Azure Machine Learning(Azure ML)を活用する際、最新のデータを反映しながらモデルを再学習させることは、予測精度の向上や継続的なモデル改善において重要なポイントとなります。しかし、データの更新や再学習を手動で行うのは手間がかかり、運用の負担となることがあります。
そこで本記事では、PowerShellを使用してAzure MLのデータセットを更新し、再学習をスケジュール実行する方法を解説します。PowerShellはAzureのリソースを管理する強力なツールであり、スクリプトを作成することで定期的なデータ更新やモデルの再学習を自動化できます。
本記事で扱う内容は以下の通りです。
- PowerShellでAzureに接続する方法
- Azure Machine Learningのワークスペースとデータストアの基本
- PowerShellを使ったデータセットの更新
- Azure MLのパイプラインを活用したデータ処理の自動化
- PowerShellによる再学習のスケジュール実行
- トラブルシューティングと実用例
これらを順を追って説明し、実際の運用で役立つスクリプトも紹介します。本記事を通じて、PowerShellを活用したAzure MLの自動化手法を習得し、データ更新と再学習のワークフローを効率化できるようになりましょう。
PowerShellでAzureに接続する方法
Azure Machine LearningをPowerShellで操作するには、Azureへの認証と接続が必要です。本節では、Azure PowerShellを使用してAzureにログインし、リソースにアクセスする方法を解説します。
Azure PowerShellのインストール
PowerShellからAzureに接続するには、Azure PowerShellモジュールが必要です。以下のコマンドを実行して、Azure PowerShellをインストールします。
Install-Module -Name Az -AllowClobber -Scope CurrentUser
インストール後、モジュールをインポートします。
Import-Module Az
すでにインストールされている場合は、最新バージョンに更新できます。
Update-Module -Name Az
Azureにログインする
Azure PowerShellを使用してAzureにログインするには、次のコマンドを実行します。
Connect-AzAccount
実行すると、ブラウザが開き、Azureのログイン画面が表示されるので、適切な資格情報を入力して認証します。正常に認証されると、ログインしたアカウント情報が表示されます。
Azureサブスクリプションの確認と設定
Azureアカウントには複数のサブスクリプションが紐づいている場合があります。現在のサブスクリプションを確認するには、以下のコマンドを実行します。
Get-AzSubscription
特定のサブスクリプションを使用する場合は、次のコマンドで選択できます。
Set-AzContext -SubscriptionId "<サブスクリプションID>"
Azure Machine Learningのワークスペースにアクセス
Azure MLのワークスペースを操作する前に、リソースグループとワークスペースの一覧を取得できます。
Get-AzResourceGroup
Get-AzMLWorkspace
特定のワークスペースに接続する場合は、次のコマンドを使用します。
$resourceGroup = "<リソースグループ名>"
$workspaceName = "<ワークスペース名>"
$workspace = Get-AzMLWorkspace -ResourceGroupName $resourceGroup -WorkspaceName $workspaceName
まとめ
PowerShellを使用してAzureに接続し、Azure MLワークスペースにアクセスする方法を解説しました。次のステップでは、Azure MLのワークスペースの詳細な操作方法について説明します。
Azure Machine Learningワークスペースの操作
Azure Machine Learning(Azure ML)のワークスペースは、モデルの学習やデータ管理、実験の実行などを統合的に管理するための環境です。本節では、PowerShellを使用してAzure MLワークスペースを操作する方法を解説します。
ワークスペースの概要
Azure MLのワークスペースは、以下のコンポーネントを管理するための基盤です。
- 実験: 機械学習モデルのトレーニングプロセス
- データストア: データの保存と管理
- コンピューティングリソース: トレーニングの実行環境
- モデルレジストリ: 学習済みモデルの管理
PowerShellを活用することで、ワークスペースの作成や管理、リソースの取得が簡単に行えます。
ワークスペースの一覧を取得
既存のワークスペースを確認するには、以下のコマンドを実行します。
Get-AzMLWorkspace
特定のリソースグループ内のワークスペースを取得する場合は、以下のように指定します。
$resourceGroup = "<リソースグループ名>"
Get-AzMLWorkspace -ResourceGroupName $resourceGroup
ワークスペースの新規作成
Azure MLのワークスペースを新規作成する場合は、以下のコマンドを使用します。
$resourceGroup = "<リソースグループ名>"
$workspaceName = "<ワークスペース名>"
$location = "eastus" # リージョンを適宜指定
New-AzMLWorkspace -ResourceGroupName $resourceGroup -Name $workspaceName -Location $location
このコマンドを実行すると、新しいワークスペースがAzureに作成されます。
ワークスペースの詳細情報を取得
特定のワークスペースの詳細情報を取得するには、以下のコマンドを実行します。
$workspace = Get-AzMLWorkspace -ResourceGroupName $resourceGroup -WorkspaceName $workspaceName
$workspace
この情報を取得することで、ワークスペースのステータスや設定内容を確認できます。
ワークスペースの削除
不要なワークスペースを削除する場合は、以下のコマンドを実行します。
Remove-AzMLWorkspace -ResourceGroupName $resourceGroup -WorkspaceName $workspaceName
削除を実行すると、ワークスペース内のすべての関連リソースも削除されるため、慎重に実行してください。
まとめ
本節では、Azure Machine Learningのワークスペースの操作方法について解説しました。PowerShellを使用することで、ワークスペースの作成、取得、削除を簡単に実行できます。次のステップでは、データストアとデータセットの管理方法について説明します。
データストアとデータセットの基本
Azure Machine Learning(Azure ML)では、データを管理するためにデータストア(Datastore)とデータセット(Dataset)の概念が用いられます。本節では、PowerShellを使用してデータストアとデータセットを管理する方法について解説します。
データストアとは?
データストアは、Azure MLのワークスペース内でデータを保存・管理するためのストレージです。データストアには以下のような種類があります。
- Azure Blob Storage(推奨)
- Azure Data Lake
- Azure SQL Database
- Azure Files
デフォルトのデータストアとしてAzure Blob Storageが自動的に作成されますが、カスタムのデータストアを追加することもできます。
データストアの一覧を取得
現在のワークスペースに紐づくデータストアを確認するには、以下のコマンドを実行します。
$resourceGroup = "<リソースグループ名>"
$workspaceName = "<ワークスペース名>"
Get-AzMLDatastore -ResourceGroupName $resourceGroup -WorkspaceName $workspaceName
新しいデータストアの登録
新しいAzure Blob Storageのデータストアを登録する場合は、以下のコマンドを実行します。
$datastoreName = "<データストア名>"
$storageAccountName = "<ストレージアカウント名>"
$containerName = "<コンテナ名>"
New-AzMLDatastore -ResourceGroupName $resourceGroup -WorkspaceName $workspaceName `
-Name $datastoreName -StorageAccountName $storageAccountName `
-ContainerName $containerName -Type "AzureBlob"
データセットとは?
データセットは、Azure MLで機械学習モデルをトレーニングする際に使用されるデータの集合です。データセットには以下の2種類があります。
- Tabular(表形式データ): CSVやSQLデータなどの構造化データ
- File(ファイルデータ): 画像やテキストファイルなどの非構造化データ
データセットの一覧を取得
ワークスペースに登録されているデータセットの一覧を取得するには、以下のコマンドを実行します。
Get-AzMLDataset -ResourceGroupName $resourceGroup -WorkspaceName $workspaceName
新しいデータセットの作成
既存のデータストアを利用して、新しいCSVデータセットを作成する場合は、以下のコマンドを使用します。
$datasetName = "<データセット名>"
$datastoreName = "<データストア名>"
$path = "data/sample.csv" # ストレージ内のパス
New-AzMLDataset -ResourceGroupName $resourceGroup -WorkspaceName $workspaceName `
-Name $datasetName -DatastoreName $datastoreName -Path $path -Type "Tabular"
データセットの詳細情報を取得
特定のデータセットの詳細を確認するには、以下のコマンドを実行します。
Get-AzMLDataset -ResourceGroupName $resourceGroup -WorkspaceName $workspaceName -Name $datasetName
データセットの削除
不要になったデータセットを削除する場合は、以下のコマンドを使用します。
Remove-AzMLDataset -ResourceGroupName $resourceGroup -WorkspaceName $workspaceName -Name $datasetName
まとめ
本節では、Azure MLのデータストアとデータセットの基本概念と、それらをPowerShellで操作する方法について解説しました。次のステップでは、PowerShellを使用してデータセットを最新のデータに更新する方法を詳しく解説します。
PowerShellでデータセットを更新する方法
Azure Machine Learning(Azure ML)でのモデル学習には、最新のデータを常に反映することが重要です。本節では、PowerShellを使用してAzure MLのデータセットを更新する方法を解説します。データストアに新しいデータをアップロードし、データセットを最新の状態に更新する手順を説明します。
データセットの更新が必要な理由
Azure MLでは、データセットが更新されないと、モデルが古いデータで学習し続けるため、予測精度が低下する可能性があります。定期的にデータを更新することで、最新のデータを反映した機械学習モデルを構築できます。
データのアップロード方法
データセットを更新する前に、まず新しいデータをAzure MLのデータストアにアップロードする必要があります。Azure Blob Storageにデータをアップロードする方法を紹介します。
ローカルファイルをAzure Blob Storageにアップロード
$resourceGroup = "<リソースグループ名>"
$workspaceName = "<ワークスペース名>"
$datastoreName = "<データストア名>"
$localFilePath = "C:\data\new_data.csv" # ローカルのデータファイル
$remotePath = "data/new_data.csv" # Azure上の保存パス
# データストアを取得
$datastore = Get-AzMLDatastore -ResourceGroupName $resourceGroup -WorkspaceName $workspaceName -Name $datastoreName
# ファイルをアップロード
$datastore | Set-AzMLDatastore -UploadFilePath $localFilePath -RemotePath $remotePath
このスクリプトを実行すると、ローカルのnew_data.csv
がAzure MLのデータストアにアップロードされます。
データセットの更新
データストアに新しいデータをアップロードした後、Azure MLのデータセットを更新する必要があります。以下のコマンドを実行すると、データセットを最新のデータで更新できます。
$datasetName = "<データセット名>"
$datastoreName = "<データストア名>"
$remotePath = "data/new_data.csv"
# データセットを更新
Update-AzMLDataset -ResourceGroupName $resourceGroup -WorkspaceName $workspaceName `
-Name $datasetName -DatastoreName $datastoreName -Path $remotePath -Type "Tabular"
データセットのバージョン管理
Azure MLでは、データセットのバージョン管理が可能です。新しいデータでデータセットを更新すると、新しいバージョンが作成されます。現在のバージョンを確認するには、以下のコマンドを使用します。
Get-AzMLDataset -ResourceGroupName $resourceGroup -WorkspaceName $workspaceName -Name $datasetName | Select-Object Version
また、特定のバージョンを取得する場合は、以下のように指定できます。
Get-AzMLDataset -ResourceGroupName $resourceGroup -WorkspaceName $workspaceName -Name $datasetName -Version <バージョン番号>
データセットの更新を自動化
データセットの更新を定期的に実行する場合、PowerShellスクリプトをAzure AutomationやWindowsタスクスケジューラと組み合わせることで、自動化が可能です。例えば、以下のスクリプトをスケジュール実行することで、データのアップロードとデータセットの更新を定期的に行うことができます。
$resourceGroup = "<リソースグループ名>"
$workspaceName = "<ワークスペース名>"
$datastoreName = "<データストア名>"
$datasetName = "<データセット名>"
$localFilePath = "C:\data\updated_data.csv"
$remotePath = "data/updated_data.csv"
# Azureへの接続
Connect-AzAccount
Set-AzContext -SubscriptionId "<サブスクリプションID>"
# データをアップロード
$datastore = Get-AzMLDatastore -ResourceGroupName $resourceGroup -WorkspaceName $workspaceName -Name $datastoreName
$datastore | Set-AzMLDatastore -UploadFilePath $localFilePath -RemotePath $remotePath
# データセットの更新
Update-AzMLDataset -ResourceGroupName $resourceGroup -WorkspaceName $workspaceName -Name $datasetName -DatastoreName $datastoreName -Path $remotePath -Type "Tabular"
このスクリプトをタスクスケジューラやAzure AutomationのRunbookに登録することで、定期的にデータセットを更新できます。
まとめ
PowerShellを使用してAzure MLのデータセットを更新する方法を解説しました。
- データをAzure MLのデータストアにアップロード
- データセットを最新のデータに更新
- バージョン管理の活用
- スケジュール実行による自動化
次のステップでは、Azure Machine Learningのパイプラインを活用したデータ処理の自動化について解説します。
Azure Machine Learningのパイプラインを活用する
Azure Machine Learning(Azure ML)のパイプライン(Pipeline)を活用することで、データの前処理、モデルのトレーニング、評価、デプロイといった一連の機械学習ワークフローを自動化できます。本節では、PowerShellを使用してAzure MLのパイプラインを作成・実行する方法を解説します。
パイプラインの基本概念
Azure MLのパイプラインは、以下の処理を自動化するためのワークフローです。
- データの前処理(クリーニング、特徴エンジニアリング)
- モデルのトレーニング(学習プロセスの管理)
- モデルの評価(精度の計算、メトリクスの記録)
- モデルのデプロイ(推論APIの作成)
PowerShellを使用して、パイプラインを作成し、データセットの更新後に自動的に再学習を実行することが可能です。
Azure Machine Learningパイプラインの作成
パイプラインを作成するには、Azure MLの実験(Experiment)を定義し、複数の処理ステップを組み合わせます。
パイプラインの構成
- データの取得(最新のデータセットを使用)
- 前処理スクリプトを実行
- モデルのトレーニング
- 評価とメトリクスの保存
PowerShellでパイプラインを作成する
Azure MLのパイプラインは、PowerShellから直接作成することはできませんが、Pythonスクリプトを呼び出すことでパイプラインを登録・実行できます。
Pythonスクリプトの準備
まず、Azure ML SDKを使用してパイプラインを作成するPythonスクリプトを準備します。
from azureml.core import Workspace, Experiment
from azureml.pipeline.core import Pipeline
from azureml.pipeline.steps import PythonScriptStep
from azureml.core.compute import AmlCompute
ws = Workspace.from_config()
compute_target = AmlCompute(ws, "cpu-cluster")
step1 = PythonScriptStep(
script_name="data_preprocessing.py",
arguments=["--input-data", "input_dataset"],
compute_target=compute_target,
source_directory="scripts"
)
step2 = PythonScriptStep(
script_name="train_model.py",
arguments=["--train-data", "processed_dataset"],
compute_target=compute_target,
source_directory="scripts"
)
pipeline = Pipeline(workspace=ws, steps=[step1, step2])
pipeline.submit(Experiment(ws, "training_pipeline"))
PowerShellでPythonスクリプトを実行
PowerShellスクリプトを使用して、このPythonスクリプトを実行し、パイプラインを作成・実行します。
$pythonScriptPath = "C:\Users\YourUser\scripts\create_pipeline.py"
python $pythonScriptPath
このスクリプトを実行すると、Azure MLのパイプラインが作成・実行され、データの前処理→モデルの学習が自動で実行されます。
パイプラインのスケジュール実行
パイプラインを定期的に実行するには、Azure MLのスケジュール機能を使用します。PowerShellを使ってスケジュールを設定するには、以下の手順を実行します。
スケジュールの作成
$pipelineName = "training_pipeline"
$resourceGroup = "<リソースグループ名>"
$workspaceName = "<ワークスペース名>"
$experimentName = "Scheduled_Training"
New-AzMLPipelineSchedule -ResourceGroupName $resourceGroup -WorkspaceName $workspaceName `
-Name $pipelineName -ExperimentName $experimentName -Frequency Day -Interval 1
このコマンドを実行すると、パイプラインが毎日1回実行されるようにスケジュールされます。
パイプラインの実行状況を確認
スケジュール実行中のパイプラインのステータスを確認するには、以下のコマンドを使用します。
Get-AzMLPipelineRun -ResourceGroupName $resourceGroup -WorkspaceName $workspaceName -PipelineName $pipelineName
また、パイプラインの履歴を確認するには、次のコマンドを使用します。
Get-AzMLExperiment -ResourceGroupName $resourceGroup -WorkspaceName $workspaceName -Name $experimentName
まとめ
PowerShellを利用して、Azure Machine Learningのパイプラインを活用し、自動化する方法を解説しました。
- パイプラインを使うことで、データの前処理からモデル学習までを自動化できる
- PythonスクリプトをPowerShellから実行することで、パイプラインの作成・管理が可能
- PowerShellを使ってパイプラインのスケジュールを設定し、定期的な実行を自動化
次のステップでは、PowerShellを用いた再学習のスケジュール実行について詳しく解説します。
PowerShellで再学習をスケジュール実行する方法
Azure Machine Learning(Azure ML)でモデルの精度を維持するためには、定期的な再学習(リトレーニング)が必要です。本節では、PowerShellを活用してAzure MLの再学習プロセスをスケジュール実行する方法を解説します。
再学習のスケジュール実行の必要性
機械学習モデルのパフォーマンスは、データの変化によって時間とともに劣化する可能性があります。定期的に再学習を実行することで、最新のデータを反映し、モデルの精度を維持できます。
再学習のスケジュール方法
Azure MLでは、以下の方法で再学習をスケジュールできます。
- Azure MLパイプラインを定期実行(推奨)
- Azure AutomationのRunbookを利用
- Windowsタスクスケジューラを利用(ローカル環境向け)
ここでは、PowerShellを使ってAzure MLのパイプラインを定期実行する方法を詳しく解説します。
パイプラインの実行をスケジュールする
Azure MLパイプラインをPowerShellでスケジュール登録し、定期的に実行する手順を紹介します。
1. パイプラインの手動実行
まず、PowerShellを使って再学習用のAzure MLパイプラインを手動で実行します。
$resourceGroup = "<リソースグループ名>"
$workspaceName = "<ワークスペース名>"
$pipelineName = "<パイプライン名>"
$experimentName = "Retraining_Experiment"
# パイプラインの実行
Start-AzMLPipeline -ResourceGroupName $resourceGroup -WorkspaceName $workspaceName `
-PipelineName $pipelineName -ExperimentName $experimentName
このコマンドを実行すると、Azure MLのパイプラインがトリガーされ、再学習プロセスが開始されます。
2. パイプラインをスケジュール実行
再学習を定期的に実行するために、Azure MLのスケジューリング機能を利用します。例えば、毎日午前3時に再学習を実行する場合、次のPowerShellコマンドを使用します。
$recurrence = New-AzMLScheduleRecurrence -Frequency "Day" -Interval 1 -TimeOfDay "03:00"
New-AzMLPipelineSchedule -ResourceGroupName $resourceGroup -WorkspaceName $workspaceName `
-Name "DailyRetrainingSchedule" -PipelineName $pipelineName -Recurrence $recurrence
このコマンドを実行すると、毎日午前3時に再学習が自動的に実行されるようになります。
3. スケジュールの確認
登録されたスケジュールを確認するには、以下のコマンドを実行します。
Get-AzMLPipelineSchedule -ResourceGroupName $resourceGroup -WorkspaceName $workspaceName
4. スケジュールの削除
不要になったスケジュールを削除する場合は、次のコマンドを使用します。
Remove-AzMLPipelineSchedule -ResourceGroupName $resourceGroup -WorkspaceName $workspaceName -Name "DailyRetrainingSchedule"
Azure Automationを活用したスケジュール実行
Azure MLのスケジュール機能のほか、Azure Automationを利用してPowerShellスクリプトをスケジュール実行することも可能です。以下の手順でAzure Automationを設定できます。
1. Azure Automationアカウントを作成
Azure Automationを使うには、Automationアカウントを作成する必要があります。
New-AzAutomationAccount -ResourceGroupName $resourceGroup -Name "MLAutomation" -Location "East US"
2. Runbookの作成とスクリプト登録
Azure AutomationのRunbookを作成し、以下のスクリプトを登録します。
workflow Start-MLRetraining {
param (
[string]$resourceGroup,
[string]$workspaceName,
[string]$pipelineName
)
Start-AzMLPipeline -ResourceGroupName $resourceGroup -WorkspaceName $workspaceName -PipelineName $pipelineName
}
3. Runbookをスケジュール設定
スケジュールを作成し、Runbookを紐づけることで、定期的に実行できます。
$automationAccount = "MLAutomation"
$runbookName = "Start-MLRetraining"
$scheduleName = "DailyRetraining"
New-AzAutomationSchedule -ResourceGroupName $resourceGroup -AutomationAccountName $automationAccount `
-Name $scheduleName -StartTime (Get-Date).AddMinutes(5) -DayInterval 1
Register-AzAutomationScheduledRunbook -ResourceGroupName $resourceGroup -AutomationAccountName $automationAccount `
-RunbookName $runbookName -ScheduleName $scheduleName
この設定により、Azure Automationを使って再学習をスケジュール実行できます。
ローカル環境でのスケジュール実行
PowerShellスクリプトをWindowsタスクスケジューラで定期実行する方法もあります。
- PowerShellスクリプト(
retrain.ps1
)を作成
Start-AzMLPipeline -ResourceGroupName "<リソースグループ名>" -WorkspaceName "<ワークスペース名>" -PipelineName "<パイプライン名>"
- Windowsタスクスケジューラで「新しいタスク」を作成
- トリガー: 毎日3:00
- 操作:
"powershell.exe -File C:\scripts\retrain.ps1"
この方法で、ローカルPC上でPowerShellスクリプトをスケジュール実行できます。
まとめ
PowerShellを活用して、Azure MLの再学習をスケジュール実行する方法について解説しました。
- Azure MLパイプラインのスケジュール実行(推奨)
- Azure Automationを活用したスケジューリング
- Windowsタスクスケジューラを使用したローカル環境でのスケジューリング
次のステップでは、トラブルシューティングとデバッグ方法について詳しく解説します。
トラブルシューティングとデバッグ
Azure Machine Learning(Azure ML)でのデータセット更新や再学習の自動化を行う際には、さまざまなエラーや問題が発生することがあります。本節では、PowerShellを活用して発生しやすいトラブルの原因を特定し、適切に解決する方法を解説します。
よくあるエラーと解決策
PowerShellスクリプトを使用してAzure MLのパイプラインやデータセットを操作する際に遭遇しやすいエラーについて、具体的な解決策を示します。
1. Azure MLワークスペースに接続できない
エラー例:
Get-AzMLWorkspace : The resource with name 'my-workspace' was not found.
考えられる原因:
- Azure MLワークスペースの名前またはリソースグループが間違っている
- Azureにログインしていない
- サブスクリプションの設定が正しくない
解決策:
- 正しいリソースグループ名とワークスペース名を使用しているか確認
- Azureにログインしていない場合は、以下のコマンドでログイン
Connect-AzAccount
- 正しいサブスクリプションを使用しているか確認
Get-AzContext
必要に応じてサブスクリプションを変更
Set-AzContext -SubscriptionId "<サブスクリプションID>"
2. データストアにファイルをアップロードできない
エラー例:
Set-AzMLDatastore : The storage account key is invalid or missing.
考えられる原因:
- ストレージアカウントのアクセスキーが無効
- データストアが正しく設定されていない
解決策:
- ストレージアカウントのキーを取得し、設定する
$storageAccountKey = (Get-AzStorageAccountKey -ResourceGroupName "<リソースグループ名>" -Name "<ストレージアカウント名>").Value[0]
- データストアを正しく設定し、再試行
New-AzMLDatastore -ResourceGroupName "<リソースグループ名>" -WorkspaceName "<ワークスペース名>" `
-Name "<データストア名>" -StorageAccountName "<ストレージアカウント名>" `
-StorageAccountKey $storageAccountKey -ContainerName "<コンテナ名>" -Type "AzureBlob"
3. データセットの更新が反映されない
エラー例:
Update-AzMLDataset : The dataset update was not successful.
考えられる原因:
- データセットのバージョン管理が有効になっていない
- データセットの形式が正しくない
解決策:
- データセットのバージョンを確認
Get-AzMLDataset -ResourceGroupName "<リソースグループ名>" -WorkspaceName "<ワークスペース名>" -Name "<データセット名>"
- 更新が反映されていない場合、データセットを新しく作成する
New-AzMLDataset -ResourceGroupName "<リソースグループ名>" -WorkspaceName "<ワークスペース名>" `
-Name "<データセット名>" -DatastoreName "<データストア名>" -Path "<データパス>" -Type "Tabular"
4. パイプラインの実行が途中で失敗する
エラー例:
Start-AzMLPipeline : The pipeline run failed with status 'Failed'.
考えられる原因:
- データセットのパスが正しくない
- コンピュートリソース(CPU, GPU)が使用可能でない
解決策:
- 実行ログを確認し、エラーの詳細を特定
Get-AzMLPipelineRun -ResourceGroupName "<リソースグループ名>" -WorkspaceName "<ワークスペース名>" -PipelineName "<パイプライン名>"
- コンピュートリソースのステータスを確認
Get-AzMLCompute -ResourceGroupName "<リソースグループ名>" -WorkspaceName "<ワークスペース名>"
- コンピュートリソースを再起動
Restart-AzMLCompute -ResourceGroupName "<リソースグループ名>" -WorkspaceName "<ワークスペース名>" -Name "<コンピュート名>"
デバッグのためのPowerShellコマンド
Azure MLで問題が発生した際、以下のコマンドを使用してデバッグ情報を収集できます。
目的 | コマンド |
---|---|
ログイン状況を確認 | Get-AzContext |
サブスクリプション一覧を取得 | Get-AzSubscription |
ワークスペース一覧を取得 | Get-AzMLWorkspace |
データストア一覧を取得 | Get-AzMLDatastore |
データセット一覧を取得 | Get-AzMLDataset |
パイプラインの実行履歴を確認 | Get-AzMLExperiment |
エラーの詳細を取得 | Get-AzMLPipelineRun |
まとめ
本節では、Azure MLでのトラブルシューティングとデバッグ方法について解説しました。
- Azure MLワークスペースの接続エラーの対処
- データストアやデータセットのエラー解決
- パイプライン実行時のトラブル対応
- デバッグのためのPowerShellコマンド集
次のステップでは、実際の運用に適用可能なPowerShellスクリプトの実用例を紹介します。
実用例:PowerShellでAzure MLの自動化を実装
本節では、PowerShellを活用してAzure Machine Learning(Azure ML)のデータセット更新と再学習を完全に自動化する実用例を紹介します。実際の運用を想定したPowerShellスクリプトを提供し、データの取得・アップロード・パイプラインの実行・スケジュール設定までの流れを詳しく解説します。
PowerShellによるAzure MLの自動化ワークフロー
本例では、以下のワークフローをPowerShellスクリプトで実装します。
- 最新データを取得(外部データソースからデータをダウンロード)
- データストアへアップロード(Azure Blob Storageへアップロード)
- データセットを更新(最新データに反映)
- パイプラインをトリガー(再学習プロセスを開始)
- スケジュール設定(日次で自動実行)
1. 最新データを取得
まず、外部のデータソース(例:API、FTPサーバー、ローカルCSVファイル)から最新データを取得します。
例:Web APIからCSVデータを取得して保存する
$apiUrl = "https://example.com/data/latest.csv"
$localPath = "C:\data\latest_data.csv"
Invoke-WebRequest -Uri $apiUrl -OutFile $localPath
Write-Output "最新データを取得しました: $localPath"
このスクリプトは、APIから最新のCSVデータを取得し、ローカルに保存します。
2. データストアへアップロード
取得したデータをAzure MLのデータストア(Azure Blob Storage)にアップロードします。
$resourceGroup = "<リソースグループ名>"
$workspaceName = "<ワークスペース名>"
$datastoreName = "<データストア名>"
$blobPath = "datasets/latest_data.csv"
$datastore = Get-AzMLDatastore -ResourceGroupName $resourceGroup -WorkspaceName $workspaceName -Name $datastoreName
$datastore | Set-AzMLDatastore -UploadFilePath $localPath -RemotePath $blobPath
Write-Output "データストアに最新データをアップロードしました: $blobPath"
このスクリプトは、ローカルの最新データをAzure MLのデータストアにアップロードします。
3. データセットを更新
アップロードしたデータを使用して、Azure MLのデータセットを最新の状態に更新します。
$datasetName = "LatestDataset"
Update-AzMLDataset -ResourceGroupName $resourceGroup -WorkspaceName $workspaceName `
-Name $datasetName -DatastoreName $datastoreName -Path $blobPath -Type "Tabular"
Write-Output "データセットを更新しました: $datasetName"
データセットの更新を行うことで、次回の学習時に最新データが反映されます。
4. パイプラインをトリガー
データセットの更新後、Azure MLのパイプラインを実行し、再学習を開始します。
$pipelineName = "RetrainingPipeline"
$experimentName = "RetrainingExperiment"
Start-AzMLPipeline -ResourceGroupName $resourceGroup -WorkspaceName $workspaceName `
-PipelineName $pipelineName -ExperimentName $experimentName
Write-Output "再学習パイプラインを開始しました: $pipelineName"
このコマンドを実行すると、再学習プロセスが自動的に開始されます。
5. スケジュール設定(毎日午前3時に実行)
このスクリプトを毎日自動実行するために、Azure MLのスケジュール機能を利用します。
$recurrence = New-AzMLScheduleRecurrence -Frequency "Day" -Interval 1 -TimeOfDay "03:00"
New-AzMLPipelineSchedule -ResourceGroupName $resourceGroup -WorkspaceName $workspaceName `
-Name "DailyRetrainingSchedule" -PipelineName $pipelineName -Recurrence $recurrence
Write-Output "再学習スケジュールを登録しました: 毎日午前3時実行"
このコマンドにより、再学習パイプラインが毎日午前3時に自動実行されるようになります。
運用時の確認方法
PowerShellを使用して、スケジュールやパイプラインの実行状況を確認できます。
スケジュールの確認:
Get-AzMLPipelineSchedule -ResourceGroupName $resourceGroup -WorkspaceName $workspaceName
パイプラインの実行履歴を確認:
Get-AzMLPipelineRun -ResourceGroupName $resourceGroup -WorkspaceName $workspaceName -PipelineName $pipelineName
最新のデータセットバージョンを確認:
Get-AzMLDataset -ResourceGroupName $resourceGroup -WorkspaceName $workspaceName -Name $datasetName | Select-Object Version
まとめ
本節では、PowerShellを活用してAzure MLのデータ更新と再学習を完全に自動化する方法を紹介しました。
- 外部データソースから最新データを取得(API, CSV, FTPなど)
- データをAzure MLのデータストアにアップロード
- データセットを最新データで更新
- 再学習パイプラインをトリガー
- スケジュールを設定して定期的に自動実行
これにより、モデルの学習精度を維持しながら、運用負担を軽減できます。次のステップでは、本記事のまとめを紹介します。
まとめ
本記事では、PowerShellを活用してAzure Machine Learning(Azure ML)のデータセットを更新し、再学習をスケジュール実行する方法について詳しく解説しました。
本記事のポイント
- PowerShellでAzureに接続する方法(Azure PowerShellモジュールのインストールと認証)
- Azure MLワークスペースの操作(ワークスペースの作成、取得、削除)
- データストアとデータセットの基本(データの保存と管理方法)
- データセットの更新方法(最新データを反映するためのPowerShellスクリプト)
- Azure MLパイプラインの活用(前処理・学習プロセスを自動化)
- 再学習のスケジュール実行(パイプラインを定期実行する方法)
- トラブルシューティングとデバッグ(エラーの原因と対処法)
- 実用例(PowerShellスクリプトで自動化を実装)
実装のメリット
✔ データ更新・再学習を自動化 → 運用負担を軽減
✔ 定期的なスケジュール実行 → 最新データでモデルを維持
✔ Azure MLのパイプラインを活用 → 効率的なワークフロー管理
これらの技術を活用することで、機械学習モデルの運用を最適化し、精度を維持しながら継続的な学習を行うことが可能になります。PowerShellによるAzure MLの管理を活用し、業務の自動化を進めていきましょう。
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