Unreal Engineを使用したゲームが突然クラッシュする現象は、ゲーマーにとって大きな悩みです。特にWindows 11環境で「kernel32」「ntdll」などのエラーが発生すると原因特定が難しい場合もあります。本記事ではその対策や原因解明のポイントを詳しく解説します。
Unreal Engineゲームのクラッシュ事例とエラー内容
Unreal Engine製のゲームがWindows 11でプレイ中に突然クラッシュし、「kernel32」「ntdll」といったエラーが表示される問題は、近年報告が増えています。以下のようなメッセージが目立ち、プレイヤーにとって解決の糸口が見えにくい状況に陥りがちです。
エラー例:
LowLevelFatalError [File:D:\SilentWorkspace\501T-BL\Engine\Source\Runtime\D3D12RHI\Private\D3D12Util.cpp] [Line: 868] CurrentQueue.Device->GetDevice()->GetDeviceRemovedReason() failed at D:\SilentWorkspace\501T-BL\Engine\Source\Runtime\D3D12RHI\Private\D3D12Submission.cpp:910 with error 887A0006
kernel32
ntdll
この問題は単純に「ゲームが不安定だから」という理由だけでなく、Windows 11独特の更新プログラムやドライバーの不整合、あるいはハードウェアの負荷・不具合など、多角的な要因が考えられます。
よくある原因の全体像
- ドライバーやOSのバージョン不整合:グラフィックスドライバーとWindows Updateがかみ合わず、描画時にエラーを引き起こすケース
- 電源ユニット(PSU)の容量不足または劣化:高性能GPUとCPUの組み合わせによって電力が不足し、安定動作に支障をきたす
- 温度管理やハードウェアの接触不良:グラフィックスカードの発熱やマザーボードとの接点不良による不安定化
- DirectX 12やランタイムの破損:ライブラリが破損している、あるいは更新が行き届いていない
- ゲーム側の特定バージョンの不具合:個別タイトルで特定のパッチバージョンが不安定な場合
原因を絞り込むための基本的な確認事項
クラッシュ時のエラーメッセージだけでは、正確な原因を一発で突き止めるのは難しいものです。下記のように順序立てて確認を行うことで、原因特定の精度を上げられます。
1. Windowsのイベントビューアとクラッシュログの確認
Windowsでエラーが起きた際、まずはイベントビューアをチェックするのがおすすめです。
- イベントビューアの開き方
- Windowsキー+Rで「ファイル名を指定して実行」を開く
- 「eventvwr」と入力してOKをクリック
- イベントビューアが起動したら、左ペインの「Windowsログ」→「システム」または「アプリケーション」を選ぶ
- エラーログや警告ログを精査
- エラーコードやファイルパスが出ていないか
- 競合しているプロセスが記録されていないか
- kernel32やntdllが原因として記述されていないか
Unreal Engineのゲームによっては、独自のクラッシュレポートツールを搭載している場合もあります。そちらで得られる詳細なスタックトレース(呼び出し履歴)を開発元やフォーラムで共有すると、有益なアドバイスを得られるかもしれません。
2. ハードウェア(特にGPU・電源・メモリ)を疑う
高負荷ゲームをプレイしている際にクラッシュが起こる背景として、システム全体の消費電力が急激に上がったときに安定供給ができない、あるいは熱が限界を超えることが考えられます。
電源ユニット容量の確認
表で大まかな消費電力を把握し、PSUの容量に余裕があるかチェックしてください。たとえばRTX 3080クラスでは、システム全体で750W以上の電源が推奨される場合が多いです。実際に消費される電力を把握するために、以下のような一覧を参考にするのも有効です。
パーツ | 参考消費電力(最大) |
---|---|
CPU (Core i7-12700K) | 約150W前後 |
GPU (RTX 3080) | 約320W前後 |
DDR5メモリ (32GB) | 約10~15W |
マザーボード (Z690) | 約40W前後 |
ストレージやその他 | 50W前後 |
合計目安 | 550W~600W以上 |
上記に加えて、周辺機器やファン、RGB照明なども加味すると、電源にある程度の余裕がないと不安定になるリスクがあります。また、長期間使用して劣化している電源ユニットは、同じ容量表示でも実効出力が下がっている可能性があります。
メモリチェック・GPUテスト
- メモリの検証:Windows標準のメモリ診断ツールを使用し、メモリにエラーがないか確認する。
- Windowsキー+Rで「mdsched.exe」と入力し、再起動後のテストを実行
- エラーが見つかればメモリ自体を交換するか、スロットを変更
- GPUのストレステスト:FurMarkや3DMark、Heaven Benchmarkなどを使い、GPU負荷テストを行い、クラッシュしないか確認する。
- テスト中のGPU温度を常に監視し、85℃を大きく超えるようであれば冷却性能不足の可能性がある
ソフトウェア面での対処法
ハードウェアで問題がなさそうでも、ソフトウェアが原因でクラッシュするケースもあります。Windowsや各種ドライバー、DirectXの状態を整えることで、エラーの発生頻度を下げられるかもしれません。
1. グラフィックスドライバーのバージョン切り替え
最新ドライバーにアップデートしても改善されない場合、安定版や一つ前のバージョンに戻してみるのも有効です。NVIDIAドライバーの場合、公式サイトから過去のドライバーをダウンロードできます。とくにWindows 11リリース直後はドライバーの不具合報告が多かったので、過去に安定運用できていたドライバーを試す価値があります。
ドライバーのクリーンインストール例
1. DDU(Display Driver Uninstaller)をあらかじめダウンロード
2. セーフモードで起動
3. DDUを実行し、「Clean and restart」を選択
4. Windows再起動後、目的のグラフィックスドライバーをインストール
5. 必要に応じて再度再起動
この手順により、古いドライバーの残留ファイルやレジストリ情報をリセットし、新たにドライバーを導入するため、不具合の要因を減らせます。
2. DirectXランタイムの再インストール
Unreal EngineゲームはDirectX 12を利用することが多いですが、古いDirectX 9~11のコンポーネントを参照しているタイトルやモジュールも存在します。Microsoftの公式サイトで配布されている「DirectX End-User Runtimes (June 2010)」などを再インストールし、欠損ファイルがないか確認してみるのがおすすめです。
3. Windows 11のクリーンアップとアップデート確認
何度もWindowsのアップデートを行っていると、レジストリやシステムファイルが断片化してエラーを誘発するケースがあります。Windowsのクリーンインストールを行った場合でも、以下のような点をチェックしてください。
- 更新プログラムの再インストール:アップデートのダウンロードが不完全な場合がある
- ストレージドライブの検証:HDDやSSDに不良セクタがないか、S.M.A.R.T情報をチェック
- 不要な常駐ソフトの削除・停止:ウイルス対策ソフトやバックグラウンドで動作するツールがゲームに干渉していないか
ゲーム内設定と公式サポートの活用
Windows側で問題がなく、ハードウェアにも明確な不具合が見つからない場合、ゲーム自体の設定や開発元が提供するサポート情報に着目する必要があります。
1. ゲーム内グラフィック設定の調整
RTX 3080であっても、高解像度テクスチャやレイトレーシング機能をフルに活用すると非常に高い負荷がかかります。とくにUnreal Engineタイトルでは、以下のような機能を下げるかオフにするだけで改善されるケースがあります。
- アンチエイリアシングの品質
- シャドウやポストプロセスの品質
- レイトレーシングのオンオフ
- 画面解像度のスケーリング
一時的に設定を下げて安定稼働を確認し、徐々に元に戻しながらクラッシュが再発しないポイントを探る方法が効果的です。
2. 公式フォーラムやサポートへの問い合わせ
すでに一般的な対策(ドライバーの更新、Windowsの再インストール、ゲームの整合性チェックなど)を行って解決しない場合は、開発元や公式コミュニティに問い合わせるのが確実です。特定のタイトルでのみ発生するクラッシュは、バージョンアップやパッチ適用で解消される可能性があります。既知の不具合リストを開発元のサイトで公開している場合も多いため、まずはそちらを確認するのがおすすめです。
より踏み込んだ原因究明のステップ
ゲームのクラッシュが頻繁に起きる場合、さらなる手段としてシステムモニタリングやデバッガの活用を検討してみましょう。
1. リソースモニターやタスクマネージャーの活用
タスクマネージャーやMSI Afterburnerなどのツールを使い、CPU使用率、GPU使用率、温度、メモリ使用量、ディスクI/Oなどをリアルタイムで観察します。
- クラッシュ直前にGPU使用率が跳ね上がる、あるいは温度が高温状態に達していないか
- メモリ使用量が限界まで行っていないか
- Windowsの「ページングファイル」が十分に確保されているか
2. ミニダンプファイルの解析
Windowsではクラッシュ時にミニダンプ(.dmp)ファイルが作成される場合があります。Visual StudioやWinDbgを使ってダンプファイルを読み込み、どのモジュールが原因で例外を発生させているかを詳しく見ることが可能です。
- 例外コード(0xc0000005など)が分かれば原因を絞りやすい
- kernel32.dllやntdll.dllと表示されていても、実際の原因は別のモジュールであることが多い
まとめ:段階的なアプローチで安定動作を目指す
Unreal Engineを使用したゲームがWindows 11環境でクラッシュする場合、原因は多岐にわたります。以下のように段階を踏んで検証していくのが効率的です。
- ソフトウェア面
- イベントビューアでのエラーチェック
- ドライバー更新やDirectXランタイムの再導入
- Windowsアップデートの状態確認
- ハードウェア面
- 電源ユニットの容量や劣化状況の調査
- GPUやメモリの負荷テスト・温度管理
- 接触不良や物理的な破損の有無確認
- ゲーム内設定とサポート
- グラフィックオプションの調整
- 公式フォーラムやサポートへの問い合わせ
- タイトル固有の既知不具合やパッチを適用
もしこれらの対策を実行しても原因が特定できない場合は、ダンプファイルの解析や専門家に相談することで解決の糸口が見つかる可能性が高いです。安定性を向上させるためには、OSとハードウェア、そしてゲームソフトの三位一体の視点からアプローチすることが重要になります。
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