Microsoft Learnの「Configure Microsoft Edge enterprise sync」が2026年6月15日に更新されたという情報を見て、設定変更や追加料金、移行作業が必要なのか気になっている管理者も多いでしょう。
結論として、現行の公式ページには、強制移行、新たな料金、対応期限は記載されていません。優先して確認すべきなのは、Microsoft Purview Rights Management Service(RMS)の状態、Enterprise State Roaming(ESR)の要否、Microsoft Edgeに適用されている同期ポリシーです。
なお、2026年6月19日時点で英語版ページに表示される最終更新日は2025年5月29日です。2026年6月15日付の変更履歴や差分は、参照先ページ上では公開されていません。そのため、本記事では現行の公式ページと、2026年に更新された関連ドキュメントを突き合わせ、実務上確認すべき変更点を整理します。 (Microsoft Learn)
Microsoft Learn「Configure Microsoft Edge enterprise sync」の変更点
今回の情報は、Microsoft Edgeの同期機能が自動的に切り替わるアップデートではありません。現行ドキュメントから読み取れる重要な変更・確認ポイントは次のとおりです。
| 確認項目 | 現行の公式情報 | 必要な対応 |
|---|---|---|
| ページの更新日 | 英語版の最終更新表示は2025年5月29日 | 2026年6月15日付の新機能と断定しない |
| 対応ライセンス | Microsoft Entra IDやMicrosoft 365の契約に加え、RMSやESRの状態が影響 | 製品名だけでなく、テナントのサービス状態を確認 |
| RMSの有効化 | 新しいPurviewドキュメントではPowerShellによる操作を案内 | 古い管理画面の手順ではなく最新手順を使用 |
| 同期ポリシー | ForceSyncTypesなど、個別のデータ型を制御するポリシーが利用可能 | ADMXやIntuneの設定を棚卸し |
| 移行・期限 | 強制移行や対応期限の記載なし | 現時点で緊急の移行作業は不要 |
| 料金 | 新たな価格や課金方式の記載なし | 現在の契約とRMSを含むサービスプランを確認 |
特に注意したいのが、RMSの有効化方法です。同期設定ページにはAzure portalから有効化できる可能性があると記載されていますが、2026年5月更新のMicrosoft Purviewドキュメントでは、Azure Rights Managementサービスの有効化・無効化は管理ポータルでは行えず、PowerShellを使用すると案内されています。実際の作業では、より新しいPurview側の手順を優先してください。 (Microsoft Learn)
Microsoft Edge enterprise syncとは
Microsoft Edge enterprise syncは、職場または学校アカウントでサインインしたユーザーが、複数のデバイス間でブラウザーデータを同期する機能です。
現行のMicrosoft Learnでは、次のデータが同期対象として案内されています。
- お気に入り
- パスワード
- 住所などのフォーム入力情報
- コレクション
- Microsoft Edgeの設定
- 拡張機能
- 開いているタブ
- 閲覧履歴
- 機能使用状況データ
開いているタブと履歴はMicrosoft Edge 88以降、機能使用状況データはMicrosoft Edge 133以降が対象です。また、同期機能を提供するため、デバイス名、メーカー、モデルなどの接続・構成情報もアップロードされます。 (Microsoft Learn)
通常はユーザーの同意後に同期が始まり、ユーザー自身がデータ型ごとの同期をオン・オフできます。ただし、管理者がForceSyncを有効にすると、同意画面を表示せずに同期を強制し、ユーザーによる無効化を禁止できます。 (Microsoft Learn)
影響を受けるユーザーと管理者
| 対象 | 主な影響 | 優先して確認すること |
|---|---|---|
| 一般ユーザー | お気に入りやパスワードが別端末に反映されない可能性 | Edgeへのサインイン状態と同期画面 |
| Microsoft 365管理者 | 契約があってもRMSの状態により同期できない場合がある | RMSの有効化状態 |
| Microsoft Entra ID P1・P2利用組織 | ESRが同期利用の前提になる場合がある | ESRの対象ユーザー |
| Intune・グループポリシー管理者 | 複数の同期ポリシーが競合する可能性 | edge://policyの適用結果 |
| 2021年より前に作成したテナント | Business Basic・Standardで同期が静かに失敗する可能性 | RMS_S_BASICの状態 |
| オンプレミスAD利用組織 | クラウド同期とオンプレミス同期を混同しやすい | RoamingProfileSupportEnabled |
| GCC High・DoD・21Vianet環境 | Enterprise syncを利用できない | 対象クラウド環境 |
Microsoft 365 Business BasicまたはBusiness Standardでは、RMSが有効であればMicrosoft Edgeの同期を利用できます。ただし、2021年より前に作成されたテナントではRMSが既定で有効になっていない可能性があり、ライセンスが正しく見えても、お気に入りやパスワードなどの同期が失敗することがあります。 (Microsoft Learn)
また、GCC High、Azure Government DoD、21Vianetが運用するMicrosoft Azureでは、現時点でMicrosoft Edge enterprise syncはサポートされていません。 (Microsoft Learn)
管理者が確認すべき設定
ライセンス名だけでなくRMSの状態を確認する
同期できない場合、最初にMicrosoft 365管理センターやMicrosoft Entra管理センターでユーザーのライセンスを確認します。
そのうえで、AIPService PowerShellモジュールを導入済みの管理端末から、次のコマンドでRMSの状態を確認します。
Connect-AipService
Get-AipService
Get-AipServiceConfiguration
Get-AipServiceOnboardingControlPolicy
主な確認ポイントは次のとおりです。
Get-AipServiceがEnabledになっているかGet-AipServiceConfigurationのFunctionalStateが有効かIPCv3FunctionalStateが有効か- オンボーディング制御で対象ユーザーが除外されていないか
RMSが無効でも、確認せずにEnable-AipServiceを実行するのは避けてください。RMSを有効にすると、Microsoft Edgeだけでなく、WordやOutlookなど、権利保護に対応したアプリやサービスにも影響します。また、オンプレミスのAD RMSを運用している組織では、Azure Rights Managementサービスをそのまま有効化してはいけません。 (Microsoft Learn)
Microsoft Entra ID P1・P2のみの場合はESRを確認する
Microsoft Entra ID P1またはP2だけを利用している組織では、Microsoft Edge syncに必要なMicrosoft Purview機能を提供するため、ESRの有効化が必要と案内されています。
設定場所は次のとおりです。
Microsoft Entra管理センター > Entra ID > デバイス > 概要 > Enterprise State Roaming
ただし、Microsoft Edge sync自体がESRに含まれるわけではありません。ESRは必要なサービスを利用可能にするための前提として扱われます。同期障害の切り分けでは、RMSが有効でも同期できない場合にESRを確認する順序が推奨されています。 (Microsoft Learn)
同期ポリシーの競合を確認する
Microsoft Edge enterprise syncでは、複数のポリシーが連動します。
| ポリシー | 用途 | 注意点 |
|---|---|---|
SyncDisabled | Microsoftのクラウド同期を無効化 | 有効にするとForceSyncは機能しない |
ForceSync | 同意画面なしで同期を強制 | BrowserSigninが無効だと機能しない |
ForceSyncTypes | 必ず同期するデータ型を指定 | データ型名は大文字・小文字を区別し、再起動が必要 |
SyncTypesListDisabled | 同期しないデータ型を指定 | ユーザーは設定を上書きできない |
SavingBrowserHistoryDisabled | 履歴の保存を無効化 | 開いているタブの同期も無効になる |
AllowDeletingBrowserHistory | 履歴削除の可否を制御 | 無効にすると履歴同期にも影響 |
RoamingProfileSupportEnabled | オンプレミスの移動プロファイルを使用 | SyncDisabledでは無効にならない |
例えば、パスワードとお気に入りを必ず同期させる場合は、ForceSyncTypesにpasswordsとfavoritesを指定します。履歴と開いているタブを同期させたくない場合は、SyncTypesListDisabledにhistoryとopenTabsを指定します。
ForceSyncTypesとSyncTypesListDisabledを同時に使うことはできますが、同じデータ型を両方へ登録すると管理意図が分かりにくくなります。設計表を作成し、「必須」「任意」「禁止」のどれにするかをデータ型ごとに決めてから展開するのが安全です。 (Microsoft Learn)
なお、ForceSyncとForceSyncTypesはAndroid・iOSをサポートしていません。一方、SyncDisabledやSyncTypesListDisabledはモバイル版でも利用できますが、OSごとに必要なMicrosoft Edgeの最低バージョンが異なります。Intuneでモバイル端末へ展開する場合は、デスクトップと同じ設定をそのまま流用しないでください。 (Microsoft Learn)
一般ユーザーが同期状態を確認する手順
同期できない場合は、いきなりクラウドデータをリセットせず、次の順序で確認します。
Microsoft Edgeへのサインイン状態を確認する
Microsoft Edgeのプロフィール画面を開き、同期させたい職場または学校アカウントでサインインしているか確認します。
個人用Microsoftアカウントと組織アカウントを併用している場合は、対象のプロフィールを取り違えていないかも確認してください。
同期画面を確認する
アドレスバーへ次を入力します。
edge://settings/profiles/sync
次の項目を確認します。
- 同期がオンになっているか
- エラーメッセージが表示されていないか
- お気に入りやパスワードなど、必要なデータ型がオンになっているか
- 「組織によって管理されています」と表示されていないか
管理・診断画面を確認する
管理者やヘルプデスクは、次の内部ページを確認すると原因を切り分けやすくなります。
edge://sync-internals
edge://signin-internals
edge://policy
edge://sync-internalsでは同期の有効状態やデバイス情報、edge://signin-internalsではサインイン状態、edge://policyでは適用中のポリシーと優先順位を確認できます。 (Microsoft Learn)
再同期してからリセットする
同期画面で「このデバイスにデータを再同期する」を実行します。それでも解決しない場合に限り、「同期の問題がまだ発生していますか?」から「同期をリセット」を選択します。
リセット前には、少なくともお気に入りをHTMLファイルへエクスポートしてください。リセットが完了するまではMicrosoft Edgeを閉じず、別のデバイスで同期が続いていないかも確認します。クラウド上のデータを削除する目的でリセットする場合は、他の端末の同期を先に停止する必要があります。 (Microsoft Learn)
更新・移行・料金・期限はどうなるのか
Microsoft Edgeの更新
公式ガイド全体はMicrosoft Edge 77以降を対象としています。ただし、利用する同期データによって必要なバージョンが異なります。
| 同期内容 | 必要なMicrosoft Edge |
|---|---|
| 基本的なEnterprise sync | 77以降 |
| 開いているタブ・履歴 | 88以降 |
| 機能使用状況データ | 133以降 |
edgeFeatureUsageのポリシー制御 | 134以降 |
古い端末が混在している場合は、設定が同じでも同期結果が揃わない可能性があります。ポリシー展開前に、対象端末のMicrosoft Edgeバージョンを確認してください。 (Microsoft Learn)
ESRやオンプレミス同期からの強制移行
現行の公式ページには、ESRやオンプレミス同期からクラウド同期へ移行する期限は記載されていません。
Microsoft Edge syncはESRとは別の仕組みです。また、SyncDisabledでクラウド同期を止めても、RoamingProfileSupportEnabledによるオンプレミス同期は停止しません。移行する場合は、既存ポリシーを削除する前にテストユーザーでクラウド同期を有効化し、お気に入りや設定が正常に反映されることを確認してください。 (Microsoft Learn)
料金
「Configure Microsoft Edge enterprise sync」には、新しい利用料金や値上げは記載されていません。
ただし、同期を利用できるかどうかはMicrosoft 365、Microsoft Entra ID、RMSを含むサービスプランに左右されます。サポート対象外の契約では、Azure Information Protectionを別途契約するか、対応プランへの変更が必要になる場合があります。実際の価格は契約形態や地域によって異なるため、Microsoft 365管理センターや契約販売店で確認してください。 (Microsoft Learn)
対応期限
現行の公式ガイドには、設定変更、移行、ライセンス変更に関する期限は掲載されていません。
したがって、2026年6月15日を期限として緊急対応する必要はありません。ただし、同期障害が発生している組織は、期限の有無にかかわらずRMS、ESR、オンボーディング制御、Microsoft Edgeポリシーを早めに確認する必要があります。 (Microsoft Learn)
設定時に失敗しやすいポイント
ライセンスがあれば必ず同期できると思い込む
Microsoft 365 Business BasicやBusiness Standardを契約していても、古いテナントではRMSが無効なことがあります。契約画面だけで判断せず、サービスの有効状態をPowerShellで確認してください。
Microsoft EdgeのためだけにRMSを有効化する
RMSはWordやOutlookなどにも影響します。情報保護や暗号化を担当する管理者と確認し、既存のAD RMSやオンボーディング制御への影響を調査してから変更します。
ForceSyncだけを設定する
SyncDisabledが有効、またはBrowserSigninが無効になっていると、ForceSyncは期待どおりに動作しません。単一のポリシーだけでなく、サインイン、同期禁止、データ型制御をセットで確認してください。
最初に同期リセットを実行する
リセットは同期トラブルを解決できる一方、操作方法によってはクラウド上のデータを削除します。まずサインイン状態、ライセンス、ポリシー、RMSを確認し、その後に再同期、最後にリセットという順序で対応します。
クラウド同期とオンプレミス同期を同じものとして扱う
SyncDisabledが無効化するのはMicrosoftのクラウド同期です。オンプレミスの移動プロファイルは別のポリシーで動作するため、クラウド同期を止めただけではオンプレミス同期は停止しません。
まず実施すべき確認事項
今回の「Configure Microsoft Edge enterprise sync」に関する情報から、直ちに追加料金の支払いや強制移行を行う必要はありません。
一般ユーザーは、Microsoft Edgeの同期画面で職場または学校アカウントと同期対象を確認してください。管理者は、次の順序で対応すると効率的です。
- 対象ユーザーのMicrosoft 365・Microsoft Entra IDライセンスを確認する
- PowerShellでRMSとオンボーディング制御を確認する
- Microsoft Entra ID P1・P2のみの場合はESRを確認する
edge://policyで同期ポリシーの競合を調べる- テストユーザーで再同期し、必要な場合のみバックアップ後にリセットする
特に古いMicrosoft 365テナントでは、「ライセンスはあるのに同期できない」という状態が起こり得ます。製品名だけで判断せず、RMS、ESR、ポリシーという3つの実行条件を確認することが重要です。

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