Wordで同じ書類をPDFに変換するだけなのに、「Print to PDF」を使うか「Save as PDF」を使うかで仕上がりのサイズが大きく変わると、不思議に感じたことはありませんか。実はこの2つには意外と知られていない仕組みの違いがあり、使い分けや設定を工夫するだけで驚くほどファイルサイズが変わることがあります。私もはじめは「どちらを使っても同じだろう」と考えていましたが、いざ両方を試してみるとファイル容量に大きな差が出て驚きました。ここでは「Print to PDF」と「Save as PDF」の特徴や具体的な使い分け、さらにサイズを抑えるテクニックを詳しくお伝えします。
「Print to PDF」と「Save as PDF」の基本的な違い
ここでは、まずWord上で同じ文書からPDFを作成するときに、「Print to PDF」を使う場合と「Save as PDF」を使う場合で、どうしてファイル容量に差が生まれるのかを解説します。
「Print to PDF」とは
「Print to PDF」は、Windowsの仮想プリンター機能を利用してPDFを出力する方法です。Microsoft Print to PDFを例に取ると、WordやExcel、PowerPointなど、印刷メニューからプリンターを選ぶ画面で「Microsoft Print to PDF」を選択し、PDFとして出力する形になります。名称こそ「PDFへの印刷」ですが、実際には内部で「印刷用データ」をPDFに変換しているのです。
「Print to PDF」の仕組み
「Print to PDF」では、画面表示のデータが一旦プリンター向けの印刷情報に変換され、その後仮想プリンターがPDF形式にまとめ上げる流れになります。実機のプリンターには紙に印刷するかたちで出力されませんが、印刷処理そのものは行われています。印刷情報はフォント埋め込みや画像変換を都度行うため、場合によってはサイズが大きくなりやすいです。
「Save as PDF」とは
「Save as PDF」は、Word(Office)ソフト自身が持つPDF変換機能を使う方法です。Wordのメニューから「名前を付けて保存」→「PDF」を選ぶことで出力できます。こちらは印刷手順ではなく、Wordの内部データを直接PDFに変換しています。
「Save as PDF」の仕組み
「Save as PDF」は、Word独自の処理でレイアウトやフォント情報などを最適化しながらPDFにまとめることができます。余計な余白や不要なフォント情報を省いたり、画像の圧縮処理を細かく行ってくれるため、最終的に生成されるPDFファイルの容量がコンパクトになりやすい点が特徴です。
両者で生じるファイルサイズの差と理由
「Print to PDF」と「Save as PDF」の違いは、簡単に言うと「どの段階でPDFに変換を行うか」と「どのような最適化をかけるか」にあります。ここではさらに深掘りしていきます。
印刷用データを経由するかどうか
印刷処理のプロセスを経由する「Print to PDF」では、Wordでの表示(レイアウト)情報が一度プリンタードライバー向けのデータに変換され、その後にPDFへと再変換されます。いわば中間工程があるため、余計な情報が挟まりやすく、画像やフォントを再圧縮しない設定になっているとファイルサイズが大きくなるのです。
フォントの扱い
プリンタードライバーがフォントを正しく認識・処理しきれない場合、フォントが一部画像化されたり、不要に埋め込まれてしまうことがあります。これが結果としてPDFの容量を増加させる原因にもなります。

私自身、以前はWordで作成したポスターを「Print to PDF」でPDF化しようとしたら、文字が画像扱いになってしまい、A4サイズ1枚なのに30MB近いPDFが出来上がったことがあります。
Word内部のPDFエンジンの最適化
一方、「Save as PDF」はWordが直接PDFを生成するため、Wordのレイアウトエンジンで必要な情報だけを取り出し、不要な部分は取り除いてからPDFファイルを作ります。とくに最近のOfficeバージョンではPDF変換の精度や圧縮率が高まっており、同じ文書からでも驚くほどコンパクトなPDFを作りやすくなりました。
機能の調整やオプションの活用
Wordの「オプション」→「詳細設定」や「保存先の設定画面」では、PDF出力時の品質(標準・最小サイズなど)を選ぶことができます。この選択によってはさらに圧縮がかかり、文書や画像の品質を極力損なわない範囲でファイルサイズを抑えられる場合があります。
ファイルサイズの具体的な比較事例
ここではわかりやすいように、同じWord文書を「Print to PDF」と「Save as PDF」で変換した際の比較表を示します。なお、各PC環境や文書内容で異なるため、あくまで一例としてご覧ください。
変換方法 | ファイルサイズの目安 | 特徴 |
---|---|---|
Print to PDF | 約5MB | 印刷データを経由するため画像が高解像度 |
Save as PDF | 約1.2MB | Word内部エンジンで圧縮済み |
「Print to PDF」を使うメリットとデメリット
ここまで「ファイルサイズが大きくなる」という側面が目立ちますが、「Print to PDF」にもメリットは存在します。
メリット
対応ソフトが幅広い
「Print to PDF」はほとんどのアプリケーションで利用できます。Wordに限らず、画像ソフトやブラウザ、他の特殊なアプリからでも印刷機能さえあればPDF化できる点が便利です。
軽度なレイアウト崩れリスクの低減
場合によっては、印刷専用のページ設定がそのまま反映されるので、Wordのレイアウトとは微妙に違う仕上がりになることがある一方で、プリンタ用に最適化された形を保てるため、紙に印刷した時のイメージ通りになることもあります。
デメリット
ファイルサイズが大きくなりやすい
何度も述べてきましたが、仮想プリンターとして印刷プロセスを経由するので、画像やフォントが圧縮されにくいままPDF化されることが理由です。とくに高解像度の画像が多い文書だと、途端にサイズが膨らみます。
最適化の細かい設定が難しい
プリンタードライバーの設定画面で圧縮率を調整できる場合もありますが、標準のMicrosoft Print to PDFには細かいオプションが見当たらないため、思うようにサイズをコントロールできないことがあります。
「Save as PDF」を使うメリットとデメリット
今度は「Save as PDF」について、よい面と注意したい面を整理してみます。
メリット
小さいファイルサイズ
Word内部のエンジンで必要最低限のデータのみをPDFに書き出すため、無駄な情報が省かれ、結果的にサイズをコンパクトに抑えることができます。
簡単に使える一体型機能
Word上で作業を完結できるので、印刷ドライバーの設定などを気にしなくてもすぐにPDF出力が可能です。余分なソフトのインストールが不要で、作業工程もシンプルになります。
デメリット
特定アプリのデータには対応できない
Word以外のファイル形式(例:Illustrator、特定のCADソフトなど)をPDFにしたい場合、当然ながらWordに取り込めない形式は変換できません。その場合は「Print to PDF」を使うしかない場面も出てきます。
フォントの埋め込み設定が限定的
WordのPDF出力ではフォント埋め込みが自動的に行われることもあれば、一部のフォントでは置き換えや画像化が起きることがあります。ただし、これはWord自体の動作やフォントライセンスの制約が原因の場合が多いです。
ファイルサイズを抑えるための具体的なテクニック
両者の特徴を理解したうえで、さらにサイズを抑えたいときはどうすればよいか、具体的な方法をまとめます。
Wordの「保存オプション」で解像度を調整する
Wordの「ファイル」→「オプション」→「詳細設定」には、画像の解像度や圧縮設定に関する項目が存在します。これを適切に調整することで、サイズが大幅に縮小されることがあります。
「画像を圧縮しない」設定をオフにする
場合によっては、「画像を圧縮しない」とするチェックが入っていることがあります。これが有効だと元の高解像度画像がそのまま保存されるので、PDF出力時にも大きな容量の画像データとして引き継がれます。オフにしておくと自動的に圧縮がかかり、程よい画質で軽量化できます。



私が以前作成したパンフレットも、どうしてもサイズが下がらないので調べたら、Wordの画像圧縮が無効になっていました。設定を切り替えたらいきなりファイルが半分以下になりました。
Print to PDFでもドライバーを変更する
「Microsoft Print to PDF」以外にも、サードパーティー製のPDF作成ドライバーをインストールすると、細かな圧縮設定を手動で変更できる場合があります。FoxitやAdobe Acrobat、PDF24などのツールを使えば、圧縮率やフォント埋め込みの設定を細かく調整して印刷データを最適化できます。
PDF最適化ソフトとの併用
一度大きなサイズでPDFを作成してしまっても、後から「PDF最適化」を専門に行うソフトを使ってサイズを縮小することが可能です。Adobe Acrobatには「最適化」機能があり、不要なオブジェクトや余計なメタデータを削除してくれます。
どちらを使うべきかの判断基準
「Print to PDF」と「Save as PDF」のどちらを使うかは、主に以下のような観点で判断するとよいでしょう。
最優先がファイル容量の軽さなら「Save as PDF」
大きな容量を扱えない環境やメールに添付する場合など、サイズを少しでも抑えたいなら、「Save as PDF」が無難です。Wordのオプションで最小サイズ設定をオンにするとさらにコンパクトになります。
Wordに最適なPDF変換が期待できる
Word文書のレイアウト情報を活かしたPDF化が行われるため、余計な情報が入りにくく、見栄えと容量のバランスが取りやすいです。
Word以外の文書なら「Print to PDF」
Wordを使っていない文書や、Office製品以外のソフトで作成したファイルの場合、やはり「Print to PDF」は強力な選択肢になります。どんなアプリケーションでも印刷ができればPDF化できるのが利点です。
設定次第である程度の最適化も可能
プリンタードライバーや追加ソフトを用意すれば、ファイルサイズをある程度コントロールできます。本格的な調整にはそれなりの知識と手間がかかりますが、自分の環境に合った設定を見つけると、比較的軽量化することができます。
トラブルを回避するための心がけ
PDFのサイズ問題だけでなく、以下の点に気をつけることで、出力したPDFの品質や扱いやすさが大きく変わります。
フォントライセンスと埋め込みの確認
PDFにフォントを埋め込んでしまうと、フォントのライセンスによっては問題になるケースがあります。特に商用利用や外部配布する場合には注意が必要です。また、フォントが適切に埋め込まれないと、異なる環境で開いたときに意図しない文字に置き換わるリスクもあります。
利用頻度の高いフォントで検証
自分の環境で作ったPDFを別のPCで開いてみることで、問題が起きていないか簡単にチェックできます。とくにフリーフォントや独自にインストールしたフォントを使う場合は要注意です。
画像の事前リサイズ
原本のWordファイルに挿入している画像が非常に高解像度のままだと、PDF出力時にどうしてもサイズが大きくなりがちです。必要以上に大きい画像は事前にリサイズして、Wordに貼り付ける段階で軽くしておくと安心です。
グラフィックソフトでの軽量化
PhotoshopやGIMPなどで適度に圧縮率を上げ、解像度を下げた状態でWordに貼り付けると、最終的に生成されるPDFサイズを大幅に抑えることができます。印刷目的でなければ、72~150dpiほどで十分視認できるケースも多いです。



昔、学会発表資料を作成したとき、撮影した写真をそのまま貼り付けたら100MB超えのデータになり、提出先にアップロードできず焦った経験があります。それ以来、画像を貼る前に常に解像度を落とすようにしました。
まとめと今後の活かし方
「Print to PDF」と「Save as PDF」の使い分けに迷ったら、まずはWordなら「Save as PDF」を試すのがおすすめです。ファイルサイズが気にならなければ、どちらを使っても問題ありません。しかし、メール添付やオンライン提出などでサイズ制限に引っかかる場合は、Wordの内部機能による圧縮や、ドライバーの細かな設定、PDF最適化ツールの活用などを組み合わせてみてください。
また、Word以外のアプリケーションからPDFを出力する際には、「Print to PDF」以外にもPDF作成用の仮想プリンタやツールを導入することで、細かいオプション設定を行えるので覚えておくと役立ちます。画像解像度やフォント埋め込みの設定を適切に行いながら、用途に合わせて最適な方法を選ぶとよいでしょう。
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