オンライン会議が日常化した現在、「Google Meet でだけ内蔵カメラが映らない」「Windows 11 24H2 に更新したら会議中に突然カメラがオフになる」という相談が急増しています。多くの場合は設定を一つ変更するだけで即時復旧しますが、最新ビルドでは OS と GPU ドライバーの相性が絡むため、原因を切り分けながら段階的に対処することが重要です。本記事ではGoogle Meet のカメラトラブルを最短で解決するための実践ガイドを、基礎から最新バージョン固有の問題まで体系的にまとめました。
1. Google Meet で内蔵カメラが映らない原因と即効解決策
1‑1 よくある症状
- Zoom や Teams では正常なのに Google Meet だけ真っ黒・「カメラが見つかりません」と表示
- Meet 参加直後は映るが、数秒後に停止し再接続しても復旧しない
- Chrome の「カメラへのアクセスを許可しますか?」に 許可を選んでも無効になる
1‑2 最速で復旧した事例:Chrome のハードウェア アクセラレーションを無効化
手順 | 操作内容 | ポイント |
---|---|---|
1 | Chrome 右上の ︙ > 設定 > システム を開く | GPU による映像処理を一時的に CPU に切り替えることで、ドライバーの相性問題を回避 |
2 | 「使用可能な場合はハードウェア アクセラレーションを使用する」をオフ | |
3 | Chrome を再起動し Google Meet に再参加 |
わずか 3 手順で映像が即時復旧した報告が最も多く、ビジネス現場では「まず試すべき定番手段」といえます。
1‑3 追加で試したい 7 つのチェックポイント
- Meet 右下の設定 > 動画 からカメラを再選択し、誤認識をリセット
- キャッシュと Cookie を削除(設定 > プライバシーとセキュリティ > 閲覧履歴データの削除)
- 拡張機能を疑う場合はシークレット ウィンドウで入室し比較
- Chrome を最新版に更新または Edge / Firefox など別ブラウザで検証
chrome://extensions/
で不要な拡張機能を一時停止- サイトごとの許可(設定 > プライバシーとセキュリティ > サイトの設定)で meet.google.com のカメラ許可を再確認
- 解決しない場合は Google Meet からフィードバック送信しログを添付
1‑4 ハードウェア アクセラレーションを再度オンに戻すタイミング
GPU ドライバーを更新後、再度オンに戻すとパフォーマンスを維持しつつ安定するケースも多いです。特に WebGL や AV1 デコーダーを活用するアプリを普段使うなら、ドライバー更新 > 再起動 > Meet で再確認という流れで効果を検証しましょう。
1‑5 内蔵・外付けカメラを併用している場合の注意点
ノート PC に USB カメラを増設していると、Windows 側の「既定のカメラ」が意図せず切り替わります。設定 > Bluetooth とデバイス > カメラで優先順位を確認し、不要なデバイスを無効化しておくとトラブルを未然に防げます。
2. Windows 11 24H2 で Google Meet 中にカメラが突然オフになる問題
2‑1 症状の特徴
- Meet 開始後 5〜10 分で映像がフリーズ → 自動的にカメラが切断
- アバターやバーチャル背景をオンにしていると高確率で再現
- 23H2 環境へロールバックすると発生しない
2‑2 内部で起きている競合の概要
24H2 では「自動フレーミング」「アイコンタクト補正」「ノイズ低減」といった新しい Windows Studio Effects が既定で有効化されました。これらは NPU(AI エンジン)または GPU でリアルタイム処理を行いますが、Chrome も同じ GPU を使って VP8/VP9 エンコードを実行します。結果として VRAM やエンコーダーを取り合い、カメラストリームがタイムアウトする――これが最も再現性の高い原因です。
2‑3 24H2 環境で有効だった 6 つの対処フロー
優先度 | 対処策 | 具体的手順 | 備考 |
---|---|---|---|
★ | Windows カメラ効果をオフ | 設定 > Bluetooth とデバイス > カメラ > 該当カメラ > エフェクト をすべて無効 | NPU 非搭載機でもソフトウェア処理が走るため必須 |
★ | Chrome ハードウェア アクセラレーション無効 | 前章 1‑2 と同じ | GPU 競合を根本回避 |
★★ | GPU/カメラ ドライバーを更新 or ロールバック | デバイス マネージャー > ドライバー > 更新/以前のドライバーに戻す | NVIDIA/AMD のベータ版は避ける |
★★ | Chrome 実験フラグを無効化 | chrome://flags/ ‑ Meet 関連フラグを Disabled | GPU Rasterization などの影響を除外 |
★★ | OBS Virtual Camera で中継 | OBS > Tools > Start Virtual Camera → Meet のカメラに選択 | Windows Studio Effects をバイパス |
★★★ | 23H2 へロールバック | 設定 > システム > 回復 > 前のバージョンに戻す | 企業利用で安定性最優先なら確実 |
2‑4 Windows Update オプションパッチの活用
24H2 初期ビルド (10.0.26100.xx
系) では累積 KB に暫定修正が含まれることが多いです。設定 > Windows Update > 詳細オプション > オプションの更新プログラムからプレビュー版を適用し、カメラ関連の不具合修正項目があるか確認しましょう。再起動後に Meet を 15 分以上連続使用して安定性をテストするのがポイントです。
2‑5 公式パッチ公開までの暫定運用ポリシー例
- 大規模会議では Teams or Zoom を代替利用し、重要度が低い会議のみ Meet を使用
- バーチャル背景が必須の場合は Snap Camera など仮想カメラで合成 → Meet に入力
- 社内 IT 部門は グループポリシーで「ハードウェア アクセラレーション:無効」を強制配布
3. すぐ試せるトラブルシューティング早見表
チェック順 | 確認項目 | 操作場所 | 判定と次のアクション |
---|---|---|---|
① | カメラが物理的に有効か(シャッター/ファンクションキー) | PC キーボード・本体 | LED 点灯なし→ハードスイッチを開ける |
② | 他アプリで映るか | 「カメラ」アプリ/Teams | 映らない→OS/ドライバー側の問題 |
③ | ハードウェア アクセラレーション設定 | Chrome 設定 | 切り替えて再確認→映れば完了 |
④ | Windows Studio Effects 有無 | 設定 > カメラ | オフで改善→OS 効果の競合 |
⑤ | GPU/カメラ ドライバー | デバイス マネージャー | 更新 or ロールバック |
⑥ | Meet 以外のブラウザ | Edge/Firefox | 正常→Chrome 固有の拡張機能切り分け |
⑦ | 仮想カメラ経由 | OBS Virtual Camera | 映れば Windows 効果をバイパスできた証拠 |
⑧ | OS バージョン | 設定 > システム > 詳細情報 | 24H2 → 23H2 へダウングレード検討 |
4. IT 管理者向け:レジストリとグループポリシーでの集中制御
4‑1 Chrome ハードウェア アクセラレーションを強制オフ
Windows Registry Editor Version 5.00
\[HKEY\LOCAL\MACHINE\SOFTWARE\Policies\Google\Chrome]
"HardwareAccelerationModeEnabled"=dword:00000000
上記 .reg を配布すればユーザーが設定を変更しても無効化を維持できます。
4‑2 Windows Studio Effects を組織全体で無効化
- グループ ポリシー エディターで
Computer Configuration > Administrative Templates > Windows Components > Camera
を開く - Configure Windows Studio Effects を Disabled に設定
- gpupdate /force で即時反映
Azure AD 管理下の端末では Intune から OMA-URI ポリシー (./Device/Vendor/MSFT/Policy/Config/Camera/StudioEffects
) を 0 に設定することで同様に集中制御可能です。
5. ハードウェア別ベストプラクティス
5‑1 NVIDIA GPU 搭載ノート
- Studio ドライバーよりもGame Ready ドライバーの方が WebRTC と相性が良いという報告がある
- ドライバーの「NVENC API」が更新された直後は VP9 エンコードで不具合が出やすいため、直近で更新した場合は 1 つ前の安定版を保守用に保持
5‑2 AMD RDNA3 APU
- Adrenalin 24.3.1 以降で AI GENERATIVE FILTER が自動的に有効化されるため、AMD Software 内の Video Effects タブで Background Blur をオフ
- Windows カメラ効果と二重に処理が入るとメモリリークしやすい
5‑3 Intel NPU 搭載 Copilot+ PC
- Windows Studio Effects をオフにしてもファームウェアが AI パイプラインを維持する場合がある
- BIOS 設定で Intel AI Boost を Low Power モードにすると安定した事例あり(機種依存)
6. 今後のアップデートとトレンド展望
2025 年以降、Google は WebRTC‑NV(次世代コーデック H.266/VVC)の実験実装を Chrome Canary に進めています。新コーデックはハードウェア支援の要件が高く、既存 GPU ドライバーとの互換性テストが不十分な初期段階では同様のトラブルが増える可能性があります。一方 Microsoft は AI 効果を OS レベルで統合し続ける方針を示しており、ブラウザ側の GPU 使用状況を詳細にログ取得できる Chrome 119 以降の Issue Diagnostic Tool を活用したフィードバックが解決スピードを左右します。
企業での運用では「半年チャネル」での OS 更新と「安定版ドライバー固定」が引き続き安全策となります。最新機能を試したい場合も、本番端末とは別に Insider Canary マシンを用意し、リリースノートで“Camera”キーワードを検索してパッチ内容を逐次検証するプロセスを確立しておくと、クリティカル障害のリスクを最小化できます。
7. まとめ
- Google Meet のカメラ不具合はChrome のハードウェア アクセラレーションを無効化するだけで解決するケースが最多。
- Windows 11 24H2 特有の問題は Windows Studio Effects と GPU ドライバーの競合が主因。まずエフェクトをオフにし、ドライバー更新・ロールバックで安定性を検証。
- 業務影響が大きい場合は23H2 へロールバックや OBS Virtual Camera 経由での暫定運用を推奨。
- IT 管理者はレジストリ/GP で統制し、ユーザーが設定を誤って変更しても影響が出ないようにする。
- 今後のアップデートでは GPU/NPU の役割分担がさらに複雑化するため、ドライバーのリリースノートと Windows Update のオプションパッチを定期的にチェックしよう。
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