Microsoft PurviewのData Lifecycle Managementに、Exchange OnlineのアーカイブメールボックスをMicrosoft Graphから扱う機能が追加される予定です。対応を急ぐべきなのは、EWSを使ってオンラインアーカイブを参照・移行・エクスポートしている組織です。
一方、ユーザーがOutlookからアーカイブメールボックスを利用しているだけで、外部アプリや自社システムからAPIアクセスしていない場合は、現時点で新しい設定を有効にする必要はありません。ただし、2026年8月の一般提供予定と、同年10月から始まるEWSの段階的な無効化に備え、EWS依存アプリ、Microsoft Graphのアクセス許可、監査ログを先に棚卸ししておく必要があります。
この記事では、対象となるアーカイブデータ、既存の保持・訴訟ホールドへの影響、管理者が確認すべき設定、監査・検知の考え方を整理します。
Microsoft Purviewの「Graph API Support for Archive Mailboxes」とは
Microsoft 365 Roadmap ID「567313」として公開された機能で、Microsoft Graphからアーカイブメールボックスへアクセスできるようにするものです。
ロードマップ上の作成・更新時刻は2026年7月7日23時1分(UTC)で、日本時間では2026年7月8日に当たります。2026年7月12日時点では開発中で、一般提供は2026年8月が予定されています。対象クラウドとして記載されているのはWorldwideのStandard Multi-Tenantです。(Microsoft)
| 項目 | 公式ロードマップの内容 |
|---|---|
| Roadmap ID | 567313 |
| 機能名 | Microsoft Purview: Data Lifecycle Management – Graph API Support for Archive Mailboxes |
| 対象 | メインアーカイブと補助アーカイブ |
| 目的 | 物理的に複数のアーカイブへ分散したデータを、単一で連続したアーカイブとして扱えるようにする |
| 一般提供予定 | 2026年8月 |
| 状態 | In development |
| 対象環境 | Worldwide(Standard Multi-Tenant) |
| パブリックプレビュー | ロードマップ上では日程の記載なし |
ロードマップの説明には、アーカイブデータが複数の補助メールボックスへ物理的に分散していても、利用者やアプリからは一つのアーカイブとして扱えるようにすることが目標として示されています。(Microsoft)
2026年10月に廃止されるのはMicrosoft Graphではない
ロードマップの英文には「EWS Graph APIs getting deprecated by OCT 2026」というやや不明瞭な表現がありますが、Microsoftの廃止資料で2026年10月から無効化対象とされているのは、Exchange OnlineのExchange Web Services、通称EWSです。
Microsoft Graph自体が2026年10月に廃止されるわけではありません。Exchange OnlineのEWSは2026年10月1日から段階的な無効化が始まり、2027年4月1日に完全廃止される予定です。したがって、今回の機能はEWSからMicrosoft Graphへ移行するための受け皿として見るのが適切です。(Microsoft Learn)
対象はメインアーカイブと補助アーカイブ
Exchange Onlineでアーカイブメールボックスを有効にすると、通常のプライマリメールボックスとは別に、関連付けられたアーカイブメールボックスが作成されます。
構造を簡略化すると、次のようになります。
ユーザーのメールボックス
├─ プライマリメールボックス
└─ アーカイブメールボックス
├─ メインアーカイブ
└─ 補助アーカイブ
├─ Auxiliary Archive 1
├─ Auxiliary Archive 2
└─ ...
通常のアーカイブメールボックスには最大100GBの領域があります。自動拡張アーカイブを有効にすると、必要に応じて追加領域が作成され、アーカイブ全体で最大1.5TBまで拡張されます。(Microsoft Learn)
自動拡張後は、フォルダーやアイテムが補助アーカイブへ移動する場合があります。Outlook上では元のフォルダー構造に近い形で表示されますが、実データがメインアーカイブとは異なる補助アーカイブに保存されていることがあります。(Microsoft Learn)
今回のMicrosoft Graph対応は、この物理的な分散をアプリ側から扱いやすくするための機能です。特に、アーカイブ容量が大きく、自動拡張アーカイブを利用している組織ほど影響が大きくなります。
保持や訴訟ホールドの保護範囲が新しく広がる機能ではない
今回の変更は、Microsoft Graphからのアクセス手段を追加する機能です。Microsoft Purviewの保持ポリシーや訴訟ホールドの対象範囲を新たに拡張する機能ではありません。
アーカイブメールボックスを有効にしたユーザーでは、プライマリメールボックスとアーカイブメールボックスの両方が、以前から次のコンプライアンス機能における一つのユーザーメールボックスとして扱われます。
- Microsoft Purviewのコンテンツ検索
- Microsoft 365の保持ポリシー
- Litigation Hold
- eDiscovery
- Exchangeの保持タグとMRM
自動拡張によって補助アーカイブへ移動したデータも、検索、保持、ホールドの対象になります。(Microsoft Learn)
したがって、「Graph API対応によって、これまで保護されていなかった補助アーカイブが保護される」と理解するのは誤りです。
むしろ管理者が注意すべきなのは、保持対象となる大量の過去メールへ、承認されたアプリがMicrosoft Graph経由で到達できる可能性が広がることです。保持設定だけでなく、アプリのアクセス許可と監査を合わせて確認する必要があります。
今回変わることと変わらないこと
| 分類 | 内容 |
|---|---|
| 変わること | Microsoft Graphからメインアーカイブと補助アーカイブへアクセスできるようになる予定 |
| 変わること | EWSを使用していた移行、エクスポート、コンプライアンス連携をMicrosoft Graphへ移行しやすくなる |
| 変わること | アーカイブへのAPIアクセスを前提に、アプリ権限と監視ルールの見直しが必要になる |
| 変わらないこと | アーカイブメールボックスの有効化・無効化はExchange管理センターで行う |
| 変わらないこと | 既存の保持ポリシー、保持ラベル、Litigation Holdが自動的に変更されるわけではない |
| 変わらないこと | 単にOutlookでアーカイブを利用するユーザーに、直ちに操作変更が求められるわけではない |
| 未公表のこと | 一般提供時に使用する正確なAPIバージョン、最終的なエンドポイント、必要なアクセス許可 |
| 未公表のこと | 新しい監査イベント名や、既存の監査イベントへの具体的な記録方法 |
| 未公表のこと | テナント単位の有効化スイッチや詳細なロールアウト順序 |
ロードマップには、新しいPurviewポリシーや管理者向けオン・オフ設定は記載されていません。そのため、現時点ではサービス側のAPI機能追加として準備し、一般提供時のMicrosoft Graphドキュメントを確認してから本番利用を判断するのが安全です。(Microsoft)
従来のOutlookメールAPIとは区別して考える
Microsoft Graphには、以前からメールを読み書きするOutlookメールAPIがあります。しかし、現行の公式ドキュメントでは、通常のOutlookメールAPIはプライマリメールボックスと共有メールボックスを対象とし、In-Place Archiveへのアクセスには対応していないと説明されています。(Microsoft Learn)
一方、比較的新しい「mailbox import and export API」では、メールボックスのフォルダーやアイテムを一貫した形式で列挙し、完全な形式でエクスポートしたり、別のメールボックスへインポートしたりできます。
ただし、2026年7月時点の公式ドキュメントには記載の差があります。
- 概要ページでは、プライマリ、共有、アーカイブメールボックスをサポートすると記載されている
- v1.0の利用手順では、プライマリと共有メールボックスのみと記載されている
- 補助アーカイブのリダイレクト例では、
/beta/admin/exchange/mailboxes/エンドポイントが使用されている
このため、「Microsoft Graphに対応したので、既存の/users/{id}/messagesをそのまま使えばアーカイブも取得できる」と判断してはいけません。
一般提供後に、少なくとも次の項目を確認してください。
- 対象APIがv1.0かbetaか
- アーカイブメールボックスIDの取得方法
- 必要な委任アクセス許可とアプリケーションアクセス許可
- メインアーカイブと補助アーカイブの列挙方法
- リダイレクトと再試行の仕様
- 読み取り、エクスポート、インポートで異なる制限
- スロットリングと1回当たりの処理件数
影響範囲と対応要否の判断基準
自社が対応対象か分からない場合は、次の表で判断できます。
| 利用状況 | 影響度 | 優先すべき対応 |
|---|---|---|
| EWSでオンラインアーカイブを読み取っている | 高 | 直ちにMicrosoft Graphへの移行計画を作成する |
| EWSでメールをエクスポート・移行している | 高 | 使用SOAPアクションを特定し、Graph APIで代替可能か検証する |
| サードパーティーのアーカイブ・移行製品を使っている | 高 | ベンダーへEWS依存の有無と対応版の提供時期を確認する |
| 自動拡張アーカイブを利用している | 高 | 補助アーカイブへのリダイレクトを含むテストを行う |
| Graphに広いメールボックス権限を付与したアプリがある | 中~高 | 権限範囲と実際のアクセス先を再評価する |
| OutlookやOutlook on the webからのみアーカイブを利用している | 低 | 緊急の設定変更は不要。ロードマップと監査設定を確認する |
| アーカイブメールボックスを利用していない | 低 | EWS連携の有無だけ確認し、機能のロールアウトを監視する |
| GCC、GCC High、DoDなどを利用している | 要確認 | 今回のロードマップ対象に明記されていないため、別の提供予定を確認する |
特に注意したいのは、製品名に「アーカイブ」と書かれていなくても、実際にはEWSで古いメールを取得しているケースです。移行ツール、監査製品、CRM連携、コンプライアンス収集ツール、独自バックアップ処理なども確認対象になります。
管理者が確認すべき設定
アーカイブメールボックスの有効化状況
アーカイブメールボックスの有効化・無効化は、Microsoft PurviewポータルではなくExchange管理センターで行います。
操作場所は次のとおりです。
Exchange管理センター
→ 受信者
→ メールボックス
→ 対象ユーザー
→ その他
→ メールボックスアーカイブ
設定にはExchange Onlineの「Mail Recipients」ロールが必要です。(Microsoft Learn)
今回のGraph API対応を理由に、アーカイブメールボックスや自動拡張アーカイブを新たに有効化する必要はありません。先に次の情報を一覧化してください。
- アーカイブが有効なユーザーメールボックス
- アーカイブが有効な共有メールボックス
- 自動拡張アーカイブの利用有無
- 保持ポリシーまたはLitigation Holdの適用有無
- アーカイブを参照する社内アプリと外部製品
- アプリの所有部署と運用担当者
- EWS、Microsoft Graph、PowerShellのどれを使用しているか
Microsoft Graphのアクセス許可
mailbox import and export APIに関連するMicrosoft Graph権限として、次の権限群が公式のアクセス許可一覧に掲載されています。
| 主な用途 | 関連する権限 |
|---|---|
| フォルダーの読み取り | MailboxFolder.Read、MailboxFolder.Read.All |
| フォルダーの変更 | MailboxFolder.ReadWrite、MailboxFolder.ReadWrite.All |
| アイテムの読み取り | MailboxItem.Read、MailboxItem.Read.All |
| アイテムのエクスポート | MailboxItem.Export、MailboxItem.Export.All |
| インポート・エクスポート | MailboxItem.ImportExport、MailboxItem.ImportExport.All |
| アイテムの読み書き・削除 | MailboxItem.ReadWrite、MailboxItem.ReadWrite.All |
.Allが付くアプリケーションアクセス許可は、サインイン中のユーザーなしで、組織内の全ユーザーを対象にできる強い権限です。管理者の同意も必要になります。(Microsoft Learn)
本番アプリには、次の原則を適用してください。
- 読み取りだけなら、書き込みや削除を許可しない
- エクスポートだけなら、ImportExportやReadWriteを安易に付与しない
- ユーザー操作型アプリでは、可能なら委任アクセス許可を検討する
- バックグラウンド処理で
.Allが必要な場合も、対象メールボックスを制限できる仕組みを確認する - 検証用アプリと本番アプリでサービスプリンシパルを分ける
- シークレットよりも証明書や管理対象IDを優先する
- 権限付与日、承認者、業務目的、廃止予定日を記録する
既存のApplication Access Policyなどが新しいMailboxItem.*、MailboxFolder.*権限へどのように適用されるかは、一般提供時の公式仕様で確認してください。従来のMail.ReadやMail.ReadWriteと同じ制御が自動的に適用されるとは限りません。
EWSを利用しているアプリの洗い出し
Microsoft 365管理センターには、EWSの使用状況レポートがあります。
Microsoft 365管理センター
→ レポート
→ 使用状況
→ Exchange
→ EWS usage
このレポートでは、過去7日、30日、90日の範囲で、次の情報を確認できます。
- Application ID
- 使用されたSOAP Action
- 呼び出し回数
- 最終アクティビティ日時
- アクティブなアプリ数
データは日次ではなく週単位で集計されます。(Microsoft Learn)
最初に確認すべきSOAP Actionの例は、メールボックスやフォルダーの検索、アイテム取得、同期、エクスポートに関係する処理です。ただし、EWS使用状況レポートだけでは、対象がプライマリメールボックスかアーカイブメールボックスかを判別できない場合があります。
Application IDを基に、次の情報と突き合わせてください。
- Microsoft Entra管理センターのエンタープライズアプリ
- アプリ所有者へのヒアリング
- 製品ベンダーの構成資料
- アプリケーション側のアクセスログ
- Exchange Onlineの監査ログ
自動拡張アーカイブではリダイレクト処理が重要
補助アーカイブへ物理的に移動したフォルダーへアクセスすると、現在のプレビュー仕様ではHTTP 308 Permanent Redirectが返される場合があります。アプリはレスポンスのLocationヘッダーを参照し、示されたURLへリクエストし直す必要があります。(Microsoft Learn)
エクスポート時には、対象アイテムが補助アーカイブへ移動していることを示すErrorArchiveFolderMovedPermanentlyが返されることもあります。この場合も、エラーに含まれる移動先情報を使用して再実行します。(Microsoft Learn)
実装では、次のような処理が必要です。
- メインアーカイブのIDを取得する
- フォルダーとアイテムを列挙する
- 308リダイレクトを検知する
LocationのURLを検証してから再リクエストする- 補助アーカイブ単位で処理結果を記録する
- 一部のアイテムだけ失敗した場合に再開できるようにする
- 最終的な件数とハッシュ値などで完全性を確認する
HTTPクライアントの自動リダイレクト機能に任せるだけでは不十分な場合があります。認証ヘッダーの引き継ぎ、再試行回数、処理済みアイテムの重複、リダイレクト先の検証まで設計してください。
移行テストで失敗しやすいポイント
プライマリメールボックスだけでテストする
プライマリメールボックスで成功しても、アーカイブメールボックスで同じ結果になるとは限りません。さらに、メインアーカイブだけで成功しても、補助アーカイブではリダイレクトが発生する可能性があります。
検証用メールボックスには、次の条件を含めてください。
- 通常のアーカイブメールボックス
- 自動拡張済みのアーカイブメールボックス
- 複数階層のフォルダー
- 大量のアイテムを含むフォルダー
- 保持ポリシーが適用されたメールボックス
- Litigation Holdが適用されたメールボックス
- 共有メールボックス
beta APIをそのまま本番採用する
2026年7月時点の補助アーカイブ対応例にはbetaエンドポイントが使われています。一般提供後にv1.0へ移行する可能性があるため、ロードマップの公開だけを根拠にbeta版で本番実装を確定しないでください。
一般提供時には、エンドポイント、リソース名、アクセス許可、エラーコード、スロットリング仕様を再確認する必要があります。
全メールボックス権限を最初から付与する
検証を簡単にするために.All権限を付け、そのまま本番運用へ移行するケースは危険です。
アーカイブには、現行業務では頻繁に参照しないものの、契約、労務、顧客情報、インシデント記録などの重要データが長期間残っていることがあります。API対応によってアクセス経路が増える以上、プライマリメールボックス以上に慎重な権限設計が必要です。
import and export APIをバックアップ製品の代替と考える
Microsoftは、mailbox import and export APIについて、メールボックスのバックアップと復元を目的としたAPIではないと明記しています。(Microsoft Learn)
APIでアイテムをエクスポートできることと、次の要件を満たすバックアップサービスであることは別です。
- 世代管理
- 保持期間管理
- ランサムウェア対策
- 一括復元
- 検索可能なバックアップカタログ
- 復元時点の保証
- サービス障害時の独立性
- 監査証跡
バックアップ要件がある場合は、Microsoft 365 Backupや要件を満たす専用製品を別途評価してください。
監査と検知への影響
ロードマップには、新しい監査イベント名やアラートポリシーの追加は記載されていません。一般提供後は、Microsoft GraphアクティビティログとMicrosoft Purviewのメールボックス監査を組み合わせて確認するのが現実的です。
Microsoft Graphアクティビティログ
Microsoft Graphアクティビティログは、テナントでMicrosoft Graphが受信・処理したHTTPリクエストの監査証跡を記録します。
主な記録項目には、次のものがあります。
AppIdServicePrincipalIdUserIdIPAddressRequestMethodRequestUriResponseStatusCodeRolesScopesTimeGenerated
ログはLog Analytics、Azure Storage、Event Hubsへ送信できます。利用にはMicrosoft Entra ID P1またはP2と、ログの保存先となるAzureリソースが必要です。(Microsoft Learn)
一般提供後の初期調査には、次のようなKQLを利用できます。
MicrosoftGraphActivityLogs
| where RequestUri has "/admin/exchange/mailboxes/"
| summarize
Requests = count(),
Failures = countif(ResponseStatusCode >= 400)
by AppId,
ServicePrincipalId,
UserId,
RequestMethod,
bin(TimeGenerated, 1h)
| order by Requests desc
このクエリは、現在のプレビュー資料にあるエンドポイントを前提とした例です。一般提供時にURIが変更された場合は、RequestUriの条件を修正してください。
検知ルールでは、次の動きを優先的に監視します。
- 未承認のApplication IDによるアーカイブアクセス
- 新しく作成されたサービスプリンシパルからの大量アクセス
- 通常使用しない時間帯のエクスポート
- 短時間に多数のユーザーへアクセスするアプリ
- 失敗率の急増
- 読み取り専用アプリによるPOST、PATCH、DELETE相当の操作
- これまで利用実績のない
.All権限の使用 - 補助アーカイブへのリダイレクトが急増したアプリ
Microsoft Purviewのメールボックス監査
Exchange Onlineのメールボックス監査は、既定で有効です。組織全体の状態は、Exchange Online PowerShellで確認できます。
Get-OrganizationConfig | Format-List AuditDisabled
Falseであれば、組織全体の「既定でのメールボックス監査」が有効です。(Microsoft Learn)
MailItemsAccessedは、EWSやRESTを含むメールアクセスを記録するための監査アクションです。個別メッセージへのアクセスは、一定時間内の操作が一つの監査レコードへ集約される場合があります。(Microsoft Learn)
ただし、新しいアーカイブ向けGraph APIの各操作が、どの監査イベントへ記録されるかはロードマップだけでは判断できません。一般提供後に、検証用アプリで次の操作を実行し、実際の監査レコードを保存してください。
- フォルダーの列挙
- アイテムの読み取り
- 添付ファイルの読み取り
- エクスポート
- インポート
- フォルダー作成
- アイテム更新
- アイテム削除
- 補助アーカイブへのリダイレクト
また、メールボックスごとに監査対象アクションを独自変更している組織では注意が必要です。Microsoft管理の既定セットから外れている場合、新しく追加された既定の監査アクションが自動反映されません。(Microsoft Learn)
次のコマンドで確認できます。
Get-Mailbox -Identity <対象メールボックス> |
Format-List DefaultAuditSet
Admin, Delegate, Ownerが表示されれば、3種類のサインイン種別についてMicrosoft管理の既定セットが利用されています。空欄や一部の値だけの場合は、監査アクションがカスタマイズされている可能性があります。
管理者が優先すべき対応
2026年7月中に行うこと
- Microsoft 365管理センターのEWS使用状況レポートを取得する
- Application IDごとに、所有者、製品名、用途、ベンダーを特定する
- アーカイブメールボックスへアクセスするアプリを分類する
- 自動拡張アーカイブを利用しているユーザーを把握する
- Microsoft Entra IDで
Mail.*、MailboxFolder.*、MailboxItem.*権限を棚卸しする - メールボックス監査が有効であることを確認する
- 必要に応じてMicrosoft Graphアクティビティログの保存を開始する
2026年8月の一般提供後に行うこと
- v1.0とbetaの対応状況を再確認する
- 正式なアクセス許可とエンドポイントを確認する
- 読み取り専用の検証から始める
- メインアーカイブと補助アーカイブの両方でテストする
- 308リダイレクトと部分失敗時の再試行を確認する
- Purview AuditとGraphアクティビティログの記録内容を確認する
- 処理件数、処理時間、スロットリング、失敗率の基準値を作る
2026年10月1日までに行うこと
アーカイブメールボックスを扱う重要システムについては、EWSへの依存を解消するか、少なくとも移行時期と一時的な継続策を確定させます。
ベンダー製品の場合は、「Microsoft Graph対応予定」という回答だけでは不十分です。次の内容を書面で確認してください。
- アーカイブメールボックスに対応するか
- 自動拡張アーカイブに対応するか
- 補助アーカイブのリダイレクトに対応するか
- 対応バージョンと提供日
- 必要となるMicrosoft Graph権限
- EWSを完全に使用しなくなる時期
- 更新後に必要な再同意や管理者操作
- 監査ログに記録されるApplication ID
対応要否を判断するための最終チェック
次のいずれかに該当する場合は、優先度を「高」として対応してください。
- EWS使用状況レポートにアクティブなアプリがある
- オンラインアーカイブを扱う移行・監査・収集製品がある
- 自動拡張アーカイブを多数利用している
- アプリにメールボックス全体へのアプリケーション権限を付与している
- 退職者や重要役職者のアーカイブを自動処理している
- 保持またはLitigation Hold対象のメールを外部システムへ連携している
Outlookからアーカイブを利用しているだけでAPI連携がない場合、直ちに構成を変更する必要はありません。ただし、EWS使用状況レポートを一度確認し、「API連携がない」という認識が正しいことを検証してください。
今回のMicrosoft Purview更新は、保持ポリシーそのものの変更ではなく、これまでEWS依存が残りやすかったアーカイブメールボックスへのアクセス経路をMicrosoft Graphへ移すための重要な変更です。
最初に行うべきことは、EWS利用アプリの特定、Graph権限の棚卸し、監査ログの確認です。そのうえで、2026年8月の一般提供後に補助アーカイブを含む検証を行い、2026年10月1日までに重要なEWS依存を解消できる状態へ進めてください。

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