Windows Server 環境でリモート デスクトップ サービスを運用していると、ライセンスの再認証や再アクティブ化が必要になる場合があります。特に RDS デバイス CAL は、サーバーを再インストールしたり構成を変更したりした際に、ライセンスが「使用済み」と表示されてしまい手続きが進まないケースが散見されます。そこでこの記事では、RDS デバイス CAL の再アクティブ化にまつわる問題点や解決策を、できるだけ詳しく解説します。
RDS デバイス CAL 再アクティブ化の概要
RDS (Remote Desktop Services) は、リモートデスクトップ接続を行う際に必要となるライセンスの管理を行います。その中でも「デバイス CAL」は、接続するクライアントデバイス単位でライセンスを付与する仕組みです。通常は一度セットアップしてしまえば問題なく利用できますが、サーバーの再インストールや構成変更など、ライセンス サーバーの登録情報に齟齬が生じたときに再アクティブ化を求められることがあります。
RDS デバイス CAL とは
RDSには「ユーザー CAL」と「デバイス CAL」の2種類が存在します。ユーザー CAL はユーザー アカウントごとにライセンスが付与され、どのデバイスから接続してもライセンスが適用される仕組みです。一方でデバイス CAL は、接続する物理的なコンピューターや端末ごとにライセンスを管理します。
ライセンスの種類 | 対象 | 特徴 |
---|---|---|
ユーザー CAL | ユーザー アカウント単位 | 1人が複数デバイスを使う環境向け |
デバイス CAL | デバイス単位 | 複数ユーザーが1つの端末を使う環境向け |
このように運用形態によってどちらのライセンス形態が適しているかは異なりますが、デバイス CAL を導入している場合は端末ごとにライセンスがひも付く仕組みになっています。
CAL の種類を正しく把握する重要性
購入したライセンスがデバイス CAL なのかユーザー CAL なのかを誤って認識していると、トラブルの原因になります。ライセンス サーバーの構成やライセンス登録作業において、適切なライセンスを選択しているかを改めて確認することが大切です。
再アクティブ化が必要になるケース
RDS デバイス CAL に関して、以下のようなケースで再アクティブ化が必要になることが多いです。
- サーバー OS の再インストール
システム トラブルやハードウェア障害などにより、Windows Server を再インストールした場合にライセンス情報が引き継がれず、新たにライセンスを再設定する必要が生じる。 - ハードウェア構成の大幅な変更
マザーボードやCPUなど大きく構成が変更されると、OS 側で「別のマシン」と認識される場合がある。このときライセンス認証にも影響が出る場合があるため、再度ライセンスのアクティブ化が求められるケースがある。 - RDS ライセンス サーバーの構成ミス
既存のライセンス サーバーが誤って構成されており、ライセンス登録がうまくいかなかった場合。これを修正する過程で再アクティブ化が必要となることがある。 - 移行時のライセンス処理が中断・失敗した場合
元のサーバーから別のサーバーへライセンスを移行する際、途中で手続きが失敗したり「Pending」の状態で止まっていたりするケース。手動で無効化・再登録が必要になる。
これらの状況で「すでにライセンスが使用されている」と表示され、ライセンスキーが受け付けられない問題が発生することがあります。
RDS デバイス CAL の再アクティブ化手順
RDS デバイス CAL を再アクティブ化するには、以下の手順が一般的です。
ライセンス管理サイト (activate.microsoft.com) を利用する
Microsoft が提供するライセンス管理サイトを利用することで、ライセンスの再発行や再アクティブ化を試みることができます。
事前準備
- ライセンス情報の確認
- 購入したライセンスのプロダクト ID、キー(25 桁)を手元に用意しておく。
- 移行時に発行される 45 桁の移行用コードを持っている場合は、それも必要になることがある。
- Windows Server のライセンス認証状況の確認
- RDS CAL を適切に管理するためには、Windows Server 自体のライセンス認証が完了している必要がある。
- コマンドプロンプトなどで slmgr /dli を実行し、認証のステータスを確認するとよい。
- サーバーマネージャーで RDS ライセンス サーバー ロールのインストール確認
- 「サーバーマネージャー > 役割と機能の追加」から「リモート デスクトップ サービス > リモート デスクトップ ライセンス サーバー」が有効になっているかを確認する。
- インストールされていない場合は、インストール後に再起動を行い、その後ライセンスの登録作業に進む。
再アクティブ化の手順
- ブラウザで https://activate.microsoft.com/ にアクセス
- 「Manage CALs」あるいは日本語の場合「CAL の管理」といった表現のメニューから操作を開始する。
- ライセンス サーバー情報の入力
- サーバーのプロダクト ID など、画面の指示に従って必要な情報を入力する。
- 購入済みのライセンスキー(25 桁)を入力し、ライセンスを追加・再アクティブ化する操作を進める。
- ライセンス認証完了の確認
- 手続き完了後、サーバーマネージャーの「リモート デスクトップ サービス > ライセンスの管理」にライセンスが正しく反映されているかをチェックする。
- ライセンス数が正しく表示され、「有効」な状態になっていれば成功。
ライセンス コード入力時のトラブルシューティング
デバイス CAL の再アクティブ化を行う最中に、コード入力でつまずくケースが多くあります。代表的なトラブルとその対処法を見ていきましょう。
「Pending」エラーが出る場合
ライセンス サイトでライセンス キーや移行用コードを入力した際、「Pending (保留)」などの表示が出て先に進めないことがあります。
- 原因1: サイト側の処理待ち
Microsoft 側のサーバーでライセンスの状態を確認・更新している最中で、一時的に反映されない場合があります。数時間から翌日くらいまでは様子を見て再試行するのが一般的です。 - 原因2: 旧サーバーのライセンスが中途半端に残っている
古いサーバーでライセンスの無効化や解除作業を適切に行わずに新サーバーでライセンスをアクティブ化しようとすると、このような保留状態に陥ることがあります。Microsoft サポートに問い合わせて旧サーバー側のライセンスをリセットしてもらうのが近道になることもあります。
その他のエラー (既に使用済み など)
- 既に使用済みと表示される
購入したライセンスキーを入力しても、「既に使用されているため登録できない」などのエラーが表示される場合は、ライセンスが旧サーバー上で有効になったままになっている可能性が高いです。サポートに連絡して状態をリセットしてもらうか、ライセンス管理サイトを通じて手続きが完了するように進める必要があります。 - ライセンス サーバーが見つからない
ネットワーク設定や DNS、ファイアウォールの構成などに問題があると、ライセンス サーバーへ適切にアクセスできないケースがあります。特に複数の Windows Server 環境が混在している場合、どのサーバーがライセンス サーバーなのかを明確に設定することが重要です。
トラブル現象 | 考えられる原因 | 対処例 |
---|---|---|
Pending(保留)から進まない | サイト側の遅延、旧サーバーにライセンス残存 | 待機後再試行、サポートへリセット依頼 |
既に使用済みエラー | ライセンスが旧サーバーに紐づいたまま | ライセンス管理サイトかサポートで再登録 |
ライセンス サーバーが見つからない | ネットワーク設定不備、DNS 不正 | ネットワーク設定再確認、サーバーの役割を明確化 |
Microsoft / ベンダーへの問い合わせ
RDS デバイス CAL を再アクティブ化できない場合、サポート窓口に問い合わせるのが最も確実な手段となります。
リセット作業の依頼
Microsoft サポートに直接問い合わせて、ライセンスステータスの強制的なリセットや手動クリアをお願いする方法があります。特にライセンス管理サイトで行える標準的な操作では解決できない、もしくは「保留(Pending)」状態が長く続く場合には、サポート エンジニアの介在が必要になることが少なくありません。
- 問い合わせ時のポイント
- サーバーのプロダクト ID、エラーメッセージのスクリーンショットなど、具体的な情報を提供する。
- 購入時のライセンス証書やライセンスキーの登録状況を整理しておく。
- 可能であれば旧サーバーのライセンス設定がどうなっていたかを共有する。
購入元のベンダーに問い合わせる利点
場合によっては、ライセンスを購入したベンダーやリセラーが直接 Microsoft と連携してサポートを行ってくれるケースもあります。特にライセンス ボリュームを大口で契約している企業の場合は、専用サポート窓口が用意されていることもあるため、そちらを利用したほうがスムーズに進むことがあります。
新規インストール後の構成確認
再アクティブ化以前に、サーバー自体の環境構成が適切でないとライセンスの登録がうまくいかないことが多々あります。特に再インストール直後は、意外な部分が見落とされがちです。
RDS ライセンス サーバーのロール設定
「役割と機能の追加」ウィザードから、以下のポイントを確認します。
- リモート デスクトップ ライセンス サーバーがインストールされているか
- インストール後、再起動を挟まないと正しく反映されない場合があります。
- インストールログやイベント ビューアーでエラーが発生していないかチェックしましょう。
- リモート デスクトップ セッション ホスト役割の設定
RDS ホスト役割のサーバーが、どのライセンス サーバーを参照するかを正しく指定しているかを確認します。グループ ポリシーやサーバーマネージャー上で設定を誤っていると、ライセンスが有効にならない原因になります。
サーバーマネージャーでの確認ポイント
サーバーマネージャーの「リモート デスクトップ サービス」をクリックすると、ライセンスやセッションホスト、ゲートウェイなどが一覧で表示されます。ライセンス管理の画面で、以下をチェックしましょう。
- ライセンスの有効期限
有効期限切れのライセンスがないか、日付情報に不自然な点はないかを確認する。 - 表示されているライセンスの種類
デバイス CAL とユーザー CAL が混在している環境では、正しく区別されて表示されているかどうか。
誤って「ユーザー CAL」として登録されたライセンスを「デバイス CAL」のつもりで運用しようとすると、エラーが発生しやすくなります。 - ライセンス サーバーが「アクティブ」かどうか
ライセンス サーバーが「アクティブ化されていません」と表示されている場合、そもそもアクティブ化手続きが完了していない可能性があるため、ウィザードを使って再度アクティブ化を実行します。
まとめ
RDS デバイス CAL を再アクティブ化しようとした際に「既に使用中」「Pending 状態」となり進めないときは、まず次の点をチェックするとスムーズに解決へ向かいやすくなります。
- ライセンス管理サイト (activate.microsoft.com) から再アクティブ化
- 旧サーバーのライセンス解除が行われていない可能性がある場合、サイトや電話認証を活用して再アクティブ化を試みる。
- エラーメッセージ (Pending、既に使用済み 等) の原因を切り分ける
- サイト側の処理待ちなのか、旧サーバーにライセンスが残っているのか、ネットワーク設定が原因なのかを確認することで適切な対処を取れる。
- Microsoft やベンダーへの問い合わせ
- 自力で解決できない場合は、ライセンスのリセットを依頼すると状況が好転することが多い。
- 購入元ベンダーのサポートが受けられるなら、手続きを代行してもらうのも手段の一つ。
- 新規インストール後の環境構成を再点検
- Windows Server のライセンス認証や RDS ライセンス サーバーのロール設定が正しく行われているかを確認する。
- 不備があればライセンス アクティブ化のプロセスに影響が出て、エラーが続く原因になり得る。
トラブルが発生すると原因がサーバー側なのかライセンスそのものなのか判別がつきにくいですが、落ち着いて手順を追いながら一つずつ確認すれば、ほとんどの場合は解決できます。特に大規模環境や複数ライセンスを運用している組織では、管理を一元化し、ライセンスの有効期限やユーザー/デバイスの紐付け状況を定期的に見直すことで再アクティブ化トラブルを防ぐことが可能です。しっかりと準備を行い、迅速にトラブルを解決できる体制を整えておきましょう。
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