Windows Server 2022でRDP運用を成功させる!CALとRDSライセンスの基礎から導入ポイントまで徹底解説

サーバーを複数のユーザーと共有して業務効率を高めたいと考える方は多いのではないでしょうか。特に、リモート デスクトップ(以下、RDP)を活用することで、離れた場所からもWindows Server環境へアクセスできるメリットは大きいものです。しかし、RDPを本格的に運用する際にはライセンス周りの理解が不可欠です。そこで今回は、Windows Server 2022のCAL(クライアント アクセス ライセンス)やRDS(リモート デスクトップ サービス)ライセンスの基礎から導入・運用の実践ポイントまで、詳しく解説していきます。

Windows Server 2022を運用する上で押さえておきたい基礎知識

Windows Server 2022はMicrosoftが提供するサーバー向けOSの最新の一つで、堅牢性やセキュリティ機能、クラウドとの連携などが充実しています。中小規模のビジネスから大規模データセンターまで、多種多様なシナリオに合わせて活用できる柔軟性が強みです。
しかし、Windows Serverを導入する際には、OS自体のライセンス費用だけでなく、ユーザーやデバイスがサーバーにアクセスするための権利を管理する仕組みとして、CAL(クライアント アクセス ライセンス)の存在が欠かせません。さらに、サーバーをリモート デスクトップサーバーとして活用する場合は、RDS用のCAL(通称RDS CAL)が追加で必要となります。

Windows ServerとCALの関係とは

Windows Serverには、接続するユーザーまたはデバイスがサーバーに合法的にアクセスするためのCALという仕組みがあります。これは「User CAL(ユーザーCAL)」と「Device CAL(デバイスCAL)」の2種類に大別されます。

  • User CAL(ユーザーCAL):
    サーバーにアクセスする“ユーザー”単位でライセンスを取得します。一人のユーザーが複数のデバイス(PC、タブレット、スマートフォンなど)からアクセスするときに有利です。
  • Device CAL(デバイスCAL):
    サーバーにアクセスする“デバイス”単位でライセンスを取得します。特定の端末を複数のユーザーが共有するような形態、例えばコールセンターやシフト制のオフィスなどで有利です。

CALの具体的な選び方

どちらのCALが適しているかは運用形態によります。

  • 利用者1人が複数デバイスを使うことが多い→User CAL
  • 端末1台を複数人で利用することが多い→Device CAL

例えば5人のユーザーが各自複数のPCからサーバーにアクセスするなら「User CAL×5」が効率的です。一方で、固定端末5台を使って10名程度が交代で作業するのであれば「Device CAL×5」で済む可能性があります。

RDS(リモート デスクトップ サービス)とは何か

Windows Serverを通じてRDP接続し、アプリケーションやデスクトップ全体にリモートでアクセスできるサービスが「RDS(リモート デスクトップ サービス)」です。以前は「ターミナル サービス」と呼ばれていた機能で、リモートデスクトップセッションの集中管理や負荷分散など、より多機能な運用が可能になります。

RDS導入時に必要なライセンス

RDS環境を本格的に運用する際には、通常のWindows Server CALに加えて、RDS CALも必要です。

  • RDS User CAL(ユーザー単位)
  • RDS Device CAL(デバイス単位)

たとえば5人がリモート デスクトップでサーバーを利用するなら、「Windows Server 2022のユーザーCAL×5」に加えて「RDSユーザーCAL×5」を用意し、ライセンス認証サーバーを構成します。これにより、同時に5セッションのRDP利用ができるようになります。

“管理目的のRDP”と“通常利用のRDP”の違い

Windows Serverには、RDSロールをインストールしていなくても「管理目的」に限定されたリモート デスクトップの同時接続2セッションが許可されています。これは追加のRDS CALを購入しなくても使用可能ですが、あくまでサーバー管理者が保守・運用を行うためのもので、業務ユーザーに対するリモートデスクトップ環境としての利用は想定されていません。
よって、業務利用として5ユーザーなど複数のユーザーが同時接続をする場合は、RDSロールをインストールしてライセンス認証サーバーを立ち上げ、RDS CALを正しくアクティブ化する必要があります。

Windows Server 2022でのRDP運用シナリオ

ここでは、具体的なシナリオをいくつか想定して、どのようなライセンス構成となるかを紹介します。

シナリオ1: 管理者のみがリモート デスクトップを使用

  • ユーザー数: 管理者2名
  • 運用目的: サーバー設定やメンテナンス、ソフトウェアインストールなど
  • 必要ライセンス: Windows Server CAL(デフォルトで許可される管理目的2セッション)
  • RDSロールの要/不要: 不要

この場合、管理用リモートデスクトップはWindows Serverの標準機能として2セッションまで同時接続が可能です。追加ライセンスは原則不要であり、RDSロールをインストールしない状態で問題ありません。

シナリオ2: 5人が業務用途でRDPを利用

  • ユーザー数: 5名(総合事務員やエンジニアなど、継続的に利用)
  • 運用目的: ファイル共有や社内システムへのアクセス、専用アプリケーション利用など
  • 必要ライセンス:
  1. Windows Server 2022のユーザーCAL × 5
  2. RDS ユーザーCAL × 5
  • RDSロールの要/不要: 必要(ライセンス認証サーバー構成を実施)

このシナリオでは管理用途ではなく、通常のユーザー利用として同時接続が行われるため、RDSライセンスを導入しなければなりません。RDSライセンス認証サーバーを正しくセットアップし、5ユーザー分のRDS CALを割り当てる必要があります。

シナリオ3: 10台の端末から交代制で利用するコールセンター

  • ユーザー数: コールセンタースタッフ30名
  • 利用デバイス: 10台(ブース内の端末)
  • 運用目的: 顧客情報システムへのアクセス、通話履歴管理など
  • 必要ライセンス:
  1. Windows Server 2022のデバイスCAL × 10
  2. RDS デバイスCAL × 10
  • RDSロールの要/不要: 必要

この例では“端末10台”を職員30人がシフトで使い回すイメージのため、デバイスCALを選択するとコスト面で効率的になります。ユーザー数が多い場合はUser CALを大量に購入するより、Device CALが割安になる可能性があるため、実際の運用状況をしっかり分析することが肝要です。

ライセンス導入後のRDSロール構成手順

RDSを本格的に運用するためには、Windows Server上でRDSの役割(ロール)をインストールし、ライセンス認証サーバーの構成を行わなければなりません。以下は一般的なセットアップ手順の例です。

  1. サーバーマネージャーの起動
    Windows Server 2022にログインし、サーバーマネージャーを起動します。
  2. 役割と機能の追加ウィザードを実行
    「役割と機能の追加」を選択し、ウィザードを進めます。
  3. リモート デスクトップ サービスの役割を選択
    ウィザード内で「リモート デスクトップ サービス」の項目をチェックし、必要なコンポーネントも選択します。
  • リモート デスクトップ セッション ホスト
  • リモート デスクトップ ライセンス
  • リモート デスクトップ ゲートウェイ(必要に応じて)
  • リモート デスクトップ Webアクセス(必要に応じて)
  1. ライセンスモードの選択
    インストール後にサーバー マネージャーで「リモート デスクトップ サービス」→「概要」→「RD ライセンスのインストール」と進み、ライセンス モード(ユーザーCALまたはデバイスCAL)を選択します。
  2. ライセンスサーバーのアクティブ化
    ライセンス認証ウィザードで、Microsoftのライセンス認証を行います。オンラインまたは電話などの方法で行い、取得したライセンス キーを入力します。
  3. ライセンスの割り当てを確認
    RDSライセンスのダッシュボードで、利用するユーザー数(またはデバイス数)に対して正しくライセンスが割り当てられているか確認します。

構成時の注意点

  • ライセンス認証サーバーは、RDS CALがアクティブ化されていないと一定の猶予期間を過ぎるとRDPセッションが強制的に切断されるため、早めに設定しましょう。
  • 同一環境内でライセンス モードの変更を頻繁に行うことは推奨されません。どちらのCAL種別を採用するか、事前に十分検討してください。
  • Active Directoryを利用するドメイン環境であれば、ライセンスサーバーはドメインメンバーとしての設定が一般的です。ワークグループ環境ではライセンスの検出方法が異なる場合があるため、公式ドキュメントを参考に構成します。

ライセンス費用の最適化と運用ポイント

サーバーライセンス、Windows Server CAL、RDS CALをすべて揃えるとなると、初期投資が大きくなるケースがあります。以下のようなポイントを押さえて、費用対効果を高めながら運用することが重要です。

ライセンス管理の自動化・可視化

  • PowerShellスクリプトなどを活用
    RDSのライセンス利用状況や残存数をスクリプトで定期的に取得・レポート化することが可能です。
  • 監査ログの活用
    Active Directoryの監査ログやWindows Serverのイベントビューアーを定期的に確認し、不正アクセスやライセンスの超過利用がないかをモニタリングします。

柔軟なCALの組み合わせによるコスト削減

  • User CALとDevice CALの混在運用
    事業所によっては、多くのユーザーが1台の端末を共有するエリア(製造現場など)と、1人が複数端末を使うデスクワークエリア(人事・経理など)が混在している場合があります。それぞれに最適化されたCALを導入することで総コストを削減できます。

サーバーコンソリデーションと仮想化の活用

Windows Server 2022ではHyper-Vを利用して仮想マシンを構成しやすくなっています。一つの物理サーバー上で複数の仮想マシンを運用し、それぞれに適切なライセンスを割り当てる方法は、サーバースペースの効率化とライセンスの可視化に役立ちます。
ただし、仮想化環境においても、ライセンスの考え方は基本的に変わらず、「接続するユーザーもしくはデバイス数」によるCALが必要となる点には注意してください。

RDS接続のトラブルシューティングとよくある質問

ライセンス周りの設定をしていても、リモート デスクトップ接続に問題が発生するケースがあります。代表的な事例と対策を挙げてみましょう。

RDP接続が突然切断される

  • 可能性1: ライセンス猶予期間が切れた
    Windows ServerはRDS CALが未設定の場合でも、一時的に試用期間としてRDP接続を許可しています。しかし期限切れを迎えると強制的に切断されます。ライセンス認証サーバーをアクティブ化し、正しくCALをインストールしてください。
  • 可能性2: ネットワークトラブルやファイアウォール設定
    ポートが閉じていたりVPN経由の通信が不安定だったりすると、RDPセッションが切断されます。サーバーやクライアント側のファイアウォール設定やネットワーク状態をチェックしましょう。

RDSライセンスサーバーが認識されない

  • 対策1: ライセンスサーバーとして設定したホスト名やIPアドレスが間違っていないか確認
  • 対策2: Active Directory環境であれば、ライセンスサーバーをドメインに正しく参加させる
  • 対策3: グループポリシーでライセンスサーバーを指定することも可能です。グループポリシーエディタ(“gpedit.msc”)またはドメインコントローラ側で設定を確認し、クライアントサーバーが正しいライセンスサーバーを参照しているかチェックします。

同時接続数が想定より少ない

  • 原因1: RDSライセンスの割り当て不足
    例えば、5ユーザー分しかRDS CALを購入していないのに、6人目がログインしようとするとライセンス不足で接続できなくなる場合があります。
  • 原因2: 不適切なライセンスモードの設定
    ユーザーCALで購入したのに、ライセンスモードがデバイスCALになっているとライセンス割り当てがうまくいきません。サーバーマネージャーから設定を見直しましょう。

より詳細に理解するための表と簡易コード例

下記は、CALとRDS CALの違いをまとめた表と、PowerShellでライセンス関連の設定を確認する例です。

項目Windows Server CALRDS CAL
目的ファイル共有、印刷、認証などサーバー基本機能へのアクセスリモートデスクトップ(ターミナル サービス)へのアクセス
モードユーザー単位(User CAL) / デバイス単位(Device CAL)RDSユーザーCAL / RDSデバイスCAL
主な適用対象サーバー管理者・一般ユーザー全般リモートデスクトップ経由でアプリやデスクトップを利用するユーザー
同時接続の可否基本的にサーバーに接続できる権利を付与RDPセッション数に応じて必要数を準備

PowerShellでライセンスサーバーを確認する例(参考):

# RDSライセンス サーバーのリストを取得
Get-WmiObject -Namespace "root\CIMV2" -Class "Win32_TerminalServiceSetting" | Select-Object -Property LicenseServer

# ライセンスモードを確認 (User/Device)
(Get-WmiObject -Namespace "root\CIMV2" -Class "Win32_TerminalServiceSetting").LicensingType

上記のようにPowerShellコマンドを利用することで、ライセンスサーバー情報やライセンスモードを迅速に確認できます。

まとめとおすすめの運用プロセス

Windows Server 2022を5ユーザーで利用し、RDPによる本格運用を考えるなら、最初に把握すべきは「CAL」と「RDS CAL」の2種類のライセンスが必要になる点です。管理目的の2セッションであれば追加ライセンス不要ですが、それ以上の同時接続を日常的に行う場合はRDSロールのインストールとRDS CALの導入が必須です。
また、ライセンスモード(ユーザーまたはデバイス)は運用形態に合わせて選択し、購入の前にシミュレーションを行いましょう。導入後はライセンス認証サーバーを適切に設定し、定期的に監査ログやPowerShellスクリプトなどを使ってライセンス消費状況をチェックすることで、不要なコスト発生やライセンスの非準拠リスクを回避できます。
サーバーの集中管理やリモートワークの推進を考えるうえで、RDPによる効率化は大きなメリットをもたらします。正しくライセンスを取得し、快適なリモートデスクトップ環境を構築してみてください。

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