JavaScriptツリーシェイキングで未使用コードを削減する方法

JavaScriptのツリーシェイキングは、未使用のコードを削除してバンドルサイズを小さくし、ロード時間を短縮するための最適化技術です。この手法は、特にモダンなJavaScriptフレームワークやライブラリで広く採用されており、効率的なアプリケーション開発に不可欠です。本記事では、ツリーシェイキングの基本概念から、具体的な実装方法、最適化のテクニック、そして発生しうる問題とその対策について詳細に解説します。これにより、開発者はより軽量で高速なWebアプリケーションを構築するための知識を習得できます。

目次
  1. ツリーシェイキングとは
  2. ツリーシェイキングの仕組み
    1. 依存関係グラフの作成
    2. 静的解析
    3. デッドコードの除去
    4. 最適化されたバンドルの生成
  3. 未使用コードの問題点
    1. バンドルサイズの増加
    2. メンテナンスの複雑化
    3. セキュリティリスクの増加
    4. パフォーマンスの低下
  4. ツリーシェイキングのメリット
    1. バンドルサイズの削減
    2. パフォーマンスの向上
    3. メンテナンス性の向上
    4. セキュリティの強化
    5. リリースサイクルの短縮
  5. ツリーシェイキングの実装方法
    1. モジュールバンドラーの選定
    2. プロジェクトの設定
    3. Webpackの設定
    4. Babelの設定
    5. コードのエクスポート方法の最適化
    6. ビルドの実行
  6. Webpackを用いたツリーシェイキング
    1. プロジェクトの初期設定
    2. Webpackの設定ファイル
    3. Babelの設定ファイル
    4. ソースコードの準備
    5. ビルドの実行
    6. ビルド結果の確認
  7. Babelとの併用
    1. Babelの役割
    2. Babelの設定
    3. Webpackとの統合
    4. ツリーシェイキングの効果を確認する
    5. 注意点
  8. ツリーシェイキングの最適化
    1. モジュールのエクスポート方法の工夫
    2. デッドコードの削除
    3. モジュールバンドラーの設定の最適化
    4. コードスプリッティングの活用
  9. ツリーシェイキングの限界
    1. 動的コードの解析が困難
    2. サードパーティライブラリの非対応
    3. 未使用コードの誤検出
    4. 複雑なコードベースでの限界
    5. ビルド時間の増加
    6. ツリーシェイキングの限界を補う方法
  10. ツリーシェイキングのトラブルシューティング
    1. ツリーシェイキングが機能しない場合
    2. 削除されるべきコードが残っている場合
    3. 必要なコードが削除されてしまう場合
    4. ビルドサイズが期待通りに減少しない場合
  11. まとめ

ツリーシェイキングとは

ツリーシェイキングは、JavaScriptのコードベースから未使用のコードを自動的に削除するプロセスを指します。この技術は、モジュールバンドラーによってサポートされており、特にWebpackやRollupといったツールが代表的です。ツリーシェイキングは、ソースコードの依存関係グラフを解析し、使用されていないモジュールや関数を特定して排除します。これにより、生成されるバンドルのサイズが小さくなり、パフォーマンスが向上します。ツリーシェイキングの基本原則は、静的解析に基づいてコードの利用状況を把握することであり、動的にインポートされるコードには対応できない場合もあります。これにより、アプリケーションの読み込み速度が向上し、ユーザーエクスペリエンスの向上にも寄与します。

ツリーシェイキングの仕組み

ツリーシェイキングは、モジュールの依存関係を解析し、不要なコードを除去することで機能します。以下はその基本的な仕組みです。

依存関係グラフの作成

ツリーシェイキングはまず、ソースコード全体の依存関係グラフを作成します。このグラフは、各モジュールが他のどのモジュールに依存しているかを示します。依存関係が明確になることで、どのコードが実際に使用されているかを判断できます。

静的解析

静的解析とは、コードを実行することなく、その構造や意味を解析する手法です。ツリーシェイキングでは、静的解析を用いてモジュール内の関数や変数の使用状況を調査し、実際に使用されている部分と未使用部分を特定します。

デッドコードの除去

静的解析の結果に基づき、未使用のコード(デッドコード)が特定されます。このデッドコードは最終的なバンドルから削除されます。これにより、バンドルサイズが小さくなり、効率的なコードが生成されます。

最適化されたバンドルの生成

最後に、不要なコードが除去された最適化されたバンドルが生成されます。このバンドルは、必要な部分のみを含んでいるため、サイズが小さく、読み込み時間が短縮されます。

ツリーシェイキングは、このようにして不要なコードを自動的に除去することで、アプリケーションのパフォーマンスを向上させる効果的な手法です。

未使用コードの問題点

未使用コードが存在すると、さまざまな問題が発生します。以下に、その具体的な問題点を説明します。

バンドルサイズの増加

未使用のコードがバンドルに含まれると、ファイルサイズが大きくなります。これにより、アプリケーションのロード時間が延び、ユーザーエクスペリエンスが低下します。特にモバイル環境では、ネットワーク速度が遅いため、バンドルサイズの増加は大きな影響を与えます。

メンテナンスの複雑化

未使用コードが多いと、プロジェクトのメンテナンスが複雑になります。開発者はどのコードが実際に使用されているのかを把握するのが難しくなり、バグの原因を特定するのにも時間がかかります。これにより、開発効率が低下し、新機能の追加やバグ修正が困難になります。

セキュリティリスクの増加

未使用のコードが含まれていると、潜在的なセキュリティホールが残る可能性があります。攻撃者は、未使用のコードを悪用してシステムに侵入する手段を見つけるかもしれません。これにより、アプリケーション全体のセキュリティが脅かされるリスクが増加します。

パフォーマンスの低下

未使用コードが実行時にロードされることで、メモリ消費が増加し、アプリケーションのパフォーマンスが低下します。不要な関数やモジュールがメモリ上に存在することで、実行時のリソース消費が増え、全体的な動作が遅くなります。

未使用コードは、これらの理由から可能な限り除去することが重要です。ツリーシェイキングを利用することで、これらの問題を効果的に解決し、効率的なアプリケーションを構築することができます。

ツリーシェイキングのメリット

ツリーシェイキングを導入することで、多くの利点を享受できます。以下にその具体的なメリットを紹介します。

バンドルサイズの削減

ツリーシェイキングにより、未使用のコードが除去されるため、生成されるバンドルのサイズが小さくなります。これにより、ユーザーはアプリケーションを迅速にロードでき、全体的なユーザーエクスペリエンスが向上します。

パフォーマンスの向上

不要なコードが除去されることで、メモリ使用量が減少し、実行時のパフォーマンスが向上します。特に大規模なアプリケーションでは、動作が軽快になり、レスポンスが速くなります。

メンテナンス性の向上

コードベースが簡潔で整理されているため、メンテナンスが容易になります。開発者は、実際に使用されているコードだけに集中できるため、バグの特定や修正、新機能の追加がスムーズに行えます。

セキュリティの強化

未使用のコードが削除されることで、潜在的なセキュリティホールが減少します。これにより、アプリケーション全体のセキュリティが向上し、攻撃者による不正アクセスのリスクが低減します。

リリースサイクルの短縮

バンドルサイズが小さくなり、コードの複雑性が減るため、ビルドやデプロイの時間が短縮されます。これにより、リリースサイクルが短くなり、新しい機能や修正を迅速にユーザーに提供できます。

ツリーシェイキングは、これらのメリットを通じて、開発者が効率的かつ安全に高性能なアプリケーションを構築する手助けをします。導入することで、プロジェクト全体の品質とユーザー満足度が向上します。

ツリーシェイキングの実装方法

ツリーシェイキングを実装するには、モジュールバンドラーを適切に設定することが重要です。以下に、一般的な手順と設定方法を説明します。

モジュールバンドラーの選定

ツリーシェイキングをサポートする主要なモジュールバンドラーには、WebpackやRollupなどがあります。これらのツールは、依存関係の解析と不要なコードの削除を自動的に行います。ここでは、Webpackを例に説明します。

プロジェクトの設定

まず、プロジェクトに必要な依存関係をインストールします。以下のコマンドを使用して、Webpackと関連プラグインをインストールします。

npm install --save-dev webpack webpack-cli babel-loader @babel/core @babel/preset-env

Webpackの設定

次に、Webpackの設定ファイル(webpack.config.js)を作成し、以下のように設定します。

const path = require('path');

module.exports = {
  mode: 'production',
  entry: './src/index.js',
  output: {
    filename: 'bundle.js',
    path: path.resolve(__dirname, 'dist'),
  },
  module: {
    rules: [
      {
        test: /\.js$/,
        exclude: /node_modules/,
        use: {
          loader: 'babel-loader',
          options: {
            presets: ['@babel/preset-env'],
          },
        },
      },
    ],
  },
  optimization: {
    usedExports: true,
  },
};

Babelの設定

Babelを使用してES6モジュールをトランスパイルします。プロジェクトのルートに.babelrcファイルを作成し、以下のように設定します。

{
  "presets": ["@babel/preset-env"]
}

コードのエクスポート方法の最適化

ツリーシェイキングを最大限に活用するためには、ES6モジュールのimportexport構文を使用します。以下の例は、モジュールをエクスポートする方法です。

// utils.js
export function add(a, b) {
  return a + b;
}

export function subtract(a, b) {
  return a - b;
}
// index.js
import { add } from './utils';

console.log(add(2, 3));

この設定により、subtract関数が使用されていないため、最終的なバンドルから除去されます。

ビルドの実行

最後に、以下のコマンドを使用してプロジェクトをビルドします。

npx webpack --config webpack.config.js

この手順に従うことで、ツリーシェイキングが適用された最適化されたバンドルが生成されます。ツリーシェイキングの効果を確認し、必要に応じて設定を調整してください。

Webpackを用いたツリーシェイキング

Webpackは、JavaScriptアプリケーションのモジュールバンドラーとして広く使用されており、ツリーシェイキングの機能も強力にサポートしています。ここでは、Webpackを用いてツリーシェイキングを設定する具体的な手順を説明します。

プロジェクトの初期設定

まず、プロジェクトのディレクトリを作成し、必要なパッケージをインストールします。

mkdir my-project
cd my-project
npm init -y
npm install --save-dev webpack webpack-cli babel-loader @babel/core @babel/preset-env

Webpackの設定ファイル

プロジェクトのルートディレクトリにwebpack.config.jsというファイルを作成し、以下のように設定します。

const path = require('path');

module.exports = {
  mode: 'production', // productionモードに設定することでツリーシェイキングが有効になります
  entry: './src/index.js', // エントリーポイントを指定
  output: {
    filename: 'bundle.js', // 出力されるファイル名
    path: path.resolve(__dirname, 'dist'), // 出力先のディレクトリ
  },
  module: {
    rules: [
      {
        test: /\.js$/, // 拡張子が.jsのファイルに対して
        exclude: /node_modules/, // node_modulesディレクトリは除外
        use: {
          loader: 'babel-loader', // Babelローダーを使用
          options: {
            presets: ['@babel/preset-env'], // Babelのプリセットを指定
          },
        },
      },
    ],
  },
  optimization: {
    usedExports: true, // ツリーシェイキングを有効にする設定
  },
};

Babelの設定ファイル

プロジェクトのルートディレクトリに.babelrcファイルを作成し、以下のように設定します。

{
  "presets": ["@babel/preset-env"]
}

ソースコードの準備

srcディレクトリを作成し、その中に以下のファイルを作成します。

// src/utils.js
export function add(a, b) {
  return a + b;
}

export function subtract(a, b) {
  return a - b;
}
// src/index.js
import { add } from './utils';

console.log(add(2, 3));

この例では、subtract関数は使用されていないため、ツリーシェイキングによって最終的なバンドルから除去されます。

ビルドの実行

以下のコマンドを使用してプロジェクトをビルドします。

npx webpack --config webpack.config.js

ビルドが完了すると、distディレクトリに最適化されたbundle.jsが生成されます。このファイルには、使用されているコードのみが含まれています。

ビルド結果の確認

ビルド後、dist/bundle.jsを確認してみましょう。未使用のsubtract関数がバンドルに含まれていないことを確認できます。これにより、バンドルサイズが削減され、パフォーマンスが向上します。

以上が、Webpackを用いたツリーシェイキングの具体的な手順です。これにより、未使用のコードを効果的に削除し、効率的なアプリケーションを構築することができます。

Babelとの併用

ツリーシェイキングを効果的に実施するためには、Babelとの併用が重要です。BabelはJavaScriptのトランスパイラとして広く使用されており、最新のJavaScript構文を古いブラウザでも動作するように変換します。以下に、Babelとツリーシェイキングを併用する方法を詳しく説明します。

Babelの役割

Babelは、ES6以降のモジュール構文(importexport)を維持しながら、その他の最新のJavaScript構文を古いバージョンに変換します。これにより、ツリーシェイキングをサポートするモジュールバンドラー(例えばWebpack)が未使用コードの除去を行いやすくなります。

Babelの設定

Babelを使用するためには、まずプロジェクトに必要なパッケージをインストールします。

npm install --save-dev @babel/core @babel/preset-env babel-loader

次に、Babelの設定ファイルを作成します。プロジェクトのルートディレクトリに.babelrcファイルを作成し、以下のように設定します。

{
  "presets": ["@babel/preset-env"]
}

この設定により、BabelはES6以降の構文をトランスパイルしつつ、モジュール構文を維持します。

Webpackとの統合

WebpackとBabelを連携させるために、Webpackの設定ファイル(webpack.config.js)にBabelローダーを追加します。以下に設定例を示します。

const path = require('path');

module.exports = {
  mode: 'production',
  entry: './src/index.js',
  output: {
    filename: 'bundle.js',
    path: path.resolve(__dirname, 'dist'),
  },
  module: {
    rules: [
      {
        test: /\.js$/,
        exclude: /node_modules/,
        use: {
          loader: 'babel-loader',
          options: {
            presets: ['@babel/preset-env'],
          },
        },
      },
    ],
  },
  optimization: {
    usedExports: true,
  },
};

この設定により、WebpackはBabelを使用してJavaScriptファイルをトランスパイルし、ツリーシェイキングを有効にします。

ツリーシェイキングの効果を確認する

BabelとWebpackの設定が完了したら、以下のコマンドを使用してプロジェクトをビルドします。

npx webpack --config webpack.config.js

ビルドが完了すると、生成されたバンドルファイルから未使用のコードが削除されていることを確認できます。

注意点

Babelとツリーシェイキングを併用する際には、以下の点に注意してください。

  1. モジュール構文の維持@babel/preset-envの設定で、モジュールのトランスパイルを避ける必要があります。modules: falseの設定を追加することで対応できます。
   {
     "presets": [["@babel/preset-env", { "modules": false }]]
   }
  1. プラグインの互換性:Babelのプラグインの中には、ツリーシェイキングに対応していないものがあります。使用するプラグインの互換性を確認してください。

Babelとツリーシェイキングを組み合わせることで、最新のJavaScript構文を維持しつつ、効率的なコードの生成が可能になります。この方法を適用することで、パフォーマンスの向上とメンテナンス性の改善が期待できます。

ツリーシェイキングの最適化

ツリーシェイキングを最大限に活用するためには、いくつかの最適化テクニックを活用することが重要です。以下に、ツリーシェイキングをさらに効果的にするための方法を紹介します。

モジュールのエクスポート方法の工夫

ツリーシェイキングの効果を高めるためには、モジュールのエクスポート方法を工夫することが重要です。具体的には、以下の点に注意します。

名前付きエクスポートの使用

デフォルトエクスポートよりも名前付きエクスポートを使用することで、ツリーシェイキングが正しく機能しやすくなります。

// utils.js
export function add(a, b) {
  return a + b;
}

export function subtract(a, b) {
  return a - b;
}

インデックスファイルの最小化

エクスポートをまとめるインデックスファイルを使用する場合、その内容を最小限に抑え、実際に使用するものだけをエクスポートします。

// index.js
export { add } from './utils';

デッドコードの削除

コードベースに含まれるデッドコードを手動で削除することも重要です。これは、以下の方法で実現できます。

静的解析ツールの使用

ESLintなどの静的解析ツールを使用して、未使用の変数や関数を検出し、削除します。

npm install --save-dev eslint

コードレビューの実施

コードレビューを通じて、不要なコードが追加されないようにチェックします。チーム全体でコーディング規約を遵守し、クリーンなコードベースを維持します。

モジュールバンドラーの設定の最適化

モジュールバンドラーの設定を最適化することで、ツリーシェイキングの効果を最大化できます。

プロダクションモードの使用

WebpackやRollupを使用する際には、プロダクションモードを有効にすることで、自動的にツリーシェイキングが適用されます。

// webpack.config.js
module.exports = {
  mode: 'production',
  // その他の設定
};

適切なプラグインの導入

Webpackの場合、TerserPluginなどの最適化プラグインを導入して、デッドコードをさらに削除することができます。

// webpack.config.js
const TerserPlugin = require('terser-webpack-plugin');

module.exports = {
  mode: 'production',
  optimization: {
    minimize: true,
    minimizer: [new TerserPlugin()],
  },
  // その他の設定
};

コードスプリッティングの活用

コードスプリッティングを活用することで、必要なコードのみをロードし、未使用のコードをバンドルから分離します。

動的インポートの使用

動的インポートを使用して、必要なモジュールだけを遅延ロードします。

// index.js
import('./utils').then(({ add }) => {
  console.log(add(2, 3));
});

ツリーシェイキングを最適化するためには、これらのテクニックを組み合わせて使用することが重要です。これにより、未使用のコードを効果的に削減し、アプリケーションのパフォーマンスとメンテナンス性を向上させることができます。

ツリーシェイキングの限界

ツリーシェイキングは強力な最適化技術ですが、いくつかの限界があります。これらの限界を理解し、適切に対処することで、ツリーシェイキングの効果を最大限に引き出すことができます。

動的コードの解析が困難

ツリーシェイキングは静的解析に依存しているため、動的に生成されるコードやインポートには対応できません。例えば、以下のような動的インポートはツリーシェイキングの対象外となります。

const moduleName = 'utils';
import(`./${moduleName}`).then(module => {
  module.default();
});

このような動的インポートが多用される場合、ツリーシェイキングの効果が減少します。可能な限り静的インポートを使用することが推奨されます。

サードパーティライブラリの非対応

一部のサードパーティライブラリは、ツリーシェイキングに対応していない場合があります。特に古いライブラリや、CommonJSモジュール形式で書かれたライブラリは、ツリーシェイキングが適用されません。

// CommonJS形式の例
const _ = require('lodash');

これに対して、ESモジュール形式(ESM)で書かれたライブラリはツリーシェイキングに適しています。可能な限り、ESM形式のライブラリを使用することを検討してください。

未使用コードの誤検出

ツリーシェイキングは、誤って必要なコードを未使用と判断して削除するリスクがあります。これにより、実行時にエラーが発生する可能性があります。この問題を回避するためには、慎重なテストとコードレビューが必要です。

複雑なコードベースでの限界

非常に大規模で複雑なコードベースでは、ツリーシェイキングが全ての未使用コードを検出できない場合があります。また、依存関係が複雑に絡み合っている場合、ツリーシェイキングの効果が減少します。このような場合、手動でのデッドコードの削除や、モジュールのリファクタリングが必要となります。

ビルド時間の増加

ツリーシェイキングを有効にすると、依存関係の解析と未使用コードの削除に時間がかかるため、ビルド時間が増加する可能性があります。大規模なプロジェクトでは、このビルド時間の増加が開発効率に影響を与えることがあります。

ツリーシェイキングの限界を補う方法

これらの限界に対処するためには、以下のような方法が有効です。

コードスプリッティングの活用

コードスプリッティングを使用して、必要なコードのみを効率的にロードすることで、ツリーシェイキングの効果を補完します。

手動でのデッドコードの削除

ツリーシェイキングが自動的に削除できないデッドコードを手動で削除することで、コードベースを最適化します。

最新のライブラリの使用

ツリーシェイキングに対応した最新のライブラリを使用することで、未使用コードの削減効果を高めます。

ツリーシェイキングの限界を理解し、適切な対策を講じることで、アプリケーションのパフォーマンスを最適化し、ユーザーエクスペリエンスを向上させることができます。

ツリーシェイキングのトラブルシューティング

ツリーシェイキングを実施する際に発生する可能性のある問題とその対策について解説します。これらのトラブルシューティング方法を理解し、適用することで、ツリーシェイキングの効果を最大限に引き出すことができます。

ツリーシェイキングが機能しない場合

ツリーシェイキングが期待通りに機能しない場合、以下の点を確認してください。

モジュールバンドラーの設定

WebpackやRollupなどのモジュールバンドラーの設定が適切に行われているか確認します。例えば、Webpackではmode: 'production'が設定されていることが重要です。

// webpack.config.js
module.exports = {
  mode: 'production',
  // その他の設定
};

使用されているモジュール形式

ツリーシェイキングはESモジュール(ESM)形式に依存しています。CommonJS形式のモジュールはツリーシェイキングの対象外となるため、ESM形式を使用するようにコードをリファクタリングします。

// ESモジュール形式
import { add } from './utils';

インポート方法の確認

動的インポートや非標準のインポート方法が使用されていないか確認します。ツリーシェイキングは静的解析に依存しているため、静的インポートを使用します。

// 静的インポート
import { add } from './utils';

削除されるべきコードが残っている場合

ツリーシェイキングが一部の未使用コードを削除できない場合、以下の点を確認します。

バンドラーの最適化設定

Webpackのoptimizationオプションを確認し、usedExportsが有効になっているか確認します。

// webpack.config.js
module.exports = {
  optimization: {
    usedExports: true,
  },
  // その他の設定
};

サードパーティライブラリの影響

一部のサードパーティライブラリがツリーシェイキングに対応していない場合があります。可能な限り、ツリーシェイキング対応のライブラリを使用するようにします。

必要なコードが削除されてしまう場合

ツリーシェイキングが誤って必要なコードを削除してしまう場合、以下の対策を講じます。

コードのエクスポート方法を見直す

デフォルトエクスポートを使用している場合、名前付きエクスポートに変更します。

// utils.js
export function add(a, b) {
  return a + b;
}

export function subtract(a, b) {
  return a - b;
}

モジュールバンドラーの設定を調整する

モジュールバンドラーの設定で、特定のモジュールを強制的に含めるように設定します。

// webpack.config.js
module.exports = {
  optimization: {
    sideEffects: false,
  },
  // その他の設定
};

ビルドサイズが期待通りに減少しない場合

ビルドサイズが期待通りに減少しない場合、以下の点を確認します。

バンドルレポートの活用

webpack-bundle-analyzerなどのツールを使用してバンドル内容を可視化し、不要なコードが含まれている箇所を特定します。

npm install --save-dev webpack-bundle-analyzer
// webpack.config.js
const BundleAnalyzerPlugin = require('webpack-bundle-analyzer').BundleAnalyzerPlugin;

module.exports = {
  plugins: [
    new BundleAnalyzerPlugin(),
  ],
  // その他の設定
};

コードスプリッティングの活用

コードスプリッティングを活用して、必要なコードのみをロードするように設定します。

// index.js
import('./utils').then(({ add }) => {
  console.log(add(2, 3));
});

これらのトラブルシューティング方法を実施することで、ツリーシェイキングの効果を最大限に引き出し、アプリケーションのパフォーマンスを向上させることができます。

まとめ

本記事では、JavaScriptのツリーシェイキングによる未使用コードの削減について詳しく解説しました。ツリーシェイキングの基本概念から、その仕組み、メリット、実装方法、最適化のテクニック、限界、そしてトラブルシューティング方法までを網羅しました。

ツリーシェイキングは、未使用コードを削除し、バンドルサイズを縮小することで、アプリケーションのパフォーマンスを向上させる強力な技術です。WebpackやBabelなどのツールと組み合わせて使用することで、効率的なコード管理が可能となり、セキュリティの強化やメンテナンスの容易さも実現できます。

しかし、ツリーシェイキングにはいくつかの限界があり、それらに対処するための適切な設定や手動でのコード最適化が求められます。これらの知識と技術を駆使することで、開発者はより軽量で高速なWebアプリケーションを構築することができるでしょう。

ツリーシェイキングを活用して、最適化されたアプリケーション開発を進めてください。

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目次
  1. ツリーシェイキングとは
  2. ツリーシェイキングの仕組み
    1. 依存関係グラフの作成
    2. 静的解析
    3. デッドコードの除去
    4. 最適化されたバンドルの生成
  3. 未使用コードの問題点
    1. バンドルサイズの増加
    2. メンテナンスの複雑化
    3. セキュリティリスクの増加
    4. パフォーマンスの低下
  4. ツリーシェイキングのメリット
    1. バンドルサイズの削減
    2. パフォーマンスの向上
    3. メンテナンス性の向上
    4. セキュリティの強化
    5. リリースサイクルの短縮
  5. ツリーシェイキングの実装方法
    1. モジュールバンドラーの選定
    2. プロジェクトの設定
    3. Webpackの設定
    4. Babelの設定
    5. コードのエクスポート方法の最適化
    6. ビルドの実行
  6. Webpackを用いたツリーシェイキング
    1. プロジェクトの初期設定
    2. Webpackの設定ファイル
    3. Babelの設定ファイル
    4. ソースコードの準備
    5. ビルドの実行
    6. ビルド結果の確認
  7. Babelとの併用
    1. Babelの役割
    2. Babelの設定
    3. Webpackとの統合
    4. ツリーシェイキングの効果を確認する
    5. 注意点
  8. ツリーシェイキングの最適化
    1. モジュールのエクスポート方法の工夫
    2. デッドコードの削除
    3. モジュールバンドラーの設定の最適化
    4. コードスプリッティングの活用
  9. ツリーシェイキングの限界
    1. 動的コードの解析が困難
    2. サードパーティライブラリの非対応
    3. 未使用コードの誤検出
    4. 複雑なコードベースでの限界
    5. ビルド時間の増加
    6. ツリーシェイキングの限界を補う方法
  10. ツリーシェイキングのトラブルシューティング
    1. ツリーシェイキングが機能しない場合
    2. 削除されるべきコードが残っている場合
    3. 必要なコードが削除されてしまう場合
    4. ビルドサイズが期待通りに減少しない場合
  11. まとめ