Viva InsightsのSuggested Tasks廃止後にできる効率的なタスク管理術

忙しい日々のなかで、メールからのタスク管理は重要性を増しています。これまではViva Insightsの「Suggested Tasks」に助けられた方も多いでしょう。しかし2024年3月末に同機能が正式廃止となり、新たな方法を模索している方も少なくありません。そんな方のために、代替策や対処法を詳しくまとめました。

Viva Insightsの「Suggested Tasks」廃止の背景

Viva Insightsは従来、OutlookやTeamsなどで受信メールから「返信が必要なメール」や「依頼中のタスク」を抜き出してリマインドしてくれる機能を提供していました。多忙なビジネスパーソンにとって見落としがちなタスクの洗い出しは非常に助かるもので、いわば「ちょっとした秘書」のように活躍していたわけです。しかしMicrosoftの公式アナウンス(Message CenterでのMC714517)によると、2024年3月末をもって「Suggested Tasks」は廃止されることが正式に決定。これにより、今後はTeamsやOutlookのプロファイルカード上での自動的なタスク提案が行われなくなります。

実際に起こる影響

タスク管理方法の変更が必須
メールベースでの作業フォローアップが困難
リマインドの仕組みを自ら構築・設定する手間が発生

タスクは緊急性や重要度などによって優先順位を付ける必要がありますが、「Suggested Tasks」がなくなると何を優先すべきかを自分でリスト化したり、フラグ設定したりする必要が出てきます。特に、大量のメールを日々やり取りする営業職やマネージャー層にとって、この機能の喪失は痛手と言えるでしょう。

Digestメールの一時停止との関係

「Suggested Tasks」の廃止と同時期に、Digestメール(Viva Insightsが週や日単位で送付していたまとめメール)の配信が一時停止されることも公表されています。ただし、このDigestメールの停止自体は「Suggested Tasks」の廃止とは別の施策という位置づけです。Digestメールの内容に相当する分析情報は、Viva Insightsアプリ(Teams版・ウェブ版)で継続して確認可能なため、メール配信が止まったとしてもViva Insightsアプリを利用すれば、ある程度の情報は引き続き得られます。

Suggested Tasks廃止後のMicrosoftの代替提案

廃止に伴い、Microsoftが代替提案として示しているのがCopilot(Microsoft 365 Copilot)やMicrosoft 365 Chatです。これらはAIを活用した高度な分析と支援を行う新しいプラットフォームですが、ライセンス費用や契約形態(1年契約など)がネックになり、実際に導入できる企業は一部に限られるのが現状です。

Copilot(Microsoft 365 Chat)の特徴

機能概要メリットデメリット
自然言語解析メールやチャットの文面をAIが解析高度な集計や要約が得意学習データに依存
アシスタント機能各アプリの操作を支援文書やプレゼン資料を効率的に作成ライセンスコストが高い
タスク提案会話や文面からタスクを抽出自由度の高いサジェスト設定次第で最適化が必要

Copilotは、Teams会議やメール履歴を分析し、必要に応じてドキュメントを生成したり、要約したりする機能が特長です。「Suggested Tasks」ほどシンプルにタスクを拾い上げてくれるわけではありませんが、独自の会話インターフェースを通じて「このプロジェクトで残タスクは何がある?」と尋ねると自動的に抽出してくれます。ただし導入コストが高いため、規模の小さな組織にとってはハードルが高いのが実情です。

Copilotを導入する場合の注意点

利用には追加のライセンスが必要
クラウド導入が前提(オンプレ中心の場合は要検討)
データのセキュリティポリシーを事前に確認
AIが提示する情報の正確性を検証する仕組みづくり

特にマイクロソフト製品以外のツールとの連携を含めて活用する場合、さらに追加のセットアップが発生するケースがあります。現段階でのCopilotは「すぐに使える」状態ではなく、導入時の検証が必須と考えておきましょう。

外部ツールや他のMicrosoft 365製品を活用する方法

「Suggested Tasks」のような自動タスク提案機能を求める場合、Copilot以外の外部サービスや既存のMicrosoft 365製品を駆使する方法もあります。具体的には、PlannerやTo Doとの連携、あるいはサードパーティー製のAIタスク管理ツール(例:“Actor DO”など)を導入している企業も存在します。

PlannerやTo Doによるタスク管理

サービス名特徴適した使い方
Microsoft Plannerチームメンバーとタスクを共有・進捗管理しやすいプロジェクト全体のタスク管理をボード形式で可視化
Microsoft To Do個人のタスクをシンプルに管理、Outlookとも連携可能日々のToDoリストやちょっとしたメモ的タスク管理

Plannerはプロジェクト単位でタスクを可視化して管理できるため、チーム全員が何をいつまでにやるべきかを一覧で把握できます。一方、個人レベルでの細かなタスク管理が必要なら、To Doが使いやすいでしょう。Outlookでフラグ付けしたメールは自動的にTo Doに反映させる仕組みを導入すれば、ある程度「Suggested Tasks」が担っていた役割を代替できます。

# 例: PowerShellを使ってOutlookメールにフラグを設定したらTo Doと連動させるイメージ
# 実際に動かすには環境に合わせた設定が必要です

# OutlookのCOMオブジェクトを取得
$outlook = New-Object -ComObject Outlook.Application
$namespace = $outlook.GetNameSpace("MAPI")
$inbox = $namespace.GetDefaultFolder(6) # 6は受信トレイ

# 受信トレイのメールを走査し、未フラグかつ重要度が高いものにフラグをつける例
foreach($mail in $inbox.Items) {
    if($mail.FlagStatus -eq 0 -and $mail.Importance -eq 2) {
        $mail.FlagStatus = 2 # 2はフラグを開始に設定
        $mail.Save()
    }
}

# このフラグを設定したメールは、Microsoft To Doに同期される設定をあらかじめ行っておけば、
# 自動的にタスクリストに追加される形で管理できるようになる

上記のようにOutlookのメールをプログラム的に制御し、フラグを立てる運用を整えれば、To DoやPlannerと合わせて運用する形が考えられます。もともとの「Suggested Tasks」が行っていたような「自動検知+リマインド」を完全に再現できるわけではありませんが、工夫次第で近い体験を作り出すことができるでしょう。

Digestメール停止の影響とその対処策

DigestメールはViva Insightsがユーザーに対して、週単位や日単位で「先週の作業状況はこうだった」「ミーティングが多かった」「残タスクが多かった」という分析をレポートするサービスです。先述の通り、2024年3月末からこのDigestメールの配信が一時停止される予定です。
しかし、Teams版またはウェブ版のViva Insightsアプリにアクセスすれば同等の情報を確認できます。メールで受け取れないだけで、機能自体が削除されるわけではありません。

Viva Insightsアプリの活用ポイント

Teamsの左サイドメニューから「Viva Insights」アイコンを開く
「Wellbeing」「Productivity」などの項目をチェック
Digestメールの代替として自分の勤務時間やタスク負荷を定期的に見直す
コミュニケーション分析のレポートで、返信遅延や会議回数を把握

こうした使い方により、Digestメールの停止によって従来届いていたデータが見られなくなる問題はある程度回避できます。ただし自らアプリを開く必要があるため、従来のように「メールを開けば自然に目にする」というメリットは失われます。

「Suggested Tasks」が表示されない・Viva Insightsが見つからない場合の設定確認

一部の組織では、Viva Insights自体が利用不可になっているケースもあります。特にテナント管理者がViva Insightsのパーソナル分析機能を無効化していると、ユーザーのTeamsアプリ一覧にViva Insightsが表示されません。
もしアプリが見当たらない場合は、以下をチェックしてみましょう。

テナント管理者への確認事項

  1. Microsoft 365管理センターでViva Insightsのライセンス設定が有効になっているか
  2. Teamsアプリの権限ポリシーでViva Insightsがブロックされていないか
  3. Viva Insightsのプライバシー設定(個人情報の表示制限など)がどうなっているか

Viva Insightsが社内方針で無効化されている場合、そもそも機能自体が提供されません。その場合は別のツールやサービスに頼ることになるため、管理者との連携が不可欠です。

サードパーティー製AIツールの検討

Microsoft公式の代替案であるCopilotの費用対効果に疑問を感じる場合、サードパーティーのAIタスク管理ツールに目を向ける選択肢もあります。最近は「メール本文から自動でToDoリストを生成する」「SlackやTeamsのチャットログを解析して期限付きタスクを作成する」など、クラウド連携が容易なAIツールが多数登場しています。

サードパーティー製ツールのメリット

  • 導入コストが比較的低い場合が多い
  • 特定の業務フローに特化したカスタマイズが容易
  • 機能アップデートが頻繁に行われることもある

デメリット・注意点

  • Microsoft 365との連携部分で設定が複雑になる可能性
  • データセキュリティやプライバシー保護について要確認
  • 日本語対応が弱いツールも存在

導入前にトライアルやPoC(概念実証)を行い、本当に自社が求める機能が得られるのか、サポート体制は十分か、セキュリティ要件を満たしているかを念入りにチェックすることが大切です。

実務に即したタスク管理の工夫とコツ

「Suggested Tasks」が廃止される以上、今後は自分たちでタスク管理のプロセスを最適化する必要があります。ここでは、実際の業務フローを想定したいくつかのコツを紹介します。

1. メールの整理とフォルダ分類のルール化

Outlookの受信トレイに「重要度高」「対応急務」「後回し可」などのフォルダやタグを設定して、メール受信時に自動振り分けする方法です。
組織内でルールを明文化し、アシスタントがいなくても自然と優先度の高いメールが目に留まる状態を作ることができます。

2. タスクの粒度を小さく区切る

大きな案件やプロジェクトに関するタスクは、なるべく細分化して管理するのがポイントです。「返信」や「ドキュメント作成」「承認依頼」など、具体的な行動レベルのタスクに落とし込むことで、漏れを防ぎやすくなります。

例:タスクの粒度を決めるフレームワーク

  1. タスク名:できるだけ動詞で始める(例:「顧客Aへの見積書を送付」)
  2. 期限:できれば具体的な日付と時刻(例:〇月〇日15時まで)
  3. 関連ファイルや場所:共有フォルダのURLやOneDriveリンク、ドキュメント名など
  4. 状況:未着手・進行中・完了などを明示的に管理

3. 定期的な「見直しミーティング」を設定

以前は自動的に「返信漏れがありましたよ」と教えてくれた「Suggested Tasks」を補うため、チーム内で短い定例ミーティングを実施する手もあります。5分から10分程度で全員が「手付かずの案件はあるか」「フォローすべき依頼はないか」を確認するだけでも違います。単純な仕組みですが、意外と効果的です。

Microsoftが「Suggested Tasks」を再導入する可能性

現時点(2024年以降)でMicrosoftが「Suggested Tasks」を復活させる計画は公表されていません。むしろCopilotを中心とした新しいAI機能への投資が加速している状況であり、既存のViva Insights機能を拡張するプランは見受けられないのが実情です。
そのため、多くの企業や個人ユーザーにとっては「Suggested Tasks」がない前提での仕事の仕組みづくりが求められます。

将来的なAI機能の拡張に期待できるか

Copilotのような大規模言語モデルが今後さらに進化すれば、現在の「Suggested Tasks」をはるかに超える機能が標準搭載される可能性もあります。たとえば「Teams会議の議事録からアクションアイテムを自動生成し、メンバーにアサインする」など、より幅広い作業支援が見込まれます。
しかし、それらのサービスがいつ、どのライセンス形態でリリースされるかは不透明ですので、当面は代替策を自分たちで構築するか、既存のツールを組み合わせてしのぐのが現実的です。

まとめと今後のアクションプラン

「Suggested Tasks」廃止により、OutlookやTeams上で自動的にメールの返信漏れや未完了タスクをリマインドしてくれる機能が消滅します。Digestメールも一時停止となり、Viva Insightsを使いこなしていた方々には痛手でしょう。
しかし、企業としては以下のような行動を取ることで「Suggested Tasks」がなくても効率的にタスク管理を行うことが可能です。

  1. テナント管理者と協力し、Viva Insightsアプリを活用できる状態にする
  2. Outlook、To Do、Plannerを組み合わせ、フラグ付けやメール分類で簡易的な自動化を図る
  3. CopilotやサードパーティーのAIツール導入を検討し、費用対効果を吟味する
  4. チーム内のコミュニケーションの場でタスクの見落としを防ぐフローを策定

特に、メールを振り分けるだけでなく、To DoやPlannerとの連携をうまく設計すれば、旧「Suggested Tasks」に近い仕組みを再現できます。さらにステップアップとしてCopilotの導入も視野に入れるなら、少人数チームや限定プロジェクトでのパイロット運用を経て、効果測定をするのが賢明でしょう。

今できる最善策を取り入れながら将来のAI発展を待つ

Microsoftの「Suggested Tasks」機能の廃止は、タスク管理の仕組みに大きな変化をもたらしました。しかし、AI技術は日進月歩です。今後はより高機能かつスマートなAIアシスタントが、メールやチャットからタスクを自動抽出し、最適なワークフローを提案する時代が来る可能性があります。
そのときまでに、組織や個人としてどれだけタスク管理の土台を固めておくかが大切です。自動化ツールやルール作りを整備しつつ、来るべき新しいAIプラットフォームを迎え撃つ準備をしておきましょう。

コメント

コメントする