Core i5‑7300UでWindows 11にアップグレードできない理由と解決策|CPU世代・ESU・回避策まで徹底解説

「TPM 2.0 も Secure Boot も満たしているのに、Core i5‑7300U のノートだけ “Windows 11 に非対応” と言われる」。本記事は、その理由を“CPU 世代制限”という本質からわかりやすく解説し、公式サポートを維持する現実的な選択肢(Windows 10 継続+ESU/買い替え)と、自己責任の回避策(レジストリによるチェック回避)まで具体的に網羅します。最後に判断フローとチェックリストも用意し、迷わず最適解にたどり着ける構成にしました。

目次

Intel Core i5‑7300U 搭載 PC が「Windows 11 非対応」になる根本原因

結論から言えば、CPU 世代の要件に引っかかることが最大の理由です。Core i5‑7300U は 2017 年登場の 第 7 世代(Kaby Lake) モバイル向け CPU で、公式の互換 CPU 一覧(Windows 11/24H2 など)では 原則「第 8 世代以降」をサポートと明記されています。たとえ TPM 2.0 が有効で Secure Boot も使えていても、CPU 世代が条件から外れていれば PC Health Check はブロックします。

ここで混乱しがちなのが、「最低動作要件」としてよく見かける “1 GHz/2 コア以上の 64bit CPU” という表現です。これは 対応世代の CPU に対する最低ラインであり、世代要件(第 8 世代以降)を満たしていることが前提です。クロックが 2.6 GHz あるとか、コア数がいくつかといった性能条件ではなく、世代そのもので足切りされます。

i5‑7300U の基本情報(要点)

  • アーキテクチャ:Kaby Lake(第 7 世代)
  • 登場時期:2017 年 Q1
  • コア/スレッド:2C/4T、基本 2.6 GHz(最大 3.5 GHz)
  • 代表的な搭載機:2017~2018 年頃のビジネスノート中心

スペック上の周波数やベンチマークが十分でも、「第 7 世代」という事実だけで不適合となる点が重要です。

まず確認:あなたの環境は本当に「他の要件」を満たしている?

CPU 世代が最大要因なのは確かですが、移行検討の前に基本を再確認しておきましょう。とくにレガシー BIOS(CSM/レガシーブート)でインストールされている PC は、Secure Boot が有効化できない構成になっていることがあります。

チェックの手順

項目確認方法合格の目安補足
CPU 世代Win + Rmsinfo32(システム情報)で「プロセッサ」を確認第 8 世代以降(例:i5‑8250U など)i5‑7300U は第 7 世代。ここで不合格。
TPMWin + Rtpm.mscTPM 2.0(準拠)BIOS の「PTT(Intel)」や「fTPM(AMD)」表記が無効になっていると 1.2 もしくは未検出。
Secure Bootmsinfo32 → 「セキュア ブートの状態」有効ディスクが MBR だと UEFI/Secure Boot を有効化できない。GPT 化が必要。
起動モードmsinfo32 → 「BIOS モード」UEFI「レガシ」なら GPT 変換後に UEFI 起動へ切替。
ストレージ設定 → システム → 記憶域64 GB 以上の空き(インプレース時は余裕を)クリーンインストールならバックアップ推奨。

MBR から GPT へ安全に変換する(必要な場合)

Secure Boot を使うには UEFI+GPT が前提です。Windows 10 なら標準ツールで変換できます。

mbr2gpt /validate /allowFullOS
mbr2gpt /convert /allowFullOS
  • 実行前に必ずフルバックアップを取得してください。
  • BitLocker 有効時は事前に一時停止または回復キーの控えが必須です。

公式サポートを維持する選択肢(推奨順)

選択肢内容主なメリット主なデメリット向いている人
Windows 10 を継続2025年10月14日で無償サポート終了。以降は有償の ESU(Extended Security Updates)で最大 3 年間、重要なセキュリティ更新を受け取れる想定。環境を変えずに延命できる。学習コスト小。予算とタイミングを柔軟に計画できる。新機能は提供されない。ESU は年単位の課金。古いドライバーやアプリのリスクは残る。現行 PC を 1~3 年延命し、買い替え時期を自由に決めたい人。
対応 CPU 搭載 PC に買い替え第 8 世代以降(現行世代ならさらに先)の CPU を搭載した PC に移行。Windows 11 を完全サポートで利用。将来の機能更新・ドライバー互換性も安心。性能・省電力・ストレージ速度も大幅向上。初期費用がかかる。ノートは CPU 換装が事実上不可のため「本体ごと」更新になる。3 年以上の利用を前提に、総保有コスト(TCO)を下げたい人や業務用途。

非公式の回避策(自己責任):インプレースで CPU 判定を回避する

どうしても i5‑7300U 機で Windows 11 を使いたい場合、レジストリ編集で CPU チェックをスキップし、セットアップを続行する方法があります。Microsoft が公開していた手順として広く知られているのが、以下の MoSetup キーを使う設定です。

手順(インプレースアップグレード向け)

  1. Microsoft 公式 ISO からインストールメディア(USB)を作成するか、Windows 11 インストール アシスタントを準備。
  2. アップグレードを開始する前に、レジストリエディターで次を作成: キー: HKEY_LOCAL_MACHINE\SYSTEM\Setup\MoSetup 値: AllowUpgradesWithUnsupportedTPMOrCPU (DWORD) データ: 1
  3. セットアップ(setup.exe)を再実行。CPU 判定がスキップされ、アップグレード/クリーンインストールが可能になります。

別法(クリーンインストール時の一時回避)

  • セットアップ途中で Shift + F10regedit → 前掲の MoSetup を追加して続行。
  • あるいは HKEY_LOCAL_MACHINE\SYSTEM\Setup\LabConfig に以下を作成する方法も知られています: BypassTPMCheck (DWORD) = 1 BypassCPUCheck (DWORD) = 1 BypassSecureBootCheck (DWORD) = 1 (必要に応じて)

重要な注意

  • これらの方法は 公式サポート外です。将来の累積更新(Windows Update)が中断される、あるいは特定バージョンでブロックされる可能性があります。
  • ドライバー互換性・安定性は 一切保証されません。業務機や大切なデータを扱う PC には非推奨です。
  • アップグレード前に必ずフルバックアップを取得し、ロールバック手順(10 日以内の「以前のバージョンに戻す」や、システム イメージ復元)を用意してください。

どれを選ぶ?判断のポイントとフローチャート

最適解は「使い続けたい年数」「求める安定性」「総コスト」の 3 軸で決まります。下記の目安を基準にしてください。

前提おすすめ理由
2 年以内に買い替え予定Windows 10 継続(必要に応じて ESU)既存環境のまま延命。障害リスクを最小化しつつ買い時を選べる。
3 年以上使い続けたい対応 CPU 機に買い替えサポート切れ・互換性の綱渡りをやめ、長期の安心と省電力・性能向上を得る。
検証用・サブ機/割り切って使う回避策で Windows 11(自己責任)正規サポート外のため、更新停止・動作不安定の可能性を許容できる場合のみ。

Windows 10 ESU(Extended Security Updates)の実像

  • 対象:Windows 10 のサポート終了(2025 年 10 月 14 日)後も使い続ける個人・組織。
  • 内容:重要(Critical/Important)レベルのセキュリティ更新のみ提供。新機能や通常のバグ修正、一般サポートは含まれません。
  • 期間最大 3 年(年単位契約)。契約年は累積で、途中年からの参加でも前年度分が必要になる形態が一般的です。
  • 前提:Windows 10 バージョン 22H2 であることが要求されます。

ESU は“時間を買う”手段です。アプリ・周辺機器の入れ替えやデータ移行、次期 PC 選定を落ち着いて進めるための 猶予と捉えましょう。逆に ESU を“恒久策”にしてしまうと、将来の移行コストが雪だるま式に膨らみます。

買い替えなら――どのラインを選ぶべきか

「第 8 世代以降」が目安ですが、中古で買い足すなら第 8~第 10 世代新品なら現行世代がバランス良好です。以下の観点で選びましょう。

  • CPU 世代:第 8 世代以上(Intel)/第 2 世代 Ryzen 以上(AMD)。
  • ストレージ:NVMe SSD(PCIe 3.0 以上)。SATA SSD からでも体感は十分速いが、将来性は NVMe。
  • メモリ:8 GB を最低ライン、快適さ重視なら 16 GB。
  • グラフィックス:一般用途は内蔵で十分。AI・動画編集なら dGPU/NPU の有無も検討。
  • ファームウェア:UEFI/Secure Boot/TPM 2.0(ファームウェア TPM を含む)が標準で利用可能。

回避策を使う前に必ずやるべき 7 つのこと

  1. 完全バックアップ:システム イメージ+ユーザーデータの二重化。
  2. 復旧メディアの用意:Windows 回復ドライブ、またはメーカーのリカバリーメディア。
  3. ドライバーの在庫:ネットワーク・ストレージ・チップセットを OEM から入手・保管。
  4. 暗号化(BitLocker)解除/一時停止:回復キーの保管も忘れずに。
  5. 周辺機器の切り離し:最小構成で実行(USB デバイスは必要最小限)。
  6. 電源管理:AC 電源直結、スリープ・高速スタートアップ・チューニング系常駐を一時無効化。
  7. ロールバック手順の確認:10 日以内の「以前のバージョンに戻す」や、イメージ復元の練習。

よくある質問(FAQ)

Q1. PC Health Check が「非対応」と言うのに、ベンチでは余裕です。やはりダメ?

A. はい。Windows 11 はCPU 世代で互換性を判定しています。性能の余力や TPM/Secure Boot の有無に関係なく、第 7 世代(Kaby Lake)であること自体が不適合の根拠です。

Q2. i7‑7820HQ など第 7 世代の一部は、以前「例外扱い」と聞きました。

A. 過去に限定的な例外が存在したことはありますが、原則は「第 8 世代以降」です。将来の大型更新(24H2/25H2 など)で挙動が変わる可能性や互換性維持の保証はありません。

Q3. レジストリで回避してアップグレードしたら、更新(Windows Update)はどうなりますか?

A. 過去の事例では累積更新が当たることもありましたが、Microsoft は保証していません。突然止まる、特定バージョンでブロックされる可能性もあります。運用リスクを理解できるテスト用・サブ機限定で検討してください。

Q4. とりあえず Windows 10 を使い続けるのは危険ですか?

A. サポート終了後はリスクが上がりますが、ESU を契約すれば重要なセキュリティ更新は継続されます。機能追加はありません。延命のための暫定策と割り切り、計画的に買い替えましょう。

Q5. Linux や ChromeOS Flex など別 OS への移行はアリ?

A. Web・ドキュメント中心なら実用的な選択肢です。ただし業務アプリや周辺機器の互換性を事前に検証してください。デュアルブートよりも別 PC での評価が安全です。

実践メモ:安全に“回避”するためのコマンド断片

(自己責任、かつバックアップ前提)

:: 1) MoSetup キーによる回避(管理者権限の PowerShell/CMD)
reg add "HKLM\SYSTEM\Setup\MoSetup" /v AllowUpgradesWithUnsupportedTPMOrCPU /t REG_DWORD /d 1 /f

:: 2) LabConfig キー(クリーンインストール時など)
reg add "HKLM\SYSTEM\Setup\LabConfig" /v BypassTPMCheck /t REG_DWORD /d 1 /f
reg add "HKLM\SYSTEM\Setup\LabConfig" /v BypassCPUCheck /t REG_DWORD /d 1 /f
reg add "HKLM\SYSTEM\Setup\LabConfig" /v BypassSecureBootCheck /t REG_DWORD /d 1 /f 

上記は「セットアップの互換性チェックを素通りさせる」だけで、その後の安定稼働や更新提供を保証するものではありません。適用後はドライバーの既知問題(特に古いオーディオやストレージ)にも注意してください。

まとめ:i5‑7300U 機にとっての 3 本柱

  • 事実:i5‑7300U は第 7 世代のため、Windows 11 の 公式互換要件を満たさない。
  • 推奨解:短期は Windows 10 継続(必要に応じて ESU)、中長期は対応 CPU 機への買い替え。
  • 代替策:レジストリでの回避は実務では非推奨。テスト用・サブ機でのみ。

判断フロー(文章版)

Step 1: この PC をあと何年使う? → 3 年以上なら買い替え。2 年以内なら Windows 10 継続+ESU。

Step 2: データの重要度は? → 重要(仕事/個人情報)なら回避策は避ける。検証用途なら回避策も選択肢。

Step 3: UEFI/TPM/Secure Boot/ドライバーの整備状況は良好? → 不安があるなら回避策は見送り、買い替え計画へ。

チェックリスト(コピペして使える)

  • [ ] フルバックアップ(システム・データの二段構え)
  • [ ] 復旧メディアと回復キー(BitLocker)を手元に
  • [ ] BIOS を最新化(メーカー配布の最新安定版)
  • [ ] ディスクが GPT/起動が UEFI/Secure Boot 有効
  • [ ] TPM 2.0(ファームウェア TPM を含む)が「準拠」表示
  • [ ] 主要ドライバー(LAN/ストレージ/チップセット)を保存
  • [ ] 更新停止や既知の互換性ブロックに対する代替手段を把握

執筆の最後に:読者への現実的アドバイス

「小さな裏技」で難局を抜ける喜びはありますが、OS は毎月更新される“動くプラットフォーム”です。今日できたことが明日も同じとは限りません。長く安全に使うなら、対応世代 CPU への移行が最も低い運用コストになります。逆に、期間限定の延命や検証用途なら、Windows 10+ESU と回避策を組み合わせるのも合理的。その判断を支えるために、本記事の手順とチェックリストを役立ててください。

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