Windows 11 へのアップグレードで「TPM 2.0 が有効になっていません」と表示されて悩んでいる方は多いと思います。特に ASUS ROG Strix H370‑F Gaming のようなゲーミングマザーボードでは、UEFI のどこで TPM を設定するのか分かりにくく、「dTPM と Intel PTT のどちらを選べばよいの?」という疑問も出てきます。本記事では、Windows 11 の要件を満たすために、このマザーボードで TPM 2.0 を安全に有効化する手順と注意点を、できるだけ具体的に解説します。
TPM 2.0とは?Windows 11で必須になった理由
まずは前提として、TPM(Trusted Platform Module)とは何か、そしてなぜ Windows 11 で TPM 2.0 が必須になったのかを整理しておきましょう。
TPM は、暗号鍵や証明書、パスワードなどの「重要な秘密情報」を PC 本体とは別の安全な領域に保存し、OS の起動プロセスや暗号化機能を保護するための仕組みです。従来は法人向け PC やセキュリティ用途で重視されていましたが、ランサムウェアやフィッシングなどの脅威が一般ユーザーにも身近になったことで、マイクロソフトが Windows 11 で TPM 2.0 を標準要件にしました。
簡単に言うと、TPM 2.0 を有効にすることで、次のような機能の安全性が高まります。
- BitLocker などのドライブ暗号化
- Windows Hello(顔認証・指紋認証・PIN)
- セキュアブートと組み合わせたブートプロセスの保護
- 一部のゲーム・DRM・セキュリティソフトの機能
TPM 1.2 と TPM 2.0 の違いをざっくり整理すると、次のようになります。
| 項目 | TPM 1.2 | TPM 2.0 |
|---|---|---|
| Windows 11 の要件 | 非対応 | 対応(必須) |
| 暗号アルゴリズム | 主に SHA-1 | SHA-256 などより強力な方式に対応 |
| 柔軟性・拡張性 | 限定的 | クラウドや最新のセキュリティ機能に対応しやすい設計 |
| 今後のサポート | 縮小傾向 | 今後の標準 |
ASUS ROG Strix H370‑F Gaming のような比較的新しいマザーボードであれば、BIOS(UEFI)設定で TPM 2.0 を有効にするだけで、Windows 11 の要件を満たせる可能性が高いです。
ASUS ROG Strix H370‑F GamingにおけるTPMの種類:dTPMとIntel PTT
このマザーボードの UEFI 設定を開くと、多くの方が最初につまずくポイントが「TPM 関連の項目が複数ある」ことです。代表的な表示例は次のようなものです。
- TPM Device Selection / TPM Devices
- Intel PTT(Platform Trust Technology)
- dTPM / Discrete TPM
- Firmware TPM / PTT
それぞれの意味を整理すると次の通りです。
| 項目 | 意味 | 特徴 | Windows 11向けの推奨度 |
|---|---|---|---|
| Intel PTT | CPU 内蔵のファームウェア TPM 機能 | 追加ハードウェア不要、TPM 2.0 に対応、ほとんどの用途で十分 | ◎(最優先で推奨) |
| dTPM(Discrete TPM) | マザーボードに追加する物理 TPM モジュール | 専用の TPM チップを装着する一部法人用途向け。未搭載だと無効のまま | ◯(物理モジュールを持っている場合のみ候補) |
| Firmware TPM | ファームウェアベースの TPM 全般(Intel PTT を含む) | UEFI で「Firmware TPM」を選ぶと PTT が有効になる構成が多い | ◎(Intel PTT と同様に推奨) |
ASUS ROG Strix H370‑F Gaming では、物理 TPM モジュール(dTPM)用のヘッダーを備えている場合がありますが、多くの一般ユーザー・ゲーマーは追加モジュールを取り付けていないはずです。そのため、Windows 11 へアップグレードするだけなら、追加パーツを購入する必要はなく、「Intel PTT(Firmware TPM)」を選ぶのが最も現実的で安全です。
結論として、このマザーボードで Windows 11 の要件(TPM 2.0)を満たしたい場合、次の選択が基本方針になります。
- 物理 TPM モジュールを持っていない → Intel PTT / Firmware TPM を有効化
- 法人用途などで既に物理 TPM モジュール(dTPM)を装着している → dTPM を選択してもよいが、TPM 2.0 に設定されていることを確認
TPM有効化前に必ずやっておきたい事前準備
TPM を有効化するだけなら数分で終わりますが、設定を誤ると BitLocker などの暗号化キーを失ってしまうリスクがあります。特に仕事や撮り直せないデータを保存している PC では、以下の事前準備をしっかり行ってください。
| 確認項目 | 内容 | 推奨度 |
|---|---|---|
| 重要データのバックアップ | ドキュメント、写真、動画、作業中のファイルを外付け HDD / SSD やクラウドへコピー | 必須 |
| システムバックアップ | イメージバックアップソフトや復元ポイントを利用して OS 全体をバックアップ | できれば実施 |
| BitLocker の回復キーの保存 | 既に BitLocker を使っている場合は、回復キーを印刷または別デバイスに保存 | 必須(BitLocker 使用時) |
| BIOS 設定の控え | 現在のブート設定(CSM / UEFI、起動ドライブ順位など)を写真やメモに残す | 推奨 |
| BIOS のバージョン確認 | 古い BIOS では TPM や PTT 項目が分かりにくい場合があるため、必要に応じて更新 | 推奨 |
特に注意したいのは BitLocker の回復キー です。TPM の初期化や BIOS リセットを行うと、BitLocker が「この PC の構成が変わった」と判断し、回復キーの入力を求めてくることがあります。回復キーが分からないとデータにアクセスできなくなるので、事前に必ず保存しておきましょう。
BIOSでIntel PTTを有効化してTPM 2.0にする具体的手順
ここからは、ASUS ROG Strix H370‑F Gaming を想定した具体的な手順を解説します。BIOS の表記はバージョンによって微妙に異なりますが、流れはほぼ共通です。
BIOSセットアップユーティリティを起動する
- PC を完全にシャットダウンします。
- 電源ボタンを押してすぐに、
Delキー またはF2キーを何度か押して BIOS(UEFI)画面を表示します。 - 起動直後のロゴ画面で間に合わなかった場合は、再起動して再度試します。
多くの場合、最初は「EZ Mode(簡易モード)」で表示されるため、詳細な TPM 設定にアクセスするには「Advanced Mode(詳細モード)」に切り替える必要があります。
詳細モードに切り替えてPCH-FW設定を開く
- BIOS 画面でキーボードの
F7キーを押し、「Advanced Mode(詳細モード)」に切り替えます。 - 上部メニューから 「Advanced」 タブを選択します。
- 一覧の中から 「PCH-FW Configuration」 または 「PCH-FW」 に近い項目を探して選択します。
H370 チップセットの ASUS ボードでは、TPM 設定が「Advanced → PCH-FW Configuration」の中にまとめて置かれていることが多いです。
TPM DevicesでFirmware TPM / Intel PTTを選択する
PCH-FW Configuration 画面では、次のような項目が並んでいるはずです(名称は BIOS バージョンにより多少前後します)。
- TPM Device Selection / TPM Devices
- Enable TPM(有効 / 無効)
- Intel Platform Trust Technology (PTT)
基本的な設定手順は次の通りです。
- TPM Devices / TPM Device Selection を選択し、
「Enable TPM」 または 「Enabled」 を選びます。 - 同じ画面、または近い階層にある 「TPM Type」 を 「Firmware TPM」 に設定します。
もし「dTPM」「Firmware TPM」「Auto」などから選べる場合は、「Firmware TPM」 または 「Auto(PTT を優先)」 を選ぶのがおすすめです。 - Intel Platform Trust Technology (Intel PTT) を 「Enabled」 に変更します。
この設定により、CPU に内蔵されたファームウェア TPM 機能(PTT)が有効になり、Windows からは「TPM 2.0」として認識されます。物理 TPM モジュールを取り付けていない限り、dTPM を選ぶ必要はありません。
分かりやすくまとめると、TPM 関連設定のおすすめ構成は次の通りです。
| BIOS 項目 | 推奨設定 | 補足 |
|---|---|---|
| TPM Devices / TPM Device Selection | Enable TPM | TPM 機能全体の有効 / 無効を切り替える |
| TPM Type / TPM Device Type | Firmware TPM | Intel PTT を利用する場合はこちら |
| Intel Platform Trust Technology (Intel PTT) | Enabled | CPU 内蔵 TPM 機能をオンにする |
設定を保存して再起動する
- 設定が完了したら、キーボードの
F10キー を押し、「Save & Exit(保存して終了)」のダイアログを表示します。 - 表示されている変更内容を確認し、「Yes」 を選択して再起動します。
- PC が再起動し、通常どおり Windows が起動するのを待ちます。
再起動後に Windows が正常に立ち上がったら、次の手順で TPM 2.0 が正しく認識されているか確認します。
WindowsでTPM 2.0が有効になっているか確認する方法
tpm.msc でTPM管理コンソールを確認する
- Windowsキー + R を押して「ファイル名を指定して実行」ダイアログを開きます。
- テキストボックスに
tpm.mscと入力し、Enter キー を押します。 - 「TPM 管理コンソール」が開きます。
ここで次の点を確認します。
- 上部の「ステータス」に 「TPM は使用可能です」 といったメッセージが表示されているか
- 右側の「TPM 製造元情報」内に 「仕様バージョン: 2.0」 と表示されているか
もし「互換性のある TPM が見つかりません」などのメッセージが出る場合は、BIOS で TPM が有効になっていないか、Intel PTT が無効のままになっている可能性があります。設定を再確認してください。
Windowsの設定画面から確認する方法
TPM 管理コンソール以外にも、Windows の設定画面から TPM の状態を確認できます。
- スタートボタン → 設定(歯車アイコン) を開きます。
- 「更新とセキュリティ」 → 「Windows セキュリティ」 を選択します。
- 「デバイス セキュリティ」 を開き、セキュア プロセッサ(TPM)に関する情報を確認します。
ここで TPM が有効であれば、セキュア プロセッサに関する情報や TPM バージョンが表示されます。表示されない場合は、BIOS 設定と Windows バージョンの両方を確認してください。
Secure Bootを有効にしてWindows 11の要件を満たす
Windows 11 の要件は TPM 2.0 だけではなく、Secure Boot(セキュアブート)の有効化 も含まれています。ASUS ROG Strix H370‑F Gaming で Secure Boot を有効にする際のポイントをまとめます。
Secure Boot有効化の基本手順
- 再度 BIOS(UEFI)画面を開き、
F7キーで Advanced Mode に入ります。 - 上部メニューから 「Boot」 タブを選択します。
- 「CSM(Compatibility Support Module)」関連の項目がある場合、「Disabled」 に設定します。
(Secure Boot は基本的に UEFI ブート前提のため) - 「Secure Boot」 の項目を開き、「OS Type」 を 「Windows UEFI mode」 に設定します。
古い OS(Windows 7 など)からアップグレードしている場合、ブートモードが Legacy / CSM のままになっていることがあります。その場合、Secure Boot を有効にする前に、ディスクを MBR から GPT に変換し、UEFI ブートへ移行する必要があります。これは少し高度な作業になるため、不安な場合はシステムバックアップを取った上で、慎重に進めてください。
TPM 2.0 とSecure Bootの組み合わせが重要
Windows 11 のセキュリティ要件は、以下の3つがセットになっていると考えると分かりやすいです。
- UEFI ブート(CSM 無効)
- Secure Boot 有効
- TPM 2.0 有効(Intel PTT / Firmware TPM)
この 3 つが揃っていることで、OS の起動からログイン、データ保護までのセキュリティレベルが大きく向上します。ASUS ROG Strix H370‑F Gaming はこれらに対応しているため、設定さえ正しければ Windows 11 でも問題なく動作します。
Windows 11アップグレード前の最終チェック
TPM 2.0 と Secure Boot を有効化したら、実際に Windows 11 のアップグレード準備が整っているかを確認しましょう。
PC正常性チェックツールなどで要件を確認
マイクロソフトが提供している「PC 正常性チェック」ツールなどを使うと、Windows 11 の要件を満たしているかが一目で分かります。ツールの画面で、次のような項目が「OK」となっていれば概ね問題ありません。
- TPM 2.0 が有効
- Secure Boot が有効
- CPU が対応(第 8 世代 Core シリーズ以降など)
- メモリ容量(4GB 以上)
- ストレージ容量(64GB 以上)
ASUS ROG Strix H370‑F Gaming は第 8 / 9 世代 Intel CPU に対応しているため、CPU の要件を満たしていることが多いです。あとは TPM 2.0 と Secure Boot の設定さえ整えば、基本的には Windows 11 へアップグレード可能です。
チェックポイントを表で整理
| チェック項目 | 確認方法 | OKの目安 |
|---|---|---|
| TPM 2.0 | tpm.msc または PC 正常性チェック | 仕様バージョン 2.0 |
| Secure Boot | BIOS の「Secure Boot」設定 | 「Enabled」かつ「Windows UEFI mode」 |
| ブートモード | BIOS の「CSM」設定やディスク構成 | CSM 無効、UEFI ブート、ディスクが GPT |
| CPU | システム情報やタスクマネージャーで確認 | 対応 CPU(第 8 世代 Core 以降など) |
| メモリ・ストレージ | エクスプローラー・システム情報 | メモリ 4GB 以上、ストレージ 64GB 以上 |
BitLockerとTPMリセット時の注意点・トラブル対処
TPM に関連する操作で特に注意したいのが、BitLocker やその他暗号化機能との関係です。ASUS ROG Strix H370‑F Gaming に限らず、TPM の無効化・初期化・dTPM ⇔ PTT の切り替えは、暗号化ボリュームに影響を与える可能性があります。
TPMリセット・設定変更で起こりうること
- Windows 起動時に BitLocker の回復キー入力を求められる
- 以前に保存していた TPM ベースの証明書・鍵が無効になる
- 法人用セキュリティソフトのポリシー違反とみなされる
こうしたトラブルを避けるために、次の点を押さえておきましょう。
| 操作 | 影響 | 対策 |
|---|---|---|
| TPM の無効化 | BitLocker などが正常に動作しなくなる可能性 | 特別な理由がない限り、無効化しない |
| TPM の初期化 | TPM 内の鍵が消去され、回復キーが必要になる | 必ず回復キーを事前保存、実行は最終手段と考える |
| dTPM → Intel PTT への切り替え | TPM が別物として扱われるため、暗号化に影響 | BitLocker を一時的に解除してから切り替えるのが安全 |
よくあるトラブルと対処例
| 症状 | 考えられる原因 | 対処方法 |
|---|---|---|
| 起動時に BitLocker 回復キーを求められる | TPM 設定の変更や BIOS アップデート | 保存しておいた回復キーを入力して復号し、安定した設定に固定する |
| Windows から TPM が見えなくなった | BIOS で TPM / Intel PTT が無効化された | BIOS に再度入り、TPM / Intel PTT の項目を Enabled に戻す |
| Windows 11 のアップグレード要件が満たされないと表示される | TPM バージョンが 1.2 のまま、または Secure Boot 無効 | tpm.msc で仕様バージョン 2.0 か確認し、Secure Boot の設定も見直す |
ゲーミングPCでTPM 2.0を有効にしても大丈夫?
ゲーミング PC ユーザーからよく聞かれるのが、「TPM や Secure Boot を有効にするとゲームのパフォーマンスが落ちるのでは?」という不安です。結論から言うと、通常のゲームプレイにおいて、TPM 2.0(Intel PTT)を有効にしたことが原因で FPS が落ちたり、レイテンシが増えたりすることはほとんどありません。
TPM は主に起動時や暗号化関連の処理で働くため、ゲーム中の負荷はごくわずかです。むしろ、オンラインゲームやアンチチート機能など、TPM や Secure Boot を前提にしたセキュリティ機能を要求するタイトルも増えつつあります。
ASUS ROG Strix H370‑F Gaming はもともとゲーミング向けに設計されているため、TPM 2.0 を有効化しても、CPU や GPU の性能が目に見えて落ちることはありません。安心して設定して大丈夫です。
ASUS公式情報の活用とBIOSアップデートのポイント
ASUS は公式 FAQ やマニュアルで、TPM や Intel PTT の設定手順を文書番号付きで公開していることがあります。たとえば、TPM 2.0 に関する FAQ(文書番号 1046215 など)では、Intel PTT の有効化手順が図付きで解説されています。
特に次のような場合は、ASUS の公式情報を併せて確認すると安心です。
- 手元の BIOS 画面とこの記事の画面構成が大きく異なる
- TPM / PTT の項目が見当たらない
- 最新の CPU やメモリ構成で動作させている
また、BIOS を最新バージョンに更新すると、TPM 関連の項目が分かりやすく整理される場合があります。ただし、BIOS 更新は失敗すると起動不能になるリスクもゼロではないため、次の点に注意してください。
- 安定動作しているなら、無理に最新にしなくてもよいケースもある
- 更新前に必ずシステムとデータのバックアップを取る
- 更新中は絶対に電源を切らない・ケーブルを抜かない
「今の BIOS で TPM 2.0 と Secure Boot が設定できている」のであれば、その状態のまま Windows 11 へアップグレードするのが最も安全です。
まとめ:ASUS ROG Strix H370‑F Gamingで安全にTPM 2.0を有効化してWindows 11へ
最後に、本記事の内容をポイントだけ整理します。
- Windows 11 では TPM 2.0 と Secure Boot が必須要件であり、ASUS ROG Strix H370‑F Gaming でも BIOS 設定で対応可能です。
- TPM の種類としては「dTPM」と「Intel PTT(Firmware TPM)」がありますが、追加モジュールがない一般ユーザーは Intel PTT を有効にするのが最適解です。
- TPM 有効化前には、重要データと BitLocker 回復キーのバックアップ を忘れずに行いましょう。
- BIOS 設定のポイントは、Advanced → PCH-FW Configuration で TPM を Enable / Firmware TPM に設定し、Intel PTT を Enabled にすることです。
- 再起動後に
tpm.mscで仕様バージョンが 2.0 になっているかを確認し、合わせて Secure Boot も有効化することで、Windows 11 の要件をクリアできます。 - TPM 2.0 や Secure Boot を有効にしても、ゲーミング用途で体感できるパフォーマンス低下はほぼありません。セキュリティと互換性の面からも有効化をおすすめします。
ASUS ROG Strix H370‑F Gaming を使っている方であれば、この記事の手順どおりに設定していくだけで、特別な追加パーツなしに Windows 11 へのアップグレード要件を満たせるはずです。TPM 2.0 と Secure Boot をしっかり整え、より安全で長く使える環境へ移行していきましょう。

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