Outlook 体験をより快適にするためには、タスクの管理は欠かせません。ところが、新しいOutlookで複数アカウントのTo Doタスクを一括管理したいと思っても、思うようにいかないことがあります。そんなときの対処法を中心に、原因やワークアラウンドを含めて詳しくご紹介します。
「新しいOutlook」での複数アカウントタスク表示の現状
新しいOutlook(以下、プレビュー版Outlookとも呼ばれることがあります)には、デザイン性や生産性を向上させるためのさまざまな改良が加えられています。特に「Outlook on the web」での操作感に近く、クラウド寄りの機能強化が目立つ一方で、いくつかの機能制限も見受けられます。その代表例が、「複数アカウントのTo Doタスクをまとめて表示できない問題」です。
仕組み:Webベースのフレームワークを採用
新しいOutlookは、既存のOutlookデスクトップ版とは異なり、Webベースのフレームワークを活用しています。これは「Outlook on the web(旧称:Outlook Web App)」と類似した基盤をデスクトップアプリとしてパッケージ化しているイメージです。そのためクラウドと親和性が高く、新機能の追加や更新が比較的スピーディーに行われる一方、従来のOutlookデスクトップ版とは設定項目や対応範囲が異なる部分があります。
複数アカウントのタスク統合ができない主な理由
新しいOutlookにおけるTo Do連携は、プライマリ(メイン)アカウントを優先している仕組みです。複数のMicrosoft 365 (Exchange) アカウントを追加していても、タスクを参照する際にはプライマリアカウントのTo Doデータのみを表示する設計になっています。
これは、メールやカレンダーを複数アカウント一括で表示できるのとは異なる仕様です。新しいOutlookではメールやカレンダーが「複数アカウントのアイテムをまとめて見られる」一方、タスクについてはプライマリアカウント以外がサイロ化され、統合ビューは提供されていません。
クラシックOutlookのタスク管理との大きな違い
クラシックOutlook(デスクトップ版Outlookの従来形式)には「タスク」というモジュールが存在し、各アカウントごとのタスクフォルダを同一のアプリ内で確認できます。リボン上の「タスク」モジュールを開けば、アカウントをまたいだタスクをある程度まとめて閲覧することも可能です。
ただし、クラシックOutlookであっても「To Doモジュール」とは完全に統合されていません。タスク一覧ビューをまとめて表示はできますが、Microsoft To Doと同期させたときに、すべてが一つのリストとして統合されるわけではありません。
クラシックOutlookの「タスク」フォルダ表示例
クラシックOutlookでは、左ナビゲーションの「タスク」モジュールを開くと、以下のように各メールアカウントに対する「タスク」フォルダが表示されます。
▼ (アカウントA)メールボックス
┗ タスク
▼ (アカウントB)メールボックス
┗ タスク
▼ (アカウントC)メールボックス
┗ タスク
これらをすべてチェックしたり、「すべてのタスク」ビューを作成したりすることで、マルチアカウントのタスクをある程度まとめて表示可能です。ただし、「To Do」との完全連携はないため、Microsoft To Doアプリで見るような最新のUIや機能が利用できない場合があります。
Microsoft To Doアプリを活用するメリット
複数アカウントを実際に切り替えて運用しつつタスク管理したい場合には、Microsoft To Doアプリを活用するのがおすすめです。ここでいう「Microsoft To Doアプリ」とは、以下のいずれかの利用形態を指します。
- デスクトップ版(Microsoft Store版)アプリ
- モバイル版(iOS/Android)アプリ
- ブラウザ版(Webアプリ:to-do.microsoft.com)
複数アカウントを切り替えて表示
Microsoft To Doアプリでは、プロファイルを増やしてアカウントを切り替えることで、別々のアカウントのタスクリストにアクセスできます。新しいOutlookでは一元管理できなかった複数アカウントのタスクも、To Doアプリ上で「アカウントごとに切り替える」形でチェックすることが可能です。
ただし「一つのリスト」に統合されるわけではない
Microsoft To Doアプリでも、現時点では「すべてのアカウントのタスクを一元的に単一のリストにまとめる」機能は実装されていません。アカウントAのタスクを見たいときはアカウントAに、アカウントBのタスクを見たいときはアカウントBへ切り替える必要があります。
それでも、新しいOutlookのように「プライマリアカウントしか表示されず、他アカウントのタスクが全く見られない」という状況に比べると、To Doアプリでアカウントを切り替えられるのは大きなメリットです。
新しいOutlook環境で使えるワークアラウンド
「新しいOutlookで複数アカウントのタスクをまとめて見られないなら、どうしたらいいの?」という疑問に対しては、いくつかのワークアラウンドがあります。
方法1:アカウントを切り替えてTo Doタスクを参照
新しいOutlookでは「My Day(マイ デイ)」や「To Do」タブがプライマリアカウントに紐付けられており、常時すべてのアカウントのタスクが見られるわけではありません。
しかし、Outlook自体を「別のアカウントに切り替えて開く」ことで、そのアカウントのTo Doタスクを表示させることが可能です。たとえば、Outlookの左下のアイコンから別アカウントに切り替える、もしくはサインアウトして別アカウントでサインインし直す、といった手順です。ただし、この切り替えは手動かつ都度時間がかかるので、頻繁に行うには煩わしさがあるでしょう。
方法2:サイドパネルのTo Do機能を使ったドラッグ&ドロップ
新しいOutlookでは、メール閲覧画面の右サイドに簡易版のTo Doパネルを表示できます。そこからドラッグ&ドロップでタスクを作成すると、タスクが関連付けられるメールのアカウントが自動的に紐付くことがあります。
例として、アカウントBの受信メールをドラッグ&ドロップしてタスクを作成すれば、アカウントBのTo Doタスクとして扱われるケースです。ただし、実際に統合表示できるわけではなく、あくまで作成元アカウントのタスクとして扱われる点に留意が必要です。
タスク管理の観点での比較表
新しいOutlook、クラシックOutlook、Microsoft To Doアプリの3つで「複数アカウントのタスク」をどのように扱えるかを、簡単な表にまとめてみました。
機能 | 新しいOutlook | クラシックOutlook | Microsoft To Doアプリ |
---|---|---|---|
複数アカウントの タスク表示 | プライマリアカウントのみ | 各タスクフォルダを一覧表示可能 (ただしTo Doとは別) | アカウント切り替え式で閲覧可能 (統合は不可) |
UIのモダンさ | Webベースの最新UI | 従来のOutlook画面 | 専用UI(シンプルで操作性が高い) |
タスクの作成/ 編集 | My Day/To Doタブで作成 (プライマリのみ) | 従来型のタスクモジュール (リボンからアクセス) | リストを分けて作成・編集自由 |
同期の安定度 | Exchange Online準拠 | Exchange Online/オンプレ混在も可 (やや設定が複雑) | Microsoft 365アカウントが中心 (個人向けMicrosoftアカウントも可) |
上記のように、「新しいOutlook」はUIが洗練されている一方で、複数アカウントのタスク統合には難があります。クラシックOutlookはある程度まとめて管理できますが、UIが従来型で「To Do」とは別物です。Microsoft To Doアプリは複数アカウント切り替えができるため、各アカウントごとにメンテナンスする場合には最も使いやすい選択肢となります。
Microsoft Graph APIを使った連携例
もし企業環境などで、複数アカウントのタスクを一括管理したいというニーズがある場合、Microsoft Graph APIを活用して独自のタスク統合ツールを構築する手もあります。以下はGraph APIを用いてタスク情報を取得する際の簡単なコード例(Pythonベース)です。
import requests
from msal import ConfidentialClientApplication
# Azureアプリ登録情報
CLIENT_ID = "YOUR_CLIENT_ID"
CLIENT_SECRET = "YOUR_CLIENT_SECRET"
TENANT_ID = "YOUR_TENANT_ID"
# MSALでトークンを取得
app = ConfidentialClientApplication(
CLIENT_ID,
authority=f"https://login.microsoftonline.com/{TENANT_ID}",
client_credential=CLIENT_SECRET
)
SCOPES = ["https://graph.microsoft.com/.default"]
result = app.acquire_token_silent(SCOPES, account=None)
if not result:
result = app.acquire_token_for_client(scopes=SCOPES)
access_token = result['access_token']
# ユーザーのタスク取得 (例としてTo Doのタスクリストを取得)
headers = {
"Authorization": f"Bearer {access_token}"
}
# アカウントごとのユーザーIDやメールアドレスを指定
user_id = "user@example.com"
endpoint = f"https://graph.microsoft.com/v1.0/users/{user_id}/todo/lists"
response = requests.get(endpoint, headers=headers)
if response.status_code == 200:
todo_lists = response.json().get('value', [])
for todo_list in todo_lists:
print("List name:", todo_list.get('displayName'))
else:
print("Error:", response.status_code, response.text)
上記のように、各ユーザー(アカウント)のタスクリストを取得して自前のダッシュボードにまとめれば、複数アカウントのTo Doタスクを一括管理する仕組みを構築できます。ただし、開発リソースやAPIの知識が必要となり、個人レベルで行うにはハードルが高いかもしれません。
将来的な改善の可能性
新しいOutlookは今後もアップデートを重ねて進化すると考えられます。実際に、プレビュー版から徐々に機能追加されてきた歴史があるため、複数アカウントのタスクを同時表示できるようになる可能性もゼロではありません。
Microsoftはユーザーフィードバックを重視しており、要望の多い機能については開発スケジュールが早まることがあります。そのため、複数アカウントのTo Doタスク表示に関しても、多くのユーザーがフィードバックを送ることで対応される見込みがあります。
フィードバックを送る方法
新しいOutlookの右上メニューや、MicrosoftのUserVoice(またはFeedbackポータル)から、「複数アカウントのタスク表示を求む」といった要望を送ることができます。実現したい機能を具体的に述べることで、より実装の優先度が上がるかもしれません。
同時に、Microsoft Insider Programに参加しておけば、新機能がテスト段階でリリースされた際に早期にアクセスでき、フィードバックを与えられるメリットがあります。
まとめとベストプラクティス
最後に、新しいOutlookで複数アカウントのタスクを管理したいと考える方へ、現時点でのベストプラクティスをまとめます。
- 新しいOutlook単体に頼りすぎない
新しいOutlookでは、複数アカウントのタスク統合表示がサポートされていません。プライマリ以外のアカウントのタスクをどうしても管理する必要がある場合は、クラシックOutlookやMicrosoft To Doアプリとの併用が欠かせません。 - クラシックOutlookの「タスク」フォルダを有効活用
もしクラシックOutlookがまだ使える環境であれば、そちらの「タスク」モジュールを利用し、複数アカウントのタスクを一つの画面で確認する方法があります。ただしTo Doとの一体化ではないため、見え方や編集機能に制限があります。 - Microsoft To Doアプリでアカウントを切り替え
Microsoft 365アカウントや個人用Microsoftアカウントが複数ある場合でも、To Doアプリでそれぞれログイン・切り替えできれば、より柔軟にタスクを管理できます。特にスマホアプリ版は、外出先からの確認にも便利です。 - 開発リソースがある場合はGraph APIで統合
会社のシステムとして統合管理したいのであれば、Microsoft Graph APIを活用して独自の管理画面や集計システムを作る選択肢もあります。開発コストはかかりますが、運用効率を上げられる可能性が高いです。 - 今後のアップデートに期待しつつフィードバックを送る
Microsoftはユーザーフィードバックをもとに機能追加を検討します。自社や自分のニーズを積極的に伝えることで、アップデートの可能性が高まります。Insiderプログラムで最新機能を試し、意見を届けるのも一つの手段です。
結論
複数のMicrosoft 365アカウントを使い分けて仕事の効率を上げるうえで、タスク管理機能は非常に重要です。しかし、新しいOutlookは現時点では複数アカウントのTo Doタスクを一括管理できず、不便を感じるユーザーも多いでしょう。
ただし、クラシックOutlookやMicrosoft To Doアプリ、あるいはサイドパネルでのアカウント切り替えなどのワークアラウンドが存在します。目的や環境に応じて、最適なツールや設定を選択することが大切です。将来的なアップデートでこの機能が拡充される可能性もあるため、Microsoftへの要望を継続的に伝え、進化を見守りましょう。
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