動作確認方法や、発生しがちな問題とその対策について解説します。

1. キャッシュが動作しない


現象: キャッシュが機能せず、すべてのリクエストがバックエンドで処理されてしまう。
対策:

  1. モジュールが有効か確認
   apachectl -M | grep cache  


出力にcache_modulecache_disk_moduleが表示されているか確認します。
解決策: 表示されていない場合は、以下のコマンドでモジュールを有効化します。

   sudo a2enmod cache  
   sudo a2enmod cache_disk  
   sudo systemctl restart apache2  
  1. キャッシュディレクトリのパーミッション確認
   ls -ld /var/cache/apache2/mod_cache_disk  


Apacheがこのディレクトリに書き込み可能であることを確認します。
解決策:

   sudo chown -R www-data:www-data /var/cache/apache2/mod_cache_disk  
   sudo chmod -R 755 /var/cache/apache2/mod_cache_disk  

2. キャッシュが更新されない


現象: キャッシュが古いまま保持され、新しいコンテンツが表示されない。
対策:

  1. Cache-Controlヘッダーを確認
    クライアント側がCache-Control: no-cacheを送信している場合、キャッシュが更新されません。Apacheログで該当ヘッダーを確認します。
   tail -f /var/log/apache2/access.log  


解決策:
CacheIgnoreCacheControl Onを設定してクライアントのキャッシュ制御を無視する。

   CacheIgnoreCacheControl On  
  1. 強制的にキャッシュをクリア
   sudo rm -rf /var/cache/apache2/mod_cache_disk/*  
   sudo systemctl restart apache2  

3. キャッシュヒット率が低い


現象: キャッシュが存在していても、ヒット率が低くなかなか再利用されない。
対策:

  1. キャッシュ対象を確認
   CacheEnable disk /  


/がキャッシュ対象になっているか確認します。特定のパスが除外されている場合、適宜調整します。

   CacheDisable /admin  
  1. CacheLastModifiedFactorを調整
    キャッシュ保持期間が短すぎる可能性があります。
   CacheLastModifiedFactor 0.7  

4. 予期しないキャッシュ


現象: 本来キャッシュしたくないページがキャッシュされてしまう。
対策:

  1. 特定のパスをキャッシュから除外
   CacheDisable /admin  
   CacheDisable /login  


管理画面やログインページはキャッシュから除外します。

  1. Cookie付きのリクエストをキャッシュしない
    セッションが絡むページはCookieによって動作が変わることが多いため、Cookie付きリクエストのキャッシュを無効にします。
   CacheIgnoreHeaders Set-Cookie  

5. エラーログの確認


キャッシュ関連の問題が発生した場合は、エラーログを確認します。

tail -f /var/log/apache2/error.log  


cache_disk:errorが出力されている場合、キャッシュディレクトリのパーミッションやディスク容量を確認してください。

設定の反映


問題が解消したらApacheを再起動し、設定を反映させます。

sudo systemctl restart apache2  

次のセクションでは、記事のまとめとして全体を振り返ります。

まとめ


本記事では、Apacheでmod_cache_diskを使用してディスクベースのキャッシュを設定する方法について解説しました。mod_cache_diskは、ディスク上にキャッシュを保存することでメモリ消費を抑えつつ、サーバーのパフォーマンス向上に貢献します。

mod_cacheとmod_cache_diskの役割の違いを理解し、適切なキャッシュディレクトリの構築、キャッシュポリシーの設定、そしてパフォーマンスチューニングを行うことで、効率的なキャッシュ運用が可能になります。また、トラブルシューティング方法を把握しておくことで、予期しない問題にも迅速に対応できるようになります。

適切なキャッシュ管理は、サーバーの負荷を軽減し、ユーザーに高速な応答を提供するための重要な要素です。mod_cache_diskの導入と最適化を通じて、安定したWebサーバー運用を実現しましょう。

コメント

コメントする

目次
  1. mod_cache_diskとは?概要と利点
    1. mod_cache_diskの役割
    2. mod_cache_diskの利点
  2. mod_cacheとmod_cache_diskの違い
    1. mod_cacheの概要
    2. mod_cache_diskの役割
    3. 両者の主な違い
    4. mod_cache_diskの強み
  3. mod_cache_diskの導入準備
    1. 必要な環境と条件
    2. 事前確認
    3. 必要なパッケージのインストール
  4. mod_cache_diskのインストール方法
    1. Debian/Ubuntu系でのインストールと有効化
    2. CentOS/RHEL系でのインストールと有効化
    3. ソースコードからのインストール
    4. mod_cache_diskの有効化と動作確認
  5. キャッシュ設定の基本構成
    1. キャッシュディレクトリの作成
    2. Apacheの設定ファイルへのキャッシュ構成追加
    3. 設定パラメータの説明
    4. 設定の反映と確認
  6. キャッシュポリシーの設定方法
    1. キャッシュポリシーの基本構成
    2. 主要なディレクティブの説明
    3. 特定のMIMEタイプをキャッシュ対象にする
    4. 設定の反映
  7. パフォーマンス最適化のためのチューニング方法
    1. 1. キャッシュディレクトリ構成の最適化
    2. 2. キャッシュサイズの管理
    3. 3. 不要なキャッシュの除外
    4. 4. キャッシュコントロールヘッダーの適切な管理
    5. 5. 圧縮とキャッシュの併用
    6. 6. ファイルのプリキャッシュ
    7. 設定の反映
  8. トラブルシューティングとよくある問題
    1. 1. キャッシュが動作しない
    2. 2. キャッシュが更新されない
    3. 3. キャッシュヒット率が低い
    4. 4. 予期しないキャッシュ
    5. 5. エラーログの確認
    6. 設定の反映
  9. まとめ