Lenovo Yoga 9i (14″, Gen 7) で Windows 11 を再起動した直後、「再起動しています」の文字列と回転する円が延々と表示され続け、電源ボタンを何分押し続けても切れない――本記事はそんな再起動ループに陥った際の“最後まで諦めない”復旧手順と、二度と同じトラブルに遭わないための予防策を網羅的にまとめた決定版ガイドです。すべて日本語環境を前提に検証し、Lenovo Yoga 9i 以外の UEFI ノート PC でも応用できるよう具体的な BIOS 操作や WinRE 呼び出しのコツも詳細解説しています。
なぜ Windows 11 は再起動ループに陥るのか
Windows 11 が「再起動しています」で止まり続ける原因は大きく分けて次の 4 つです。
- 更新プログラム適用直後の不整合
Windows Update によるドライバ/サービスの競合でシャットダウンが完了せず、ブートフラグがリセットされない。 - 高速スタートアップと NVMe ストレージの相性
モダンスタンバイと高速スタートアップの組み合わせが UEFI ACPI テーブルと食い違い、電源制御 IC がフリーズ。 - ストレージの論理障害
不良セクタやファイルシステム破損により bootmgr へ到達できず、ひたすらウォッチドッグが再試行。 - ハードウェア故障
PCIe コントローラやメモリコントローラの異常で ACPI コマンドが実行できず、物理的に電源断できないケース。
上記 1〜3 はユーザー側でも対処可能です。本稿ではソフトウェア起因の復旧に重点を置き、最後にハードウェア診断の基準を示します。
【即効版】復旧フロー全体像
時間とデータを天秤に掛ける観点から、「最も安全で成功率が高い順番」に並べ替えたフローを以下に示します。
| 対応ステップ | 具体的操作 | ポイント/備考 |
|---|---|---|
| 1. 周辺機器を全て外す | USB HUB、無線レシーバー、外付けドックを含め電源供給系統を完全遮断 | スリープ復帰信号が残っているとシャットダウン不能な場合がある |
| 2. 電源ボタン 30 秒長押し | 30 秒以上押し続ける。ファン停止と側面 LED 消灯を必ず確認 | 公式ガイドライン。指を離さないのがコツ |
| 3. バッテリー完全放電 | AC を抜き、画面点灯状態で放置。 スリープ回避のためタッチパッドに硬貨を置く等 | 8〜10 時間必要。データ保持優先なら後段の方法へ |
| 4. WinRE(自動修復)を強制起動 | ロゴ表示後に電源断を2 回→3 回目で自動修復画面 | 最重要ステップ。ここで復元ポイントやスタートアップ修復を実行 |
| 5. USB ブートから修復 | 別 PC で作成した Windows 11 インストール USB から起動し 「コンピューターを修復する」→コマンドプロンプトで sfc /scannow など | OS イメージ破損や BCD エラーに有効 |
| 6. BIOS/UEFI 設定確認 | Novo ボタンで BIOS へ。 Fast Boot を無効、BIOS を最新へ更新 | Yoga 9i 固有:底面側面の小穴ボタン |
| 7. Lenovo サポートで診断 | ハード故障疑い時はマザーボード交換・SSD 検査 | 保証期間内なら無償可。事前にバックアップ可否を確認 |
各ステップを深掘り解説
1. 周辺機器を外す理由
Thunderbolt ドックや HDMI モニターの給電線が逆流し、PCH(Platform Controller Hub)がサスペンド状態を維持していることが稀にあります。特に USB PD 96 W 給電対応モニターを接続していると、AC アダプターを抜いても本体に給電が続くため電源ボタンが論理的に無視される事例があります。電源回路を完全に遮断する意味で、周辺機器を真っ先に外してください。
2. 「30 秒長押し」で切れない場合の裏技
Yoga 9i の電源 IC は Intel Tiger Lake 用のEmbedded Controllerと直結しています。IC がハングすると通常の長押し発行が無効化されるため、以下の順序でハードリセット信号を送ります。
- AC ジャックにアダプターを差し込み 3 秒後に抜く(突入電流で EC をリセット)
- すぐに電源ボタンを 60 秒押す
多くの場合ここでファンが瞬断し、LED が消灯します。
3. バッテリー完全放電作戦
「放電しか手段が残されていない」ように見えますが、以下の注意点があります。
- バッテリー残量 100 % から完全放電するには 10 時間前後。
- 自然放電中に SSD に書き込みが走ると、電圧降下でファイル破損が進行。
- バッテリーを外さずにセルを枯渇させる行為は化学劣化を促進し、寿命を縮める。
したがって、真にデータが重要であれば放電より USB ブート修復を選びましょう。
4. WinRE を確実に呼び出すコツ
自動修復を起動するには「異常終了を 2 回連続検出させる」必要があります。ロゴ表示前に電源を落とすと ACPI イベントが登録されないため“ロゴ点灯を目視して 1 秒以内”にボタンを長押しして電源断するのがポイントです。
WinRE 画面に入れたら次の順序で進めてください。
- スタートアップ修復:BCD や EFI パーティションの自動修復
- システムの復元:更新プログラム直前の復元ポイントへ巻き戻し
- セーフモード起動:不要サービス/ドライバを手動無効化
5. インストール USB から修復する手順
別 PC が近くにない場合はネットカフェの PC でも可。8 GB 以上の USB メモリを用意し、Microsoft 公式 Media Creation Tool をダウンロード→実行。作成後、問題の Yoga 9i に挿入し F12 連打で Boot Manager を呼び出します。
「Windows セットアップ」画面で Shift+F10 を押すとコマンドプロンプトが開くので、以下の順に実行。
chkdsk C: /f /r
sfc /scannow /offbootdir=C:\ /offwindir=C:\Windows
bcdboot C:\Windows /l ja-JP
これでブート領域とシステムファイルの整合性が取れれば、再起動ループから脱出できる確率が高いです。
6. BIOS/UEFI で確認すべき 3 項目
- Fast Boot(高速ブート)を Disable
- CSM(Legacy Support)を Disable ※UEFI 専用に固定
- BIOS バージョンを最新に更新
Lenovo Vantage からでも、BIOS 上の Update BIOS メニューからでも可
Fast Boot が有効だと S5→S0 へ戻る際の自己診断が省略され、障害を自己修復できない場合があります。Yoga 9i では特に Intel Management Engine ファームウェアと連携しているため、最新 BIOS を当てると安定度が大幅に向上します。
7. ハードウェア故障を見極めるチェックリスト
以下に 5 つ以上該当すればハード故障の可能性が高く、サポートへの連絡を推奨します。
- BIOS 画面に入れず、Novo ボタンを押してもブラックアウト
- AC アダプター LED(白/琥珀)が常時点灯で変化しない
- ファンが100 % 回転のまま停止しない
- NVMe SSD を抜くと BIOS は起動する
- MemTest86 でエラーが検出された
- AC アダプターを替えても充電アイコン表示が変わらない
Yoga 9i はマザーボード上に SSD が直付けされているモデルもあり、基板交換=SSD 交換を意味します。データ救出の可否を必ず確認しましょう。
再発防止策 ― 二度とループさせない 5 つの設定
- 高速スタートアップを無効化
設定 > システム > 電源 > 電源の追加設定 > 電源ボタンの動作 でチェックを外す - Windows Update を“2 週間遅延”運用
品質更新プログラムは 14 日遅延、機能更新は 30 日遅延して安定性を確認 - 月 1 回のディスク健全性チェック
chkdsk /scanおよび Lenovo Vantage の Hardware Scan - バックアップイメージの習慣化
Macrium Reflect Free や AOMEI Backupper を用いたシステムイメージ作成 - BIOS・ドライバを Lenovo Vantage で統一更新
ベンダ独自の電源管理ドライバを最新版に揃えるとスリープ復帰失敗が減る
よくある質問(FAQ)
Q. バッテリー残量がゼロになったら自動的にループは終わりますか? A. 終わりますが、SSD に未同期のキャッシュが残る可能性があり、ブート不能が悪化する恐れがあります。USB 修復を推奨。 Q. Ctrl+Alt+Delete が効かないのはなぜ? A. Windows カーネルに到達できていないため、割り込みハンドラ自体が登録されていません。 Q. 電源 LED が消えないがファンは止まったまま。放置しても大丈夫? A. EC がハングして LED 制御信号が固定されているだけの場合があります。放置しても大半は問題ありませんが、LED がほんのり点滅している場合は実際に通電しているので放電時間が延びます。
まとめ
Windows 11 の再起動ループは「周辺機器遮断 → 電源 30 秒長押し → WinRE 強制起動」の 3 点セットで脱出できるケースがほとんどです。Yoga 9i を含む UEFI ノートでは Novo ボタン経由の BIOS アクセスや最新 BIOS への更新がトラブル解消の決め手になるため、ソフトウェア的な操作に行き詰まったら早めに BIOS へ切り込むことが肝要です。再発防止には高速スタートアップの無効化と計画的な Windows Update 運用が最優先――本記事をブックマークしておけば、緊急時にも迷わず最短ルートで復旧できます。

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