Windows 11 Insider の印刷設定に、プリンターが Windows Protected Print Mode(Windows 保護印刷モード、以下 WPPM)をサポートするかを示す新アイコンが追加されました。結論から言うと、このアイコンは「そのプリンターが、より安全でドライバーレス寄りの印刷運用に乗せやすいか」を見分けるための目印です。現時点では Dev Channel 向けの段階配信ですが、企業の情シスにとっては単なる見た目の変更ではありません。Microsoft は WPPM を将来のある時点で既定有効にする方針を示しており、サードパーティ製プリンタードライバーの扱いも段階的に見直しています。(Windows Blog)
この記事では、WPPM とは何か、新アイコンで何が分かるのか、どのプリンターが対象なのか、そして情シスが今のうちに確認しておくべきポイントを、実務寄りに整理します。
Windows の印刷設定に新アイコン、何が変わったのか
Microsoft は 2026 年 3 月 30 日公開の Windows 11 Insider Preview Build 26300.8142(Dev Channel)で、印刷設定に「プリンターが WPPM をサポートしていることを示す新アイコン」を追加したと案内しました。この変更は、Dev Channel の中でも段階的にロールアウトされる改善に含まれているため、同じ Insider 環境でもすぐ全員に見えるとは限りません。Microsoft が公開した画像では、プリンター名の右側に小さな盾風のバッジが表示されています。(Windows Blog)
この変更の価値は、対応可否の判断を設定画面の時点でしやすくなることです。実務上は、Windows 側が WPPM 対応として扱う対象を UI で先に見分けやすくなるため、「まずどのプリンターから検証すべきか」を決めやすくなります。見た目は小さな変更でも、運用の入口としてはかなり実用的です。(Windows Blog)
そもそも WPPM とは何か
WPPM は、Windows のモダン プリント スタックだけを使って印刷する仕組みです。Microsoft Learn では、メリットとして「PC のセキュリティ向上」「PC アーキテクチャに左右されにくい一貫した印刷体験」「印刷ドライバー管理の不要化」を挙げています。また、WPPM は Mopria 認定プリンターで動作するように設計されています。(Microsoft Learn)
なぜここまで Microsoft が WPPM を押しているのかというと、印刷は昔から Windows の攻撃面になりやすかったからです。Microsoft は、過去 3 年の MSRC への報告のうち 9% が Print 関連だったと説明しており、企業向け資料では WPPM によって過去の Windows 印刷セキュリティ問題の半数超を軽減できるとしています。新アイコンは小さな UI 変更ですが、背景にあるのはかなり大きなセキュリティ方針転換です。(Microsoft Learn)
公開情報を実務向けに言い換えると、違いは次のように捉えると分かりやすいです。(Microsoft Learn)
| 観点 | 従来のドライバー中心の印刷 | WPPM |
|---|---|---|
| 仕組み | メーカー製ドライバーに依存しやすい | Windows モダン プリント スタック中心 |
| セキュリティ | サードパーティ製コードの読み込み前提になりやすい | サードパーティ製ドライバー読み込みを抑える |
| 運用 | ドライバー配布・更新・不具合切り分けが発生しやすい | ドライバー管理負荷を下げやすい |
| 相性のよい機器 | ベンダー独自実装を前提にした旧来機種 | Mopria / IPP ベースで扱える機種 |
なぜ今回の新アイコンが重要なのか
今回のアイコン追加は、単なる「分かりやすさの改善」で終わりません。Microsoft Learn の FAQ では WPPM は将来のある時点で既定有効になる予定とされており、さらに別の公式資料では、Windows 11+ と Windows Server 2025+ を対象にサードパーティ製プリンタードライバーのサービス終了を複数年で進める計画が公開されています。つまり、このアイコンは「将来の標準に寄せやすいプリンターを早めに見分けるためのサイン」と見るのが自然です。(Microsoft Learn)
Microsoft Learn の公開ロードマップを要点だけ抜き出すと、方向性はこうです。(Microsoft Learn)
| 時期 | 公式ロードマップ上の動き |
|---|---|
| 2026年1月15日 | Windows 11+ / Windows Server 2025+ 向けの新規プリンタードライバーは Windows Update へ原則公開しない |
| 2026年7月1日 | プリンタードライバーの順位付けで Windows IPP inbox class driver を常に優先 |
| 2027年7月1日 | セキュリティ関連を除き、サードパーティ製プリンタードライバー更新を認めない |
※ 上記は 2025 年 5 月時点の Microsoft Learn 掲載内容です。今後調整される可能性があります。(Microsoft Learn)
どのプリンターが対象になるのか
まず押さえたいのは、本命は Mopria 認定プリンターだということです。Microsoft Learn は WPPM を Mopria 認定プリンター向けに設計していると説明しており、互換性確認先として Mopria の Certified Products を案内しています。型番ベースで確認したいなら、メーカーサイトだけでなく Mopria の認定一覧を見るのが手堅いです。(Microsoft Learn)
ただし、ここで見落としやすい点が 2 つあります。1 つ目は、Mopria 認定でも現在のインストール方式によっては挙動が変わることです。Microsoft Learn では、WPPM を有効にするとサードパーティ製ドライバーを使うプリンターはアンインストールされ、Mopria 認定プリンターがもともとメーカー独自ドライバーで入っていた場合も、再インストール時にはモダン プリント スタックに切り替わると説明しています。2 つ目は、スキャンは別判定だということです。Microsoft は、すべてのスキャナーが WPPM と互換ではないと明記しています。(Microsoft Learn)
確認項目を実務向けに整理すると、以下の 4 つを見れば抜けが減ります。(Microsoft Learn)
| 確認項目 | 何を見るか | 判断の目安 |
|---|---|---|
| プリンター本体 | Mopria 認定か | WPPM 移行の優先候補 |
| 現在の導入方式 | メーカー独自ドライバーで入っていないか | 有効化時の再インストール検証が必要 |
| 複合機のスキャン | スキャン側も互換性があるか | 印刷とは別に確認 |
| 仮想プリンター | OneNote、XPS、Fax を使っていないか | 代替手順や再設定を準備 |
WPPM を有効にすると、非対応のソフトウェアプリンターも影響を受けます。公式ドキュメントでは、従来の「OneNote(Desktop)」のほか、XPS や Fax が外れる挙動が説明されており、OneNote については「OneNote (Desktop) – Protected virtual printer」が案内されています。複合機や業務アプリ連携だけでなく、こうした周辺運用も確認が必要です。(Microsoft Learn)
新アイコンはどう見て、どう使えばいいか
実務上は、アイコンを「移行候補の仕分け」に使うのが分かりやすいです。アイコンが付くプリンターは、WPPM 前提の運用に寄せやすい候補として優先的に検証できます。逆にアイコンが見えない場合は、すぐに非対応と決めつけず、まずはその PC に機能が段階配信されているか、現在のプリンターがメーカー独自ドライバー前提で入っていないか、そもそも Mopria 認定や IPP 前提の条件を満たしているかを切り分けるべきです。Microsoft は WPPM で Mopria 認定プリンターのみを前提にし、利用時はプリンター側で IPP を有効にしておくよう案内しています。(Windows Blog)
社内でまず試すなら、手順はシンプルです。
- 検証用の Windows 11 Insider 端末で、対象ビルドと段階配信の有無を確認する。
- 印刷設定を開き、主要プリンターに新アイコンが付くかを見る。
- アイコンが付かない機種は、Mopria 認定の有無、IPP の有効化、現在の導入方式を確認する。
- そのうえで、両面印刷、ユーザー認証、部門コード、集計、仕上げ設定など、業務で本当に使う機能を実機で試す。
特に 1〜3 は、Insider の段階配信、WPPM の対象条件、IPP 前提という公開情報に沿った切り分けです。4 は業務要件の確認です。この 2 段階に分けると、検証がかなり進めやすくなります。(Windows Blog)
情シスが見るべきポイント
ドライバー依存の機能を先に棚卸しする
WPPM の方向性は「ドライバーレス寄り」ですが、だからといってメーカー独自機能がすべて消えるとは限りません。Microsoft は、ベンダー独自の体験拡張に Print Support App(PSA)を使えると説明しています。一方で、すべてのプリンターが同じ機能や設定を持つわけではないとも明記しています。つまり、移行判断では「印刷できるか」ではなく、「社内で必要な独自機能を、WPPM 構成でも維持できるか」を確認する必要があります。(Microsoft Learn)
チェック対象になりやすいのは、認証印刷、部門管理、特殊な仕上げ、独自トレイ制御、会計・集計連携のような“標準印刷の外側”にある機能です。ここに依存が強いほど、アイコンが付いていても即導入ではなく、段階的な検証が向いています。
Print Server / Point and Print 前提の運用を見直す
WPPM は Point and Print の考え方にも影響します。Microsoft の技術情報では、WPPM は Point and Print でサードパーティ製ドライバーをインストールしないようにし、このリスクを抑えると説明しています。また、WPPM を有効にしたクライアントからは、WPPM が無効なサーバーを Print Management で管理できないとされています。既存のプリントサーバー運用が残っている環境では、クライアントだけ先に寄せると管理や運用がちぐはぐになる可能性があります。(Microsoft Learn)
ポリシーで配る前提まで見ておく
WPPM は、手動で試すだけの機能ではありません。Microsoft Learn では、グループ ポリシーの コンピューターの構成 > 管理用テンプレート > プリンター > Windows 保護印刷を構成 と、Intune のカスタム OMA-URI ./Device/Vendor/MSFT/Policy/Config/Printers/ConfigureWindowsProtectedPrint が案内されています。さらに、グループ ポリシーで有効化されている場合、ユーザー側では無効化できません。ヘルプデスクが混乱しやすいので、先に説明文を用意しておくと運用が安定します。(Microsoft Learn)
よくあるハマりどころ
アイコンが出ないので、非対応だと思い込む
現時点の新アイコンは Dev Channel の段階配信です。機能自体がまだ自分の端末に届いていない可能性があるため、アイコンが見えないだけで即「非対応」とは言えません。Insider の機能は将来変更・削除されることもあるので、評価はあくまで検証ベースで進めるのが安全です。(Windows Blog)
Mopria 認定なら、そのまま本番導入できると思い込む
Mopria 認定は重要な目安ですが、現在のドライバー構成や、必要な周辺機能まで自動で保証するものではありません。特に、もともとメーカー独自ドライバーで導入していた機種は、WPPM 有効化時に入れ直しになる可能性があります。(Microsoft Learn)
印刷できたので、スキャンや仮想プリンターも問題ないと思い込む
Microsoft は、すべてのスキャナーが WPPM と互換ではないと明記しています。OneNote、XPS、Fax のような周辺機能も影響を受けるため、複合機や業務アプリ連携を使っている部署ほど、印刷以外を含めた確認が必要です。(Microsoft Learn)
新アイコンは小さな追加ですが、見ている先はかなり大きい変化です。Windows Protected Print Mode 対応を UI で見分けやすくすることで、Microsoft は「どのプリンターから安全な印刷運用へ寄せるか」を選びやすくしています。次にやるべきことは明確で、まずは検証端末で主要プリンターのアイコン有無を確認し、Mopria / IPP 対応、必要機能、既存のプリントサーバー依存を洗い出すことです。その結果をもとに、WPPM を先行導入する機種と、当面は従来運用を残す機種を分けていくのが、もっとも現実的な進め方です。(Windows Blog)

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