Surface デバイスの魅力の一つに、バッテリー使用時の利便性があります。しかし最近、「スマート充電 (Smart Charging)」が 80% で止まったまま、アプリから無効化できない問題を多くのユーザーが報告しています。本記事では、原因と対処法を詳しく解説します。
Surface アプリからスマート充電設定が消える問題とは
Surface Laptop や Surface Pro、Surface Go など、幅広いラインナップの Surface デバイスには「スマート充電 (Smart Charging)」というバッテリー関連の機能が搭載されています。通常は「Surface アプリ」のバッテリー設定画面からスマート充電のオン/オフを切り替えられるのですが、アップデートやドライバ変更などをきっかけに、ある時期から突然「Battery & charging」や「スマート充電」の項目そのものが非表示となる現象が報告されています。
スマート充電の目的は、バッテリーの健康を維持するために上限を 80% 前後に制御するというものです。しかし、出張や旅行などでフル充電(100%)が必要なタイミングでは、この機能を一時的にオフにして 100% まで充電したい場合があります。ところが、肝心の設定項目がアプリから消えてしまい、ユーザーは困っているのです。実際に Microsoft コミュニティなどのフォーラムでも多数の苦情や質問が寄せられており、根本解決には至っていないのが現状です。
UEFI の Battery Limit 機能との混同
Surface デバイスにはもう一つ、UEFI (BIOS) レベルでバッテリーの充電上限を制限する「Battery Limit」というオプションが存在するモデルがあります。起動時に「電源ボタン + 音量アップボタン」を押しながら立ち上げることで、UEFI 画面に入り「Enable Battery Limit」のオンオフを設定できます。ただし、この機能はあくまでも 50% や 60% 前後を上限にする企業向けの設定であり、スマート充電が意図する 80% のラインとは別に動作することが多いです。そのため、UEFI で Battery Limit を切り替えても、完全にスマート充電を無効化できないケースがある点に注意が必要です。
スマート充電が消える原因の考察
スマート充電の項目が消える原因は明確にはアナウンスされていませんが、主に以下の可能性が指摘されています。
1. Surface アプリのバージョン不具合
Microsoft Store から配信される「Surface アプリ」にバグが含まれている可能性があります。特定バージョン(例: 74.xxxx.xxxx.x など)をインストールした後、バッテリー関連の項目が非表示になるという報告が多くみられます。逆に言えば、新しいアップデートで修正が実施されると、突然表示が復活する場合もあるのです。
2. 法人アカウントやグループポリシーの影響
企業や組織で管理されている Microsoft アカウントを使って Surface アプリにサインインしている場合、会社側のポリシーによってバッテリー制御機能が制限される事例も報告されています。管理者が意図せずポリシーを設定している場合、ユーザー自身では変更ができない状況になる可能性があります。
3. OS 側のドライバやファームウェアとの整合性
Windows Update や Surface Firmware Update が適用された後、アプリとの連携がうまくいかないケースがあります。特に、Windows 11 へのアップグレード後に不具合を感じるという声が多いのも特徴です。ドライバとアプリのバージョンが合致しないと一部機能が読み込まれず、項目が消える可能性があります。
対処法: スマート充電を再表示・解除する手順
以下の手順を試してみることで、スマート充電を再度オフにするためのオプションが復活するかもしれません。すべてを行っても必ず成功するわけではありませんが、多くのユーザーが「これで復活した」「少なくとも一時的に設定が表示された」という声を上げています。
1. Surface アプリを最新バージョンに更新
Microsoft Store を開き、「ライブラリ」または「更新プログラムとダウンロード」から「Surface」アプリを探して最新バージョンにアップデートします。投稿時点ではバージョン 74.8150.129.0 や 74.11070.147.0 などがリリースされていますが、随時更新されるため常に最新かどうか確認しましょう。アプリ自体が古いバージョンだと、スマート充電関連の制御が正しく表示されない場合があります。
アップデート確認の例 (PowerShell)
# Microsoft Store アプリの更新を手動でトリガー
Start-Process "ms-windows-store://downloadsandupdates"
上記のように PowerShell から Microsoft Store を呼び出して更新画面を表示することも可能です。GUI から「更新プログラムの取得」を実行すれば、Surface アプリを含むすべての Store アプリが更新されます。
2. Surface アプリをリセットする
Windows の「設定」→「アプリ」→「インストールされたアプリ」から「Surface」を選び、「詳細オプション」内にある「修復」または「リセット」を実行してみてください。リセット後にアプリを起動すると、初回起動時にバッテリー関連の項目が再スキャンされ、表示が復活することがあります。リセットしてもアプリ本体の更新チェックは必要なので、手順 1 とセットで行うのが理想です。
ステップ | 操作内容 | 結果 |
---|---|---|
1 | 「設定」→「アプリ」→「インストールされたアプリ」 | Surface アプリを一覧から探す |
2 | 「…(その他オプション)」→「詳細オプション」 | リセット・修復のオプションが表示される |
3 | 「修復」または「リセット」ボタンを実行 | Surface アプリの設定を初期化 |
4 | Surface アプリを再起動 | 「Battery & charging」項目が復活するか確認 |
3. いったんサインアウトして再度サインイン
法人用の Microsoft アカウントでサインインしている場合や、Azure AD でのアカウント管理下にある端末では、何らかの制限がかかっている可能性があります。一度「Surface アプリ」上や Windows のユーザーアカウントからサインアウトし、ローカルアカウントや別の個人用アカウントで起動してみると、スマート充電に関する設定が再度表示されることがあります。
4. UEFI (BIOS) 設定で Battery Limit を確認する
UEFI の Battery Limit をオフにすることで、スマート充電の挙動が変化するケースがあります。下記のようにして確認してみましょう。
- デバイスの電源を落とす
- 電源ボタンと音量アップボタンを同時に長押しして UEFI 画面へ
- Battery Limit (または「バッテリー上限」) をオフにする
- 変更を保存して終了
ただし、先述のとおり Battery Limit とスマート充電は別機能なので、この設定だけでスマート充電が完全に解除されるわけではありません。場合によっては両方をオフにしないと 100% まで充電できない状況が続くことがあります。
5. Surface アプリの「フィードバック」で不具合報告
「Surface アプリ」下部にある「フィードバックを送信」(もしくは「Give Feedback」)というアイコンを使って、不具合の報告やログ送付を行うと、一時的に設定項目が復活したという報告も少なくありません。なぜ復活するのかは分かっていませんが、何かしらの同期や再読み込みがトリガーされる可能性があります。しかし、復活したとしても数日後・数週間後に再び消えてしまうという再発例もあるため、現時点では決定打とは言い難いです。
スマート充電を解除できない場合の暫定策
上記の対処法を試しても「Battery & charging」や「スマート充電」の設定を復活させられない場合、以下のような代替手段を試すことが提案されています。
1. USB-C PD 充電を使う
Surface Connect ポートではなく、USB-C ポートから PD (Power Delivery) 対応の充電器を利用すると、80% を超えて 100% まで充電できることがあるとの報告があります。Surface デバイスの中には USB-C ポートを備えているモデルが多く、純正アダプタではなくサードパーティ製の PD 充電器を使うという方法です。ただし、すべてのモデルで必ず有効とは限りません。
2. バッテリーが充分に減るまで利用する
スマート充電はバッテリー寿命を延ばすために、高頻度でフル充電しないように制御している面があります。何度か 20% 以下までバッテリーを使い切ってから充電すると、一時的に 100% まで充電されるようになるケースもあるので試してみましょう。
3. Microsoft サポートへ問い合わせ・修理依頼
根本的にファームウェアやドライバに不具合がある場合、自力では解決できないケースもあります。法人利用で管理者権限が制限されている端末や、物理的なバッテリー不調が疑われる場合は、Microsoft のサポート窓口に連絡し、修理や交換を検討するのも選択肢の一つです。
再発防止と今後の見通し
Microsoft が正式に「スマート充電設定の非表示」問題について大規模なアナウンスを行っているわけではありませんが、コミュニティフォーラムには数多くの報告が寄せられています。一部では「調査中」や「次回アップデートで修正見込み」という言葉が見られるものの、明確な時期やパッチは示されていません。
1. 定期的なアップデート確認
Surface アプリや Windows、ファームウェアのアップデートを常に最新に保つことが、もっとも有効な再発防止策といえます。月例の Windows Update だけでなく、Surface 用のドライバやファームウェア更新、Microsoft Store アプリの更新も逐一チェックするとよいでしょう。
2. コミュニティ・フォーラムの活用
Microsoft の公式コミュニティや、ユーザー同士が情報交換するフォーラムを活用することで、新たなワークアラウンドや回避策が見つかる場合があります。特に海外の英語コミュニティでは、より早く情報がシェアされる傾向にありますので、「Surface Smart Charging not showing」などのキーワードで検索してみるのもおすすめです。
3. バッテリー運用の工夫
本来、スマート充電はバッテリー寿命を延ばすための仕組みなので、80% 以上に充電したいシーンは限定的ともいえます。必要なタイミングだけ 100% まで充電し、通常は 80% で止める運用に慣れると、バッテリーの劣化を遅らせるメリットも期待できます。スマート充電が戻るのを待つ間も、使い方を柔軟に見直してみるとよいでしょう。
まとめと今後の展望
多くのユーザーが直面する「スマート充電が 80% で止まったまま」「Surface アプリからその設定が消えてしまう」問題は、明確な公式修正がまだ提供されていません。以下の対処を総合的に試しながら、今後のアップデートを待つのが現実的な解決策となっています。
- Surface アプリを最新化: Microsoft Store から常にアップデート
- アプリをリセット: 設定→アプリ→インストールされたアプリからリセット実施
- サインアウト/サインインの切り替え: 個人アカウントで試す
- UEFI 設定確認: Battery Limit をオフにしてみる
- フィードバック送信: Surface アプリ経由で不具合報告
- USB-C PD 充電などの代替策: 100% 充電が必要な場合の暫定対応
今後、Microsoft が正式にパッチをリリースすれば、一気に解決に向かう可能性は高いです。コミュニティやサポートを活用しながら、最新情報を追いかけていきましょう。
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