Swiftの「public init」と「private init」でクラスインスタンスを制御する方法

Swiftのクラスや構造体のインスタンスを作成する際に使用される初期化メソッド(init)は、オブジェクト指向プログラミングにおいて重要な役割を果たします。特に「public init」と「private init」は、クラスインスタンスの作成を制御するために使用されるアクセス修飾子であり、プログラムの設計やセキュリティにおいても重要な意味を持ちます。本記事では、Swiftにおける「public init」と「private init」の違いと、その実用的な活用方法について詳しく解説し、クラス設計をより効率的に行うための知識を提供します。

目次

Swiftのアクセスレベルについて

Swiftでは、プログラムの安全性やモジュールの再利用性を高めるために、アクセスレベルを指定してコードの可視性を制御することができます。アクセスレベルには主に3種類があります。

public

「public」は、他のモジュールやファイルからもアクセスできる最高レベルの可視性を持つアクセス修飾子です。これを指定することで、外部から自由にクラスやメソッド、プロパティを利用できるようになります。ライブラリやフレームワークを作成する際によく使用されます。

private

「private」は、その定義が含まれるスコープ内、つまり同じクラスや構造体の中でのみアクセス可能な修飾子です。外部からはアクセスできないため、重要なデータやメソッドを隠蔽する際に役立ちます。

internal

「internal」はデフォルトのアクセスレベルで、同じモジュール内であればアクセス可能ですが、モジュールの外部からはアクセスできません。アプリケーション全体で共通の機能を提供しつつ、外部には公開したくない場合に使用されます。

これらのアクセスレベルを適切に使い分けることで、コードの保護や再利用性を向上させることが可能です。

初期化メソッドとは

初期化メソッド(initializer)は、クラスや構造体がインスタンス化される際に、そのプロパティや状態を初期化するための特別なメソッドです。Swiftでは、全てのプロパティがインスタンス化時に初期化される必要があり、その役割を担うのがinitメソッドです。

initの基本的な役割

initメソッドは、インスタンスが作成される際に、プロパティに初期値を設定したり、必要な準備を行ったりするために使用されます。クラスや構造体には、複数のinitメソッドを定義して、異なる引数や設定によって柔軟にインスタンス化を行うことができます。

class User {
    var name: String
    var age: Int

    // 初期化メソッド
    init(name: String, age: Int) {
        self.name = name
        self.age = age
    }
}

上記の例では、Userクラスにnameageの2つのプロパティがあり、initメソッドを通してこれらのプロパティに初期値を設定しています。

デフォルトの初期化メソッド

クラスや構造体は、特に初期化メソッドを定義しなくても、Swiftは自動的にデフォルトの初期化メソッドを提供します。しかし、全てのプロパティに初期値を設定する必要があり、それが行われていない場合は、必ずカスタムのinitメソッドを定義する必要があります。

初期化メソッドのカスタマイズ

複数の引数を取るinitメソッドや、オプショナル値を設定するものなど、初期化メソッドはさまざまな形で定義可能です。これはクラスや構造体を柔軟にインスタンス化するために役立ちます。

class Car {
    var model: String
    var year: Int

    init(model: String) {
        self.model = model
        self.year = 2024
    }
}

このように、初期化メソッドをカスタマイズすることで、デフォルト値や異なる初期化方法を提供することが可能です。

public initの役割

public initは、クラスのインスタンスを外部から自由に作成できるようにするための初期化メソッドです。このアクセス修飾子を使用することで、他のモジュールやファイルからもクラスのインスタンス化を許可し、外部のコードがその機能を利用できるようになります。

public initの基本的な使い方

public initを定義することで、クラスが他のモジュールから直接インスタンス化できるようになります。例えば、ライブラリやフレームワークを作成する際、利用者にクラスのインスタンスを簡単に作成してもらうために利用されます。

public class Vehicle {
    public var make: String
    public var model: String

    // public initメソッド
    public init(make: String, model: String) {
        self.make = make
        self.model = model
    }
}

上記の例では、Vehicleクラスのmakemodelプロパティはpublicとして宣言され、public initメソッドにより、外部からインスタンス化できるようになっています。

public initの利点

  1. 柔軟な利用
    public initを使うことで、ライブラリやフレームワークの利用者が自由にクラスのインスタンスを作成できるため、柔軟性が増します。
  2. カプセル化の促進
    内部の実装を隠蔽しつつ、必要なプロパティを公開することで、使用者に対してクラスの利用を簡単にすることができます。
  3. 他のモジュールとの連携
    複数のモジュールで構成されるアプリケーションにおいて、public initを使用することで、モジュール間の連携が円滑になります。

public initの注意点

public initを使用する際は、インスタンス化されたオブジェクトが意図した通りに機能するように設計する必要があります。また、データの整合性を保つために、適切な初期値の設定やバリデーションを行うことが重要です。外部からアクセスできるため、不適切なデータが設定されるリスクも考慮する必要があります。

private initの役割

private initは、クラスのインスタンス化をそのクラス内に限定するための初期化メソッドです。この修飾子を使用することで、クラスの外部から直接インスタンスを作成できなくなり、特定の条件下でのみインスタンス化を許可することができます。これは、クラスの設計において重要なパターンです。

private initの基本的な使い方

private initを使用することで、クラスのインスタンスを制御し、クラス外部からの直接的なインスタンス化を防ぐことができます。これにより、例えばシングルトンパターンやファクトリーパターンなどの実装が容易になります。

class Singleton {
    static let shared = Singleton() // シングルトンインスタンス

    private init() { // private initにより外部からのインスタンス化を防ぐ
        // 初期化処理
    }
}

上記の例では、Singletonクラスはprivate initを用いて、そのインスタンスをクラス内でのみ作成することができ、外部からはsharedプロパティを通じてのみアクセス可能です。

private initの利点

  1. インスタンスの制御
    private initを使用することで、クラスのインスタンス化を完全に制御できます。これにより、無限にインスタンスが生成されるのを防ぎ、リソースの浪費を避けることができます。
  2. 設計の明確化
    インスタンス化が制限されていることで、クラスの利用方法が明確になります。特にシングルトンやファクトリーパターンのような設計パターンにおいて、意図した通りにクラスを利用することが容易になります。
  3. 状態管理の容易さ
    インスタンスが制限されるため、クラス内の状態を一元的に管理しやすくなります。これにより、状態の整合性を保ちやすくなります。

private initの注意点

private initを使用する際には、インスタンスのアクセス方法や使用ケースを明確に設計する必要があります。利用者がどうやってそのクラスの機能を利用できるのかを考慮し、必要に応じて公開メソッドやプロパティを提供することが重要です。また、適切なエラーハンドリングを行うことで、クラスの使用時に発生する可能性のある問題を回避できます。

シングルトンパターンの実装

シングルトンパターンは、クラスのインスタンスがただ一つだけ存在することを保証するデザインパターンです。このパターンは、アプリケーション全体で共有されるリソースや設定など、特定の機能を持つインスタンスを一元管理するために使用されます。Swiftでは、private initを活用することで、シングルトンパターンを簡単に実装できます。

シングルトンの基本的な実装

シングルトンパターンを実装するためには、クラス内にstaticプロパティを用意し、そのプロパティがクラスの唯一のインスタンスを保持します。また、initメソッドにはprivate修飾子をつけることで、外部からのインスタンス化を防ぎます。

class Configuration {
    static let shared = Configuration() // シングルトンインスタンス

    private init() { // プライベートイニシャライザ
        // 初期設定
    }

    var apiEndpoint: String = "https://api.example.com"
}

上記の例では、Configurationクラスがシングルトンとして設計されています。sharedプロパティを通じて、外部からConfigurationのインスタンスにアクセスできます。

シングルトンの利用方法

シングルトンを利用する際は、次のようにsharedプロパティを介してインスタンスにアクセスします。

let endpoint = Configuration.shared.apiEndpoint

これにより、アプリケーション内のどこからでも同じ設定にアクセスできるため、リソースの無駄遣いや状態の不整合を避けることができます。

シングルトンパターンの利点

  1. リソースの一元管理
    シングルトンを用いることで、特定のリソースや設定を一元管理でき、複数のインスタンスを作成する必要がなくなります。
  2. グローバルなアクセスポイント
    アプリケーション内のどこからでも同じインスタンスにアクセスできるため、共有状態を簡単に扱えます。
  3. 状態の整合性
    ただ一つのインスタンスが存在するため、状態の整合性を保ちやすく、競合状態や不整合が発生するリスクが低減します。

シングルトンパターンの注意点

シングルトンパターンを実装する際には、以下の点に注意が必要です。

  • テストの難易度
    シングルトンは、ユニットテストが難しくなることがあります。状態を持つため、テストの前後で状態をリセットする必要があります。
  • 依存関係の管理
    シングルトンに依存するクラスや機能が増えると、コードの結合度が高くなり、柔軟性が失われることがあります。依存関係の管理には注意が必要です。

これらの点を考慮しつつ、シングルトンパターンを適切に利用することで、効果的な設計を実現できます。

Factoryパターンにおけるinitの使い方

Factoryパターンは、オブジェクトの生成を専用のクラスまたはメソッドに委譲するデザインパターンです。このパターンを使用することで、クラスのインスタンスを作成する際の柔軟性が向上し、インスタンス化の過程をカプセル化できます。Swiftにおいては、public initprivate initを組み合わせることで、さまざまな状況に対応したFactoryパターンを実装できます。

Factoryパターンの基本的な実装

Factoryパターンを実装するには、通常、クラスの外部からインスタンスを生成するための専用のメソッドを定義します。このメソッドは、必要に応じて異なるタイプのオブジェクトを生成できます。

class Car {
    var model: String

    // public initを使用
    init(model: String) {
        self.model = model
    }
}

class CarFactory {
    // Factoryメソッド
    func createCar(model: String) -> Car {
        return Car(model: model)
    }
}

この例では、Carクラスのインスタンスを生成するためのCarFactoryクラスを用意しています。createCarメソッドを通じて、モデル名に応じたCarオブジェクトを生成できます。

private initを使用したFactoryパターン

時には、特定の条件でのみインスタンスを生成したい場合があります。このような場合には、private initを使用してクラスのインスタンス化を制限し、Factoryメソッドを通じてインスタンスを生成することができます。

class SingletonCar {
    static let shared = SingletonCar()

    private init() { }

    func createCar(model: String) -> Car {
        return Car(model: model)
    }
}

この例では、SingletonCarクラスがシングルトンとして設計されており、createCarメソッドを使ってCarのインスタンスを生成します。private initによって、外部からのインスタンス化は防がれています。

Factoryパターンの利点

  1. インスタンス生成のカプセル化
    Factoryパターンを利用することで、インスタンス生成のロジックを一箇所にまとめることができ、変更が容易になります。
  2. 柔軟なインスタンス化
    異なる条件やパラメータに基づいてさまざまなオブジェクトを生成できるため、コードの再利用性が高まります。
  3. 依存関係の管理
    Factoryパターンを通じて、依存関係を明確にすることができ、モジュール間の結合度を低減します。

Factoryパターンの注意点

  • オーバーヘッド
    Factoryパターンを適用すると、クラスやメソッドが増えるため、過剰な設計になるリスクがあります。必要性をよく考慮して導入することが重要です。
  • テストの複雑さ
    Factoryパターンを使用すると、テスト時に生成されたオブジェクトの状態を把握するのが難しくなることがあります。ユニットテストの際は、適切にモックを用意することが求められます。

Factoryパターンを適切に実装することで、オブジェクト生成の柔軟性とカプセル化を実現し、コードの可読性とメンテナンス性を向上させることができます。

クラス継承時の初期化制御

Swiftにおけるクラスの継承は、親クラスの特性を引き継ぎつつ、新たな機能を追加するための強力な手法です。継承を利用する際、初期化メソッド(init)の管理は重要なポイントとなります。特に、public initprivate initを用いることで、インスタンス化の制御をより明確にすることが可能です。

親クラスの初期化メソッドの継承

子クラスは、親クラスの初期化メソッドを継承し、そのまま使用することもできます。また、必要に応じて親クラスの初期化メソッドをオーバーライドし、独自の初期化ロジックを追加することも可能です。

class Animal {
    var name: String

    init(name: String) {
        self.name = name
    }
}

class Dog: Animal {
    var breed: String

    // 親クラスのinitをオーバーライド
    init(name: String, breed: String) {
        self.breed = breed
        super.init(name: name) // 親の初期化メソッドを呼び出す
    }
}

上記の例では、DogクラスがAnimalクラスを継承しています。Dogクラスの初期化メソッドでは、親クラスのinitメソッドを呼び出すことで、nameプロパティの初期化も行っています。

public initとprivate initの継承制御

親クラスで定義された初期化メソッドのアクセスレベルは、子クラスでの利用にも影響を与えます。public initを親クラスで定義している場合、子クラスでもその初期化メソッドを公開することができます。一方、private initを使用している場合は、親クラスのインスタンス化が制限され、子クラスでもインスタンス化できません。

class Person {
    var name: String

    // public init
    public init(name: String) {
        self.name = name
    }
}

class Employee: Person {
    var position: String

    // public initをオーバーライド
    public init(name: String, position: String) {
        self.position = position
        super.init(name: name)
    }
}

この例では、Personクラスのpublic initを継承したEmployeeクラスの初期化メソッドもpublicとして定義されています。これにより、Employeeインスタンスも外部から自由に作成できるようになります。

初期化制御による設計の利点

  1. 柔軟な継承関係
    初期化メソッドを適切に設定することで、親クラスの機能を継承しつつ、子クラスに独自のロジックを追加する柔軟性が得られます。
  2. 明確なインスタンス化の制御
    public initprivate initを使い分けることで、インスタンスの生成を明確に制御し、意図した通りにオブジェクトが使用されるようにできます。
  3. データの一貫性
    各クラスで適切な初期化を行うことで、オブジェクトの状態を一貫して保つことが可能になります。

注意点

  • 親クラスの変更に対する影響
    親クラスの初期化メソッドを変更すると、子クラスに影響を及ぼす場合があります。継承関係を考慮し、設計時に注意が必要です。
  • 複雑な継承関係
    多重継承や深い継承階層を持つ場合、初期化の順序や整合性が複雑になることがあります。明確な設計と文書化が重要です。

クラス継承時における初期化制御は、設計の明確さやオブジェクトの整合性を保つために非常に重要な要素です。適切に管理することで、より強固で柔軟なプログラム設計を実現できます。

「required init」との併用方法

Swiftでは、required initを使用することで、特定の初期化メソッドがすべてのサブクラスで必ず実装されることを保証できます。この機能は、継承関係において柔軟性と一貫性を持たせるために非常に有用です。特に、public initprivate initと組み合わせることで、インスタンス化の制御をさらに強化することができます。

required initの基本的な使い方

required initは、親クラスで定義し、子クラスが必ず実装しなければならない初期化メソッドです。これにより、サブクラスが異なる初期化の方法を持つことができますが、同時に親クラスの要求に従う必要があります。

class Shape {
    var color: String

    // required initを使用
    required init(color: String) {
        self.color = color
    }
}

class Circle: Shape {
    var radius: Double

    // required initをオーバーライド
    required init(color: String) {
        self.radius = 0.0
        super.init(color: color)
    }
}

上記の例では、Shapeクラスのrequired initが定義されており、Circleクラスでオーバーライドされています。これにより、すべてのサブクラスはcolorの初期化を行うことが義務付けられます。

public initとの併用

親クラスでpublic initを定義し、required initを併用することで、外部からのインスタンス化を許可しつつ、すべてのサブクラスでの初期化を強制できます。

class Animal {
    var name: String

    // public required init
    required init(name: String) {
        self.name = name
    }
}

class Dog: Animal {
    var breed: String

    // public required initをオーバーライド
    required init(name: String) {
        self.breed = "Unknown"
        super.init(name: name)
    }
}

この例では、Animalクラスのrequired initpublicとして宣言されています。これにより、Dogクラスも同様に外部からインスタンス化でき、なおかつnameの初期化が必須となります。

private initとの併用

private initrequired initを組み合わせることで、特定の条件下でのみインスタンス化を許可することができます。親クラスでprivate initを使用する場合、サブクラスでの独自の初期化メソッドを提供することが重要です。

class Database {
    static let shared = Database()

    private init() { } // private initにより外部からのインスタンス化を防ぐ

    // required initは無視される
}

class UserDatabase: Database {
    var userCount: Int = 0

    // このクラスではDatabaseの初期化が無効になるため、
    // 独自の初期化メソッドを用意する必要がある
    init(userCount: Int) {
        self.userCount = userCount
    }
}

この場合、Databaseクラスのprivate initにより、UserDatabaseは直接的に継承しない形になりますが、異なる初期化ロジックを持つことができます。

required initの利点

  1. 継承関係の一貫性
    required initを使用することで、すべてのサブクラスが同じ初期化の契約を持つことができ、設計の一貫性が保たれます。
  2. 将来の拡張性
    新たなサブクラスを追加する際に、必要な初期化を強制されるため、予期せぬバグを防ぐことができます。
  3. インターフェースの明確化
    サブクラスにおける初期化の方法が明確になり、他の開発者にとっても使いやすくなります。

注意点

  • オーバーヘッド
    required initを使用することで、各サブクラスでの初期化メソッドの実装が必須となるため、必要ない場合に冗長になることがあります。
  • 設計の複雑さ
    多層の継承構造を持つ場合、required initの存在が設計を複雑にすることがあります。適切な設計を心掛けることが重要です。

required initを利用することで、継承を伴うクラス設計において柔軟性と一貫性を確保し、将来的な拡張にも対応しやすくなります。これにより、クラスのインスタンス化に関する設計の質を高めることができます。

エラー処理を含む初期化メソッド

Swiftでは、初期化メソッドの中でエラー処理を組み込むことが可能です。特に、インスタンス化の際に必須の条件が満たされない場合や、不正な値が渡された場合には、エラーを投げることで不正な状態のオブジェクトが生成されるのを防ぎます。これにより、コードの安全性と堅牢性が向上します。

初期化メソッドでのエラー処理の基本

Swiftの初期化メソッドでは、throwsキーワードを使用して、エラーを投げることができます。この場合、初期化メソッドを呼び出す側で、エラー処理を行う必要があります。

enum InitializationError: Error {
    case invalidAge
}

class Person {
    var name: String
    var age: Int

    // throwsを使った初期化メソッド
    init(name: String, age: Int) throws {
        guard age >= 0 else {
            throw InitializationError.invalidAge // 年齢が無効な場合にエラーを投げる
        }
        self.name = name
        self.age = age
    }
}

この例では、Personクラスの初期化メソッドで年齢が無効な場合にエラーを投げるようにしています。これにより、不正な値が渡された場合にはインスタンスが生成されないようになります。

初期化時のエラー処理の利用方法

初期化メソッドがエラーを投げる場合、呼び出し側でdo-catch構文を用いてエラー処理を行います。

do {
    let person = try Person(name: "Alice", age: -1) // 無効な年齢
} catch InitializationError.invalidAge {
    print("無効な年齢が指定されました。")
} catch {
    print("その他のエラーが発生しました。")
}

このように、初期化時に発生する可能性のあるエラーを適切に処理することで、プログラムの安全性が向上します。

初期化メソッドのエラー処理の利点

  1. 不正状態の防止
    不正なデータがインスタンスに設定されることを防ぎ、コードの信頼性が向上します。
  2. 明確なエラーメッセージ
    エラーを投げることで、何が問題であるかを明確に示すことができ、デバッグが容易になります。
  3. インスタンス生成の柔軟性
    初期化メソッド内で複雑なバリデーションロジックを実行できるため、条件に応じたインスタンス生成が可能になります。

注意点

  • オーバーヘッド
    エラー処理を組み込むことで、初期化メソッドが複雑になり、呼び出し側でのエラーハンドリングも必要になるため、コードが冗長化する可能性があります。
  • 設計の明確さ
    エラー処理を含める際には、どのような条件でエラーを投げるのかを明確にしておく必要があります。設計段階での文書化や仕様書作成が重要です。

初期化メソッドにエラー処理を組み込むことで、オブジェクトの状態を正しく管理し、不正なインスタンスを作成するリスクを低減できます。これにより、アプリケーション全体の堅牢性と信頼性が向上します。

実際のプロジェクトでの応用例

Swiftにおけるpublic initprivate initの使用は、さまざまなプロジェクトでの設計において非常に重要です。ここでは、これらの初期化メソッドを用いた具体的な応用例をいくつか紹介し、どのように活用できるかを見ていきます。

1. シングルトンによる設定管理

アプリケーション全体で一貫した設定を管理するために、シングルトンパターンを用いた設定クラスを実装する例です。

class AppSettings {
    static let shared = AppSettings()

    private init() { } // private initで外部からのインスタンス化を防ぐ

    var theme: String = "Light"
    var apiEndpoint: String = "https://api.example.com"
}

このクラスは、アプリ全体の設定を管理するために使用され、どの部分からでもAppSettings.sharedを介してアクセスできます。private initを使用することで、インスタンス化を一元管理しています。

2. バリデーション付きのデータモデル

ユーザーのデータを管理するためのモデルクラスを作成し、初期化時にデータのバリデーションを行う例です。

enum UserError: Error {
    case invalidEmail
}

class User {
    var email: String

    init(email: String) throws {
        guard email.contains("@") else {
            throw UserError.invalidEmail // 無効なメールアドレスの場合はエラーを投げる
        }
        self.email = email
    }
}

このクラスでは、ユーザーのメールアドレスが有効かどうかを確認し、無効な場合はエラーを投げます。このバリデーションにより、不正なデータがモデルに保存されるのを防ぎます。

3. Factoryパターンによるオブジェクト生成

異なるタイプのオブジェクトを生成するためのFactoryクラスを実装する例です。

class ShapeFactory {
    enum ShapeType {
        case circle
        case square
    }

    func createShape(type: ShapeType) -> Shape {
        switch type {
        case .circle:
            return Circle() // Circleクラスのインスタンスを返す
        case .square:
            return Square() // Squareクラスのインスタンスを返す
        }
    }
}

ShapeFactoryクラスは、ShapeTypeに基づいて異なる形状のインスタンスを生成します。このアプローチは、インスタンス生成のロジックを分離し、柔軟性を高めることができます。

4. モジュール間でのアクセス制御

異なるモジュールでクラスを使用する際に、アクセス修飾子を利用してクラスの可視性を制御する例です。

public class NetworkManager {
    public static let shared = NetworkManager() // シングルトンインスタンス

    private init() { } // private initにより外部からのインスタンス化を防ぐ

    public func fetchData() {
        // データ取得のロジック
    }
}

このクラスでは、外部からのアクセスをpublicにしつつ、インスタンス化は内部でのみ行えるようにしています。これにより、他のモジュールからはNetworkManager.sharedを通じてアクセスできるようになります。

5. カスタムエラーを用いた初期化の強制

特定の条件でのみインスタンス化を許可するためのカスタムエラーを利用する例です。

enum InitializationError: Error {
    case invalidParameter
}

class Configuration {
    var setting: String

    init(setting: String) throws {
        guard !setting.isEmpty else {
            throw InitializationError.invalidParameter // 不正なパラメータの場合はエラーを投げる
        }
        self.setting = setting
    }
}

このクラスでは、初期化時に渡されたパラメータが不正であった場合にエラーを投げます。これにより、常に有効な設定が保持されることが保証されます。

まとめ

これらの応用例を通じて、public initprivate initの使用方法、エラー処理の組み込み、Factoryパターンの実装など、Swiftの初期化メソッドがどのように実際のプロジェクトで役立つかを理解することができます。これらのテクニックを用いることで、コードの柔軟性や安全性を高め、より良い設計を実現することが可能になります。

まとめ

本記事では、Swiftにおけるクラスのインスタンス制御に関連するpublic initprivate initの使い方について詳しく解説しました。これらの初期化メソッドは、インスタンスの生成方法を柔軟に制御するための重要な要素であり、適切に活用することで、以下のような利点があります。

  1. インスタンスの可視性の管理
    public initを使用することで、外部からのインスタンス生成を許可し、ライブラリやフレームワークの利用を容易にします。一方、private initを使うことで、特定の条件下でのみインスタンス化を行うことができ、シングルトンパターンやファクトリーパターンの実装をサポートします。
  2. データの整合性の保持
    初期化メソッド内でのエラー処理により、不正なデータや状態を持つインスタンスの生成を防ぎ、アプリケーションの信頼性を向上させます。
  3. 継承の管理と柔軟性
    required initを使用することで、すべてのサブクラスで特定の初期化メソッドを実装することが義務付けられ、継承関係における一貫性を確保できます。これにより、将来的な拡張が容易になります。
  4. 実際のプロジェクトでの応用
    設定管理、データモデルのバリデーション、Factoryパターンの実装など、実際のプロジェクトでの具体的な応用例を通じて、これらのテクニックがどのように役立つかを学びました。

これらの知識を活用することで、Swiftプログラムの設計がより強固で効率的になり、開発プロセスがスムーズになるでしょう。クラスのインスタンス制御は、良好なソフトウェア設計の基礎となるため、ぜひ積極的に取り入れてみてください。

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