お気に入りのゲームを臨場感たっぷりの5.1サラウンドで楽しみたいと考える方は多いでしょう。しかし、Xbox Series S本体には光デジタル端子がなく、従来のケーブルを使った方法ではうまくサラウンド音声が出力できずに戸惑う方もいます。この記事では、その問題を解決するさまざまな方法と注意点を詳しく解説します。
Xbox Series Sで5.1サラウンドを楽しむための前提知識
Xbox Series Sを使って5.1サラウンドを出すには、基本的にHDMI経由のデジタル音声を活用する必要があります。旧来のXbox 360や初期のXbox Oneモデルには光デジタル(SPDIF)端子が付いていましたが、Xbox Series SやXbox Series Xではコストや設計の簡素化のために省略されました。そのため、従来と同じように光ケーブルを直接接続する方法は使えません。
ただし、HDMIを使えばより高品質な音声フォーマット(Dolby AtmosやDTS:Xなど)にも対応しやすくなるため、長期的にはメリットが大きいともいえます。重要なのは、テレビやAVアンプなどの機器がHDMI経由で5.1サラウンドのパススルーを正しく行っているかどうか、という点です。
サラウンド音声の流れを理解する
5.1サラウンド(ドルビー・デジタルやDTSなど)は、音声を「前方左右」「中央」「後方左右」「サブウーファー」の計6チャンネルに分けて出力します。Xbox Series Sでは、このマルチチャンネル音声をHDMIケーブルに乗せて転送しています。そこからテレビを経由するか、または直接AVアンプ・サウンドバーに接続するかで出力方法が異なります。
HDMIで転送される音声フォーマット
- ステレオUncompressed:2チャンネルの非圧縮オーディオ。テレビのスピーカーで再生するときや、5.1サラウンドに対応していない機器に接続するときに選択されます。
- 5.1 Uncompressed:5.1チャンネルの非圧縮オーディオ(リニアPCM)。AVアンプなどが対応していれば高音質を楽しめます。
- 7.1 Uncompressed:7.1チャンネルの非圧縮オーディオ(リニアPCM)。より多くのスピーカー環境で迫力のサウンドが楽しめます。
- ビットストリーム形式(Dolby Digital / DTS / Dolby Atmos など):圧縮形式で送信する方法。機器側でデコードできる場合、チャンネル数や音声フォーマットに合わせて最適なサラウンドが再生可能です。
Xbox本体の[設定]→[音声]→[音声出力]から、これらの音声形式を切り替えられますが、接続先のテレビやアンプが対応していないフォーマットは選択肢に表示されない場合があります。
光デジタル端子が廃止された背景
昔ながらの光デジタルケーブルは、AV機器間のサラウンド伝送の定番でした。しかし、HDMIが普及すると、1本のケーブルで映像と音声の両方を高音質・高画質で扱えるようになりました。そのため、Xbox Series X|Sから光デジタル出力が省かれたのです。
Xbox Oneの初期モデルやXbox 360を利用していた方にとっては「光端子が当たり前」だっただけに、戸惑うかもしれません。もし既存のサウンドシステムが光接続専用であれば、後述のHDMIオーディオスプリッターなどを活用しないと接続が難しくなる場合があります。
テレビ経由で5.1サラウンドを出力する方法
最も一般的な方法は、「Xbox Series S → (HDMI) → テレビ → (光/ARC/eARCなど) → AVアンプやサウンドバー」という流れです。この構成で5.1サラウンドを実現できるかどうかは、テレビの音声出力設定に大きく依存します。
テレビの光デジタル端子(SPDIF)を使う
下記のようなステップで接続・設定します。
- Xbox Series Sをテレビに接続
HDMIケーブルでXboxをテレビの対応HDMIポートに差し込みます。 - テレビの音声出力設定を変更
テレビのサウンド設定で「外部スピーカー(光出力)」や「デジタル音声出力」などの項目を探し、パススルー可能なモードに切り替えます。機種によって呼び名や場所は異なりますが、音声出力を「Auto」や「Bitstream」にする場合もあります。 - テレビからアンプへの光ケーブルを接続
テレビ側の光デジタル(OPTICAL)端子を使って、AVアンプやサウンドバーの光デジタル入力へケーブルを接続します。 - テレビ側でパススルーが有効か確認
テレビの詳細メニューで「Dolby Digitalパススルー」や「PCM変換しないでそのまま出力」などの選択肢がある場合は、それをオンにします。 - Xbox側のオーディオ設定を確認
Xboxの音声設定メニューで、ビットストリーム出力やDolby Digital 5.1、DTSなどが選択できるかを確認します。もし選択肢がステレオのみなら、テレビ側の設定が正しくできていない可能性があります。
ARCまたはeARC対応端子を使う
テレビにHDMI ARC(Audio Return Channel)やeARC(Enhanced Audio Return Channel)がある場合、次の手順で設定すると、より高音質でのサラウンド再生が可能です。
- Xbox Series SをARC/eARC対応HDMI端子に接続
テレビの背面や側面に「ARC」「eARC」などと表記されたHDMIポートがあれば、そこにXboxからのHDMIケーブルを差します。 - テレビのARC/eARC出力からAVアンプへHDMI接続
テレビの「HDMI出力(ARC/eARC対応端子)」から、AVアンプのHDMI入力へケーブルをつなぎます。サウンドバーの場合も同様です。 - テレビ側の設定
テレビの設定でARCまたはeARCを有効にし、「音声パススルー」をオンにします。eARC対応のテレビとアンプ(またはサウンドバー)なら、ドルビーアトモスやDTS:Xなどハイレゾ級の音声伝送も可能になることがあります。 - AVアンプ側の設定
アンプがテレビから送られてくるオーディオ信号を正しくデコードできるように、アンプのHDMI入力設定を確認してください。ARC入力を有効にしたり、アンプがDolbyやDTSを自動認識するように設定を行います。 - Xboxのオーディオ出力を選択
最後に、Xboxのオーディオ設定で「ビットストリーム出力(Dolby Digital or DTS)」または「5.1 Uncompressed」を選択し、アンプでマルチチャンネルを再生できるか確かめましょう。
AVアンプに直接接続してHDMIパススルーを利用する
5.1サラウンド再生においてもっとも安心かつ確実なのが、XboxをAVアンプのHDMI入力に直接接続する方法です。多くのAVアンプはHDMI入力を複数備えており、入力された映像をパススルーでテレビへ出力できます。
配線例
[Xbox Series S HDMI Out]
↓
[AVアンプ HDMI In]
↓ (内部で音声をデコード)
[AVアンプ HDMI Out]
↓
[テレビ HDMI In]
この方法であれば、AVアンプが直接Xbox Series Sからの音声フォーマットを認識できるので、5.1や7.1、あるいはDolby Atmosなどが選択しやすくなります。Xboxの音声設定でステレオしか選べない場合は、アンプ側で「EDID設定」や「HDMIコントロール」がオフになっていないかチェックし、必要に応じて「受信側の音声対応を正しく伝える」設定を見直すとよいでしょう。
ビットストリームとリニアPCMの違い
- リニアPCM(5.1 Uncompressed/7.1 Uncompressed)
Xboxが音声をデコードし、アンプに非圧縮マルチチャンネルデータとして送ります。AVアンプ側はデコードではなくD/A変換を行うだけとなります。 - ビットストリーム(Dolby Digital/DTSなど)
Xboxは音声データを圧縮フォーマットのままアンプに送信し、アンプがデコード処理を行ってサラウンド再生します。
アンプ側の機能を活用したい場合はビットストリーム出力を選ぶと良いですし、Xboxがデコードした高音質なリニアPCMを送りたい場合はUncompressedを選ぶのがおすすめです。
「テレビがステレオしか対応していない」と表示されるケース
Xboxの設定画面で5.1や7.1が選べず、ステレオしか選べない原因として、テレビの音声出力設定がビットストリームやパススルーに対応していないことが考えられます。また、古いテレビの場合、内部で強制的にステレオ変換してしまう仕様も珍しくありません。
パススルー設定の確認
テレビの音声メニューに「パススルー設定」「自動」などの項目があればオンにしてみましょう。機種によっては「RAW」「Bitstream」などという文言で設定されている場合もあります。
HDMI端子のEDIDを手動で設定できるテレビもある
一部のハイエンドテレビやPCモニターには、HDMI EDIDを切り替えるオプションが用意されていることがあります。設定画面で「Dolby Digital対応」「DTS対応」などの項目を有効にすると、Xboxが5.1を認識するようになる場合があります。
HDMIオーディオスプリッターを使った5.1出力
もしテレビが5.1のパススルーに非対応だったり、古いサウンドシステムしかない場合は、HDMIオーディオスプリッター(HDMI音声分離器)を利用する方法があります。これはHDMI信号から音声部分だけを抽出し、光デジタルやアナログRCA、3.5mm端子などに出力できる機器です。
オーディオスプリッター導入のポイント
- 5.1ch対応かどうか
スプリッターによっては2ch(ステレオ)までしか対応していない安価なものもあります。購入時に「Dolby Digital 5.1対応」「DTS対応」などの記載があるか要チェックです。 - HDMIバージョン
最新のゲーム機能に対応するにはHDMI 2.0以上(4K/60Hz)やHDMI 2.1(4K/120Hz、VRRなど)に対応しているかどうかも重要です。4K120HzやHDRを使いたい場合、対応機器を選ぶ必要があります。 - ビットストリームパススルーの可否
一部のスプリッターはビットストリーム音声を正しくパススルーできない場合があります。「Dolby Atmosなどの高度な音声フォーマットは不可」などの制限があることも。仕様を必ず確認しましょう。
スプリッター利用時の接続例
機器 | 接続端子 | 説明 |
---|---|---|
Xbox Series S | HDMI OUT | Xboxから映像と音声をHDMIで出力 |
HDMIオーディオスプリッター | HDMI IN | XboxのHDMIを入力し、内部で音声を分離 |
HDMIオーディオスプリッター | HDMI OUT | 映像信号をテレビへパススルー |
HDMIオーディオスプリッター | 光デジタル OUTなど | 光ケーブルやRCAケーブルなどでサウンドシステムへ5.1音声を出力する |
スプリッターを介することで、古いサウンドシステムでも5.1を楽しめる可能性があります。ただし、機器によっては高リフレッシュレートやHDRが非対応になる恐れがあるため、ゲーミング用途としては多少の制限が伴うかもしれません。
具体的な設定の流れ:例
下記は、Xbox Series Sを使って5.1サラウンドを出したい場合の一例です。あなたの環境に近いシナリオで試してみてください。
- テレビとAVアンプの仕様を確認する
- テレビがARC/eARC対応かどうか
- テレビが光デジタル出力を5.1パススルーに対応しているか
- AVアンプがHDMI入力を複数備えているか、または光デジタル入力の5.1デコード対応か
- 最適な接続パターンを選ぶ
- 直接AVアンプにHDMI接続→テレビに映像出力が最も確実
- テレビ経由(光出力やARC/eARC)でアンプへ送る
- スプリッターを利用する
- Xbox Series Sの設定を変更
- [設定]→[一般]→[音声出力]→[スピーカーオーディオ]
- 5.1 Uncompressed、7.1 Uncompressed、またはビットストリーム(Dolby Digital、DTS)を選択
- テスト再生で5.1が正しく鳴っているかチェック
- トラブルがあれば、各機器の設定を再確認
- テレビの音声出力がステレオ固定になっていないか
- アンプの入力ソースやデコードモードが正しく設定されているか
- HDMIケーブルのバージョンは十分か(古いケーブルでは高帯域が通らず不具合が出る可能性あり)
サラウンド設定時の注意点とトラブルシューティング
サラウンド環境を整えるには複数の機器間でのやりとりが必要です。そのため、小さな設定ミスやケーブルの不良でも音が出なかったり、ステレオにダウンミックスされてしまうことがあります。
よくあるトラブルと解決策
- ステレオにしかならない
- テレビまたはアンプが5.1を認識していない可能性。テレビの「音声フォーマット設定」を見直す。
- HDMIケーブルが古く、正常にやり取りできていない場合も。HDMI 2.0以上に交換してみる。
- 音が出ない、映像だけ映る
- ARC/eARCケーブルの接続が逆になっているかも。HDMIの方向に注意。
- アンプで入力ソースが誤っていないか確認。モニター出力との切り替えが必要なアンプもある。
- ノイズが入る、音割れする
- 光ケーブルでのパススルーに特有のノイズが入る場合あり。フェライトコアでノイズを抑える手段も検討。
- ビットストリームとリニアPCMの切り替えを試すと改善するケースも。
- Dolby AtmosやDTS:Xが選択できない
- テレビまたはアンプがAtmosやDTS:Xに対応していない。
- Xboxのアップデートが必要な場合もあるので、常に最新バージョンにする。
- ライセンスの関係でアプリをインストールする必要がある(Dolby Accessアプリなど)。
AVアンプを使う際のヒント
- Xbox Series S → (HDMI) → AVアンプ → (HDMI OUT) → テレビの構成が最もトラブルが少ない。
- AVアンプ側で「Audio Return Channel」を使わない設定にすると余計なハンドシェイクが減り、スムーズに音声を取り込める場合もある。
- アンプのEDIDが正しく機能していないときは、一度アンプやXboxの電源を切ってから再起動し、接続し直すと認識し直してくれることが多い。
まとめ
Xbox Series Sで5.1サラウンドを出したい場合のポイントを振り返ると、以下が重要です。
- 光デジタル出力を廃止しているため、HDMIを使った接続が基本
- テレビの音声パススルー(光出力またはARC/eARC)を活用するか、AVアンプに直接HDMIを挿すのが一番確実
- テレビやAVアンプの設定メニューでパススルーや音声フォーマット対応を必ず確認し、Xbox本体で5.1が選択できるようにする
- どうしても5.1が出せない場合、HDMIオーディオスプリッターなどを使って音声を分離し、サウンドシステムに接続する方法もある
- Xbox Series Sの[音声出力]設定で「5.1 Uncompressed」や「Dolby Digital(ビットストリーム)」などを選び、きちんとチャンネルが振り分けられているかテストする
これらを押さえておけば、Xbox Series Sで迫力あるサラウンド体験を楽しむことができるでしょう。高画質なゲーム映像と立体感のある音響が合わされば、まさに“そこにいる”かのような没入感が得られます。ぜひ自分に合った接続方法を見つけて、ゲームの世界観をより深く味わってください。
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