「普段の会議では出席レポートを制限したい。でも、研修や説明会では参加実績を確認したい」という運用に向けて、Microsoft Teamsでイベント専用の出席・エンゲージメントレポートポリシーが予定されています。
変更の要点は、Teamsイベントのレポート許可を、通常会議のCsTeamsMeetingPolicyから分離することです。2026年9月3日時点では開発中で、一般提供は2026年10月の予定です。すでに全組織で利用できる機能ではありません。
導入に備えて押さえたいのは、主催者に適用するポリシー、レポートを許可する範囲、そして設定値の意味です。特に、会議側とイベント側では、同じDisabledでも公開リファレンス上の動作が異なるため注意が必要です。
Teamsイベント専用の出席・エンゲージメントレポートポリシーとは
通常会議の制限を維持しながら、イベントのレポートを許可する
Microsoftの現行の管理ガイドでは、出席・エンゲージメントレポートを会議ポリシーで管理する方法が案内されています。管理画面では、Teams管理センターの[会議]→[会議ポリシー]→会議のスケジュール設定にある、出席・エンゲージメントレポートの項目を確認します。(Microsoft Learn)
Roadmap ID 567466で予定されているのは、この制御をイベントについて独立させる変更です。通常会議のレポートを制限したまま、イベント主催者にはレポートへのアクセスを許可できるようにすることが目的です。
例えば、人事担当者に対して、次のような運用を設計できます。
| 開催する内容 | レポートの運用例 | 判断の理由 |
|---|---|---|
| 日常の打ち合わせ、個別面談 | 通常会議のレポートを無効にする | 参加実績を一覧として残す必要がない |
| 受講確認が必要な社内研修 | イベントのレポートを有効にする | 受講者と未受講者を確認する |
| 任意参加の説明会 | イベント主催者が必要に応じて切り替える | 開催目的によって集計の必要性が異なる |
これは運用設計の例です。すべての会議で詳細な参加状況を扱うのではなく、参加実績が必要な業務だけでレポートを利用するという考え方ができます。
「イベント」は会議の件名ではなく、Teams上の開催方式で区別する
「社内研修」という件名で通常会議を作成しても、それだけでTeamsイベントになるわけではありません。
Microsoftのイベント管理ガイドでは、イベントアプリを使った作成・管理と、従来のウェビナーやタウンホールのポリシーとの関係が説明されています。主催者向けの手順書では、イベント名だけでなく、どの作成方法を使うかまで指定しておくと検証しやすくなります。(Microsoft Learn)
また、今回の変更を「イベントには会議ポリシーが一切適用されなくなる」と捉えるのは誤りです。Teamsイベントは、会議ポリシー、イベントポリシー、主催者・参加者の設定を組み合わせて管理する仕組みです。(Microsoft Learn)
提供時期と、現時点で確認できる設定情報
2026年9月3日時点のMicrosoft公式ロードマップデータでは、次のように案内されています。
| 項目 | 公開されている情報 |
|---|---|
| Roadmap ID | 567466 |
| 状態 | In development(開発中) |
| 一般提供の予定 | 2026年10月 |
| 対象クラウド | Worldwide(Standard Multi-Tenant)、GCC |
| 記載されているプラットフォーム | Desktop |
一方、PowerShellの公開リファレンスには、すでにSet-CsTeamsEventsPolicyのAllowEngagementReportとInfoShownInReportModeが記載されています。(Microsoft Learn)
ここで区別したいのは、「設定項目が文書に載っていること」と「自分の組織で会議・イベントの分離が動作すること」は別という点です。ロードマップの予定月だけで本番利用を判断せず、Microsoft 365管理センターのメッセージセンターで展開案内を確認し、対象テナントで動作を検証してください。
移行時には、既存ポリシーからの設定引き継ぎ、作成済みイベントへの適用、過去のレポートの扱いも確認項目に含めます。公開されているパラメーターの既定値を、そのまま既存環境の移行結果とみなさないことが重要です。
設定で間違えやすいAllowEngagementReportの意味
イベント側は「許可」と「強制」を分けて選ぶ
イベント側のAllowEngagementReportには、公開リファレンス上、次の4つの値があります。名前だけで判断せず、主催者が変更できるかまで確認してください。(Microsoft Learn)
| イベント側の設定値 | レポートの状態 | 主催者による変更 |
|---|---|---|
Enabled | オン | オフにできる |
Disabled | オフ | オンにできる |
ForceEnabled | オンに固定 | オフにできない |
ForceDisabled | オフに固定 | 主催者は閲覧・ダウンロードできない |
「イベントではレポートを利用してよい」という方針なら、まずEnabledが検討対象になります。一方、「対象イベントでは必ずレポートを残す」という運用では、ForceEnabledを検討します。
ただし、必須研修だからといって、最初から全主催者に強制設定を適用する必要はありません。研修担当者向けと一般イベント主催者向けで、必要な運用が同じかを先に整理しましょう。
イベント側のDisabledは、利用禁止を意味しない
特に注意したいのがDisabledです。
Set-CsTeamsMeetingPolicyの公開リファレンスでは、Disabledは出席レポートの生成を無効にし、主催者のダウンロードを禁止する値です。一方、イベント側のDisabledは、オフであっても主催者がオンにできる値として説明されています。(Microsoft Learn)
つまり、会議用のスクリプトをイベント用に書き換える際、コマンド名だけを置き換えると意図した制限にならない可能性があります。
イベントのレポート利用を禁止したい場合は、イベント側のForceDisabledを確認するという区別が必要です。会議側にも同じ値が使えると推測せず、それぞれのコマンドの仕様に従ってください。
レポートを許可することと、詳細情報を表示することは別
イベント側には、出席レポートに表示する情報を指定するInfoShownInReportModeも記載されています。選択肢はFullInformationとIdentityOnlyです。(Microsoft Learn)
IdentityOnlyは参加者の識別情報のみを表示する設定です。単に「誰が参加したか」を確認できればよい場合の検討対象になります。参加時間を受講判定に使う場合は、必要な情報を取得できる設定か確認します。
例えば、資料送付先の確認と、一定時間以上の参加を要件とする研修では、必要な情報が違います。レポートを有効にする前に、利用目的を次のように具体化すると設定を選びやすくなります。
- 参加者への資料送付に使うため、参加者を識別できればよい。
- 受講判定に使うため、入退室時刻や参加時間も必要である。
- イベント改善に使うため、リアクションなどの集計も確認したい。
なお、出席レポートは参加者や入退室時刻などを確認するもので、エンゲージメント情報ではリアクション、挙手、カメラの利用などを把握できます。参加時間や反応の回数だけを、理解度や成果そのものと同一視しない運用が適切です。(マイクロソフトサポート)
管理者が導入前に行う確認と、提供後の設定例
まず主催者に適用されているポリシーを調べる
最初に確認するのは、レポートを必要とするイベント主催者に、どのポリシーが適用されているかです。
MicrosoftTeams PowerShellモジュールを導入した管理端末で、管理用アカウントを使って接続します。Connect-MicrosoftTeamsは認証済みアカウントでTeamsの管理コマンドを利用するための接続コマンドです。(Microsoft Learn)
Connect-MicrosoftTeams
# 実際にイベントを主催するユーザーへ置き換える
$organizer = "[email protected]"
Get-CsUserPolicyAssignment -Identity $organizer |
Where-Object {
$_.PolicyType -in @(
"TeamsMeetingPolicy",
"TeamsEventsPolicy"
)
} |
Format-List PolicyType, PolicyName, PolicySource
Get-CsUserPolicyAssignmentでは、ユーザーへの直接割り当てと、グループから継承したポリシーを確認できます。対象のポリシー種別が表示されない場合も、直ちに「ポリシーなし」と判断しないでください。公式リファレンスでは、その場合はテナントまたはシステムのグローバル既定ポリシーが有効であると説明されています。(Microsoft Learn)
続いて、会議・イベントポリシーの設定値を取得します。以下は参照用のコマンドで、設定を変更しません。(Microsoft Learn)
# 会議ポリシーの一覧
Get-CsTeamsMeetingPolicy |
Select-Object Identity, AllowEngagementReport, InfoShownInReportMode
# イベントポリシーの一覧
Get-CsTeamsEventsPolicy |
Select-Object Identity, AllowEngagementReport, InfoShownInReportMode
変更前の記録には、ポリシー名と設定値だけでなく、直接割り当てかグループ継承かも残します。検証終了後に元の状態へ戻すための情報です。
検証専用ポリシーを用意し、レポート以外の設定も確認する
いきなりGlobalや、多数のユーザーが利用している既存ポリシーを変更するのは避けましょう。まずは検証専用の会議ポリシーとイベントポリシーを用意し、テスト用の主催者に限定して確認します。
新しいポリシーを作る際には、レポート以外の設定も現在の業務要件と照合してください。今回確認したい項目以外まで変わると、レポートの分離による影響なのか、別の設定変更による影響なのかを切り分けにくくなります。
提供後に「会議は無効、イベントは許可」を検証する
以下は、対象テナントへの展開を確認した後に使う検証用の構成例です。未展開の環境で分離動作を保証するものではありません。
例では、次の検証用ポリシーを作成済みとします。名称は例なので、実際のポリシー名に置き換えてください。
| 種別 | 検証用ポリシー名 | 設定する内容 |
|---|---|---|
| 会議ポリシー | Pilot-NoMeetingReport | 通常会議のレポートを無効化 |
| イベントポリシー | Pilot-EventReport | レポートを許可し、識別情報のみ表示 |
公開リファレンスに沿って、会議側はDisabled、イベント側はEnabledを指定する例です。(Microsoft Learn)
# 作成済みの検証用ポリシー名へ置き換える
$meetingPolicy = "Pilot-NoMeetingReport"
$eventsPolicy = "Pilot-EventReport"
# ポリシーが存在することを確認
Get-CsTeamsMeetingPolicy -Identity $meetingPolicy -ErrorAction Stop |
Out-Null
Get-CsTeamsEventsPolicy -Identity $eventsPolicy -ErrorAction Stop |
Out-Null
# 通常会議のレポートを無効化
Set-CsTeamsMeetingPolicy -Identity $meetingPolicy `
-AllowEngagementReport Disabled `
-ErrorAction Stop
# イベントのレポートを許可
Set-CsTeamsEventsPolicy -Identity $eventsPolicy `
-AllowEngagementReport Enabled `
-InfoShownInReportMode IdentityOnly `
-ErrorAction Stop
設定しただけでは、目的の主催者に割り当てたことにはなりません。会議ポリシーとイベントポリシーを、それぞれ同じテスト用主催者に割り当てます。(Microsoft Learn)
# テスト用のイベント主催者へ置き換える
$organizer = "[email protected]"
Grant-CsTeamsMeetingPolicy -Identity $organizer `
-PolicyName $meetingPolicy `
-ErrorAction Stop
Grant-CsTeamsEventsPolicy -Identity $organizer `
-PolicyName $eventsPolicy `
-ErrorAction Stop
レポートのオン・オフだけでなく、ポリシーの割り当て結果も再取得して確認してください。コマンドが成功したことと、主催者の画面で期待どおりに動くことは、別々に確認する必要があります。
同じ主催者で通常会議とイベントを作成して比較する
動作確認では、同じテスト用主催者が通常会議とTeamsイベントをそれぞれ新規作成します。
前述の構成を検証する場合、確認項目は次のように整理できます。
| 確認対象 | 合格とする状態 |
|---|---|
| 通常会議 | 主催者が出席レポートを利用できない |
| Teamsイベント | レポートをオンにして開催すると、終了後に取得できる |
| イベントの主催者設定 | Enabledのため、主催者がレポートをオフにできる |
| 出席レポートの内容 | IdentityOnlyに沿った情報範囲になっている |
| 対象外ユーザー | 意図しないレポート権限の変更がない |
この表は検証基準であり、未展開テナントでの動作結果を示すものではありません。
「イベントのレポートが取得できた」だけで検証を終えず、「通常会議では取得できない」ことも確認するのがポイントです。片側だけの確認では、分離が機能しているか判断できません。
出席レポートが表示されないときの確認ポイント
主催者側の設定と、レポートを開く場所を確認する
イベント側をEnabledにしていても、主催者がレポートをオフにできる構成です。開催前に、対象イベントのオプションで出席レポートが有効になっているかを確認します。(Microsoft Learn)
一般的な確認経路は、終了した会議・イベントのチャットを開き、[出席]タブからレポートを表示して、必要に応じてCSVをダウンロードする流れです。Microsoftは、終了後およそ5分で主催者・共同開催者がレポートを確認できると案内していますが、終了直後に表示されないことだけで設定不良と決めつけないでください。(マイクロソフトサポート)
管理者権限とレポートの閲覧権限を混同しない
新ポリシーは、管理者が誰のレポートでも閲覧できるようにする機能ではありません。Microsoftの管理ガイドでも、自分が主催していない会議・イベントの出席・エンゲージメントレポートを、管理者として閲覧することはできないと説明されています。(Microsoft Learn)
検証は、管理者アカウントだけでなく、実際にイベントを主催したアカウントで行ってください。共同開催者だけで問題が起きる場合は、開催方法も確認します。Microsoftのサポート情報では、共同開催者によるレポートの閲覧・ダウンロードは、OutlookではなくTeamsでスケジュールされたイベントが対象とされています。(マイクロソフトサポート)
レポートの利用許可と、参加者情報の掲載範囲を分けて確認する
「レポートは取得できるが、一部の参加者や必要な情報が載っていない」という場合、許可設定だけを見直しても解決しない可能性があります。
現行の管理ガイドでは、レポートを利用できるかに加えて、参加者をレポートに含めるか、参加者が掲載を辞退できるか、どの情報を表示するかを別々に管理します。(Microsoft Learn)
導入時は、対象者がレポートに含まれる条件と、必要な情報が出力される条件を確認してください。ForceEnabledを選ぶことだけで、受講確認に必要な情報がすべて揃うと判断しないことが大切です。
Teams Premiumの要否は、ポリシーとは別に確認する
レポートを許可するポリシーと、利用する機能のライセンス条件は分けて確認します。
Microsoftは2026年4月1日から、従来Teams Premium限定だった一部機能をTeams Enterpriseに含める変更を案内しています。そのため、古い説明を根拠に「高度なイベント機能には必ずTeams Premiumが必要」と判断するのも適切ではありません。(Microsoft Learn)
追加ライセンスを購入する前に、主催者へ割り当て済みのライセンスと、必要なイベント機能・分析項目の条件を照合してください。
本番導入では、レポートを何に使うかまで決めておく
設定を分離できても、取得したレポートの扱いが曖昧なままでは運用が安定しません。
例えば研修用途なら、「受講確認を行う担当者が、判定に必要な期間だけ保管する」といったルールを先に決めます。イベント改善が目的なら、個人別の詳細を広く共有する必要があるかも検討してください。
主催者向けの案内では、レポートの開き方だけでなく、対象となるイベント、取得する目的、保存先、共有できる相手まで示すと実務に使いやすくなります。
まとめ:まず適用ポリシーを確認し、提供後に分離動作を検証する
Teamsイベント専用の出席・エンゲージメントレポートポリシーは、日常会議のレポートを制限しながら、必要なイベントでは参加実績を確認するための変更です。
設定で特に重要なのは、会議側のDisabledとイベント側のDisabledを同じ意味で扱わないこと、そしてイベントだけでなく通常会議の制限もテストすることです。
まずはイベント主催者に適用されているポリシーと、必要なレポート情報を整理してください。そのうえで、対象テナントへの展開を確認し、検証専用ポリシーで動作を確かめてから本番の主催者へ適用しましょう。

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