Windows 11でスリープ復帰後に「インターネットなし」になったり、DHCPサーバーからNACKを受けた後にIPアドレスを再取得できなくなったりする場合は、KB5101684またはそれ以降の累積更新プログラムを適用してください。
Microsoftは、DHCPサーバーからNACKを受信する場面と、Modern Standbyを使用する端末において、DHCPリース更新の信頼性を改善したと案内しています。対象はWindows 11 バージョン24H2と25H2です。KB5101684を適用すると、24H2はOSビルド26100.8973、25H2は26200.8973になります。(Microsoft サポート)
ただし、この改善項目は段階的ロールアウトの対象です。同じ更新プログラムを適用していても、改善が有効になる時期は端末によって異なる可能性があります。
KB5101684で改善されたDHCP更新の問題
KB5101684は、2026年7月28日に公開されたWindows 11向けのプレビュー累積更新プログラムです。セキュリティ更新ではなく、Windowsの品質改善や不具合修正を先行して提供する任意の更新プログラムとして配信されています。(Microsoft サポート)
今回のDHCP関連の改善内容は次のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象OS | Windows 11 24H2、Windows 11 25H2 |
| 対象エディション | Home、Pro、Enterprise、Educationなど全エディション |
| 更新プログラム | KB5101684 |
| 適用後のビルド | 24H2:26100.8973、25H2:26200.8973 |
| 主な改善 | DHCPサーバーからNACKを受けた場合のDHCP更新処理 |
| 主な改善 | Modern Standby端末におけるDHCPリース更新 |
| 更新の種類 | 非セキュリティのプレビュー累積更新 |
| 既知の問題 | Microsoftは現時点で認識していない |
| ロールアウト | 一部の改善は段階的に展開 |
Microsoftの説明は「すべてのネットワーク切断を修正する」というものではありません。改善対象は、DHCPリース更新の信頼性に関する特定の状況です。
そのため、Wi-Fiの電波不足、アクセスポイントの停止、LANケーブルの接触不良、VPNクライアント、ネットワークドライバーなどが原因の場合は、KB5101684だけでは解決しないことがあります。
スリープ復帰後にIPを取れない症状が対象になりやすい
次のような症状がある場合は、KB5101684の改善対象に近い可能性があります。
- ノートパソコンのふたを開いた直後だけインターネットに接続できない
- スリープから復帰すると「インターネットなし」と表示される
- Wi-Fiには接続済みだが、IPアドレスやデフォルトゲートウェイを取得できていない
- 再起動すると一時的に直る
ipconfig /renewを実行すると一時的に接続が回復する- ネットワークアダプターを無効化してから有効化すると直る
- DHCPクライアントのイベントログに、リース拒否やNACKに関する記録が残っている
- 同じネットワーク上のほかの端末は正常に接続できている
- 問題が通常起動時ではなく、Modern Standbyからの復帰時に集中する
特に、問題発生時のIPv4アドレスが169.254.x.xになっている場合は、DHCPサーバーから有効なアドレスを取得できず、WindowsがAPIPAと呼ばれる自己割り当てアドレスを使用している可能性があります。APIPAのアドレスでは通常、別のサブネットやインターネットへ通信できません。(Microsoft Learn)
一方、正常なIPアドレス、デフォルトゲートウェイ、DNSサーバーが設定されているにもかかわらず、Webサイトの名前解決だけが失敗する場合は、DHCPではなくDNSやVPN、セキュリティソフトを優先して調査します。
DHCPのNACKは何を意味するのか
NACKは、DHCPの仕様上はDHCPNAKと呼ばれるメッセージです。DHCPサーバーが、クライアントから要求されたIPアドレスをそのまま使用させられないと判断した場合に返します。
例えば、次のような状況ではNACKが返されることがあります。
- 以前使用していたIPアドレスがすでに別の端末へ割り当てられている
- パソコンが別のネットワークやVLANへ移動した
- 要求したIPアドレスが現在のサブネットに属していない
- DHCPの予約情報やリース情報が変更された
- 古いネットワーク情報が端末側に残っている
DHCPの標準仕様では、クライアントがDHCPNAKを受信した場合、以前のアドレスを再利用せず、IPアドレスの取得処理を最初からやり直すことになっています。(RFC Editor)
つまり、NACKが返されること自体は必ずしも異常ではありません。問題になるのは、NACKを受けた後にWindows側の再取得処理が安定せず、有効なIPアドレスへ切り替わらないケースです。KB5101684は、このような場面でのDHCP更新処理の信頼性を改善します。
Modern Standbyで問題が起こりやすい理由
Modern Standbyは、従来のS3スリープとは異なる低電力待機方式です。画面が消えていても、端末内部ではネットワーク、通知、電源管理などの処理が継続する場合があります。
Microsoftは、Modern Standby端末ではWi-Fi、Ethernet、モバイル通信などのネットワーク機能が待機中の接続維持や通知受信に使用される一方、バッテリー動作時には消費電力を抑えるためにネットワークが切断される場合もあると説明しています。(Microsoft Learn)
このため、Modern Standbyから復帰する際は、次の状態を正しく同期させる必要があります。
- ネットワークアダプターの電源状態
- Wi-Fiや有線LANのリンク状態
- 復帰前に使用していたIPアドレス
- DHCPリースの残り時間
- DHCPサーバー側の最新のリース情報
- VPNや仮想ネットワークアダプターの状態
復帰中にDHCPサーバーが以前のIPアドレスを拒否した場合、Windowsは古い設定を破棄して新しいIPアドレスを取得し直さなければなりません。KB5101684では、この更新処理が不安定になる一部の状況が改善されています。
KB5101684を適用する手順
Windows 11のバージョンを確認する
まず、使用中のWindows 11が24H2または25H2であることを確認します。
WindowsキーとRキーを押すwinverと入力する- 「OK」を選択する
- バージョンとOSビルドを確認する
対象となる組み合わせは次のとおりです。
| Windows 11のバージョン | KB5101684適用後のOSビルド |
|---|---|
| 24H2 | 26100.8973 |
| 25H2 | 26200.8973 |
すでにこれより新しいOSビルドが表示されている場合は、後続の累積更新プログラムによってKB5101684の修正が含まれている可能性があります。
累積更新プログラムでは過去の修正が後続更新へ引き継がれるため、必ずしも更新履歴に「KB5101684」と表示されている必要はありません。OSビルドが26100.8973または26200.8973以上になっているかを確認することが重要です。
Windows Updateからインストールする
一般のパソコンでは、Windows Updateからの適用が最も安全です。
- 「設定」を開く
- 「Windows Update」を選択する
- 「詳細オプション」を開く
- 「オプションの更新プログラム」を選択する
- KB5101684を選択する
- ダウンロードとインストールを実行する
- インストール後にWindowsを再起動する
Microsoftも、Windows Updateの「詳細オプション」から「オプションの更新プログラム」を確認する方法を案内しています。(Microsoft サポート)
KB5101684はプレビュー更新であるため、通常の月例セキュリティ更新とは異なり、自動的にインストールされない場合があります。
KB5101684が表示されない場合
KB5101684がオプションの更新プログラムに表示されない場合は、次を確認します。
- Windows Updateが一時停止されていないか
- 再起動待ちの更新プログラムが残っていないか
- 端末がWindows 11 24H2または25H2であるか
- 組織のWSUSやWindows Update for Businessで更新が制御されていないか
- すでにKB5101684より新しい累積更新が適用されていないか
- 更新プログラムの段階的ロールアウト待ちではないか
企業や自治体などの管理端末では、利用者がMicrosoft Update Catalogから個別にインストールするのではなく、管理者が定めた更新リングや承認手順に従ってください。
Microsoftは、Windows Update for Businessに対して、このプレビュー更新の変更が次のセキュリティ更新で提供されると案内しています。(Microsoft サポート)
Microsoft Update Catalogから適用する
Windows Updateで取得できない場合は、Microsoft Update CatalogからKB5101684を取得できます。
ダウンロード時は、端末のアーキテクチャに合わせて次のいずれかを選択します。
- x64-based Systems
- arm64-based Systems
Microsoft Update Catalogには、Windows 11 24H2と25H2、それぞれのx64版とArm64版が登録されています。(Microsoft Update Catalog)
この更新は、環境によって複数のMSUファイルを指定された順序でインストールする必要があります。単独のMSUファイルだけを取得してエラーになる場合は、MicrosoftのKBページに記載されている前提パッケージとインストール順序を確認してください。
更新後に修正されたか確認する方法
更新をインストールしただけで終わらせず、問題が再現しないか確認します。
OSビルドを確認する
再起動後にもう一度winverを実行し、次のビルド以上になっているか確認します。
- Windows 11 24H2:26100.8973以上
- Windows 11 25H2:26200.8973以上
「設定」から確認する場合は、次の順に開きます。
設定 → システム → バージョン情報 → Windowsの仕様
Modern Standby対応端末か確認する
管理者権限のターミナルまたはコマンドプロンプトで、次のコマンドを実行します。
powercfg /a
表示結果に「スタンバイ(S0 低電力アイドル)」に相当する項目があれば、Modern Standby対応端末です。
powercfg /aは、そのパソコンで利用できるスリープ状態を確認するためのWindows標準コマンドです。(Microsoft Learn)
スリープ復帰前後のIPアドレスを比較する
スリープ前に次のコマンドを実行します。
ipconfig /all
次の情報を控えておきます。
- IPv4アドレス
- サブネットマスク
- デフォルトゲートウェイ
- DHCPサーバー
- リース取得日時
- リース有効期限
- 使用中のネットワークアダプター名
その後、実際にModern Standbyへ移行し、復帰後にもう一度ipconfig /allを実行します。
復帰後も正常なIPv4アドレス、デフォルトゲートウェイ、DHCPサーバーが表示され、通信できれば改善を確認できます。
一時的にネットワークを復旧する方法
業務中にネットワークが切れてしまい、更新プログラムをすぐ適用できない場合は、次の方法で一時的に復旧できることがあります。
DHCPリースを更新する
コマンドプロンプトまたはターミナルで次を実行します。
ipconfig /renew
ipconfig /renewは、DHCPで割り当てられたIPアドレス構成を更新するコマンドです。(Microsoft Learn)
実行後、次のコマンドでIPアドレスを確認します。
ipconfig /all
なお、ipconfig /flushdnsはDNSキャッシュを削除するコマンドです。DHCPリースの再取得には使用できません。IPアドレス自体を取得できていない場合に、ipconfig /flushdnsだけを繰り返しても改善しません。
Wi-Fiを切断して再接続する
Wi-Fi接続の場合は、タスクバーのネットワークアイコンからWi-Fiを一度オフにし、数秒後にオンへ戻します。
ネットワークアダプターとDHCPクライアントの状態が再初期化され、IPアドレスを取得できることがあります。
ネットワークアダプターを再起動する
「デバイスマネージャー」または「ネットワーク接続」から、使用中のネットワークアダプターを無効化してから有効化します。
ただし、リモートデスクトップや遠隔管理中に実行すると接続が切れます。遠隔操作中の端末では実行しないでください。
パソコンを再起動する
再起動で直る場合でも、同じ症状がModern Standbyのたびに再発するなら根本解決ではありません。KB5101684または後続の累積更新を適用したうえで、再発状況を確認してください。
KB5101684適用後も直らない場合の切り分け
KB5101684を適用してもネットワークが切れる場合は、症状から原因を絞り込みます。
| 症状 | 優先して確認する項目 |
|---|---|
169.254.x.xが割り当てられる | DHCPサーバー、DHCPリレー、VLAN、Wi-Fi接続状態 |
| IPアドレスが表示されない | ネットワークアダプター、ドライバー、無線接続 |
| 正常なIPだがゲートウェイがない | DHCPオプション、スコープ設定 |
| ゲートウェイには通信できるがWebサイトを開けない | DNS、プロキシ、VPN、セキュリティソフト |
| 端末1台だけで発生する | NICドライバー、ファームウェア、省電力設定 |
| 同じネットワークの全端末で発生する | DHCPサーバー、ルーター、アクセスポイント |
| 特定のドッキングステーション使用時だけ発生する | USB LANドライバー、ドックのファームウェア |
| 別のネットワークへ移動した直後に発生する | 古いリース情報、VLAN、複数DHCPサーバー |
| VPN接続時だけ発生する | VPNクライアント、仮想アダプター、フィルタードライバー |
DHCPクライアントのイベントログを確認する
イベントビューアーで、問題が発生した時刻付近のDHCPログを確認します。
- 「イベントビューアー」を開く
- 「アプリケーションとサービスログ」を展開する
- 「Microsoft」を展開する
- 「Windows」を展開する
- DHCP Client Eventsの「Admin」と「Operational」を確認する
MicrosoftのDHCPクライアント向けトラブルシューティングでも、DHCP Client EventsのOperationalログとAdminログを確認するよう案内されています。(Microsoft Learn)
ログを確認するときは、イベントIDだけで判断せず、次の情報を記録します。
- 発生日時
- 対象ネットワークアダプター
- 要求したIPアドレス
- DHCPサーバーのアドレス
- NACKまたはリース拒否の記録
- スリープ復帰時刻との一致
- エラーコード
- 直前に接続していたSSIDやネットワーク
DHCPサーバー側を確認する
クライアント側の更新後もNACKが繰り返される場合は、DHCPサーバー側も確認します。
- DHCPスコープに空きアドレスがあるか
- 除外範囲と配布範囲が重複していないか
- 端末の予約アドレスが正しいか
- 古いMACアドレスが予約されていないか
- 同一ネットワーク上に複数のDHCPサーバーが存在しないか
- DHCPリレーが正しいサーバーへ転送しているか
- VLANとDHCPスコープの組み合わせが正しいか
- 端末が要求しているIPアドレスが現在のサブネットに属しているか
NACKは正当な拒否応答として返されることもあります。Windows側の更新だけでなく、「なぜDHCPサーバーがそのアドレスを拒否したのか」も確認することが重要です。
ネットワークドライバーを確認する
Modern Standbyからの復帰では、ネットワークアダプターの電源管理やドライバーも影響します。
Windows Updateだけでなく、パソコンメーカーが提供する次の更新も確認してください。
- Wi-Fiドライバー
- Ethernetドライバー
- チップセットドライバー
- BIOSまたはUEFI
- USB LANアダプターのドライバー
- ドッキングステーションのファームウェア
ドライバーを更新する際は、チップメーカーの汎用ドライバーよりも、まずパソコンメーカーが対象機種向けに公開しているドライバーを優先します。
段階的ロールアウトで注意すること
KB5101684の更新ページでは、機能や改善が「段階的ロールアウト」と「通常ロールアウト」に分けて案内されています。段階的ロールアウトでは、同じ更新プログラムを適用した端末でも、変更が有効になる時期が異なります。(Microsoft サポート)
そのため、次のような状況が起こり得ます。
- 同じ機種でも一部の端末だけ改善する
- 同じOSビルドでも挙動に差がある
- KB5101684を適用した直後は症状が残る
- 後続の累積更新を適用した時点で改善する
KB5101684を適用済みなのに改善しない場合、非公式なレジストリ変更や隠し機能の強制有効化は避けてください。端末のOSビルド、DHCPログ、Modern Standbyの状態を記録し、後続の累積更新を適用しながら確認する方が安全です。
企業や組織での展開方法
業務端末へ展開する場合は、いきなり全台へ配信するのではなく、Modern Standbyを使用する代表的な端末で先行検証します。
検証対象には、次の条件を含めると問題を発見しやすくなります。
| 検証条件 | 確認内容 |
|---|---|
| AC電源とバッテリー | 電源状態による復帰後の違い |
| Wi-Fiと有線LAN | 接続方式による違い |
| ドック接続あり・なし | USB LANやドック固有の問題 |
| VPN接続あり・なし | 仮想アダプターやフィルターの影響 |
| 同じネットワークへ復帰 | DHCPリース更新の安定性 |
| 別のネットワークへ移動 | NACK後の新規アドレス取得 |
| 長時間のModern Standby | リース期限をまたぐ場合の動作 |
| 802.1X認証環境 | 認証完了とDHCP取得の順序 |
特に、DHCPリース期限をまたぐModern Standby試験を行うと、通常の短時間スリープでは発見できない問題を確認できます。
プレビュー更新の適用を避ける運用であれば、後続の月例累積更新へ同じ修正が含まれるのを待つ方法もあります。ただし、現場で切断が頻発して業務影響が大きい場合は、先行端末でKB5101684を検証したうえで段階的に展開するのが現実的です。
KB5101684の既知の問題
Microsoftは、KB5101684について現時点で既知の問題を認識していないと案内しています。(Microsoft サポート)
ただし、「既知の問題がない」という表現は、すべての機種やネットワーク構成で問題が起こらないことを保証するものではありません。
特に次の環境では、事前検証を行ってください。
- VPNクライアントを使用している
- 802.1X認証を使用している
- USB LANアダプターやドックを使用している
- 独自のネットワークフィルタードライバーが導入されている
- WSUSやWindows Update for Businessで更新を管理している
- DHCPリレーや複数VLANを使用している
- 業務アプリがネットワーク切断に弱い
まず更新適用、次にログで原因を絞り込む
Windows 11でスリープ復帰後にIPアドレスを取得できない場合は、次の順序で対応します。
- Windows 11が24H2または25H2であることを確認する
- KB5101684またはそれ以降の累積更新を適用する
- 24H2は26100.8973、25H2は26200.8973以上になったことを確認する
- Modern Standbyから復帰させて再発しないか確認する
- 再発した場合は
ipconfig /allでIPアドレスとDHCPサーバーを確認する - DHCP Client EventsのAdminログとOperationalログを調べる
- DHCPサーバー、VLAN、ネットワークドライバーを切り分ける
今回のポイントは、NACKそのものを異常と決めつけないことです。NACKは、使用できないIPアドレスを拒否するための正常なDHCP応答でもあります。
KB5101684で改善されるのは、NACKを受けた後やModern Standby利用時におけるWindows側のDHCP更新処理です。まずOSを修正済みビルドへ更新し、それでも症状が残る場合にネットワーク構成やドライバーを調査すると、無駄な設定変更を減らしながら原因を特定できます。

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