Windows Server 2022 Standard Coreの評価版を導入してみたものの、実際に本格運用へ移行する際にはリテール版へのコンバートが必要になる場合が多いでしょう。ところが、評価版からStandard Coreリテール版へ直接アップグレードしようとすると、思わぬ制限やエラーに直面することがあります。この記事では、評価版Standard Coreからリテール版へ移行できない理由、Datacenter Coreへのアップグレードとの違い、クリーンインストールの具体的な手順などを詳しく解説します。導入前のライセンス確認やエディション選択のポイントについても取り上げますので、ぜひ最後までご覧ください。
Windows Server 2022 評価版からリテール版への変換とは
Windows Serverの評価版は、製品版とほぼ同じ機能を一定期間試せる便利なエディションです。一般的に「Windows Server Evaluation」と呼ばれ、ライセンスキーの入力なしでインストール後180日間使用できます。評価版をしばらく利用した後、正式にサーバーとして運用したい場合はリテール版への移行が求められます。
ここで気をつけたいのは、Windows Server 2022のエディションによってサポートされるアップグレードパスが異なる点です。特にCoreインストール(GUIなし)を選択している場合、以下のような制限が発生することが知られています。
- Standard Core評価版をリテール版Standard Coreへ直接コンバートできない
- Datacenter Core評価版はリテール版Datacenter Coreへアップグレード可能
- 評価版からStandard Coreリテール版への移行を望む場合はクリーンインストールが必要
こうした制限はWindows Server 2016以降で適用されており、2022でも同様です。Microsoftのドキュメントでも「EvaluationからStandard Coreへはアップグレードパスが存在しない」旨が明言されています。
Evaluation版とリテール版の違い
評価版(Evaluation)は主に試用目的で提供されます。次のような特徴や違いがあります。
項目 | 評価版 (Evaluation) | リテール版 (Retail) |
---|---|---|
ライセンス期間 | 180日間(延長可能な場合あり) | 無期限(ライセンスキー認証必須) |
機能制限 | 製品とほぼ同等 | 製品フル機能 |
アップグレード | Datacenter Coreへのコンバートが可能 | キー入力で別エディションへアップグレード可能(エディション互換性があれば) |
インストール | ISOイメージを使ってインストール | リテール版ISOまたはライセンスキーでインストール |
評価版の目的は試用であるため、エディションごとにアップグレード制限が存在します。Datacenter CoreへはEvaluationからアップグレードが可能ですが、Standard Coreへの直接的な移行パスはサポートされていません。
アップグレードとクリーンインストールの選択
Windows Serverを評価版でインストールしていて、本番運用へ切り替える際に考えられる選択肢は大きく2つあります。
- アップグレード
- DISMコマンド等を用いて評価版からリテール版へ変換
- ただし、Standard Core評価版 → Standard Coreリテール版はサポート対象外
- 評価版がDatacenterの場合はDatacenterリテール版へのアップグレードが可能
- クリーンインストール
- 新規にWindows Server 2022 Standard Coreのリテール版メディアを使ってインストール
- 既存環境の引き継ぎはデータ移行やバックアップからの復元など、手動の作業が必要
多くの場合、評価版Standard CoreからStandard Coreリテール版へアップグレードしようとしても失敗に終わります。これはMicrosoftが公式にサポートしていないためで、DISMコマンドで確認するとDatacenter Coreへの変換オプションしか表示されないのがその証拠です。
評価版Standard Coreをリテール版Standard Coreに変換できない理由
Windows Server 2016以降、Coreインストールの評価版からStandard Coreリテール版へアップグレードは行えないという仕様が定着しています。これは主に以下のような理由が挙げられます。
- ライセンス体系の違い
評価版は単なる「試用版」という位置づけであり、製品版ライセンスと統合する公式な経路は特定のエディションのみ許可されています。 - エディション違いによるファイル/機能差異
Coreインストールの評価版とリテール版Standard Coreとでは、内部的なコンポーネントの扱いやライセンス情報の設定が異なる場合があります。 - サポートポリシーの明確化
Microsoftは公式にDatacenter Coreに対するアップグレードはサポートする一方、Standard Coreのインプレースアップグレードは非推奨もしくは不可としており、顧客側がクリーンインストールを行うことでトラブルを回避するよう求めています。
こうした背景から、仮に「WindowsServer2022English64-bitX22-74290.iso」というファイルを入手しても、評価版のままStandard Coreへのアップグレードを行おうとするとオプションに表示されないことがあります。評価版からStandard Coreリテール版を目指すのであれば、クリーンインストールが必要です。
Datacenter Coreへのアップグレードは可能
一方で、評価版Standard Coreからリテール版Datacenter Coreに移行することは比較的スムーズに行えます。MicrosoftはEvaluation → Datacenter Coreのアップグレードパスを公式に認めており、以下のようなステップで実行可能です。
- DISMコマンドで現在のエディションを確認
Dism /online /Get-CurrentEdition
- アップグレード可能なエディションを確認
Dism /online /Get-TargetEditions
この際、多くの場合「DatacenterCore」が表示され、StandardCoreが表示されないことを確認できます。
- Datacenter Coreへのアップグレードコマンド
Dism /online /Set-Edition:ServerDatacenterCor /AcceptEula /ProductKey:<ライセンスキー>
<ライセンスキー>
には正規のDatacenter Coreライセンスを入力- 変換後に再起動が必要
これらの手順はMicrosoft公式ドキュメントにも記載があります。ただし、Datacenter Coreにアップグレードするとライセンス費用や機能面でStandardより上位になりますので、無闇に導入するのではなく、用途やコストを考慮して選択しましょう。
DISMコマンドの使い方
DISM(Deployment Image Servicing and Management)はWindowsイメージの管理ツールで、エディションのアップグレードや機能の追加・削除などに使われます。Windows ServerだけでなくWindows 10/11でも利用可能です。評価版からのアップグレードを試みる際には以下が基本の流れとなります。
# 1. 現在のエディションを確認
Dism /Online /Get-CurrentEdition
# 2. アップグレード可能なエディションを表示
Dism /Online /Get-TargetEditions
# 3. 変換実行 (例: Datacenter Coreにアップグレード)
Dism /Online /Set-Edition:ServerDatacenterCor /AcceptEula /ProductKey:XXXXX-XXXXX-XXXXX-XXXXX-XXXXX
Standard Coreが出てこない場合は、それがMicrosoftの仕様でサポートされていないことを意味します。何度試行してもアップグレードパスが出ない場合は、評価版Standard Coreからはリテール版Standard Coreへの移行はあきらめ、クリーンインストールを検討するしかありません。
リテール版Standard Coreをクリーンインストールする手順
評価版からStandard Coreへの移行を強く希望する場合、クリーンインストールでリテール版を導入するのが唯一の方法です。以下は一般的な流れです。
クリーンインストールの流れ
ステップ | 詳細 |
---|---|
1. バックアップ | システム全体や重要データをバックアップ |
2. インストールメディア準備 | リテール版のISOをダウンロードまたはメディアを作成 |
3. ブート設定 | BIOS/UEFI設定でインストールメディアから起動 |
4. Windows Server セットアップ | インストール中にStandard Coreを選択し、ライセンスキーを入力 |
5. 初期設定 | ホスト名やネットワーク設定など基本的な構成を行う |
6. バックアップ復元 | 必要に応じてデータや設定を復元 |
評価版の環境設定やインストール済みのアプリケーションをそのまま引き継げないデメリットはあるものの、クリーンインストールはシステムを一新できるメリットもあります。また、旧評価版で発生していた問題やエラーをリセットできる点も大きな利点です。
バックアップの取り方
クリーンインストールに先立ち、データ損失を防ぐために必ずバックアップを実施しましょう。推奨される方法としては、以下のようなツールや手順があります。
- Windows Server Backup
Windows Serverに標準搭載のバックアップ機能。システムイメージごとバックアップを作成できます。 - サードパーティ製バックアップソフト
Acronisなどのツールを使ってディスクイメージを取得すると、復元手順が分かりやすい場合が多いです。 - ファイルサーバーやクラウドストレージを活用
設定ファイルやログ、ユーザーデータなど、個別ファイルをクラウドやNASに退避させておくと、必要な部分だけスムーズに復元可能です。
バックアップは保存先の冗長性も確保し、本番稼働しているサーバーの場合は完全なダウンタイムを伴わずにバックアップを取得できるかを検討しておくと安全です。
ISOファイルの注意点
たとえ「WindowsServer2022English64-bitX22-74290.iso」といった、いかにもStandard版やリテール版に見えるISOファイルを入手しても、中身は評価版と統合されているイメージである可能性も考慮する必要があります。実際にはセットアップ時に「Standard Core」を選択しても、評価版としてインストールされるケースもあるため注意が必要です。
- Microsoft 365ポータルやVisual Studioサブスクリプションで提供されるISO
各種エディションを共通イメージ化している場合があるため、インストール時のライセンスキー入力でエディションが決定されることが多いです。 - SHA-1/2ハッシュや公開情報を確認
ISOダウンロード時に公式が公開しているハッシュ値と照合し、正規のファイルかどうかチェックしておきましょう。 - インストール後にエディションをチェック
インストール直後に「winver」コマンドや「systeminfo」コマンド、DISMコマンドでエディションを再確認し、評価版としてインストールされていないかを確かめることが大切です。
もしインストール後、再びEvaluation版になっているようであれば、クリーンインストール手順を誤ったか、ダウンロードしたISOが評価版イメージを含んでいる可能性があります。その場合は再度ライセンスキーを使い、製品版エディションを明確に選択してセットアップしなおすか、公式サポートに問い合わせることをおすすめします。
ライセンス整合性の確認
Microsoftのサーバーライセンスはエディションによってキーが異なり、Standard版とDatacenter版では当然異なるキーを用意する必要があります。評価版からクリーンインストールした場合でも、ライセンスキーを正しく入力しなければ「ライセンス認証ができません」などのエラーが発生します。
- エディションに合ったキーを用意
- Standard版を使うならStandard用のキー
- Datacenter版を使うならDatacenter用のキー
- ボリュームライセンス版との違い
ボリュームライセンスを利用している場合はリテール版ではなく、VLメディアやKMS認証など、別の手順が必要になるケースもあります。 - ライセンス認証の確認
「slmgr.vbs /dli」や「slmgr.vbs /dlv」コマンドを活用して、インストール後に認証状態を確認しておくと安心です。
まとめ
Windows Server 2022 Standard Coreの評価版からリテール版へ直接アップグレードしようとすると、残念ながらMicrosoft公式がサポートしていないため失敗してしまいます。Datacenter Coreへのアップグレードは可能ですが、Standard Coreにこだわる場合はクリーンインストールが必須です。導入前には必ずエディションの互換性とライセンスキーの種類を確認し、バックアップやインストールメディアの準備を入念に行いましょう。
もし「WindowsServer2022English64-bitX22-74290.iso」というファイルを入手していても、それが評価版を含むイメージである可能性は排除できません。インストール後にはエディションを確認し、本当にリテール版Standard Coreとして認証されているかチェックする必要があります。
評価版からの乗り換えはどうしても手間と時間がかかりますが、正しいプロセスを踏むことで安定した本番環境を構築できます。不要なトラブルを避けるためにも、Microsoftの公式ドキュメントを参考にしながら確実な手順で移行を実施しましょう。
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