パソコンでMicrosoft Photosや電卓が起動直後に落ちてしまうと、とても厄介に感じるものです。とくにSSE4.2非対応のCPU環境だとFile system error (-2147219196)というエラーが頻発して頭を悩ませがちでした。そこで今回は、その原因や解決策を詳しくまとめました。
問題の背景と症状
Windows 10やWindows 11で、Microsoft PhotosやCalculator(電卓)、カレンダー、Movies & TV(映画 & テレビ)、Paint 3Dなど、Microsoft Store由来のアプリが起動直後にクラッシュするケースがあります。エラーコードは「File system error (-2147219196)」と表示され、アプリを全く使えない状態になってしまうのが特徴です。
同じOSバージョンでも、パソコンによって問題の有無が分かれることから、一部のユーザーは大いに戸惑いました。実際に「フィードバックHub」も同様に起動後すぐ落ちるため、問題報告の手段に困るといった声も見られました。このように、利用者が多い標準アプリが軒並み落ちる状況は、作業効率や普段の使い勝手に影響が出やすい厄介なものです。
エラーの原因:SSE4.2非対応CPUとVC++ランタイム
この現象は、Microsoft Store経由で配布される「Microsoft.VCLibs.140.00」というVisual C++ランタイムパッケージに起因しています。特にCore 2 Duo/Quadなどの古い世代のIntel CPUや、初期のAMD Athlon系CPUなど、SSE4.2命令セットをサポートしていないCPU上では不正命令が呼び出されてしまい、結果としてアプリの起動がクラッシュにつながるのです。
もともとSSE4.2やAVX命令に対応している世代のCPUなら問題なく動作しますが、対応していない環境でのみ顕著にエラーが出現します。Microsoft Photosや電卓、カレンダー等がまったく使えなくなるため、SSE4.2非対応CPUを使うユーザーはこの点で大きな障害に直面しました。
CPUのSSE4.2対応状況
下記の表は、ごく一般的なCPUモデルとSSE4.2対応の有無をまとめたものです。ご自分のPCが該当するかどうかの目安にしてみてください。
CPUモデル | SSE4.2命令への対応 | 登場時期 | 主な特徴 |
---|---|---|---|
Intel Core 2 Duo/Quad | 非対応 | 2006~2009年頃 | Windows 7世代向け。当時はSSE4.1までが多い |
Intel Core i (第1世代) | 一部モデルは対応 (SSE4.2搭載) | 2008~2010年頃 | Core i7 900番台などがSSE4.2を使える |
Intel Core i (第2世代以降) | 対応 | 2011年~ | 一般的にSSE4.2を標準実装 |
AMD Athlon 64 X2 初期モデル | 非対応 | 2005~2006年頃 | 一部拡張命令が欠けるため要注意 |
AMD Ryzen シリーズ | 対応 | 2017年~ | 最新拡張命令を多く実装 |
Microsoft Storeで配布されるVC++ランタイムの更新がキー
今回のエラーはWindows Updateで配布されるパッチとは別に、Microsoft Storeのアプリ更新経由で適用されるVC++ランタイム「Microsoft.VCLibs.140.00」が原因とされています。古い世代のCPUでこのランタイムを使用する際、誤って新しい命令を呼び出すコードがビルドされており、不正命令例外が発生してしまいました。
当初、多くのユーザーはWindows Updateを適用し直したり、システムファイルを修復する試みを行いましたが、ストアアプリのほうを更新しない限りなかなか解決に至りませんでした。いっぽうで、アップデート後のアプリが正常動作する環境もあったため、症状がCPUの世代に依存していると気づきにくかった面もあります。
公式修正版が配布され問題が解消
2024年2月初旬頃、MicrosoftはSSE4.2非対応の旧CPUでも問題が起きないよう修正したランタイムをストア経由で配信開始しました。この更新版は「14.0.33519.0」などのバージョンとなっており、ストアアプリの自動更新が有効になっていれば特別な操作をしなくても修正版に置き換わるようになっています。
手動での解決策
もしストアの自動アップデートがうまく行かずエラーが解消されない場合は、以下のような手動の対処を試してみることが推奨されています。
アプリの再インストール
Microsoft Photosや電卓など、クラッシュして使えないアプリを一度アンインストールし、Microsoft Storeから再インストールし直すという方法です。再インストール時点で最新版のVC++ランタイムが必要に応じてダウンロードされるため、修正版が反映されやすくなります。
手順の例
1) Windowsの設定画面を開く
2) アプリ一覧からMicrosoft Photos(あるいは電卓など対象アプリ)を選択
3) [アンインストール]を実施
4) Storeアプリを起動して該当アプリを検索し、再度インストール
アプリのリセットと修復
いきなりアンインストールに抵抗がある場合、[設定]→[アプリ]→[アプリと機能]→[詳細オプション]から利用できる「修復」や「リセット」を試してみる手もあります。リセット後に再起動を行い、ストアアップデートの確認をしてみてください。これで治る場合もあるようです。
VC++ランタイムの手動導入
さらに高度な対処法として、ランタイムパッケージ「Microsoft.VCLibs.140.00_14.0.33519.0_x64__8wekyb3d8bbwe」などを直接Microsoft Storeからダウンロード、もしくはPowerShellのAdd-AppxPackageコマンドで手動インストールする方法があります。初心者にはやや難易度が高いため、基本的には自動またはアプリ再インストールで解決を試すほうが無難です。
Storeアプリ自体が起動しない場合
まれにStoreアプリまでクラッシュしてしまう方もいます。その場合は、Windowsの再インストールではなく、以下のようにStoreアプリ自体を再インストールする方法が取りざたされます。
1) 管理者権限のPowerShellを起動
2) Get-AppxPackage *WindowsStore* | Remove-AppxPackage でStoreをアンインストール
3) その後、Add-AppxPackage -Path [Storeアプリのパッケージ] 等で再導入
もし難しい場合は、時間をおいてアップデートを待つ、もしくは代替アプリ(別の画像ビューアや計算ツール)を利用しつつ解決を待つという選択肢も考えられます。
よくある質問と回答
SSE4.2非対応CPUにおけるMicrosoft Photosなどのクラッシュに関して、コミュニティ内でよく見られた質問とその回答をまとめました。
Windows Updateだけでは直らないの?
Windows Updateをどれだけ適用しても、問題が直らないケースがあります。これはストアアプリ向けのVC++ランタイム更新が原因だからです。Windows UpdateとMicrosoft Storeは別のチャネルで配信されるため、ストアアプリの更新をチェックするのが重要になります。
クリーンインストールすれば解決する?
Windows自体を再インストールしても、同じストアアップデートが再度適用されればまたクラッシュが発生する可能性があります。根本的にはVC++ランタイムの修正版へのアップデートが必要なので、クリーンインストールは必須ではありません。
写真や個人データは消えるの?
Microsoft Photosアプリをアンインストールしても、写真や画像ファイルそのものが消えてしまうわけではありません。ただし念のためバックアップを取っておくことで、万一の場合も安心できるでしょう。
旧CPU以外なのに同じ現象が出ている
SSE4.2に対応するはずのCPUでも、たまに同様のクラッシュが起きたという報告があります。これはビルドの問題やランタイムの不具合が一時的に重なっていた可能性が考えられます。最新版のランタイムへ更新すれば大半の環境で解決が見込まれます。

私自身、古いCore 2 Duo搭載のサブPCでPhotosがいきなり起動不能になったことがあります。最初はWindows Updateをひたすら試したのですが効果なし。それがStoreを開いてPhotosを再インストールしたところ、嘘のように直ってしまいました。
代替アプリを活用する選択肢
どうしてもストアアプリが復旧しない場合、画像ビューアの代替ソフトや、オンラインの計算ツールなどを利用して凌ぐ方法もあります。例えば、IrfanViewやnomacsなど軽量で使いやすい画像ビューア、またはGoogle検索で計算をさせるといった応急措置が可能です。
Windowsフォトビューアーの再有効化
Windows 10世代以降で通常非表示になっている「Windowsフォトビューアー」をレジストリ修正によって復活させるユーザーもいます。操作はやや上級者向けですが、Photosが使えなくても画像閲覧ができるので非常時には便利かもしれません。
サードパーティ電卓
意外と便利なのが、ウェブ検索バーを使う計算です。Google検索欄に数式を入れるだけで計算結果が表示されるので、Windows標準の電卓が動かないときに簡易的に使えます。あるいは無料の電卓アプリをインストールしてもよいでしょう。
まとめ
Microsoft Photosや電卓などのMicrosoft Storeアプリが起動直後にクラッシュし、「File system error (-2147219196)」が表示される原因は、多くの場合「Microsoft.VCLibs.140.00」ランタイムの更新によるものです。SSE4.2命令セットに非対応のCPU(主にCore 2など)で、VC++ランタイムが新しい命令を呼び出すバージョンにアップデートされてしまい、不正命令例外が発生します。
2024年2月頃からは、Microsoftが修正版のランタイムを配信しており、Storeの自動更新を有効にする、あるいはアプリを再インストールすることでエラーが解決される可能性が非常に高いです。もしストアが起動しないなどのトラブルがある場合は、Storeアプリの再導入や他のアプリで代替するなど柔軟に対処してみてください。
最初は何が原因なのか分からず困惑するケースも多いかと思いますが、ストア由来のランタイム更新がポイントであるという点を押さえておけば、今後同様の問題が発生した際にもスムーズに対策できるはずです。



古いマシンを処分しようか迷う前に、まずはアプリを再インストールしたり、Storeの更新を試してみるのが得策かもしれません。
コメント