PowerShellは、AWSの各種サービスを簡単に操作できるスクリプト言語として、多くの開発者や運用担当者に利用されています。本記事では、AWSのサーバレスアーキテクチャを構成する重要な要素であるAPI GatewayとLambdaを、PowerShellを使って構築する方法を徹底解説します。この手法を利用することで、インフラ管理やアプリケーション開発を効率化し、コードベースでの操作性を向上させることが可能です。API Gatewayでエンドポイントを作成し、Lambda関数をそのエンドポイントに紐付ける具体的な手順や、実用的なスクリプトの書き方を学びましょう。
サーバレスアーキテクチャの概要とメリット
サーバレスアーキテクチャは、サーバの管理やインフラのセットアップを不要にし、開発者がアプリケーションコードの記述に集中できるようにするクラウドコンピューティングモデルです。AWSでは、LambdaやAPI Gatewayなどのサービスを使用することで、完全なサーバレスアプローチを実現できます。
サーバレスアーキテクチャとは
サーバレスでは、サーバの運用やスケーリングをAWSが管理し、開発者は機能実現に必要なコードの開発だけを行います。リソースが使用された時のみ課金されるため、コスト効率にも優れています。
サーバレスアーキテクチャの主なメリット
- スケーラビリティ: トラフィックの増減に応じて、自動的にリソースが拡張・縮小されます。
- コスト効率: 実行されたリクエストや処理に対してのみ課金されるため、アイドル状態のコストがありません。
- 迅速な開発: インフラ管理が不要なため、アプリケーション開発に集中できます。
- 高い信頼性: AWSが管理するインフラにより、高い稼働率とセキュリティが提供されます。
API GatewayとLambdaを使用したサーバレスの特徴
- API Gateway: HTTPリクエストを受け付け、リクエストをLambda関数などのバックエンドにルーティングします。
- Lambda: コードを実行するだけでリクエストを処理し、応答を返します。サーバの管理が不要です。
これらのメリットを活用すれば、効率的かつスケーラブルなアプリケーションを容易に構築できます。次のセクションでは、PowerShellを使ってこれらのサービスを利用する準備について解説します。
PowerShellでAWS CLIを利用する準備
PowerShellを使用してAWSのリソースを操作するには、AWS CLIのセットアップと認証情報の設定が必要です。このセクションでは、環境構築の具体的な手順を説明します。
AWS CLIのインストール
- AWS CLIのダウンロード
AWS CLIの公式ページからインストーラーをダウンロードします。対応するOSのバージョンを選択してください。 ダウンロードリンク: AWS CLI ダウンロード - インストール手順
ダウンロードしたインストーラーを実行し、画面の指示に従ってインストールします。
PowerShellで以下のコマンドを使用してインストールを確認します:
aws --version
AWS Tools for PowerShellのインストール
AWS Tools for PowerShellを使用すると、PowerShellスクリプトでAWSリソースを管理できます。インストール手順は以下の通りです:
- PowerShellでのインストール
以下のコマンドを実行して、AWS Tools for PowerShellをインストールします:
Install-Module -Name AWSPowerShell -Force
- バージョン確認
正しくインストールされたかを確認するには、次のコマンドを実行してください:
Get-AWSPowerShellVersion
AWS認証情報の設定
AWS CLIまたはAWS Tools for PowerShellを使用するには、AWSアカウントの認証情報を設定する必要があります。以下は設定方法です:
- 認証情報ファイルの設定
AWS CLIで以下のコマンドを実行し、アクセスキーとシークレットキーを設定します:
aws configure
プロンプトに従い、以下の情報を入力します:
- アクセスキーID
- シークレットアクセスキー
- デフォルトのリージョン名
- 出力形式(例:
json
)
- 環境変数を使用した設定
環境変数を設定する方法もあります。以下のコマンドを使用してください:
$env:AWS_ACCESS_KEY_ID="your-access-key-id"
$env:AWS_SECRET_ACCESS_KEY="your-secret-access-key"
$env:AWS_DEFAULT_REGION="us-east-1"
テスト
AWS CLIが正しく動作するか確認するには、以下のコマンドを実行してリソース一覧を取得します:
aws s3 ls
正しい認証情報と設定が行われていれば、結果が返ってきます。
これでPowerShellを使用してAWSサービスにアクセスする準備が整いました。次に、API Gatewayの基礎概念とリソース作成について解説します。
API Gatewayの基礎概念とリソース作成の概要
AWS API Gatewayは、HTTPまたはREST APIを構築し、他のAWSサービスや外部のエンドポイントと接続するためのサービスです。このセクションでは、API Gatewayの基本概念と、PowerShellを使用したリソース作成の概要を解説します。
API Gatewayの基本概念
API Gatewayは、以下の機能を提供します:
- HTTPリクエストの処理: クライアントからのリクエストを受け取り、Lambdaや他のバックエンドサービスに送信します。
- スケーラビリティ: 大量のリクエストに対応できるよう、自動的にスケールします。
- セキュリティ: IAMポリシー、APIキー、CORS設定などにより、アクセス制御を簡単に実現できます。
- デプロイ管理: バージョン管理を行い、APIを異なるステージ(開発、ステージング、本番)で運用できます。
API Gatewayの主要コンポーネント
- API: 作成するAPIそのものです。
- リソース: API内で定義されるエンドポイント(例:
/users
)。 - メソッド: リソースに紐づくHTTPメソッド(例: GET, POST, DELETE)。
- 統合: リクエストを処理するバックエンドサービス(例: Lambda関数やHTTPエンドポイント)。
- ステージ: APIのデプロイ先(例:
dev
,prod
)。
PowerShellでAPI Gatewayリソースを作成する手順
PowerShellを利用してAPI Gatewayを構築する手順を以下に示します。
1. APIの作成
新しいAPIを作成するには、以下のコマンドを使用します:
New-AGApi -Name "MyServerlessAPI" -Description "API for serverless application" -ProtocolType "HTTP"
このコマンドは、指定した名前と説明でAPIを作成します。
2. リソースの作成
APIにリソース(エンドポイント)を追加するには、以下を実行します:
New-AGResource -RestApiId "your-api-id" -PathPart "users"
ここでは、/users
というリソースが作成されます。
3. メソッドの追加
リソースにHTTPメソッドを追加するには、以下のコマンドを使用します:
New-AGMethod -RestApiId "your-api-id" -ResourceId "your-resource-id" -HttpMethod "GET" -AuthorizationType "NONE"
これにより、GET /users
のメソッドが作成されます。
4. Lambda関数との統合
Lambda関数を統合するには、以下のコマンドを実行します:
Set-AGIntegration -RestApiId "your-api-id" -ResourceId "your-resource-id" -HttpMethod "GET" -Type "AWS_PROXY" -Uri "arn:aws:lambda:region:account-id:function:function-name"
5. ステージの作成とデプロイ
APIをデプロイするには、以下のコマンドを使用します:
Deploy-AGApi -RestApiId "your-api-id" -StageName "dev"
まとめ
API Gatewayは、柔軟で強力な機能を提供し、Lambda関数との連携に最適です。次のセクションでは、Lambda関数を作成し、API Gatewayと統合する具体的な方法を解説します。
Lambda関数の作成とAPI Gatewayの紐付け方法
AWS Lambdaは、サーバーレスアーキテクチャの中核を担うサービスであり、コードを実行するための管理不要な環境を提供します。このセクションでは、Lambda関数の作成手順と、それをAPI Gatewayに紐付ける方法を解説します。
Lambda関数の基本概念
Lambda関数は、イベント駆動型のコード実行を可能にします。
- トリガー: Lambda関数を呼び出すイベント(例: API GatewayのHTTPリクエスト)。
- ランタイム: コードを実行するための環境(例: Python, Node.js, PowerShell)。
- デプロイパッケージ: 実行するコードと依存関係をまとめたファイル。
Lambda関数の作成手順
1. Lambda関数の作成
PowerShellで新しいLambda関数を作成します。以下のコマンドを使用してください:
New-LMFunction -FunctionName "MyLambdaFunction" `
-Runtime "nodejs18.x" `
-Role "arn:aws:iam::account-id:role/service-role/lambda-basic-execution-role" `
-Handler "index.handler" `
-CodeBucket "my-s3-bucket" `
-CodeKey "lambda-code.zip"
- FunctionName: 関数名を指定。
- Runtime: ランタイム環境を指定(例: Node.js, Python)。
- Role: Lambdaが使用するIAMロールのARNを指定。
- Handler: エントリーポイントとなる関数(例:
index.handler
)。 - CodeBucketとCodeKey: S3に保存したコードパッケージを指定。
2. コードの準備
Lambda関数のコード例(Node.js):
exports.handler = async (event) => {
return {
statusCode: 200,
body: JSON.stringify({ message: "Hello from Lambda!" }),
};
};
コードをZIP形式で圧縮し、S3バケットにアップロードしてください。
API Gatewayとの紐付け
1. API Gatewayへの統合設定
API GatewayのリソースとLambda関数を紐付けるには以下のコマンドを使用します:
Set-AGIntegration -RestApiId "your-api-id" `
-ResourceId "your-resource-id" `
-HttpMethod "POST" `
-Type "AWS_PROXY" `
-Uri "arn:aws:lambda:region:account-id:function:MyLambdaFunction"
- RestApiId: 紐付けるAPI GatewayのID。
- ResourceId: 紐付けるリソースのID。
- HttpMethod: HTTPメソッド(例: GET, POST)。
- Type: 統合タイプ(
AWS_PROXY
でLambdaと統合)。 - Uri: Lambda関数のARN。
2. 必要な権限の付与
API GatewayがLambda関数を呼び出すための権限を付与します。以下のコマンドを実行してください:
Add-LMPermission -FunctionName "MyLambdaFunction" `
-Action "lambda:InvokeFunction" `
-Principal "apigateway.amazonaws.com" `
-SourceArn "arn:aws:execute-api:region:account-id:api-id/*"
テストと確認
- API Gatewayのステージをデプロイ
以下のコマンドでAPI Gatewayをデプロイします:
Deploy-AGApi -RestApiId "your-api-id" -StageName "dev"
- エンドポイントのテスト
作成したエンドポイントにHTTPリクエストを送信し、Lambda関数が正常に動作するか確認します:
Invoke-RestMethod -Uri "https://your-api-id.execute-api.region.amazonaws.com/dev/resource-path" -Method "POST"
まとめ
Lambda関数を作成し、API Gatewayと統合することで、リクエスト処理を行うサーバレスアプリケーションが完成します。次は、この構成をPowerShellスクリプトで自動化する方法について説明します。
PowerShellスクリプトによるAPI Gateway設定の自動化
手作業での設定は時間がかかるだけでなく、エラーの原因にもなります。本セクションでは、PowerShellスクリプトを使ってAPI Gatewayの設定を効率的に自動化する方法を解説します。これにより、再現性の高い環境構築が可能になります。
スクリプトの目的
PowerShellスクリプトを使用して以下のタスクを自動化します:
- APIの作成
- リソースとメソッドの追加
- Lambda関数との統合
- ステージの作成とデプロイ
自動化スクリプトの構成
以下にAPI Gateway設定を自動化するPowerShellスクリプトの例を示します。
1. 必要なパラメータの設定
まず、スクリプトの冒頭で変数を定義します:
# パラメータ設定
$ApiName = "MyServerlessAPI"
$ResourcePath = "users"
$HttpMethod = "POST"
$StageName = "dev"
$LambdaFunctionName = "MyLambdaFunction"
$Region = "us-east-1"
$AccountId = "your-account-id"
2. APIの作成
API GatewayのAPIを作成し、そのIDを取得します:
# APIの作成
$Api = New-AGApi -Name $ApiName -Description "API for serverless application" -ProtocolType "HTTP"
$ApiId = $Api.Id
Write-Output "Created API with ID: $ApiId"
3. リソースの作成
APIにリソースを追加します:
# リソースの作成
$Resource = New-AGResource -RestApiId $ApiId -PathPart $ResourcePath
$ResourceId = $Resource.Id
Write-Output "Created Resource with ID: $ResourceId"
4. メソッドの追加とLambda統合
リソースにメソッドを追加し、Lambda関数と統合します:
# メソッドの追加
New-AGMethod -RestApiId $ApiId -ResourceId $ResourceId -HttpMethod $HttpMethod -AuthorizationType "NONE"
# Lambda関数との統合
$LambdaUri = "arn:aws:lambda:$Region:$AccountId:function:$LambdaFunctionName"
Set-AGIntegration -RestApiId $ApiId -ResourceId $ResourceId -HttpMethod $HttpMethod -Type "AWS_PROXY" -Uri $LambdaUri
# LambdaにAPI Gatewayからの呼び出し権限を付与
Add-LMPermission -FunctionName $LambdaFunctionName `
-Action "lambda:InvokeFunction" `
-Principal "apigateway.amazonaws.com" `
-SourceArn "arn:aws:execute-api:$Region:$AccountId:$ApiId/*"
Write-Output "Integrated Lambda function: $LambdaFunctionName"
5. ステージの作成とデプロイ
APIをデプロイしてエンドポイントを公開します:
# デプロイ
Deploy-AGApi -RestApiId $ApiId -StageName $StageName
Write-Output "API deployed to stage: $StageName"
6. 完全スクリプト例
以下は上記を組み合わせたフルスクリプトです:
# フルスクリプト例
$ApiName = "MyServerlessAPI"
$ResourcePath = "users"
$HttpMethod = "POST"
$StageName = "dev"
$LambdaFunctionName = "MyLambdaFunction"
$Region = "us-east-1"
$AccountId = "your-account-id"
# APIの作成
$Api = New-AGApi -Name $ApiName -Description "API for serverless application" -ProtocolType "HTTP"
$ApiId = $Api.Id
# リソースの作成
$Resource = New-AGResource -RestApiId $ApiId -PathPart $ResourcePath
$ResourceId = $Resource.Id
# メソッドの追加とLambda統合
New-AGMethod -RestApiId $ApiId -ResourceId $ResourceId -HttpMethod $HttpMethod -AuthorizationType "NONE"
$LambdaUri = "arn:aws:lambda:$Region:$AccountId:function:$LambdaFunctionName"
Set-AGIntegration -RestApiId $ApiId -ResourceId $ResourceId -HttpMethod $HttpMethod -Type "AWS_PROXY" -Uri $LambdaUri
Add-LMPermission -FunctionName $LambdaFunctionName `
-Action "lambda:InvokeFunction" `
-Principal "apigateway.amazonaws.com" `
-SourceArn "arn:aws:execute-api:$Region:$AccountId:$ApiId/*"
# デプロイ
Deploy-AGApi -RestApiId $ApiId -StageName $StageName
Write-Output "API deployed: https://$ApiId.execute-api.$Region.amazonaws.com/$StageName/$ResourcePath"
実行結果の確認
スクリプトを実行後、エンドポイントが正常に動作するか確認します:
Invoke-RestMethod -Uri "https://$ApiId.execute-api.$Region.amazonaws.com/$StageName/$ResourcePath" -Method $HttpMethod
まとめ
PowerShellスクリプトを利用することで、API Gatewayの設定を効率的かつ正確に自動化できます。この手法を導入することで、開発の生産性が向上し、複雑なサーバレス環境の構築も簡単になります。次はAPIのデプロイ後のテストと運用方法について解説します。
API Gatewayのデプロイとテスト方法
API Gatewayを設定した後は、デプロイして動作確認を行う必要があります。このセクションでは、APIをステージにデプロイする方法と、エンドポイントをテストする具体的な手順を解説します。
APIのデプロイ手順
1. ステージの作成
API Gatewayでは、デプロイ対象となる「ステージ」を定義します。以下のコマンドを使用してステージを作成します:
Deploy-AGApi -RestApiId "your-api-id" -StageName "dev"
- RestApiId: デプロイするAPIのID。
- StageName: ステージ名(例:
dev
,prod
)。
このコマンドを実行すると、ステージが作成され、APIがそのステージにデプロイされます。
2. デプロイ結果の確認
ステージのURLは次の形式になります:
https://{api-id}.execute-api.{region}.amazonaws.com/{stage-name}/{resource-path}
例:
https://abc123.execute-api.us-east-1.amazonaws.com/dev/users
APIのテスト手順
1. PowerShellを使用したテスト
PowerShellのInvoke-RestMethod
を使い、エンドポイントにリクエストを送信してテストします:
# テストリクエスト
Invoke-RestMethod -Uri "https://your-api-id.execute-api.us-east-1.amazonaws.com/dev/users" -Method POST
- Uri: テスト対象のエンドポイントURL。
- Method: HTTPメソッド(例: POST, GET, PUT, DELETE)。
2. テストレスポンスの確認
正常に動作していれば、Lambda関数からのレスポンスが返されます。たとえば:
{
"statusCode": 200,
"body": "{\"message\": \"Hello from Lambda!\"}"
}
3. Postmanを使用したテスト(オプション)
Postmanなどの外部ツールを使用してAPIエンドポイントをテストすることもできます:
- Postmanを起動し、新しいリクエストを作成します。
- URL欄にエンドポイントを入力します(例:
https://your-api-id.execute-api.us-east-1.amazonaws.com/dev/users
)。 - メソッド(POSTなど)を選択し、必要に応じてリクエストボディを設定します。
- 送信後、レスポンスが正しいか確認します。
デバッグとトラブルシューティング
1. CloudWatch Logsの確認
エラーが発生した場合、CloudWatch Logsで詳細な情報を確認します:
Get-CWLLogEvents -LogGroupName "/aws/lambda/MyLambdaFunction" -LogStreamName "latest"
- LogGroupName: Lambda関数に対応するロググループ。
- LogStreamName: 最新のログストリーム名。
2. API Gatewayのデバッグツール
API Gatewayコンソールの「ステージ」の設定から、ログ出力を有効化することができます。
- 「CloudWatchログ」を有効化し、ロググループ名を設定します。
- CloudWatchでAPI Gatewayのリクエストやレスポンスの詳細を確認できます。
運用時のベストプラクティス
- ステージの分離: 開発用、ステージング用、本番用とステージを分けて運用する。
- エンドポイントの監視: CloudWatchアラームを設定して、エラーやパフォーマンスの異常を検出する。
- 認証とセキュリティ: IAMポリシーやAPIキー、JWTトークンなどを活用してセキュリティを強化する。
まとめ
API Gatewayのデプロイとテストは、サーバレスアーキテクチャの動作確認に不可欠です。ステージのデプロイやエンドポイントのテストを通じて、APIが期待通りに動作することを確認しましょう。次は、セキュリティと運用における注意点について解説します。
サーバレス連携で考慮すべきセキュリティ対策
API GatewayとLambdaを使用したサーバレスアーキテクチャは、柔軟でスケーラブルですが、適切なセキュリティ対策を講じなければ脆弱性のリスクがあります。このセクションでは、サーバレス連携における主要なセキュリティ対策を解説します。
API Gatewayのセキュリティ設定
1. IAMポリシーでのアクセス制御
API Gatewayへのアクセスを制限するために、IAMポリシーを活用します。以下は特定のユーザーまたはサービスにのみAPIを呼び出す権限を付与する例です:
{
"Version": "2012-10-17",
"Statement": [
{
"Effect": "Allow",
"Action": "execute-api:Invoke",
"Resource": "arn:aws:execute-api:us-east-1:123456789012:api-id/*",
"Principal": {
"AWS": "arn:aws:iam::123456789012:user/SpecificUser"
}
}
]
}
2. APIキーの利用
クライアントの識別と使用量の制限にはAPIキーを使用します。API Gatewayで以下を設定します:
- API Gatewayコンソールで「APIキー」を作成。
- APIステージの「Usage Plan」(利用プラン)にキーを紐付ける。
- クライアントがリクエスト時にAPIキーを送信するように設定。
3. JWT(JSON Web Token)認証
CognitoやサードパーティのIDプロバイダーと連携し、JWTを用いた認証を実装します。API Gatewayで「Cognitoオーサライザー」を設定し、認証されたユーザーのみAPIを呼び出せるようにします。
Lambda関数のセキュリティ設定
1. 最小権限のIAMロール
Lambda関数に付与するIAMロールは、必要最低限の権限に限定するべきです。以下の例では、特定のS3バケットにアクセスする権限を付与します:
{
"Version": "2012-10-17",
"Statement": [
{
"Effect": "Allow",
"Action": "s3:GetObject",
"Resource": "arn:aws:s3:::my-bucket-name/*"
}
]
}
2. 環境変数の暗号化
Lambda関数で使用する環境変数(APIキーや秘密鍵など)は暗号化する必要があります:
- Lambdaコンソールで「環境変数の暗号化」を有効化。
- KMS(Key Management Service)を使用してキーを管理。
3. ネットワークセキュリティ
Lambda関数がプライベートリソースにアクセスする必要がある場合、VPC内で実行します。これにより、関数がパブリックネットワークに直接公開されるリスクを低減できます。
トラフィックの監視とロギング
1. CloudWatch Logsの活用
API GatewayとLambdaのログをCloudWatchに送信し、トラフィックやエラーをモニタリングします。以下の設定を行います:
- API Gatewayで「ステージ」の「CloudWatchログ」を有効化。
- Lambda関数の実行ロールにログ出力権限を付与。
2. AWS WAFの導入
AWS WAF(Web Application Firewall)を使用して、特定のIPアドレスのブロックやSQLインジェクション攻撃の防御を設定します。WAFをAPI Gatewayに紐付けることで、APIのセキュリティを強化できます。
3. アラームの設定
CloudWatchアラームを使用して、異常なトラフィックやエラーを検知します。たとえば、500エラーが一定数を超えた場合に通知を受け取るアラームを設定します:
{
"AlarmName": "HighErrorRate",
"MetricName": "5XXError",
"Namespace": "AWS/ApiGateway",
"Statistic": "Sum",
"Threshold": 10,
"ComparisonOperator": "GreaterThanThreshold",
"EvaluationPeriods": 1
}
定期的なセキュリティレビュー
- IAMポリシーの確認: 不要な権限が付与されていないかを定期的に確認する。
- APIキーのローテーション: 定期的にAPIキーを更新し、古いキーを無効化する。
- ソフトウェアの更新: ランタイムや依存ライブラリを常に最新のバージョンに保つ。
まとめ
API GatewayとLambdaを連携したサーバレスアーキテクチャでは、セキュリティの確保が重要です。IAMポリシーの最小権限設定やログの監視、WAFの導入などの対策を組み合わせることで、安全で信頼性の高いシステムを構築しましょう。次は、高度な応用例として認証やカスタムドメインの設定について説明します。
より高度な応用例:認証とカスタムドメインの設定
API Gatewayは、基本的な機能に加えて、認証やカスタムドメインを利用して、よりセキュアでユーザーフレンドリーなAPIを構築することができます。このセクションでは、認証機能の活用とカスタムドメイン設定の手順を解説します。
認証の実装方法
1. Cognitoユーザープールでの認証
Amazon Cognitoを使用してユーザーの認証を簡単に設定できます。以下はCognitoユーザープールをAPI Gatewayに統合する手順です:
- Cognitoユーザープールの作成
AWSコンソールで新しいユーザープールを作成します。設定例:
- サインイン方法: ユーザー名とパスワード
- 自動確認: 無効
- Cognitoオーサライザーの設定
API Gatewayのコンソールで、以下の設定を行います:
- 「オーサライザー」を選択し、新しいオーサライザーを作成。
- タイプ: Cognito
- ユーザープール: 作成したCognitoユーザープールを選択。
- メソッドへのオーサライザーの適用
メソッド設定でCognitoオーサライザーを選択し、認証を有効化します。
2. Lambdaオーサライザー
カスタムロジックを用いた認証を実現するには、Lambdaオーサライザーを使用します:
- Lambda関数の作成
以下は認証用Lambda関数の例です:
exports.handler = async (event) => {
const token = event.authorizationToken;
if (token === "valid-token") {
return {
principalId: "user",
policyDocument: {
Version: "2012-10-17",
Statement: [
{
Action: "execute-api:Invoke",
Effect: "Allow",
Resource: event.methodArn,
},
],
},
};
} else {
throw new Error("Unauthorized");
}
};
- オーサライザーの設定
API Gatewayでオーサライザーを作成し、Lambda関数を指定します。メソッドでオーサライザーを適用します。
カスタムドメインの設定
1. カスタムドメイン名の登録
独自ドメインをAPI Gatewayに紐付ける手順:
- SSL証明書の作成またはインポート
AWS Certificate Manager(ACM)でSSL証明書をリクエストまたはインポートします。
設定例:api.example.com
- カスタムドメイン名の作成
API Gatewayで以下のコマンドを使用してカスタムドメインを登録します:
New-AGCustomDomain -DomainName "api.example.com" -CertificateArn "arn:aws:acm:region:account-id:certificate/certificate-id"
2. カスタムドメインとAPIのマッピング
作成したカスタムドメインをAPIステージに紐付けます:
Set-AGBasePathMapping -DomainName "api.example.com" -RestApiId "your-api-id" -Stage "prod"
3. DNS設定の更新
ドメイン管理サービス(Route 53など)でCNAMEレコードを作成し、API Gatewayのエンドポイントを指すよう設定します。
高度な応用のメリット
- Cognito認証: 安全なユーザー管理と簡単な認証フローの実現。
- Lambdaオーサライザー: カスタム認証ロジックで柔軟性を確保。
- カスタムドメイン: ユーザーが覚えやすいURLを提供し、ブランド価値を向上。
まとめ
API Gatewayでは、認証とカスタムドメイン設定を組み合わせることで、より安全でユーザーに優しいAPIを構築できます。次は、この記事の全体を振り返りながらまとめを行います。
まとめ
本記事では、PowerShellを活用してAWS API GatewayとLambdaを連携させるサーバレスアーキテクチャの構築手順を詳しく解説しました。基本的なAPI Gatewayのリソース作成やLambdaの統合から、PowerShellスクリプトによる自動化、高度な応用として認証やカスタムドメイン設定まで、多岐にわたる内容を網羅しました。
適切なセキュリティ対策や効率的なスクリプト化により、サーバレスアーキテクチャの利点を最大限に引き出すことができます。これらの手法を実践すれば、再現性の高い環境構築と信頼性のある運用が可能となるでしょう。今後は実際にプロジェクトで活用し、サーバレス技術のメリットを存分に体感してください。
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