Universal Printの障害対応や印刷状況の把握を、CSVレポートや個別のイベントログだけで追っている管理者にとって、「Universal Print: Logs and alerts」は運用を大きく変える機能です。結論から言うと、この更新ではUniversal Printの詳細な診断ログをAzure Monitor経由でLog Analyticsワークスペースへ送信し、トラブルシューティングやカスタムアラートに使えるようになります。Microsoft 365 Roadmap上では、プレビューが2026年6月、一般提供が2026年12月予定、状態は「In development」とされています。(Microsoft)
ただし、これは単に「ログが見られるようになる」だけの変更ではありません。管理者は、ログの保存先、保持期間、コスト、アクセス権、アラート条件、既存のヘルプデスク運用とのつなぎ込みまで事前に設計しておく必要があります。この記事では、Microsoftの「Universal Print: Logs and alerts」で何が変わるのか、誰に影響するのか、プレビュー前に確認すべき設定や移行・展開時の注意点を実務目線で整理します。
Universal Print: Logs and alertsで何が変わるのか
「Universal Print: Logs and alerts」は、Universal PrintをAzure Monitorと連携させることで、詳細な診断ログをLog Analyticsワークスペースへ送信できるようにする機能です。Microsoftの公式ロードマップAPIでは、説明として「Universal Print customers can send detailed diagnostic logs to a Log Analytics workspace to conduct troubleshooting and configure custom alerts」と明記されています。(Microsoft)
これまでUniversal Printの運用では、管理ポータルの使用状況レポート、CSV出力、コネクタ側のイベントログ、ユーザーからの問い合わせを組み合わせて状況を把握する場面が多くありました。新機能が入ると、印刷関連の診断情報をLog Analyticsに集約し、KQLで検索・集計したり、Azure Monitorのアラートルールで通知したりする運用に寄せられます。
| 観点 | これまで中心だった確認方法 | 新機能で期待できる運用 | 管理上の意味 |
|---|---|---|---|
| 障害調査 | ユーザー申告、ポータル確認、コネクタのイベントログ | Log Analyticsで診断ログを検索・集計 | 「誰の端末で起きたか」だけでなく、傾向や再発条件を追いやすくなる |
| 監視 | 手動確認、月次レポート、個別調査 | 条件に応じたカスタムアラート | 障害をユーザー報告の前に検知しやすくなる |
| レポート | Usage and reportsのCSV確認 | KQL、ブック、ダッシュボードへの展開 | ヘルプデスク、情シス、運用監視チームで同じデータを見られる |
| 保持期間 | レポート保存や個別ログ収集に依存 | Log Analytics側の保持設定に従う | 監査・調査に必要な期間を設計しやすいが、コスト設計が必要 |
| 自動化 | 手作業や個別スクリプトが中心 | アラート、アクショングループ、外部連携 | ITSM、メール、Teams通知などにつなげやすい |
重要なのは、この機能を「印刷の新機能」ではなく「運用監視の新機能」と捉えることです。プリンターの追加や印刷UIの変更というより、Universal PrintをAzure運用基盤の中で監視・分析できるようにする変更です。
対象範囲と提供時期
Microsoft 365 Roadmap ID 396782の情報では、対象製品はUniversal Print、プラットフォームはWeb、対象クラウドはWorldwide、GCC、GCC Highです。リリースリングにはPreviewとGeneral Availabilityが含まれ、プレビュー提供時期は2026年6月、一般提供時期は2026年12月とされています。(Microsoft)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| Roadmap ID | 396782 |
| 機能名 | Universal Print: Logs and alerts |
| 対象製品 | Universal Print |
| 状態 | In development |
| プレビュー予定 | 2026年6月 |
| 一般提供予定 | 2026年12月 |
| 対象クラウド | Worldwide、GCC、GCC High |
| プラットフォーム | Web |
| 変更確認の目安 | 公式API上のmodifiedは2026-05-07 23:15 UTCで、日本時間では2026年5月8日に相当 |
注意したいのは、Microsoft 365 Roadmapの予定日は確定日ではない点です。Microsoft 365 Roadmapは商用機能の予定日と説明を掲載するもので、情報は変更される可能性があると明記されています。(Microsoft)
そのため、2026年6月のプレビュー段階では「本番全体で即時展開」ではなく、対象プリンターや対象部門を絞った検証から始めるのが安全です。特にGCCやGCC Highの環境では、ログ出力カテゴリ、リージョン、データ保持、外部連携の制約が通常の商用テナントと異なる可能性があるため、プレビュー時点の管理画面とMicrosoft Learnの更新を確認してから設計を固めましょう。
影響を受ける対象者
この変更の影響は、Universal Printの管理者だけに限られません。Log Analytics、Azure Monitor、セキュリティ監視、ヘルプデスク運用に関わる担当者も巻き込む必要があります。
| 対象者 | 確認すべきこと |
|---|---|
| Microsoft 365管理者 | Universal Printの対象テナント、ライセンス、管理者ロール、プリンター共有状況 |
| Universal Print管理者 | どのプリンターや部門でログ監視を始めるか、既存の障害対応フローとの接続 |
| Azure管理者 | Log Analyticsワークスペース、保持期間、コスト、RBAC、アクショングループ |
| セキュリティ・監査担当 | 印刷関連ログに含まれる可能性があるユーザー情報やジョブ情報の取り扱い |
| ヘルプデスク | アラート受信後の一次対応手順、エスカレーション基準 |
| 開発者・ISV | Universal Print APIや業務アプリからの印刷処理と診断ログの突き合わせ |
Universal Printは、クラウドサービスとして印刷基盤を管理する仕組みです。Microsoft GraphのUniversal Print概要では、オンプレミスの印刷サーバーやデバイス側のプリンタードライバー管理を減らし、Microsoft 365クラウドで印刷インフラを扱えることが説明されています。(Microsoft Learn)
つまり、今回のログ・アラート機能は、オンプレミス印刷サーバー時代の「サーバーを見る運用」から、Microsoft 365とAzure Monitorを組み合わせた「クラウド監視の運用」へ移るための重要な要素です。
既存のUniversal Print運用との違い
Usage and reportsとの違い
Universal Printには、使用状況を確認するためのUsage and reportsページがあります。Microsoft Learnでは、このページでテナントの使用状況概要を確認でき、ユーザー別・プリンター別のCSVレポートをダウンロードできると説明されています。(Microsoft Learn)
ただし、Usage and reportsは主に印刷利用量やレポート確認に向いた機能です。障害の兆候をリアルタイムに近い形で検知したり、「特定のプリンターで直近15分に失敗が増えている」といった条件で通知したりする用途には、Log AnalyticsとAzure Monitorアラートの方が向いています。
コネクタのイベントログとの違い
Universal Print Connectorを使っている環境では、コネクタPC側のイベントログ確認が重要です。Microsoftのトラブルシューティング手順では、Microsoft-Windows-PrintConnector/Operationalのイベントログを確認する方法や、ジョブ待機、印刷開始、スプーラー送信などのイベントが示されています。(Microsoft Learn)
新しい「Logs and alerts」が入っても、コネクタPCのローカルイベントログが完全に不要になると考えるのは危険です。プレビューでログカテゴリや含まれる情報が確認できるまでは、次のように役割を分けて考えると実務で混乱しません。
| ログの種類 | 主な用途 | 使いどころ |
|---|---|---|
| Log Analytics上のUniversal Print診断ログ | 横断的な検索、傾向分析、アラート | 複数拠点・複数プリンターの障害傾向を見る |
| コネクタPCのイベントログ | コネクタやローカル印刷経路の詳細調査 | 特定コネクタ、特定プリンターの深掘り |
| Usage and reports | 利用量、ユーザー別・プリンター別レポート | 月次確認、印刷量の管理、コスト把握 |
| Microsoft 365監査ログ | 管理操作やユーザー操作の監査 | コンプライアンス、操作履歴確認 |
Microsoft 365の監査関連では、Office 365 Management Activity APIのスキーマにUniversal Printの印刷ジョブ関連イベントや管理イベントが含まれています。これは診断ログとは目的が異なるため、「障害調査用ログ」と「監査・証跡用ログ」を混同しないことが重要です。(Microsoft Learn)
管理者がプレビュー前に確認すべき設定
Log Analyticsワークスペースをどこに置くか決める
Azure Monitor Logsは、Azureや非Azureのリソース、アプリケーションから生成されるテレメトリを収集・分析・活用するSaaS型の基盤です。Log Analyticsワークスペースはログを格納するデータストアで、KQLによる検索、アラート、ブック、ダッシュボードなどに利用できます。(Microsoft Learn)
Universal Printの診断ログを使う場合、まず決めるべきなのは「どのワークスペースに入れるか」です。安易に既存の巨大な監視ワークスペースへ入れると、アクセス権が広すぎたり、コストの見積もりが難しくなったりします。
実務では、次の基準で判断すると整理しやすくなります。
| 判断項目 | おすすめの考え方 |
|---|---|
| 小規模環境 | 既存のMicrosoft 365運用監視用ワークスペースに統合してもよい |
| 複数拠点・多数プリンター | Universal Print専用または業務運用系ワークスペースを分ける |
| セキュリティ要件が高い環境 | 閲覧者を限定できる専用ワークスペースを検討する |
| GCC / GCC High | 対応リージョン、外部連携、保持要件を個別に確認する |
| Sentinel連携予定あり | セキュリティ監視のデータ取り込み量と課金影響を事前に試算する |
診断設定の考え方を理解しておく
Azure Monitorの診断設定では、リソースログやメトリック、アクティビティログを各種宛先へ送信できます。リソースログは既定では収集されず、診断設定を作成して収集する必要があります。送信先にはLog Analyticsワークスペース、Azure Storage、Event Hubsなどがあります。(Microsoft Learn)
Universal Printでの具体的な設定画面やログカテゴリは、プレビュー開始後に確認する必要があります。ただし、一般的なAzure Monitorの運用としては、次の点を先に決めておくとスムーズです。
| 確認項目 | 決める内容 |
|---|---|
| 送信先 | Log Analyticsに送るのか、StorageやEvent Hubsにも送るのか |
| ログカテゴリ | すべて取得するのか、必要なカテゴリだけに絞るのか |
| 保持期間 | 障害調査用に30〜90日程度か、監査目的で長期保持するか |
| アクセス権 | 誰がログを閲覧できるか、ヘルプデスクにどこまで見せるか |
| 通知先 | メール、Teams、ITSM、Webhookなどの通知経路 |
| コスト管理 | 取り込み量の見積もり、日次上限、月次レビューの方法 |
診断設定は便利ですが、すべてのログを無期限に集める設計は避けるべきです。Azure Monitor Logsでは、Log Analyticsワークスペースへのデータ取り込み量と保持が主要な課金要素になります。Microsoft Learnでも、取り込みと保持が多くのAzure Monitor実装で大きな課金要素になると説明されています。(Microsoft Learn)
保持期間とコストを事前に決める
Log Analyticsの保持期間は、障害調査の実務に直結します。たとえば、ユーザーから「先月から印刷に失敗することが増えた」と問い合わせが来た場合、7日分しかログを保持していなければ原因分析が難しくなります。一方で、長期保持を無計画に設定するとコストが増えます。
Azure Monitor Logsでは、テーブルの保持期間を管理でき、長期保持も設定できます。Microsoft Learnでは、テーブルの合計保持期間を最大12年まで延長できること、長期保持中のデータは検索ジョブで取得できることが説明されています。(Microsoft Learn)
おすすめは、最初から長期保持を前提にするのではなく、次のように段階を分けることです。
| 用途 | 保持期間の考え方 |
|---|---|
| 日常的な障害調査 | 30〜90日を目安に検討 |
| 月次の傾向分析 | 少なくとも前月分を比較できる期間を確保 |
| 監査・証跡 | 監査ログや別ストレージとの役割分担を確認 |
| 高頻度の詳細ログ | プレビュー時に取り込み量を測定してから本番化 |
| 一時的な障害調査 | 必要な期間だけ詳細ログを増やし、調査後に戻す |
権限設計で失敗しないためのポイント
Universal Print側とAzure Monitor側では、必要な権限が異なります。Universal Printの管理ロールには、Global Administrator、Printer Administrator、Printer Technicianがあり、最小権限の考え方で役割を割り当てることが推奨されます。(Microsoft Learn)
一方、Azure Monitorでログ検索アラートを作成・編集するには、対象リソースへの読み取り権限、アラートルールを作成するリソースグループへの書き込み権限、関連するアクショングループへの読み取り権限が必要です。(Microsoft Learn)
つまり、Universal Print管理者が必ずしもAzure Monitorのアラートを作れるとは限りません。逆に、Azure管理者がUniversal Printの業務影響を理解していない場合もあります。プレビューに入る前に、次の役割分担を明文化しておくと展開後の混乱を防げます。
| 作業 | 主担当 | 補助担当 |
|---|---|---|
| Universal Printの対象プリンター選定 | Universal Print管理者 | ヘルプデスク |
| 診断ログの送信先設計 | Azure管理者 | セキュリティ担当 |
| ログ閲覧権限の設計 | Azure管理者 | Microsoft 365管理者 |
| アラート条件の作成 | Azure管理者 | Universal Print管理者 |
| アラート受信後の一次対応 | ヘルプデスク | Universal Print管理者 |
| 重大障害時のエスカレーション | 情シス責任者 | セキュリティ・ネットワーク担当 |
特に避けたいのは、Global Administratorに依存した運用です。初期設定のために強い権限が必要になる場面はありますが、日常運用ではPrinter AdministratorやPrinter Technician、Log Analytics Reader、Monitoring Contributorなどの役割を組み合わせて、必要最小限の権限に分けるべきです。
カスタムアラートは「何を通知しないか」まで決める
Azure Monitorアラートは、監視データに問題の兆候がある場合に、ユーザーが気付く前に通知できる仕組みです。アラートルールは監視対象、シグナル、条件を組み合わせ、条件を満たすとアクショングループを起動します。(Microsoft Learn)
Universal Printのログでアラートを作る場合、最初から細かく通知しすぎると失敗します。印刷失敗は、ユーザー操作、用紙切れ、ネットワーク、プリンター本体、コネクタ、認証、権限など複数の要因で起きるため、単純に「失敗1件で通知」にするとノイズが増えます。
まずは、以下のような「業務影響が大きい条件」から始めるのがおすすめです。
| アラート候補 | 条件例 | 通知先 |
|---|---|---|
| 重要プリンターの失敗急増 | 15分以内に同一プリンターで失敗が一定件数を超える | ヘルプデスク、拠点IT担当 |
| 全社的な失敗増加 | 複数プリンターで同時に失敗率が上がる | 情シス、Azure運用担当 |
| 登録・構成関連のエラー | プリンター登録や共有設定に関するエラーが発生 | Universal Print管理者 |
| コネクタ関連の異常 | コネクタ経由プリンターで連続失敗が発生 | インフラ担当 |
| ログ取り込み停止 | 一定時間Universal Print関連ログが来ない | Azure Monitor管理者 |
プレビュー時点でログテーブル名や列名が公開されるまでは、具体的なKQLを固定しない方が安全です。記事や社内手順書に書く場合も、以下のように「置き換え前提」の形で準備しておくと後から修正しやすくなります。
<Universal Printの診断ログテーブル>
| where TimeGenerated > ago(15m)
| where <結果列> == "Failed"
| summarize FailedCount = count() by <プリンター識別子>, bin(TimeGenerated, 5m)
| where FailedCount >= <しきい値>
Azure Monitorのログ検索アラートでは、KQLクエリにいくつかの制約があります。たとえば、bag_unpack()、pivot()、narrow()はサポートされず、ago()はtimespanリテラルのみがサポートされるなどの注意点があります。(Microsoft Learn)
そのため、本番用のアラートでは「ポータルで動いた複雑な調査クエリ」をそのまま流用するのではなく、アラート用に短く安定したクエリを作ることが大切です。
展開・移行時の注意点
Universal Printの前提条件を再確認する
Universal Printの展開では、ライセンス、端末要件、ネットワーク到達性、プリンターの登録方式が前提になります。Microsoft Learnでは、ユーザーとIT管理者に対象ライセンスを割り当てること、Windowsではバージョン1903以降、macOSではVentura 13.3以降が必要であること、各エンドポイントへのアクセスが必要であることが説明されています。(Microsoft Learn)
また、Universal Print対応プリンターは追加インフラなしで直接登録でき、対応していないプリンターはUniversal Print Connectorを使って登録します。(Microsoft Learn)
ログ監視を始める前に、以下を棚卸ししておきましょう。
| 棚卸し項目 | 確認内容 |
|---|---|
| プリンター一覧 | 重要プリンター、共有範囲、拠点、部門 |
| 登録方式 | Universal Print readyか、Connector経由か |
| コネクタ | 設置場所、OS、バージョン、冗長性、イベントログ確認方法 |
| ユーザー範囲 | 全社展開か、特定部門か、共有プリンター単位か |
| ネットワーク | 必要エンドポイントに到達できるか |
| Intune展開 | 自動インストールしているプリンターと対象デバイス |
| サポート窓口 | どのアラートを誰が見るか |
Universal Printでは、登録済みプリンターをユーザーに共有し、必要に応じてIntuneでWindowsデバイスへ自動展開できます。Microsoft Learnでは、Windows 11およびWindows 10 21H2以降のデバイスに、IntuneでUniversal Printプリンターを展開できると説明されています。(Microsoft Learn)
プレビューでは「全社一括」ではなく「代表パターン」で試す
2026年6月のプレビューでは、最初から全プリンターを対象にするのではなく、代表的な利用パターンを選んで検証するのが現実的です。
おすすめの検証パターンは次の3つです。
| 検証パターン | 含める理由 |
|---|---|
| Universal Print readyプリンター | クラウド直結時のログ内容を確認するため |
| Connector経由プリンター | コネクタ関連の障害がどこまで見えるか確認するため |
| 利用頻度の高い共有プリンター | 実際のログ量、アラート件数、業務影響を測るため |
プレビュー検証では、次の順番で進めると失敗しにくくなります。
| 手順 | 作業内容 | 成果物 |
|---|---|---|
| 事前準備 | 対象プリンター、担当者、ワークスペースを決める | 検証計画 |
| ログ有効化 | プレビュー機能で診断ログ送信を設定する | Log Analyticsへの取り込み確認 |
| スキーマ確認 | テーブル名、列名、ログカテゴリを確認する | KQLメモ、項目一覧 |
| 障害再現 | テスト印刷失敗、権限不足、プリンター停止などを試す | 障害別ログパターン |
| アラート作成 | 重要条件だけ通知する | 最小限のアラートルール |
| コスト確認 | 1日あたりの取り込み量を測る | 月額概算 |
| 手順化 | ヘルプデスク向け対応フローに落とす | 運用手順書 |
開発者・ISVが確認すべきポイント
Universal PrintはMicrosoft Graph APIからも扱えます。Microsoft GraphのUniversal Print API概要では、組織やISVがUniversal Print APIを使って、アプリケーションを構築・拡張できると説明されています。(Microsoft Learn)
業務アプリやWebアプリから印刷ジョブを作成している場合、今回のログ連携は開発者にも関係します。特に、アプリ側の処理ログとUniversal Print側の診断ログをどう突き合わせるかが重要です。
確認すべきポイントは次のとおりです。
| 観点 | 確認内容 |
|---|---|
| ジョブ識別 | アプリ側の印刷要求とUniversal Print側のログを対応付けられるか |
| エラー分類 | アプリ起因、認証起因、プリンター起因、ネットワーク起因を分けられるか |
| 再試行設計 | 失敗時に自動再試行するのか、ユーザーへ明示するのか |
| 個人情報 | ログに含まれるユーザー名、ドキュメント名、プリンター名の扱い |
| 監視連携 | アプリ監視とUniversal Print監視を同じダッシュボードに出すか |
| スキーマ変更 | プレビュー中のログ列名やカテゴリ変更に耐えられるか |
開発者向けには、ログテーブル名をコードやクエリに固定しすぎないことも重要です。プレビュー段階ではスキーマやカテゴリが変わる可能性があります。アラートやダッシュボードを作る場合は、まず検証環境で実データを確認し、GA前に再確認してから本番に展開しましょう。
実務で使えるアラート設計例
Universal Printの診断ログがLog Analyticsに入るようになったら、最初に作るべきアラートは「細かい通知」ではなく「業務停止につながる兆候」の検知です。
重要プリンターの連続失敗
経理、受付、倉庫、医療・教育現場など、特定プリンターの停止が業務に直結する環境では、プリンター単位の連続失敗を監視します。
| 設定項目 | 例 |
|---|---|
| 対象 | 重要プリンターの一覧 |
| 条件 | 15分以内に失敗が5件以上 |
| 通知先 | ヘルプデスク、拠点担当 |
| 初動 | プリンター本体、用紙、ネットワーク、コネクタ状態を確認 |
| エスカレーション | 30分以上継続、または複数ユーザーに影響 |
複数プリンターで同時に失敗が増える
特定プリンターではなく、複数拠点や複数プリンターで同時に失敗する場合は、認証、ネットワーク、Universal Printサービス、条件付きアクセス、プロキシなど広い範囲を疑う必要があります。
| 設定項目 | 例 |
|---|---|
| 対象 | 全プリンター |
| 条件 | 30分以内に複数プリンターで失敗率が急上昇 |
| 通知先 | Microsoft 365管理者、Azure運用担当 |
| 初動 | Microsoft 365サービス正常性、ネットワーク、認証関連変更を確認 |
| エスカレーション | 全社影響がある場合はインシデント扱い |
ログが急に来なくなる
意外に重要なのが、エラーではなく「ログが来ない」状態の検知です。ログ取り込みが止まると、実際には問題が起きていても監視上は静かに見えます。
| 設定項目 | 例 |
|---|---|
| 対象 | Universal Print診断ログ全体 |
| 条件 | 通常利用時間帯に一定時間ログがゼロ |
| 通知先 | Azure Monitor管理者 |
| 初動 | 診断設定、ワークスペース、権限、サービス側の状態を確認 |
| 注意点 | 夜間・休日など印刷が少ない時間帯は除外する |
よくある失敗と回避策
| 失敗しやすいポイント | なぜ問題か | 回避策 |
|---|---|---|
| プレビューで全社展開してしまう | スキーマ変更や通知過多で運用が崩れる | 代表プリンターだけで検証する |
| すべてのログを長期保持する | 取り込み量と保持コストが読めない | まず30〜90日で測定し、必要に応じて延長 |
| アラートを細かく作りすぎる | 通知疲れで誰も見なくなる | 重要プリンター、全社影響、ログ停止から始める |
| 権限をGlobal Administrator任せにする | セキュリティリスクが高い | Universal Print側とAzure Monitor側で役割を分ける |
| コネクタログを見なくなる | ローカル要因の切り分けが遅れる | Log Analyticsとコネクタイベントログを併用する |
| Usage and reportsと診断ログを混同する | 利用量確認と障害調査の目的がずれる | レポート、診断ログ、監査ログの役割を分ける |
| DoDも対象だと思い込む | 現時点の対象クラウドにDoDは含まれていない | ロードマップのCloud instancesを確認する |
特にコストと通知過多は、ログ監視の導入でよくある失敗です。Azure Monitorの診断設定では、必要なカテゴリだけを収集することや、コストを意識して設定することが重要です。Microsoft Learnでも、診断設定で収集するデータによってコストが発生する可能性があり、必要なカテゴリだけを集める考え方が示されています。(Microsoft Learn)
導入前チェックリスト
プレビュー開始前に、次のチェックリストを使って準備しておきましょう。
| チェック項目 | 確認 |
|---|---|
| Universal Printの対象プリンター一覧がある | □ |
| 重要プリンターと通常プリンターを分類している | □ |
| Connector経由とUniversal Print readyを区別している | □ |
| Log Analyticsワークスペースの候補を決めている | □ |
| ログ閲覧者と管理者の権限を分けている | □ |
| 保持期間の初期方針を決めている | □ |
| コスト確認の担当者を決めている | □ |
| 最初に作るアラート条件を3〜5個に絞っている | □ |
| ヘルプデスクの一次対応手順を用意している | □ |
| プレビュー後にスキーマを再確認する予定を入れている | □ |
まとめ:今やるべきこと
「Universal Print: Logs and alerts」は、Universal Printの診断ログをLog Analyticsに送り、Azure Monitorでトラブルシューティングやカスタムアラートを行うための機能です。プレビューは2026年6月、一般提供は2026年12月予定ですが、ロードマップ情報は変更される可能性があるため、予定日だけで本番計画を固定しないことが大切です。(Microsoft)
管理者が今やるべきことは、機能を待つことではありません。まず、Universal Printの対象プリンターとコネクタ構成を棚卸しし、Log Analyticsワークスペース、保持期間、権限、通知先、アラート条件を決めておくことです。プレビューが始まったら、代表的なプリンターだけでログ内容とコストを確認し、GA前に本番展開の手順とヘルプデスク運用へ落とし込みましょう。
Universal Printをすでに導入している組織ほど、この機能は単なる追加機能ではなく、印刷トラブル対応を「事後対応」から「検知・分析・予防」に変えるきっかけになります。

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