Windows Server 2019で発生するRDS全ユーザー切断トラブルの原因と対策

Windows Server 2019のリモートデスクトップサービス(RDS)環境で、全ユーザーセッションが突然切断されるトラブルが起こると、業務への影響は計り知れません。快適に遠隔作業を行うためにも、原因を正しく見極めて早期に解消したいものです。本記事では、実際に「理由コード3489660929」がイベントログに記録されるケースを中心に、更新プログラムの影響からUDP設定の見直し、さらにネットワーク関連の調整ポイントなど、幅広い視点から対策方法をご紹介します。どうぞ最後までご覧ください。

RDS環境で発生する全ユーザー切断の概要

RDS(Remote Desktop Services)は、Windows Server上でリモートデスクトップ接続を一元管理できる機能です。企業では、セッションコレクションやリモートアプリの公開など、さまざまな用途で利用されます。ところが、Windows Server 2019のRDS環境において、ある日突然、稼働中のすべてのユーザーセッションが一斉に切断される問題が報告されています。イベントログを確認すると、イベントID 40とともに「Session x has been disconnected, reason code 3489660929」というメッセージが記録されることが特徴です。

このようなトラブルが生じると、ユーザーは強制的にセッションから切り離されてしまい、作業中のファイルやアプリケーションが中断されるなど、大きな影響があります。特に複数のターミナルサーバー(セッションホスト)を運用している場合や、接続ブローカーを利用して負荷分散しているケースでは、問題が広範囲に及ぶため、早急な原因究明と対策が求められます。

問題の代表的な原因: KB5041578による既知の不具合

RDSセッションが一斉に切断される理由コード3489660929については、Microsoftから正式な修正情報がまだ十分に出ていないものの、コミュニティや実務現場の報告では「KB5041578による不具合」が疑われる事例が多数報告されています。具体的には、Windows Server 2019にKB5041578をインストールした後から、RDSのセッションが不定期に切断される事象が確認されているのです。

KB5041578のアンインストールが有効な事例

実務での対処としては、まずKB5041578をアンインストールすると症状が改善するという報告が多く寄せられています。ただし、Windows Updateによる累積アップデートを再度適用すると、その累積アップデートにKB5041578と同等の修正(あるいは不具合)が含まれている場合、再び同様の問題が発生することがあります。
そのため、本番環境で即座に取り除けない場合は、テスト環境などでKB5041578を削除し、その後に最新の累積アップデートを慎重に適用して挙動を確認するという手段が考えられます。

最新累積アップデート適用時の注意点

最新の累積アップデートでも不具合が継続して含まれている可能性があるため、アップデート前には必ずバックアップを取得し、実行計画を立てたうえで進めることが推奨されます。また、本番環境に適用する前にはテスト環境で動作検証を行い、RDSセッションが安定して利用できるかを必ず確認してください。

UDP通信の無効化設定は万能策ではない

RDP(リモートデスクトッププロトコル)は、既定ではUDPとTCPの両方を使用するモードが有効になっています。UDPによる高速化は利点も多いですが、ネットワーク環境や特定の更新プログラムとの相性次第では、セッション切断の要因になり得るとの指摘があります。実際、以前からRDS接続が不安定な場合に「UDP通信を無効化してTCPのみとする」対処はよく知られています。

グループポリシーによるUDPの制御

UDPを完全に無効化するためには、クライアント側だけでなくサーバー側の設定も合わせて行うのが理想です。グループポリシーを使う場合、以下の箇所にあるポリシーを有効にします。

  • クライアント側:
  • 「管理用テンプレート > Windows コンポーネント > リモート デスクトップ サービス > リモート デスクトップ接続クライアント > クライアントでのUDPをオフにする」
  • サーバー側(RDSホスト):
  • 「管理用テンプレート > Windows コンポーネント > リモート デスクトップ セッション ホスト > 接続 > RDP トランスポートプロトコルの選択」で「TCPのみを使用する」を選択

レジストリ設定例

場合によっては、グループポリシーを利用できない(または適用に時間がかかる)環境もあります。そうした状況では、レジストリを直接編集して強制的にUDPを無効化する方法があります。クライアント側で「fClientDisableUDP」を1に設定するだけでなく、サーバー側でも類似の設定を施すことが有効な場合があります。以下は一例です。

Windows Registry Editor Version 5.00

[HKEY_LOCAL_MACHINE\SOFTWARE\Policies\Microsoft\Windows NT\Terminal Services\Client]
"fClientDisableUDP"=dword:00000001

[HKEY_LOCAL_MACHINE\SYSTEM\CurrentControlSet\Control\Terminal Server\WinStations]
"fDisableUDPTransport"=dword:00000001

上記レジストリを適用した後、念のためにサーバーとクライアントの再起動を行うことで確実に設定が反映されるようにします。ただし、この方法は切断問題の根本解決とならないケースもあるため、KB5041578に関連する問題を抱えている場合はそちらの対策を優先して検討してください。

UDP無効化でも解決しないケース

実際の報告事例を見ると、UDP通信を無効化しても、理由コード3489660929による一斉切断が続いてしまうケースも珍しくありません。特にKB5041578が影響していると疑われる環境では、UDP無効化のみでは効果がないことも多いです。そのため、根本要因がアップデート由来にある場合は、やはり問題のあるKBのアンインストールや最新累積アップデートへの切り替えが不可欠となります。

ネットワークドライバーや環境のチェックが重要

セッション切断は必ずしもOSのアップデートだけが原因とは限りません。ネットワーク全般に起因する問題の可能性も常に検討する必要があります。

ドライバーのアップデート・再インストール

サーバー側・クライアント側ともに、ネットワークアダプタのドライバーが古かったり、不具合を含むバージョンだったりすると、RDPセッションが頻繁に切断されるリスクが高まります。特に無線LAN(WLAN)で接続しているクライアントで顕著ですが、サーバー側でもNIC(Network Interface Card)のファームウェアやドライバーを最新に保つことは非常に重要です。
問題発生時には、以下の手順で確認と更新を行いましょう。

  1. ドライバーのバージョンチェック
  • デバイスマネージャーやメーカーのユーティリティなどでドライバー情報を確認する。
  1. 最新ドライバーの検索
  • メーカー公式サイトやWindows Updateカタログなどから、最新ドライバーをダウンロードできるか確認する。
  1. 事前テストの実施
  • 生産環境に影響が出ないように、テスト環境や予備機などで動作検証を行う。
  1. 段階的な適用と監視
  • サーバー側でドライバーを更新したあと、問題が再発しないか数日間は監視を続ける。

ネットワーク負荷・VPN経路の検証

サイト間VPNやWAN回線を経由してRDSを利用している場合、帯域不足や高い遅延が切断を誘発することがあります。実際のところ、既知の不具合に遭遇していなくても、ネットワーク環境が不安定であればRDSの切断は発生しやすくなります。以下の点をチェックしてみてください。

  • 回線利用率: ピーク時に帯域が逼迫していないか、ネットワーク監視ツール等で確認する。
  • MTU設定: VPNトンネルや特定の機器によっては、MTUサイズの不整合が発生してパケット破損や分割が起き、RDP接続が不安定になるケースがある。
  • 暗号化方式: VPNやRDPの暗号化方式が古いまたは複雑すぎる場合、オーバーヘッドが増して切断が起きやすい状況になることも。

その他の検討事項: KerberosトークンサイズやHyper-V環境

切断問題の解決策として、Kerberosトークンサイズを拡大すると改善するという情報が流布していましたが、実際には効果が見られないという報告も多く存在します。全ユーザーのセッションが同時に切断される問題に直接の関与があるかは不透明です。

また、RDSホストをHyper-Vの仮想マシンとして運用している環境では、アップデート適用後の再起動時にフリーズや強制電源オフが必要になるほどの不調が起きているという声もあります。これが理由コード3489660929の切断と同根の問題かは定かではありませんが、仮想マシンの統合サービスやホストOSのドライバー周りも注意を払うべきポイントです。

コンソールログオンによる一時的回復

一部の事例で、サーバー管理者が直接コンソール(Hyper-V Manager上のVM接続やiDRAC/ILOなどのリモート管理ツールを介して物理コンソールに相当)にログオンすると、RDSがいったん回復し、切断が止まるケースがあると報告されています。
しかし、これは根本的な解決方法ではなく、一時的な現象にすぎない可能性が高いです。コンソールセッションが稼働することで何らかのサービスが再初期化されて問題が緩和されるのかもしれませんが、長期的には再発のリスクが残ります。

効果的なトラブルシューティングの進め方

上記のように、RDSセッションの一斉切断は複合的な要因によって引き起こされる可能性があります。そこで、状況に応じて以下のステップを踏みながら根気強く原因を絞り込むのが得策です。

トラブルシューティングのステップ

  1. イベントログ・信頼できる情報源の確認
  • 「イベントビューア」でRDS関連のログ(特にTerminalServices-LocalSessionManager, TerminalServices-RemoteConnectionManager)を細かくチェックする。
  • TechNetフォーラムやMicrosoft Q&A、コミュニティサイトなどで同様の症状の報告を探す。
  1. KBアンインストール・ロールバックの検証
  • 最近適用された更新プログラムをリストアップし、可能であればテスト環境でアンインストールして効果を確認する。
  • KB5041578がインストールされている場合は、まずはこれを疑い、アンインストールしてみる価値がある。
  1. UDP通信の無効化とネットワーク確認
  • 先述の手順でクライアント側とサーバー側両方のUDPを無効化し、状況が変化するかを確認する。
  • ネットワークドライバーのバージョン確認・更新やVPN経路・回線速度なども同時に調べる。
  1. Hyper-V・仮想環境の設定やドライバーの見直し
  • 仮想化環境でRDSを運用している場合、ホストOS側で適用したアップデートや統合サービスに不具合がないか確認。
  • Hyper-Vだけでなく、ESXiやCitrixなど異なるハイパーバイザーでも同様の現象が発生している報告があるので、環境固有の問題かも検証する。
  1. テストユーザーによる負荷テスト・Wireshark解析
  • 少数ユーザーで再現性テストを行い、Wiresharkなどのパケットキャプチャでセッション切断直前の通信状態を分析する。
  • RDPプロトコルの挙動を詳細にログ出力できるように設定し、原因を追求する。

代表的な対策・ワークアラウンドのまとめ

以下に、問題が発生した環境で報告されている代表的な対策を表形式でまとめます。

対策効果/注意点実施難易度
KB5041578のアンインストール多くの事例で原因解消報告がある。ただし最新累積アップデートに同等の修正が含まれている場合、再発リスクあり。中~高
UDPを無効化 (GPO/レジストリ)RDPの接続がTCPのみになるため、切断リスクが低減する可能性。ただし本件では効果が限定的という声もあり、根本対策にならない場合も。低~中
ネットワークドライバー更新ドライバー不具合が切断の要因となる可能性がある。サーバー側・クライアント側双方での更新を実施し、テストを慎重に行うことが重要。
Hyper-V設定の見直し仮想環境特有の不具合(統合サービスやホストOSのパッチ)が影響している場合、設定変更やロールバックで解決する可能性あり。中~高
コンソールセッションでのログオン一時的にRDSが回復する事例あり。ただし恒久対策にはならない。
最新累積アップデートの適用問題を解消する修正が含まれる可能性はある一方で、新たに不具合が導入されるリスクも。テスト環境での動作確認が必須。中~高

今後の展望と注意点

RDSのセッション切断問題は、ビジネスの継続性に直結する重大なトラブルです。Microsoftから公式な修正プログラム(Hotfix)が公開されるまでは、コミュニティレベルの情報収集と、細かな切り分け作業が欠かせません。

  • SNSやコミュニティを活用: 同様の症状を抱えた管理者が最新情報やワークアラウンドを共有している場合があります。
  • 累積アップデートのリリースノート要確認: 累積アップデートのリリース時には、修正内容と既知の不具合を細かく読み取り、適用前に考慮する。
  • システム監査ログの活用: ログオン・ログオフイベントなどを詳細に監査ログで取得し、切断タイミングのパターンを分析する。

RDS運用を安定化させるための基本的な心構え

  1. バックアップ/スナップショットの取得: 重要サーバーであれば、定期的なバックアップやHyper-Vのスナップショットを取得しておくと、万一の不具合時に迅速にロールバック可能。
  2. 小まめな検証環境の利用: 更新プログラムを本番適用する前に、できる限りテスト環境を用意して互換性や安定性を検証する。
  3. セキュリティ更新と機能更新の分離: Windows Updateで一括適用を行うと、不必要な機能更新が含まれることがある。業務批判性の高いサーバーは、セキュリティのみのアップデートを優先する運用も検討する。
  4. 定期的なイメージバックアップ: システムドライブのイメージバックアップを定期取得することで、想定外の不具合発生時も復元が容易になる。

まとめ

理由コード3489660929によるRDSセッションの切断は、Windows Server 2019の更新プログラムを取り巻く複雑な環境や、UDPプロトコルの設定、ネットワークドライバーや仮想環境の組み合わせなど、多角的な要因から生じる可能性があります。特にKB5041578のアンインストールが有効とされる事例が目立ちますが、必ずしもすべての環境で同一の原因・解決策が当てはまるとは限りません。

一時的な回避策としては、問題のあるKBをアンインストールしつつ、UDP通信の無効化やネットワークドライバーの更新、最新累積アップデートの適用などを慎重に組み合わせることが多くの現場で試みられています。最終的にはMicrosoftの公式パッチやホットフィックスによる包括的な修正が期待されるところですが、それまでは自身の環境に合ったワークアラウンドを見つけるために、コミュニティ情報の収集や継続的な検証作業が必要です。

快適で安定したRDS環境を維持することは、リモートワークや在宅勤務などが増える昨今では特に重要です。予期せぬセッション切断を回避し、安心して業務を継続できるよう、本記事でご紹介した内容を参考にしていただければ幸いです。

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