JavaScriptのコンストラクタでのプライベートフィールド宣言方法を徹底解説

JavaScriptは長い間、他のオブジェクト指向プログラミング言語に見られるプライベートフィールドのような概念を持ちませんでした。しかし、ES6以降のバージョンでクラスの導入と共に、プライベートフィールドのサポートが追加されました。プライベートフィールドを使用することで、クラス内のデータやメソッドを外部から直接アクセスできないようにすることができ、より堅牢で安全なコードを記述することが可能になります。本記事では、JavaScriptのプライベートフィールドの宣言方法とその活用方法について詳しく解説します。これにより、効率的かつ安全なコーディングが可能になり、プログラムの保守性と信頼性が向上するでしょう。

目次

プライベートフィールドとは

プライベートフィールドとは、クラス内でのみアクセス可能なデータメンバーのことを指します。これにより、クラスの内部状態を外部から隠蔽し、不正な操作や意図しない変更を防ぐことができます。

プライベートフィールドの基本概念

JavaScriptのプライベートフィールドは、先頭に#を付けることで宣言されます。これは、他のプログラミング言語のプライベートメンバーと同様に、クラスの外部から直接アクセスできないようにするためのものです。

プライベートフィールドの利点

プライベートフィールドを使用する主な利点は次のとおりです。

  1. データのカプセル化:クラス内部のデータが外部から直接アクセスされないため、データの整合性を保つことができます。
  2. セキュリティの向上:外部からの不正な操作を防ぐことができ、セキュアなコードを実現できます。
  3. メンテナンス性の向上:内部実装の詳細を隠蔽することで、クラスの公開インターフェースを変更することなく、内部の実装を変更できます。

プライベートフィールドを適切に活用することで、堅牢でメンテナンス性の高いコードを実現することができます。次のセクションでは、具体的な宣言方法について詳しく見ていきます。

コンストラクタ内での宣言方法

JavaScriptのクラスでプライベートフィールドを宣言するには、フィールド名の先頭に#を付けて定義します。これにより、クラス外部からのアクセスが制限されます。以下に具体的な宣言方法を示します。

プライベートフィールドの宣言

プライベートフィールドをクラス内で宣言するには、クラスのコンストラクタ内で#を使ってフィールドを定義します。例えば、次のようにします。

class MyClass {
    // プライベートフィールドの宣言
    #privateField;

    constructor(value) {
        // プライベートフィールドの初期化
        this.#privateField = value;
    }

    // プライベートフィールドを利用するメソッド
    getPrivateField() {
        return this.#privateField;
    }

    setPrivateField(value) {
        this.#privateField = value;
    }
}

// クラスのインスタンス化
const myInstance = new MyClass('初期値');

// プライベートフィールドの値を取得
console.log(myInstance.getPrivateField()); // '初期値'

// プライベートフィールドの値を設定
myInstance.setPrivateField('新しい値');
console.log(myInstance.getPrivateField()); // '新しい値'

// 直接アクセスしようとするとエラーが発生する
// console.log(myInstance.#privateField); // SyntaxError: Private field '#privateField' must be declared in an enclosing class

プライベートフィールドの初期化

コンストラクタ内でプライベートフィールドを初期化する際には、this.#fieldName = value;の形式で行います。これにより、フィールドの初期値を設定できます。

プライベートフィールドのアクセス制御

プライベートフィールドにアクセスするためには、専用のメソッドを定義してアクセスを制御します。例えば、getterやsetterメソッドを使用して、フィールドの値を取得したり設定したりします。

このように、プライベートフィールドを使用することで、クラスの内部データを安全に管理し、外部からの不正なアクセスを防ぐことができます。次のセクションでは、プライベートフィールドのアクセス制御についてさらに詳しく解説します。

プライベートフィールドのアクセス制御

プライベートフィールドを使用することで、クラス内部のデータを外部から隠蔽し、制御することができます。これにより、データの整合性とセキュリティが向上します。ここでは、プライベートフィールドのアクセス制御の具体的な方法とその応用について解説します。

プライベートフィールドのアクセス方法

プライベートフィールドにアクセスするためには、クラス内で専用のメソッド(getterおよびsetter)を定義します。これにより、プライベートフィールドの読み取りと書き込みが可能になります。

class MyClass {
    #privateField;

    constructor(value) {
        this.#privateField = value;
    }

    // Getterメソッド
    getPrivateField() {
        return this.#privateField;
    }

    // Setterメソッド
    setPrivateField(value) {
        this.#privateField = value;
    }
}

const myInstance = new MyClass('初期値');

// Getterメソッドを使用してプライベートフィールドの値を取得
console.log(myInstance.getPrivateField()); // '初期値'

// Setterメソッドを使用してプライベートフィールドの値を設定
myInstance.setPrivateField('新しい値');
console.log(myInstance.getPrivateField()); // '新しい値'

アクセサプロパティの使用

JavaScriptでは、getterおよびsetterを使用してプロパティのようにアクセスできるアクセサプロパティを定義することもできます。これにより、より自然な方法でプライベートフィールドにアクセスできます。

class MyClass {
    #privateField;

    constructor(value) {
        this.#privateField = value;
    }

    // Getterアクセサプロパティ
    get privateField() {
        return this.#privateField;
    }

    // Setterアクセサプロパティ
    set privateField(value) {
        this.#privateField = value;
    }
}

const myInstance = new MyClass('初期値');

// アクセサプロパティを使用してプライベートフィールドの値を取得
console.log(myInstance.privateField); // '初期値'

// アクセサプロパティを使用してプライベートフィールドの値を設定
myInstance.privateField = '新しい値';
console.log(myInstance.privateField); // '新しい値'

アクセス制御の応用

プライベートフィールドを用いることで、データの整合性を保ち、必要に応じてバリデーションを行うことができます。例えば、setterメソッドやアクセサプロパティ内でデータの検証を行うことができます。

class MyClass {
    #privateField;

    constructor(value) {
        this.setPrivateField(value);
    }

    getPrivateField() {
        return this.#privateField;
    }

    setPrivateField(value) {
        if (typeof value === 'string' && value.trim() !== '') {
            this.#privateField = value;
        } else {
            throw new Error('無効な値です');
        }
    }
}

const myInstance = new MyClass('初期値');
console.log(myInstance.getPrivateField()); // '初期値'

// 無効な値を設定しようとするとエラーが発生する
// myInstance.setPrivateField(''); // Error: 無効な値です

プライベートフィールドのアクセス制御を適切に行うことで、クラスの内部状態を保護し、外部からの不正な操作を防ぐことができます。次のセクションでは、具体的な使用例を示しながら、プライベートフィールドの実践的な活用方法について解説します。

プライベートフィールドの使用例

プライベートフィールドを使用することで、クラスの内部データを隠蔽し、安全に管理することができます。ここでは、実際のコード例を用いて、プライベートフィールドの具体的な使用方法を示します。

ユーザークラスの例

以下の例では、ユーザー情報を管理するためのクラスを作成し、プライベートフィールドを使用してパスワードを管理します。

class User {
    #username;
    #password;

    constructor(username, password) {
        this.#username = username;
        this.#password = password;
    }

    // ユーザー名を取得するメソッド
    getUsername() {
        return this.#username;
    }

    // パスワードを検証するメソッド
    validatePassword(password) {
        return this.#password === password;
    }

    // パスワードを変更するメソッド
    changePassword(oldPassword, newPassword) {
        if (this.validatePassword(oldPassword)) {
            this.#password = newPassword;
        } else {
            throw new Error('現在のパスワードが正しくありません');
        }
    }
}

// クラスのインスタンス化
const user = new User('john_doe', 'secret_password');

// ユーザー名の取得
console.log(user.getUsername()); // 'john_doe'

// パスワードの検証
console.log(user.validatePassword('secret_password')); // true

// パスワードの変更
user.changePassword('secret_password', 'new_secret_password');
console.log(user.validatePassword('new_secret_password')); // true

// プライベートフィールドへの直接アクセスはできない
// console.log(user.#password); // SyntaxError: Private field '#password' must be declared in an enclosing class

銀行口座クラスの例

次の例では、銀行口座の残高を管理するためのクラスを作成し、プライベートフィールドを使用して残高を管理します。

class BankAccount {
    #balance;

    constructor(initialBalance) {
        this.#balance = initialBalance;
    }

    // 残高を取得するメソッド
    getBalance() {
        return this.#balance;
    }

    // 入金するメソッド
    deposit(amount) {
        if (amount > 0) {
            this.#balance += amount;
        } else {
            throw new Error('入金額は正の数でなければなりません');
        }
    }

    // 出金するメソッド
    withdraw(amount) {
        if (amount > 0 && amount <= this.#balance) {
            this.#balance -= amount;
        } else {
            throw new Error('出金額が無効です');
        }
    }
}

// クラスのインスタンス化
const account = new BankAccount(1000);

// 残高の取得
console.log(account.getBalance()); // 1000

// 入金
account.deposit(500);
console.log(account.getBalance()); // 1500

// 出金
account.withdraw(300);
console.log(account.getBalance()); // 1200

// プライベートフィールドへの直接アクセスはできない
// console.log(account.#balance); // SyntaxError: Private field '#balance' must be declared in an enclosing class

プライベートフィールドの応用

プライベートフィールドは、クラスの内部データを保護するための強力なツールです。これを適切に使用することで、安全かつメンテナンス性の高いコードを実現できます。また、バリデーションやロギングなど、プライベートフィールドを活用することで、より高度な制御を行うことができます。

これらの例を通じて、プライベートフィールドの基本的な使い方とその利点を理解できたと思います。次のセクションでは、プライベートフィールドとクラスメソッドの連携についてさらに詳しく解説します。

クラスメソッドとの連携

プライベートフィールドはクラスの内部データを管理するために非常に有効です。クラスメソッドと連携することで、データの操作や制御をより効果的に行うことができます。ここでは、プライベートフィールドとクラスメソッドの連携方法について具体的な例を挙げて説明します。

プライベートフィールドとメソッドの連携

クラス内でプライベートフィールドを操作するメソッドを定義することで、データの操作を一元化し、整合性を保つことができます。

class Employee {
    #name;
    #salary;

    constructor(name, salary) {
        this.#name = name;
        this.#salary = salary;
    }

    // 名前を取得するメソッド
    getName() {
        return this.#name;
    }

    // 給料を取得するメソッド
    getSalary() {
        return this.#salary;
    }

    // 給料を引き上げるメソッド
    increaseSalary(amount) {
        if (amount > 0) {
            this.#salary += amount;
        } else {
            throw new Error('増加額は正の数でなければなりません');
        }
    }

    // 給料を減らすメソッド
    decreaseSalary(amount) {
        if (amount > 0 && amount <= this.#salary) {
            this.#salary -= amount;
        } else {
            throw new Error('減額が無効です');
        }
    }
}

// クラスのインスタンス化
const employee = new Employee('Alice', 50000);

// 給料の取得
console.log(employee.getSalary()); // 50000

// 給料の引き上げ
employee.increaseSalary(5000);
console.log(employee.getSalary()); // 55000

// 給料の減額
employee.decreaseSalary(2000);
console.log(employee.getSalary()); // 53000

// プライベートフィールドへの直接アクセスはできない
// console.log(employee.#salary); // SyntaxError: Private field '#salary' must be declared in an enclosing class

プライベートメソッドとの連携

ES2022(ES13)以降、JavaScriptではプライベートメソッドもサポートされるようになりました。プライベートフィールドとプライベートメソッドを組み合わせることで、クラスの内部ロジックをさらに隠蔽し、安全に保つことができます。

class Car {
    #brand;
    #speed;

    constructor(brand) {
        this.#brand = brand;
        this.#speed = 0;
    }

    // プライベートメソッド
    #calculateSpeed(increase) {
        return this.#speed + increase;
    }

    // スピードを増やすメソッド
    accelerate(increase) {
        const newSpeed = this.#calculateSpeed(increase);
        if (newSpeed >= 0) {
            this.#speed = newSpeed;
        } else {
            throw new Error('スピードが無効です');
        }
    }

    // 現在のスピードを取得するメソッド
    getSpeed() {
        return this.#speed;
    }
}

// クラスのインスタンス化
const car = new Car('Toyota');

// スピードを増やす
car.accelerate(50);
console.log(car.getSpeed()); // 50

// プライベートメソッドへの直接アクセスはできない
// car.#calculateSpeed(50); // SyntaxError: Private field '#calculateSpeed' must be declared in an enclosing class

アクセス制御とデータの整合性

プライベートフィールドとクラスメソッドを連携させることで、データの整合性を確保し、外部からの不正な操作を防ぐことができます。特に、バリデーションやビジネスロジックをメソッド内に組み込むことで、信頼性の高いクラス設計が可能になります。

これにより、プライベートフィールドとクラスメソッドの連携方法が理解できたと思います。次のセクションでは、プライベートフィールドの制限事項とその対策について説明します。

プライベートフィールドの制限

プライベートフィールドは便利で強力な機能ですが、いくつかの制限事項があります。これらの制限を理解し、それに対する対策を講じることで、より効果的にプライベートフィールドを活用することができます。

プライベートフィールドの制限事項

1. 同一クラス内でのみアクセス可能

プライベートフィールドは、そのクラスの外部やサブクラスからはアクセスできません。これは、クラスのインスタンスやメソッドを通じてしかプライベートフィールドにアクセスできないことを意味します。

class ParentClass {
    #privateField = '親クラスのプライベートフィールド';

    getPrivateField() {
        return this.#privateField;
    }
}

class ChildClass extends ParentClass {
    constructor() {
        super();
        // this.#privateField にアクセスしようとするとエラーが発生する
        // console.log(this.#privateField); // SyntaxError: Private field '#privateField' must be declared in an enclosing class
    }
}

const instance = new ChildClass();
console.log(instance.getPrivateField()); // '親クラスのプライベートフィールド'

2. プロキシとの相互作用

JavaScriptのプロキシ(Proxy)オブジェクトは、オブジェクトの基本操作(プロパティの読み取り、書き込み、関数呼び出しなど)をインターセプトしてカスタマイズすることができますが、プライベートフィールドにはアクセスできません。

class ExampleClass {
    #privateField = 'プライベートデータ';

    getPrivateField() {
        return this.#privateField;
    }
}

const handler = {
    get(target, prop, receiver) {
        return prop in target ? target[prop] : `プロパティ${prop}は存在しません`;
    }
};

const proxy = new Proxy(new ExampleClass(), handler);

console.log(proxy.getPrivateField()); // 'プライベートデータ'
// プライベートフィールドにはプロキシ経由ではアクセスできない
// console.log(proxy.#privateField); // SyntaxError: Private field '#privateField' must be declared in an enclosing class

3. 一貫したフィールド名の必要性

プライベートフィールド名は、クラス全体で一貫して使用する必要があります。異なるコンテキストで同じ名前のプライベートフィールドを持つことはできません。

class ExampleClass {
    #privateField = '初期値';

    setPrivateField(value) {
        this.#privateField = value;
    }

    getPrivateField() {
        return this.#privateField;
    }
}

const instance = new ExampleClass();
instance.setPrivateField('新しい値');
console.log(instance.getPrivateField()); // '新しい値'

制限への対策

アクセサメソッドの利用

プライベートフィールドの制限を回避するために、getterおよびsetterメソッドを利用して外部からのアクセスを管理します。これにより、必要に応じてフィールドへのアクセスや操作を制御できます。

クラスの設計の工夫

プライベートフィールドを含むクラス設計を慎重に行い、必要な機能やアクセス方法を明確に定義します。これにより、予期しない動作やバグを防ぐことができます。

プロキシの制約を考慮した設計

プロキシを使用する場合は、プライベートフィールドへのアクセスが制限されることを考慮し、必要に応じてプロキシを避けるか、適切なアクセサメソッドを設計します。

これらの対策を講じることで、プライベートフィールドの制限を効果的に克服し、安全で堅牢なコードを実現できます。次のセクションでは、JavaScriptのプライベートフィールドを他のプログラミング言語と比較してみます。

他の言語との比較

JavaScriptにおけるプライベートフィールドの概念は、他のプログラミング言語にも類似の機能が存在します。ここでは、JavaScriptと他の主要なプログラミング言語におけるプライベートフィールドの扱いを比較し、それぞれの特徴を明らかにします。

JavaScript vs. Java

JavaScriptとJavaは、オブジェクト指向プログラミング言語として多くの共通点がありますが、プライベートフィールドの実装には違いがあります。

Javaのプライベートフィールド

Javaでは、フィールドをプライベートにするためにprivateキーワードを使用します。クラス外部から直接アクセスできないようにし、アクセサメソッドを通じて操作します。

public class Employee {
    private String name;
    private double salary;

    public Employee(String name, double salary) {
        this.name = name;
        this.salary = salary;
    }

    public String getName() {
        return name;
    }

    public void setName(String name) {
        this.name = name;
    }

    public double getSalary() {
        return salary;
    }

    public void setSalary(double salary) {
        this.salary = salary;
    }
}

JavaScriptのプライベートフィールド

JavaScriptでは、プライベートフィールドを宣言するために#を使用します。これにより、クラス外部からのアクセスが制限されます。

class Employee {
    #name;
    #salary;

    constructor(name, salary) {
        this.#name = name;
        this.#salary = salary;
    }

    getName() {
        return this.#name;
    }

    setName(name) {
        this.#name = name;
    }

    getSalary() {
        return this.#salary;
    }

    setSalary(salary) {
        this.#salary = salary;
    }
}

JavaScript vs. Python

Pythonもオブジェクト指向プログラミングをサポートしており、プライベートフィールドを擬似的に実現できます。

Pythonのプライベートフィールド

Pythonでは、プライベートフィールドを厳密にサポートしていませんが、名前の前にアンダースコアを付けることで、擬似的なプライベートフィールドを示すことが一般的です。

class Employee:
    def __init__(self, name, salary):
        self._name = name
        self._salary = salary

    def get_name(self):
        return self._name

    def set_name(self, name):
        self._name = name

    def get_salary(self):
        return self._salary

    def set_salary(self, salary):
        self._salary = salary

employee = Employee("Alice", 50000)
print(employee.get_name())  # "Alice"

JavaScript vs. C++

C++もまた、オブジェクト指向プログラミングをサポートしており、privateキーワードを使用してプライベートフィールドを宣言します。

C++のプライベートフィールド

C++では、プライベートフィールドはprivateアクセス指定子を使用して定義されます。

class Employee {
private:
    std::string name;
    double salary;

public:
    Employee(std::string name, double salary) {
        this->name = name;
        this->salary = salary;
    }

    std::string getName() {
        return name;
    }

    void setName(std::string name) {
        this->name = name;
    }

    double getSalary() {
        return salary;
    }

    void setSalary(double salary) {
        this->salary = salary;
    }
};

比較のまとめ

各言語におけるプライベートフィールドの実装には以下のような特徴があります。

  • JavaScript: #記号を使用してプライベートフィールドを定義し、クラス外部からのアクセスを制限。
  • Java: privateキーワードを使用してフィールドを定義し、アクセサメソッドを通じてアクセス。
  • Python: 厳密なプライベートフィールドはサポートしていないが、アンダースコアを使用して擬似的にプライベートフィールドを示す。
  • C++: privateキーワードを使用してフィールドを定義し、クラスメソッドを通じてアクセス。

これらの比較を通じて、各言語におけるプライベートフィールドの特徴とその利点を理解することができます。次のセクションでは、プライベートフィールドを用いた演習問題を提供し、理解を深める機会を提供します。

演習問題

ここでは、JavaScriptのプライベートフィールドを使用した演習問題を通じて、実際に手を動かしながら理解を深めていきましょう。以下の問題に取り組んでみてください。

演習問題 1: 住所管理クラスの作成

プライベートフィールドを使用して、住所(Street, City, ZipCode)を管理するクラスを作成してください。以下の要件を満たすように実装してください。

  • プライベートフィールドとして#street, #city, #zipCodeを定義する。
  • コンストラクタでこれらのフィールドを初期化する。
  • 各フィールドの値を取得するためのメソッド(getter)を定義する。
  • 各フィールドの値を更新するためのメソッド(setter)を定義する。
class Address {
    // プライベートフィールドの宣言
    #street;
    #city;
    #zipCode;

    constructor(street, city, zipCode) {
        this.#street = street;
        this.#city = city;
        this.#zipCode = zipCode;
    }

    // Getterメソッド
    getStreet() {
        return this.#street;
    }

    getCity() {
        return this.#city;
    }

    getZipCode() {
        return this.#zipCode;
    }

    // Setterメソッド
    setStreet(street) {
        this.#street = street;
    }

    setCity(city) {
        this.#city = city;
    }

    setZipCode(zipCode) {
        this.#zipCode = zipCode;
    }
}

// 演習問題のテスト
const address = new Address('123 Main St', 'Anytown', '12345');
console.log(address.getStreet()); // '123 Main St'
console.log(address.getCity()); // 'Anytown'
console.log(address.getZipCode()); // '12345'

address.setStreet('456 Elm St');
address.setCity('Othertown');
address.setZipCode('67890');
console.log(address.getStreet()); // '456 Elm St'
console.log(address.getCity()); // 'Othertown'
console.log(address.getZipCode()); // '67890'

演習問題 2: 銀行口座クラスの改良

以前の銀行口座クラスを改良し、入出金の履歴を管理する機能を追加してください。以下の要件を満たすように実装してください。

  • プライベートフィールドとして#balance#transactionHistoryを定義する。
  • #transactionHistoryは、入出金の履歴を保存する配列とする。
  • 入金メソッドと出金メソッドを改良し、履歴に追加する。
  • 履歴を取得するためのメソッドを定義する。
class BankAccount {
    #balance;
    #transactionHistory;

    constructor(initialBalance) {
        this.#balance = initialBalance;
        this.#transactionHistory = [];
    }

    // 残高を取得するメソッド
    getBalance() {
        return this.#balance;
    }

    // 入金するメソッド
    deposit(amount) {
        if (amount > 0) {
            this.#balance += amount;
            this.#transactionHistory.push(`Deposit: ${amount}`);
        } else {
            throw new Error('入金額は正の数でなければなりません');
        }
    }

    // 出金するメソッド
    withdraw(amount) {
        if (amount > 0 && amount <= this.#balance) {
            this.#balance -= amount;
            this.#transactionHistory.push(`Withdrawal: ${amount}`);
        } else {
            throw new Error('出金額が無効です');
        }
    }

    // 取引履歴を取得するメソッド
    getTransactionHistory() {
        return this.#transactionHistory;
    }
}

// 演習問題のテスト
const account = new BankAccount(1000);
account.deposit(500);
account.withdraw(300);
console.log(account.getBalance()); // 1200
console.log(account.getTransactionHistory()); // ['Deposit: 500', 'Withdrawal: 300']

演習問題 3: 学生クラスの作成

プライベートフィールドを使用して、学生の名前と成績を管理するクラスを作成してください。以下の要件を満たすように実装してください。

  • プライベートフィールドとして#name#gradesを定義する。
  • コンストラクタで名前と初期の成績を設定する。
  • 名前を取得および設定するメソッドを定義する。
  • 成績を追加するメソッドを定義する。
  • 成績の平均値を計算するメソッドを定義する。
class Student {
    #name;
    #grades;

    constructor(name, grades = []) {
        this.#name = name;
        this.#grades = grades;
    }

    // 名前を取得するメソッド
    getName() {
        return this.#name;
    }

    // 名前を設定するメソッド
    setName(name) {
        this.#name = name;
    }

    // 成績を追加するメソッド
    addGrade(grade) {
        if (grade >= 0 && grade <= 100) {
            this.#grades.push(grade);
        } else {
            throw new Error('成績は0から100の間でなければなりません');
        }
    }

    // 成績の平均を計算するメソッド
    getAverageGrade() {
        const sum = this.#grades.reduce((acc, grade) => acc + grade, 0);
        return sum / this.#grades.length;
    }
}

// 演習問題のテスト
const student = new Student('John Doe');
student.addGrade(85);
student.addGrade(90);
student.addGrade(78);
console.log(student.getName()); // 'John Doe'
console.log(student.getAverageGrade()); // 84.33

これらの演習問題に取り組むことで、JavaScriptのプライベートフィールドの使用方法とその利点を実際に体験できます。次のセクションでは、この記事の要点を簡潔にまとめます。

まとめ

本記事では、JavaScriptにおけるプライベートフィールドの宣言方法とその活用方法について詳しく解説しました。プライベートフィールドは、クラスの内部データを隠蔽し、外部からの不正なアクセスを防ぐための重要な機能です。

まず、プライベートフィールドの基本概念と利点を説明し、次に具体的な宣言方法を示しました。プライベートフィールドのアクセス制御方法として、getterおよびsetterメソッドを使用する方法やアクセサプロパティの利用方法についても学びました。

また、プライベートフィールドとクラスメソッドの連携方法を実例を交えて解説し、制限事項とその対策についても詳しく説明しました。他のプログラミング言語と比較することで、JavaScriptのプライベートフィールドの特徴を理解し、実際の使用例を通じてその効果を確認しました。

最後に、演習問題を通じて実際に手を動かしながら理解を深めることができました。プライベートフィールドを適切に活用することで、より安全でメンテナンス性の高いコードを実現することができます。この記事が、JavaScriptのプライベートフィールドの理解に役立つことを願っています。

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