日々のビジネスシーンや学習の場などで、Wordを使って文章を作成・校正する機会は多いもの。特に「Ctrl + Shift + E」で編集モードと校閲モード(変更履歴のオン/オフ)を素早く切り替えられる便利さは、一度使うと手放せません。ですが、突然ショートカットが効かなくなると困ってしまいますよね。本記事では、その原因や対処法をしっかり解説します。
Wordで「校閲モード」と「編集モード」を切り替える仕組みの概要
Wordには文書を編集した内容を「変更履歴」として残せる「校閲モード」という機能が標準搭載されています。これは、共同編集やレビュー、校正作業時に大変便利な機能です。一方、「編集モード」は通常の文書編集を行うためのモードであり、Wordを使った文書作成の基本となります。
「Ctrl + Shift + E」を押すことで、この校閲モードと編集モードの切り替えがシームレスに行える仕様になっています。しかし、ある日突然「閲覧モード」に切り替わってしまい、思うように校閲モードを起動できないという事象に直面することがあります。多くの場合、文書が保護されていたり、ショートカットキーの設定に問題があったりといった理由が考えられます。
以下では、それぞれのモードの特徴や、なぜこの不具合が起こるのか、そして具体的な解決策について、できるだけわかりやすく解説していきます。
校閲モード(変更履歴のオン/オフ)とは
校閲モードとは、Word文書に加えられた変更をリアルタイムで追跡し、どこをどのように編集したのかを記録するモードです。チームメンバー同士でドキュメントを回覧したり、上司や同僚が修正点を指示したりする際などに威力を発揮します。具体的には以下のような特徴があります。
- 変更履歴の可視化:文字の追加や削除が赤文字や取り消し線などで表示され、校閲でどこが変わったのかをひと目で把握できる。
- コメント機能との併用:コメントをつけることで、修正意図や質問をわかりやすく共有できる。
- 元の文書への戻しやすさ:後から「承諾」「却下」といった操作が可能なため、修正を正式に反映させるかどうかを判断しやすい。
編集モードとは
編集モードはいわゆる通常の文書作成モードであり、Wordでテキストを入力・修正する際に多くの方が最もよく利用しているモードです。校閲モードと異なり、編集した内容が履歴として記録されないため、純粋に文書を作り込みたい場合に向いています。主な特徴は以下のとおりです。
- 履歴非表示:変更内容がすべて最終的な形として文書に反映される。
- ストレスなく書ける:赤字や取り消し線などが表示されないため、執筆時の視覚的な負担が軽い。
- 仕上げ段階に向いている:最終文書として提出する場合や、履歴を残す必要がない場合などに適している。
問題の詳細:ショートカットを押すと「閲覧モード」になってしまう
最近のWordやOfficeのアップデート、あるいは文書の保護設定などの影響で、従来使えていたショートカットキーが意図せず「閲覧モード」に切り替わってしまうトラブルが起こることがあります。「閲覧モード」はWordの画面を読み取り専用のようにする機能であり、手軽に文章全体のレイアウトを確認したり、誤操作を防いだりするのに便利です。しかし、校閲モードに切り替えたいのに閲覧モードに移行されると、まったく別の動作になってしまうため、大きな戸惑いを感じる方も多いでしょう。
この問題はWordのバージョンやサブスクリプションの種類を問わず発生する可能性があります。大企業のOffice 365環境下でも、個人が購入したパッケージ版のWord 2019でも、似たような症状が見られるという報告があるため、決してまれなトラブルというわけではありません。
原因1:文書が読み取り専用または保護設定されている
最も多い原因として考えられるのは、文書に読み取り専用の設定がかかっていることです。文書をダブルクリックして開いた際、自動的に「閲覧モード」で開いてしまうように設定されていると、ショートカット「Ctrl + Shift + E」を押しても校閲モードをオンにする前に、Word自体が編集可能状態ではないため、期待する動作が行われません。
- 文書が保護されている(パスワード保護や制限付き編集が設定されている)。
- 文書のプロパティやWordの設定で「読み取り専用で開く」に指定している。
こういった設定が原因で、編集操作を受け付けない状態になってしまうのです。
原因2:ショートカットキーの割り当て不具合
Wordはショートカットキーをカスタマイズできる仕組みを持っています。Officeのアップデートや、他のアドインやツールとの競合により、「Ctrl + Shift + E」が別の操作に割り当てられてしまう可能性があります。最近のWordバージョンであっても、何らかの理由で初期設定が変わってしまうケースが報告されています。
- 「Ctrl + Shift + E」が「RevisionsToggle(変更履歴のオン/オフ)」に正しく紐づいていない
- ほかの機能やアドインによって「Ctrl + Shift + E」が上書きされている
このような場合、ショートカットの初期設定に戻すか、自ら再設定をする必要があります。
原因3:WordまたはOfficeの設定ファイル破損
WordやOffice本体の設定ファイルが破損していると、全般的な機能の不具合が生じることがあります。その症状の一つとしてショートカットの挙動がおかしくなるケースが考えられます。長年の使用や不正終了などにより、一部の設定ファイルが壊れてしまうと、予測不能な動作を引き起こす可能性があるのです。
- 不要なテンプレートやアドインが干渉している
- Wordの起動オプションや設定ファイル(Normal.dotmなど)が破損している
- Office自体の構成に何らかの不整合が生じている
この場合は、WordまたはOfficeを修復したり、初期設定に戻したりすることで改善を図れます。
具体的な解決策:ショートカットを復活させるための手順
ここからは、実際に問題を解決するための具体的な対処法を段階的にご紹介します。いずれもWordのバージョンにかかわらず多くのケースで有効な方法ですので、問題解決の参考にしてみてください。
対処1:文書のプロテクト(読み取り専用)を解除する
まずは、該当の文書が読み取り専用になっていないかをチェックしましょう。もし読み取り専用で開いている場合、ショートカットを押しても編集モードに切り替えられず、結果として「閲覧モード」のままで操作が完了してしまうことがあります。
- 文書を閲覧モードで開いたら右上から編集モードに変更する
多くのWordバージョンでは、文書を開いて右上などに「編集を有効にする」や「編集モードで開く」といったボタンが表示されます。これを押すことで、そのセッション中は編集できる状態に切り替わります。 - 「ファイル」→「情報」から保護を解除する
リボンの「ファイル」タブを開き、「情報」を選択します。そこにある「ドキュメントの保護」のドロップダウンメニューで、「読み取り専用として常に開く」がチェックされていれば外します。 - 再度文書を開く
保護設定を変更したら、一度文書を閉じて再度開き直します。正しく保護が解除されていれば、今度は「Ctrl + Shift + E」で校閲モードのオン/オフを切り替えられるはずです。
対処2:キーボードショートカットの再設定
文書の保護設定に問題がない場合、次に確認すべきはショートカットキーの割り当てです。例えば、他の操作に「Ctrl + Shift + E」が割り当てられているか、そもそも「RevisionsToggle(変更履歴のオン/オフ)」に設定されていない可能性があります。
ショートカットの再割り当て手順
- Wordを起動し「ファイル」→「オプション」を開く
- 「リボンのユーザー設定」→「キーボード ショートカット: ユーザー設定」をクリック
- 「分類」から「すべてのコマンド」を選択し、「RevisionsToggle」や「ToolsRevisionMarksToggle」を探す
- 「新しいショートカットキーを押してください」で「Ctrl + Shift + E」を入力し、「割り当て」をクリック
- 「閉じる」→「OK」で設定を保存
この再割り当てを行うことで、校閲モードと編集モードの切り替えが期待通りに動くようになる可能性が高まります。もし「Ctrl + Shift + E」を使いづらい場合は、代替のキー組み合わせに設定してみるのも一つの手です。
対処3:Word初期設定のリセット / Office修復を試す
上記の対処法で解決しない場合、WordやOffice自体の設定ファイル破損が疑われます。以下のような方法を試してみましょう。
- Wordをセーフモード(winword.exe /safe あるいは winword.exe /a)で起動する
- Windowsの検索ボックスや「ファイル名を指定して実行」で「winword.exe /safe」と入力しEnter。
- セーフモードで起動すると、アドインやカスタムテンプレートなどがロードされず、Wordの基本機能のみが動作します。ここでショートカットが正常に働くようであれば、アドインやテンプレートに原因があるかもしれません。
- Officeのクイック修復を実行する
- 「コントロール パネル」→「プログラムのアンインストール」→「Microsoft Office」を選択して「変更」ボタンをクリック。
- 「クイック修復」を選び、画面の指示に従って修復を行う。場合によっては「オンライン修復」が必要になることもあります。
- Normal.dotmをリネームして初期化する
- Wordで使用される標準テンプレート「Normal.dotm」が破損していると、思わぬ不具合が起こることがあります。
- 該当テンプレートファイルを一時的にリネームし、Wordを再起動すると、新しいNormal.dotmが自動生成されるため、不具合が改善するケースがあります。ただし、ユーザー設定もリセットされるので注意が必要です。
複数バージョンのWordで発生する可能性と注意点
このショートカットの不具合は、Office 2013/2016/2019/2021やMicrosoft 365版など、幅広いバージョンで報告されています。Windows版だけでなく、Mac版Wordでも同様のショートカット関連の問題が出る場合があります。
- バージョン別のメニュー配置の差
一部の設定画面やメニューの配置がバージョンごとに異なります。マニュアル通りに操作できない場合は、製品ヘルプを参照してください。 - Officeアップデートのタイミング
定期的なOfficeアップデートのあとに不具合が起きることも少なくありません。アップデートの履歴やバージョン番号を確認してみると、原因特定の糸口が見えることがあります。 - 互換モード文書の存在
古いWordバージョンで作成された文書を新しいWordで開くと、互換モードになる場合があります。このモード下では、機能制限や動作の違いが生じることがあるため、必要に応じて最新形式(.docx)への変換を検討してみてください。
環境に応じた最適な方法を選択しよう
Wordの環境は人それぞれで、会社や組織のポリシーによっては管理者の権限が必要な設定もあります。個人利用の場合は比較的自由にカスタマイズできますが、企業内PCの場合はセキュリティ対策で制限が多いケースもあります。そのような場合、IT部門やシステム管理者に相談しながら設定変更や修復作業を進めると安心です。
実践的なヒント:スムーズな操作のためにできること
Wordで快適に文書編集を行い、校閲モードとの切り替えを円滑にするためには、日頃から以下の点を意識しておくと便利です。
- テンプレートやアドインの整理
必要のないアドインやテンプレートが多いと、起動時の負荷や不具合が起こりやすくなります。定期的に見直すことでトラブルを減らせます。 - ショートカットの周知とドキュメント化
チームで作業する場合、ショートカットの存在や使い方を周知しておくと効率UPにつながります。独自ルールや手順をドキュメント化しておくと、トラブルシューティングもスムーズです。 - 定期的なバックアップと修復ポイントの確保
重要な文書は、クラウドや外部ストレージにバックアップをとっておくのが鉄則です。また、Office環境全体にシステムの復元ポイントを設定しておくと、問題発生時にすぐロールバックできる場合があります。
表で分かる原因と対策一覧
以下は、今回紹介した原因と主な対策をまとめた表です。状況を見ながら適切なステップを選んでください。
原因 | 主な症状 | 対策 |
---|---|---|
読み取り専用または保護設定 | 文書を開くと閲覧モードになり、編集ができない | 「ファイル」→「情報」から保護を解除 再度文書を開き、編集モードで操作 |
ショートカットキーの割り当て不具合 | 「Ctrl + Shift + E」を押しても別の動作をしてしまう | キーボード ショートカット設定画面で 「RevisionsToggle」を再設定 |
Word/Office設定ファイルの破損 | 不規則にエラーや不具合が起きる | Wordセーフモード起動 Officeクイック修復 Normal.dotm再生成 |
互換モードやバージョン差 | 旧バージョン文書を開くと機能が制限される | 最新形式(.docx)への変換 Wordのバージョンごとの差異を把握 |
不要なアドインやテンプレートの干渉 | 起動時にエラーが出たり、一部機能が使えなくなったりする | アドインのオン/オフ確認 定期的なテンプレートの整理 |
この表を参考にしながら、自分の環境がどのパターンに当てはまるかを見極めると対策を立てやすくなるでしょう。
まとめ:ショートカット復活で効率的に文書作成を
Wordで「Ctrl + Shift + E」を使って校閲モードと編集モードを切り替える機能は、文章作成やレビュー作業の効率を大きく高めてくれます。もし突然機能しなくなった場合でも、多くの場合は文書のプロテクト設定やショートカットキーの再割り当てをチェックすることで改善できるはずです。うまくいかないときはセーフモード起動やOfficeの修復を試すなど、段階的に対処してみてください。
あなたのWord環境にあった方法でショートカットを復活させ、快適なドキュメント作成を再開していただければ幸いです。
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