最近リリースされた新しいMicrosoft Teamsを使い始めると、複数の組織やゲストアカウントを切り替えるときにスムーズにいかないことがあり、作業の効率化どころかストレスの原因になってしまう場合があります。この不具合に悩む方は意外と多く、「なぜWeb版や他のPCでは問題なく使えるのに、特定の環境だけ切り替えがうまくいかないのだろう」と疑問を持たれることもあるでしょう。ここでは新Teamsで遭遇しやすい組織切り替えのトラブルと、その具体的な解決方法をわかりやすく解説していきます。
新しいMicrosoft Teamsの特徴とトラブルの背景
新しいMicrosoft Teams(以下、新Teams)は、見た目や機能性が大幅に刷新され、動作の軽快さやUIの改善などが期待されています。従来Teams(以下、従来Teams)と比べて起動が速く、画面の切り替えも滑らかになったという声がある一方で、まだまだ改善の途上にある部分も多く、特に複数組織を切り替える際のトラブルが目立ちやすい印象があります。
ゲストアカウントとの併用で起きやすい混乱
たとえば、会社アカウントに加えて、同じメールアドレスで登録された複数のゲストアカウントを使い分けているケースです。一つのメールアドレスで複数の組織に参加している場合、新Teamsの組織切り替え機能が正しく動作しないことがあります。具体的には「ゲストアカウントを選択したはずなのに、実際には会社アカウントのチームやチャットが表示されている」という現象が起き、非常に混乱を招きます。
Web版や他デバイスでは正常なのに…
興味深いのは、同じアカウント構成でも、Web版のMicrosoft Teamsや別のPC上の新Teamsでは問題が生じないケースが多いことです。これは、新Teamsがローカル環境(Windowsユーザープロファイル)に保存しているキャッシュや認証トークンなどの情報が、何らかの理由で壊れてしまったり、更新されないまま残ってしまっている可能性が高いからと考えられています。
本記事の目的とゴール
本記事では、新Teamsで複数の組織やゲストアカウントを切り替えようとしたときに発生する不具合について、主に次の3つの観点で解説します。
- 問題の発生原因
なぜ切り替え不良が起きるのか、従来TeamsやWeb版との違いは何なのかを紐解きます。 - 対策と推奨される解決策
新しいWindowsユーザープロファイルを作成する方法や、レジストリ・フォルダを削除して再セットアップする手順などを具体的に紹介します。 - 実践上の注意点・効果的な手順
誤ったフォルダやレジストリを削除すると逆にトラブルが増える場合があります。安全に実施するためのアドバイスや注意点を説明します。
最終的には、「新Teamsで組織を切り替えるときに発生するアカウントの混乱を解消して快適に利用できる」ように導くことが本記事のゴールです。社内外のコミュニケーションの効率を落とさず、Teamsの真価を発揮するためにも、ぜひ対策をマスターしてみてください。
新Teamsで組織切り替えがうまくいかない原因
まずは、なぜ新Teamsだけが複数組織の切り替えで問題を起こしやすいのかについて掘り下げてみましょう。
キャッシュやトークンが正しくリセットされない
Microsoft Teamsは、サインイン情報や組織切り替えに関する設定をローカルのキャッシュやトークンとして保持します。具体的には、以下のようなフォルダやレジストリキーに情報が格納されます。
%AppData%\Microsoft\Teams
(従来Teams用)%LocalAppData%\Microsoft\Teams
(従来Teams用)%LocalAppData%\Packages\MSTeams_8wekyb3d8bbwe
(新Teams用)%LocalAppData%\Microsoft\OneAuth
/%LocalAppData%\Microsoft\TokenBroker
/%LocalAppData%\Microsoft\IdentityCache
など(サインイン関連)
何らかの理由で新Teamsの切り替え機能に関わるキャッシュデータが壊れてしまうと、正しく削除や更新が行われずに残存し、組織切り替えの挙動がおかしくなる可能性があります。とくにゲストアカウントを多用している場合、複数のトークンが同じメールアドレスと紐づいて上書き合い、結果として誤認識が発生するリスクが高まります。
Windowsユーザープロファイル固有の環境依存
Web版や別のPCでは正常に切り替えられるのに、特定のPC上の新Teamsだけで不具合が起きるのは、多くの場合、Windowsユーザープロファイルに起因しています。ユーザープロファイルには一度サインインした情報やTeamsの設定ファイルなどが蓄積されており、その状態が何らかの不整合を起こしていると考えられます。
従来Teamsとの重複や競合
従来Teamsと新Teamsは、同じMicrosoftアカウントや組織情報を参照しつつも、保存先フォルダや一部動作が異なります。従来Teamsをアンインストールせずに新Teamsを入れると、一部の設定ファイルやレジストリが競合状態になり、正常にアカウントや組織を切り替えられなくなるケースも見受けられます。
レジストリやフォルダを削除してリセットする方法
最初に試してみたいのが、レジストリやフォルダを手動で削除し、新Teamsを“まっさら”な状態からセットアップし直す方法です。少し手間はかかりますが、新しいプロファイルを作るほど大掛かりではないので、多くのケースでこちらを先に試すことが推奨されています。
操作前の注意点
レジストリを削除するときには、くれぐれも注意しましょう。誤ったレジストリキーを消去するとシステムトラブルの原因になります。また、トークン情報を削除すると、OfficeアプリやOneDriveなど、ほかのMicrosoft関連アプリにも影響が及ぶ可能性があります。必ず事前にシステムのバックアップを取得する、もしくは管理者に相談したうえで実施してください。
具体的な手順例
以下に、代表的な手順の流れを示します。
- Teamsを完全に終了 新Teams、従来Teamsの両方をタスクトレイから終了し、バックグラウンドで動作していないことを確認します。
- アンインストール コントロールパネル、または「設定」→「アプリと機能」から、従来Teamsと新Teamsをすべてアンインストールします。
- ユーザーデータの削除 以下のフォルダを手動で削除します。
%AppData%\Microsoft\Teams
(従来Teamsのユーザーデータ)%LocalAppData%\Microsoft\Teams
(従来Teamsのローカルデータ)%LocalAppData%\Packages\MSTeams_8wekyb3d8bbwe
(新Teamsのローカルデータ)
- 「アクセス ワークまたは学校」からアカウントを切断 Windowsの「設定」→「アカウント」→「アクセス ワークまたは学校」から、会社アカウントや学校アカウントを一度切断します。
- サインイン関連フォルダの削除
%LocalAppData%\Microsoft\OneAuth
%LocalAppData%\Microsoft\TokenBroker
%LocalAppData%\Microsoft\IdentityCache
- 再インストールと初期セットアップ 最後に新Teamsを再インストールし、再度アカウントをサインインします。ゲストアカウントを含む複数組織を順番に切り替えて動作を確認してください。
フォルダ・レジストリ削除手順まとめ表
表形式で流れを整理すると、下記のようになります。参考にしつつ、ミスを防ぎながら作業を進めましょう。
手順 | 実施内容 | 注意点 |
---|---|---|
1 | 新Teams・従来Teamsを終了 | タスクトレイとタスクマネージャを確認 |
2 | 両方のTeamsをアンインストール | どちらがインストールされているか要確認 |
3 | Teams関連フォルダを削除 (%AppData% / %LocalAppData%) | 復元が難しいためバックアップ推奨 |
4 | Windows「アクセス ワークまたは学校」からアカウントを切断 | 会社アカウントや学校アカウントをいったん外す |
5 | OneAuth / TokenBroker / IdentityCacheを削除 | 他のMicrosoftアプリへの影響に注意 |
6 | 新Teamsを再インストール | まっさらな環境で再セットアップ |
新しいWindowsユーザープロファイルの作成
もし上記のレジストリ・フォルダ削除の手順を行っても改善しない場合、より確実な解決策が「新しいWindowsユーザープロファイルを作成する」方法です。これは、現在使っているユーザープロファイル自体が破損していたり、TeamsだけでなくOSレベルでもアカウント情報が衝突している可能性がある場合に有効です。
新規プロファイル作成のメリット
新しいWindowsユーザープロファイルを作成すると、ログイン情報や各アプリのキャッシュが完全にリセットされます。そのため、TeamsだけでなくOfficeやOneDriveなど、全てのMicrosoftアプリが“初回起動”の状態になります。これにより、新Teamsに限らず他の不具合が同時に解消されることも期待できるでしょう。
新規プロファイル作成のデメリット
一方で、新しいプロファイルを作成するということは、デスクトップやドキュメント、ブラウザのお気に入り、アプリの設定など、これまで使っていたユーザープロファイル下の各種データを移行する手間がかかります。社内ポリシーによっては、新規プロファイルの作成自体に管理者権限が必要になることもあるため、簡単には実行できない場合もあるでしょう。
新規プロファイルでの手順概要
- 管理者または自分自身のアカウントでWindowsにサインイン
- 「設定」→「アカウント」→「家族とその他ユーザー」から新しいユーザーを追加
- 追加したユーザーでWindowsにサインインし、初回起動のセットアップを完了
- 新しいユーザー環境で新Teamsをインストールしてサインイン
- ゲストアカウントを含む複数組織が問題なく切り替え可能か確認
この方法は効果が高く、多くの場合、組織切り替えの問題を解消してくれます。ただし、作業自体は大掛かりになるため、先にフォルダ削除やレジストリリセットを試してから検討することをおすすめします。
実際の事例と注意点
ここでは、実際の現場で遭遇した事例を交えつつ、対処の際の注意点をもう少し詳しく紹介します。
事例1:レジストリ削除のみで解決したケース
あるユーザーは、新Teamsと従来Teamsが共存した状態で複数組織を切り替えているうちに、ゲストアカウントへアクセスができなくなりました。従来Teamsをアンインストールしただけでは直らず、レジストリ上に残ったトークンデータを手動で削除したところ、新Teamsが正しく組織を認識するようになったといいます。
ポイント: 不要なキーを正しくピンポイントで削除することが大切で、闇雲にレジストリを消すとかえって状況が悪化する可能性があるので注意しましょう。
事例2:プロファイル再作成が唯一の解決策だったケース
別のユーザーは、何をしても切り替えエラーが直らず、最終的に新しいWindowsユーザープロファイルを作ってTeamsを初期状態で再セットアップしないと問題が解消しませんでした。プロファイル作成後は、ゲストアカウントも含めてスムーズに切り替えできるようになりましたが、旧プロファイル下のデータ移行に数日を要したとのことです。
ポイント: プロファイル再作成は「最終手段」の位置付けなので、時間と手間に余裕があるかどうかも考慮が必要です。
事例3:新Teamsインストール後の定期的なトークンクリアで回避
あるIT担当者は、複数アカウントを切り替える状況が常態化している社内で、導入時に「定期的にトークンをクリアしよう」という運用ルールを作ったそうです。具体的には、一定期間(たとえば月1回)ごとに %LocalAppData%\Microsoft\TokenBroker
などを削除して再サインインすることで、問題が起きる前にリセットし、トラブルを未然に防いでいるといいます。
ポイント: 運用上のルーチンに組み込むことで、問題発生後の緊急対応よりもスムーズに管理できる場合がある、という好例です。
根本的な対処とまとめ
新Teamsで複数の組織を切り替える際に生じる不具合は、ほとんどがローカル環境に残っているキャッシュやトークンの破損・重複が原因と考えられます。下記のステップで対処を検討してみてください。
- フォルダ・レジストリの削除(リセット)
- 新Teamsや従来Teams、関連フォルダ、トークンキャッシュの削除を行い、再セットアップする。
- 最初に取り組みやすく、効果が高い。
- 新しいWindowsユーザープロファイル作成
- レジストリ・フォルダ削除でもダメな場合や、そもそもユーザープロファイルに破損の疑いがあるときに最適。
- 環境移行に手間がかかるため、最後の手段として検討。
- 再インストールを含めたOSレベルの刷新
- 極端なケースとして、Windowsの再インストールが選択肢に上がることもあるが、最も労力が大きい。
- 企業環境では管理者との調整やデータバックアップなど、慎重に計画が必要。
複数のゲストアカウントや組織を手軽に行き来できるのはTeamsの大きなメリットのはずが、新Teamsの不具合によりかえって生産性が落ちてしまうのは本末転倒ですよね。ただ、いくつかのリセット手段を踏めば、ほぼ確実に正常化できることが報告されています。試行錯誤を繰り返しながら面倒を感じることもあるでしょうが、根気よく対処してしまえば、その後の運用は格段に快適になるはずです。ぜひ本記事の方法を参考に、トラブルの根本解決に挑戦してみてください。
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