皆さんは普段、プレゼンテーション資料をどのように作成しているでしょうか。最近はMicrosoft 365(旧Office 365)のWeb版を使って、どこからでも共同編集しながらスムーズにドキュメントを仕上げる方も多いかもしれません。一方、画像形式の扱いは意外と盲点で、特にWebP形式については「なかなか使えない」という声が挙がっています。そこで本記事では、Linux環境でも利用可能なWeb版PowerPointなどMicrosoft 365のWebPサポート状況や、回避策、今後の展望について詳しく解説していきます。
WebPとは?そのメリットと注目される理由
WebPはGoogleが開発した画像形式で、JPEGやPNGと比べて高い圧縮率と可逆圧縮に対応している点が特徴です。特にEコマースなど大量の画像を扱うシーンでは、ファイルサイズを抑えつつ画質を保てるため、ページ表示速度の改善やサーバー負荷軽減にも寄与します。最近ではWordPressを始め、多くのプラットフォームがネイティブにWebPをサポートするようになり、WebPが世界的に標準的な画像形式の一つとして存在感を高めています。
WebPはなぜ省スペースなのか?
WebPはVP8という動画圧縮技術をベースにしており、JPEGのDCT変換とは異なる形で画素情報を圧縮します。これにより、同じ画質レベルでもJPEGよりファイルサイズを軽減できるケースが多いのです。またPNGと同じ可逆圧縮もできるため、透過が必要な素材においても威力を発揮します。
JPEGやPNGよりも高速化に貢献
Webサイトの表示を高速化する上で、画像の軽量化は最も重要といっても過言ではありません。たとえばECサイトに多数の商品画像を掲載すると、どうしてもページ読み込みに時間がかかります。そこでWebPを導入すれば、JPEGと比べて最大30%程度のデータサイズ削減が期待できると言われています。結果として、ユーザーエクスペリエンスが向上し、SEO評価も改善する可能性が高まるのです。
Microsoft 365のWebP対応状況
一方、Microsoft 365(PowerPointやWord、Excelなど)でWebPを活用したい場面も増えています。特にLinux環境ユーザーの中には、Web版(ブラウザ版)のOffice製品しか使えない方も多く、「WebPをそのまま使えると便利なのに」という声が後を絶ちません。ここでは、現時点でのMicrosoft 365の対応状況を詳しく見ていきましょう。
デスクトップ版Office(Windows/macOS)の一部では対応済み
実は、Microsoft 365のサブスクリプション版を最新のビルドにアップデートしている場合や、Office 2021を導入している場合には、PowerPointやWordでWebPが挿入できるケースが確認されています。海外のコミュニティサイトでも、John KorchokやSteve RindsbergなどOfficeのエキスパートが「最新バージョンであればWebPを直接挿入できる」と明言しています。
しかしながら、企業や組織での利用環境ではアップデートポリシーが厳しく、常に最新ビルドに追随できないこともあるでしょう。その結果、WebPを挿入しようとした際にエラーが出るケースが依然として存在します。また、Office 2019以前のバージョンでは、原則WebPの挿入に対応していません。
デスクトップ版OfficeにおけるWebP対応表
以下のような表で対応状況をまとめてみました。社内環境などでOfficeのバージョンがどれかを確認し、WebPの使用可否を判断する目安になるでしょう。
バージョン | プラットフォーム | WebPサポート |
---|---|---|
Office 2021 | Windows/macOS | 対応 |
Microsoft 365 (最新ビルド) | Windows/macOS | 対応 |
Office 2019以前 | Windows/macOS | 非対応 |
Web版 (PowerPoint, Word等) | ブラウザ(Linux含む) | 非対応 |
あくまで一般的に報告されている内容であり、企業独自のセキュリティ設定やアップデートポリシーにより一部挙動が異なる場合があります。
Web版PowerPoint(ブラウザ版)は非対応が続く
Linux環境でMicrosoft 365を使うユーザーは、原則としてWebブラウザ経由のOffice(いわゆるWeb版)に頼らざるを得ない状況です。ところが現時点では、Web版のPowerPointでWebP画像を挿入しようとするとエラーメッセージが表示され、サポートされていないと明確にアナウンスされてしまいます。
Microsoft公式フォーラムでも、Mia Zhao MSFTから「現行のMicrosoft 365(Web版を含む)はWebPには対応しておらず、対応を望む場合はフィードバックサイトに要望を投稿してほしい」という見解が示されています。つまり、現段階ではWeb版におけるWebPサポートの予定は公表されていません。
LinuxユーザーがWebPを扱うための回避策
では、Linux環境下でWebP画像を活用したい場合、どのような選択肢があるのでしょうか。現実的な回避策をいくつかご紹介します。
WINEなどを利用してデスクトップ版Officeを動かす
Linuxユーザーの一部はWINE(Windows互換レイヤー)やPlayOnLinuxなどのツールを用いて、Windows向けのアプリをLinux上で動かす方法を実践しています。ただし、Microsoft 365のデスクトップ版がWINE環境できちんと動作するかは、バージョンやライブラリの互換性によって大きく左右されます。安定動作が保証されるわけではなく、サポートも受けられないため、自己責任での導入が原則となります。
WebPをJPEG/PNGへ変換して挿入する
もっとも手っ取り早い回避策は、WebPをJPEGやPNGに変換した上でWeb版PowerPointに挿入する方法です。ただ、これではWebPによる高圧縮メリットが失われるケースもあり、一時的な対処療法に過ぎません。LinuxではImageMagickやlibwebpを利用して画像変換が可能です。たとえばターミナルで以下のようなコマンドを使うことで、WebPをPNGやJPEGに変換できます。
# WebP → PNGへの変換例
dwebp input_image.webp -o output_image.png
# WebP → JPEGへの変換例
dwebp input_image.webp -o output_image.jpg
変換コマンド自体はシンプルですが、元ファイルが膨大にある場合は手間がかかります。また、画質とファイルサイズを最適化するためのパラメータ調整も必要になるでしょう。
サードパーティのプレゼンツールを利用する
どうしてもWeb版PowerPointにこだわる必要がないなら、LibreOffice Impressなどオープンソースのプレゼンテーションツールを試すのも一案です。ImpressであればLinuxネイティブアプリとして動作し、WebPをサポートしている場合もあります。プレゼン資料を最終的にPDFやスライドショー形式にエクスポートすれば、相手先にも互換性を確保できます。
Microsoftへのフィードバックが鍵
現状として、Web版PowerPointでWebPに対応していないのはMicrosoftの仕様によるものです。将来的にWeb版にもネイティブ対応が実装されるかどうかは、ユーザーからの要望の多さや製品戦略次第とも言えます。ここでは、フィードバックを送る方法を整理してみましょう。
Microsoft Feedback Portalや製品内フィードバック機能
Microsoftは近年、従来のUserVoiceに代わる形でFeedback Portalを整備しており、利用者が直接要望を送ることができます。また、PowerPointなどのデスクトップアプリには「フィードバック送信」機能が備わっており、簡単なUIで製品チームにリクエストを伝えられます。英語での投稿が望ましいですが、日本語でも投稿が行える場合がありますので、遠慮なく要望を共有することが大切です。
フィードバック送信時の注意点
- 「なぜWebPが必要なのか」を明確に書く(例:ファイルサイズ軽減、ECサイトの運営など具体的な利用シーン)
- どの製品(デスクトップ版かWeb版か)に対する要望かをはっきりさせる
- 実現されるとどのようなメリットがあるのかをアピールする
企業で多数のユーザーが同じ要望を出せば、それだけ開発チームの優先度も高まる可能性があります。
今後の展望とまとめ
Microsoftは常にOffice製品のアップデートや機能追加を行っており、デスクトップ版ではすでにWebPに対応し始めているのが現状です。今後のバージョンアップで、Web版PowerPointを含むブラウザ版OfficeシリーズにもWebPサポートが広がる可能性は十分にあります。
しかし、現時点でWeb版のみを使用しているLinuxユーザーにとっては、まだ回避策が限られていることも事実です。JPEGやPNGへの変換といった手間を強いられる場合や、WINEを用いたデスクトップ版の利用など、どれも完全にスムーズとは言えません。だからこそ、フィードバックを送り続け、ユーザーコミュニティを盛り上げることでMicrosoft側がWebPサポートの重要性を再認識することが必要です。
また、マルチプラットフォームでの業務効率化を目指すうえでは、WebPのような軽量で高画質な画像形式をスムーズに扱えるかどうかが大きなポイントになります。ECサイト運営のように画像を大量に扱う現場では、一度変換してしまうとその後もJPEGやPNGベースでの管理になってしまい、ファイルサイズが膨らむ懸念が払拭できません。だからこそ、WebPネイティブ対応の有無は意外と大きな課題と言えます。
最終的にはMicrosoft側の対応を待つ形にはなりますが、要望を出すことで実装が早まることも十分にあり得るでしょう。日々の業務やプロジェクトで「WebPを扱いたいのに扱えない」という声があるのであれば、積極的にフィードバックを投げかけてみる価値は大いにあります。
さいごに:WebPサポート拡充への期待を込めて
Microsoft 365のWeb版Office、特にPowerPointでWebPがスムーズに使えるようになる日は、そう遠くないかもしれません。デスクトップ版ですでに進んでいる対応を見る限り、ブラウザ版にも同様の機能が取り込まれる可能性は十分に考えられます。多くのユーザーがMicrosoftに要望を伝えれば、その分だけ開発チームの関心は高まり、対応が実現する速度にも影響を与えるはずです。
一方で、現時点でLinuxユーザーが簡単に使える方法がないのは痛手でもあります。技術的にはWebPをサポートするライブラリが多数存在するにもかかわらず、OfficeのWeb版が追いついていないというのが正直なところです。EコマースなどビジネスでWebPが欠かせないなら、LibreOfficeなど別のプレゼンツールや、変換ツールの導入を検討しつつ、早期対応を望む声を積極的にMicrosoftに届けましょう。そうした取り組みが積み重なれば、近い将来、WebPがあたりまえの選択肢として定着していくことでしょう。
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