日頃の業務で一括メール送信を行うと、予期せず「スパム判定」に引っかかり、ビジネスチャンスや社内連絡に悪影響が出てしまうケースがあります。ここでは、Microsoft 365環境での一斉送信によるスパムブロックの原因や解除・回避策をわかりやすく解説します。
スパム扱いされる背景と影響
Microsoft 365であっても、大量メール送信には一定の制限やルールが存在します。営業メールや採用活動メール、あるいは社内報の配信など、一度に多くの宛先へメールを送ると「スパム送信者」とみなされるリスクが高まります。この結果、一時的にアカウントがブロックされ、社内外を問わずメール送信が行えなくなってしまう恐れがあります。
Microsoft 365における送信制限の仕組み
Microsoft 365では、以下のような基準で送信数や送信速度を監視しています。
- 1日あたり送信可能なメールの上限数
- 1分あたり、または一定時間ごとの送信可能数
- 短期間に同一内容のメールを大量に送信しているか
- 不正メールの疑い(スパム、フィッシングなど)の有無
これらのルールに抵触してしまうと、自動的にアカウントが制限リスト(Restricted entities)に登録される場合があります。すると送信がブロックされ、重要な取引先や応募者などにメールが届かないという事態が発生します。
1日の送信上限と1分あたりの送信数
一例として、Microsoft 365の標準設定では1日に1万通程度の上限があるとされることが多いです。また、1分間に送信できるメール数は30通程度、1時間で約1800通といった目安があります。実際の制限値は契約プランや組織の運用方針で変わる場合がありますが、大量メール送信ではこれらの制限を意識した配信が重要です。
不要なブロック発生を防ぐポイント
たとえ制限数に達していない場合でも、以下のような行為が「スパムリスク」と判定されることがあります。
- 短時間に完全に同一の件名・本文・署名を大量送信
- 存在しないアドレス宛てへの連続送信(エラー多発)
- 受信者から「迷惑メール」に指定される報告が短期間に集中
組織やIT部門と連携し、適切に送信リストを管理したり、配信ツールを使って送信速度を制御したりすることが鍵となります。
アカウントブロックの解除手順
もし「スパム送信元」と判断されアカウントがブロックされた場合は、以下のステップで対処できます。
管理者が解除する場合(Global Admin)
- Microsoft 365 Global Admin権限を持つユーザーでMicrosoft 365管理センター、あるいはMicrosoft Defenderポータルにサインインします。
- 「制限されたユーザーの一覧 (Restricted entities)」にアクセスし、ブロック対象になっているユーザーを確認します。
- 制限対象から該当ユーザーを削除し、ブロックを解除します。
- 解除後は、再度スパム認定されないように送信ペースやメール内容を調整するよう指導・設定します。
解除手順の詳細は以下の公式ドキュメントで確認できます。
Remove a user from the Restricted entities page in the Microsoft Defender portal
自分が管理者権限を持たない場合
自分が通常のユーザー権限しか持っていない場合は、速やかに組織のIT部門やMicrosoft 365のGlobal Adminに連絡し、上記の解除作業を依頼しましょう。場合によっては、サポートチケットを開いてMicrosoftサポートに相談することも検討してください。Global Adminの権限がないと「制限されたユーザーの一覧 (Restricted entities)」にアクセスできませんので、権限を持つ担当者に状況を正確に伝えることが大切です。
大量送信のリスクを減らす実践的ポイント
ブロック解除後も、再びスパム認定されないようにするためには以下の工夫が重要です。
送信ペースを分けるテクニック
短時間に数百~数千件のメールを一気に送るのではなく、数十分から数時間の間隔を空けながら配信することでスパム判定のリスクを抑えられます。例えば、以下のようなスケジュールを組むことが考えられます。
配信回 | 予定時刻 | 送信件数 | 備考 |
---|---|---|---|
第1回 | 9:00 | 500通 | 開始直後は慎重に少なめの送信 |
第2回 | 10:30 | 500通 | 送信実績を確認しながら段階的に継続 |
第3回 | 14:00 | 1,000通 | 受信エラー件数や迷惑メール報告状況を確認 |
このように一度に1,000通以上を送ることは避け、複数回に分けて合計で数千通を送信する方法を取れば、スパム判定の回避に役立ちます。
例: Excel VBA を使った段階送信のコード例
もしExcelを使ってメールマージのように一括送信している場合、下記のように送信を数十件単位で区切り、一定時間待機してから次のバッチを送る、というスクリプトを組むと便利です。
Sub SendBulkEmailsInBatches()
Dim OutApp As Object
Dim OutMail As Object
Dim i As Long
Dim lastRow As Long
Dim batchSize As Long
Dim waitTime As Date
' Outlookアプリケーションを起動
Set OutApp = CreateObject("Outlook.Application")
batchSize = 50 ' 一回の送信件数を設定
waitTime = TimeSerial(0, 1, 0) ' 次のバッチまで待機する時間(1分)
' 送信するアドレスリストの最終行を取得
lastRow = Cells(Rows.Count, 1).End(xlUp).Row
For i = 2 To lastRow
' ここでメールアドレスや本文を取得する例
Dim mailAddress As String
mailAddress = Cells(i, 1).Value
Set OutMail = OutApp.CreateItem(0)
With OutMail
.To = mailAddress
.Subject = "テスト送信"
.Body = "このメールはバッチ送信テストです。"
.Send
End With
' batchSizeごとに一定時間待機
If (i Mod batchSize) = 0 Then
Application.Wait (Now + waitTime)
End If
Next i
MsgBox "すべての送信が完了しました。", vbInformation
Set OutMail = Nothing
Set OutApp = Nothing
End Sub
上記のように送信を細かいバッチに分け、間に少し待ち時間を挟むことで「短時間に大量送信した」と判定されるリスクを下げられます。
SPF, DKIM, DMARC の設定確認
組織のドメインで適切にSPF、DKIM、DMARCなどの送信元認証が設定されていないと、「なりすまし」や「フィッシングメール」の疑いを持たれやすくなります。以下は一般的な設定手順の概要です。
- SPF: DNSのTXTレコードに「v=spf1 include:spf.protection.outlook.com -all」のようなポリシーを追加。
- DKIM: Microsoft 365管理センターでDKIMキーを有効化し、DNSにCNAMEレコードを登録。
- DMARC: DNSのTXTレコードで「v=DMARC1;p=none;rua=…」などのポリシーを作成。
これらを適切に導入することで、受信側メールサーバーが「正当な送信元ドメインから来ている」と判断し、スパム認定を回避しやすくなります。
トラブル再発防止の取り組みと注意点
一度ブロックが解除されても、再びスパム扱いされるとビジネスへ大きな悪影響を及ぼします。以下の対策を継続的に行いましょう。
- メールアドレスリストのメンテナンス: 存在しないアドレスやエラーが頻発するアドレスは迅速にリストから除外する。
- 配信を受け取りたい人へのみ送る: 求人応募者リストや顧客リストを定期的に更新し、不要な宛先へのメールを削減。
- オプトアウトの周知: メール本文に「配信停止」や「購読解除」の案内を明記し、受信者が不要なメールをすぐに停止できるようにする。
- 社内ルールの共有: 営業担当や採用担当、広報部門など、複数部門が一斉送信を行う場合、それぞれが勝手なタイミングで大量送信をしないよう共有ルールを整備する。
- Microsoft 365 の監視ツールの活用: 送信レポートやメッセージトレースを活用し、異常が起きていないか随時チェックする。
法的リスクへの見解と対応策
一括送信がブロックされたことにより、応募者のメール返信が遅れてクレームが発生する、商談メールが先方に届かず機会損失につながる、などのケースでは損害賠償を主張されるリスクもゼロではありません。しかし、実際に法的責任の追及や賠償請求へ発展するかは状況次第です。
- 苦情が出た場合の初動: 相手側に事実関係を丁寧に説明し、速やかに連絡を再送するなど誠実な対応を行う。
- 損害の拡大防止: ブロック解除の手続きを最優先し、電話やチャットツールなど、代替手段を用いてコミュニケーションを確保する。
- 内部記録の保持: いつブロックが発生し、どのように対応したかを社内ログとして残しておくことで、万一のトラブル時に役立つ。
また、メール配信ソリューションを利用する場合、契約内容によっては配信障害に対して補償がある場合もあるため、利用サービスの規約をチェックしておくと良いでしょう。
まとめ
Microsoft 365で大量メールを送信する際にスパム扱いされる問題を防ぐには、まずは組織のGlobal AdminやIT担当者と連携し、アカウントのブロック解除手続きを確実に行う必要があります。その後、送信ペースのコントロールやメール認証(SPF、DKIM、DMARC)の導入、送信リストの管理など、再発防止策をしっかり実施しましょう。特に短時間で同一内容を大量に送る行為はスパムとみなされがちなので、段階的な送信やパーソナライズによる回避策が効果的です。さらに、配信先のリストクレンジングやオプトアウト機能の整備など、受信者側にとっても配慮の行き届いたメール配信を心がければ、結果的にビジネス価値の向上にもつながります。
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