突然、Word 2021のスペルチェックや文法チェックが機能しなくなると、提出前の校正がスムーズに進まなくなってしまいます。締切が迫っているときに限って発生するこの症状は、原因が複雑なケースも多く、緊急対応に苦慮している方もいらっしゃるかもしれません。ここでは、原因となりやすいアドインやテンプレート、レジストリの問題から具体的な解決策までを丁寧に解説しながら、作業効率と執筆スピードを落とさないための対処法をご紹介します。
Word 2021でスペルチェックや文法チェックが勝手にオフになってしまう原因とは
Word 2021において「Hide Spelling Errors in this document only(文書内のスペルエラーを非表示)」や「Hide Grammar Errors in this document only(文書内の文法エラーを非表示)」のチェックボックスが勝手にオンに戻ってしまうトラブルは、ときに非常に厄介です。普段の文書作成で問題なく使用していたにもかかわらず、急に赤い波線や青い波線(スペル・文法の誤りを示すアンダーライン)が表示されなくなると、文章校正が一気にやりづらくなります。以下では、主な原因として報告されている内容を詳しく見ていきます。
アドイン(特にGrammarly)が自動的に設定を書き換えている
Wordでのスペルチェック機能と競合を起こすアドインの代表例としてよく挙げられるのがGrammarlyです。
- 最近のGrammarlyアップデートによってWordのオプション設定が強制的に変更される事例が散見されます。
- Grammarlyにログインしている間や常駐している環境下では、Wordの「Hide Spelling Errors」「Hide Grammar Errors」が自動的にオンへ切り替わる状況が繰り返されるとの報告が多いです。
もし、Grammarlyを導入している場合は、まずアドインを疑ってみることが有効と言えます。
Normal.dotmやレジストリに問題が生じている
Wordの基本となるテンプレートファイル「Normal.dotm」が破損している、またはレジストリに何らかの不整合が起きている場合も、同様の症状を引き起こします。特にNormal.dotmはWordの既定設定を司る重要ファイルのため、破損や上書きが発生すると思わぬ挙動が現れることがあります。
ただし、テンプレートの置き換えやOfficeの修復を行っても、原因が深層にある場合は一時的にしか改善しないこともあるため、根本原因の追究が欠かせません。
AutoSaveの影響で設定が短時間でリセットされる
主にクラウド上に文書を保存している場合、AutoSave(自動保存)機能が原因で、一度変更した設定がすぐにリセットされるケースも報告されています。この問題は発生率こそ低いものの、Cloud上の保存を多用している方は確認してみる価値があります。
対策1:まずはアドイン(Grammarly)のチェックと対応を行う
設定が戻ってしまう問題の多くはアドインが引き起こす場合が多いとされています。そこで最初に取り組みたいのが、Grammarlyなど外部アドインの無効化やアンインストール、あるいはログアウト対応です。
Grammarlyのログアウト/終了を試す
Grammarlyにログインした状態だと、Wordのオプションが強制的に上書きされる事例があります。そこで下記の手順を確認してみてください。
- WordとGrammarlyを両方終了し、Grammarlyの常駐プロセスをタスクマネージャーで終了させます。
- 再度Wordを起動し、「校閲」タブからスペルや文法エラーの設定をオフにしていないか確認します。
- 問題が解消されるかどうかテスト文書を開き、赤や青の波線が表示されるかチェックします。
これで改善すれば、原因はGrammarlyにある可能性が高いでしょう。Grammarlyを使用したい場合は、原因となったバージョンのアップデート情報をこまめにチェックし、修正版が出るまでログアウト状態で使用するのが一つの手段です。
Grammarly自体を一時的にアンインストールする
締切が差し迫っており、すぐに校閲機能を復活させなければならないときは、思い切ってGrammarlyをアンインストールする方法もあります。一時的ではありますが、これにより確実にWord本来の校閲機能が戻るため、その後落ち着いてから改めてGrammarlyをインストールし直すとよいでしょう。
対策2:Normal.dotmのリセット(再作成)
アドインが原因でない場合や、あるいはGrammarlyを無効化してもなお問題が続く場合には、Wordの根幹ファイルであるNormal.dotmを疑ってみることが効果的です。
Normal.dotmを削除またはリネームする手順
Wordの既定テンプレート「Normal.dotm」が破損している可能性があるため、一度リセットして新たに生成し直すのが定番の解決策となります。
- Wordをすべて終了させます。タスクマネージャーでWINWORD.exeプロセスが残っていないか確認してください。
- エクスプローラーを起動し、アドレスバーに
%appdata%\Microsoft\Templates
と入力してフォルダを開きます。 - フォルダ内にある
Normal.dotm
を探し、バックアップとしてコピーを別の場所に保存しておくと安全です。 - 元の
Normal.dotm
を削除するかリネームし、Wordを再起動します。新しいNormal.dotm
が自動的に作成されます。
これによってWordが初期状態に近い状態へ戻るため、スペルチェックや文法チェックが正しく機能するかどうか確認してみてください。
Normal.dotm再作成のメリット
- Wordの標準状態に戻すことで、未知の設定変更やマクロ、スタイルカスタマイズなどが影響を及ぼしている場合に解決しやすい。
- トラブルシューティングの際、原因の切り分けが行いやすくなる。
ただし、自動生成された新しいNormal.dotmでカスタマイズが初期化されるため、テンプレートやマクロを使っている場合は再登録が必要になる点に注意しましょう。
対策3:レジストリ設定の初期化を検討する
Normal.dotmを置き換えても問題が解消されないときには、Word関連のレジストリを初期化する手段があります。これはより踏み込んだ方法となるため、操作を誤るとPCの他の部分に影響を及ぼすリスクがある点を認識しておきましょう。
レジストリ初期化の流れ
以下ではよく知られている手順の概要を示します。実際に作業する場合は各サイトやMicrosoft公式ドキュメントを参照し、自己責任で実行してください。
- Wordを終了させ、念のためレジストリエディタを起動する前にWindowsのバックアップやレジストリのバックアップを取ります。
- レジストリエディタで
HKEY_CURRENT_USER\Software\Microsoft\Office\16.0\Word
などのWord関連キーを探します(バージョン番号が異なる場合もあります)。 - 該当のキーを一旦エクスポート(バックアップ)した上で削除するか名称を変更し、Wordを再起動します。
- 再起動後、Wordが初期設定で立ち上がるため、スペルチェックや文法チェックが正常化されたかテストします。
レジストリ編集例:一部のサブキーのみ削除する場合
Windows Registry Editor Version 5.00
[HKEY_CURRENT_USER\Software\Microsoft\Office\16.0\Word\Options]
"GrammarState"=-
"SpellingState"=-
上記のようにGrammarState
やSpellingState
などの値を削除(「-」とする)するレジストリファイルを作成し、適用することで一部設定を初期化することができます。ただし、人によってレジストリ構造が異なるため、完全に同じキー名が存在しない場合もある点に注意してください。
対策4:Officeのオンライン修復やアップデート状況の確認
Office製品全体の不具合が影響している可能性がある場合には、次の手順も検討しましょう。
Officeオンライン修復を行う方法
- コントロールパネルまたは「設定(Windows 10/11)」から「プログラムのアンインストール」画面を開きます。
- Microsoft Officeを選択し、「変更」をクリックします。
- 「オンライン修復」を選択し、実行します。
これによりOffice全般のファイルの修復や再インストールが行われ、関連ファイルの破損などがあれば解決できる可能性があります。
Officeアップデートを常に最新に保つ
Officeは頻繁に機能追加やバグ修正が行われます。オンライン修復後は、念のために「Officeの更新プログラム」を適用し、最新バージョンにアップデートしてからWordを再テストしてください。
対策5:AutoSaveの設定を一時的にオフにする
クラウドと連携している方に見られる現象として、AutoSave機能の影響で設定が短時間に書き戻されてしまうことがあります。社内環境や大学のOneDriveなどを使っている場合には下記を試してみましょう。
AutoSaveをオフにする
- Word上部のツールバーにある「自動保存」スイッチをオフにします。
- 設定が元に戻らないか確認します。
- 問題が再現しなくなれば、AutoSaveが原因である可能性が高いといえます。
AutoSaveを使わない運用が難しい場合には、保存先をローカルに変えて手動でクラウドへアップロードするなどの方法で回避することも検討してみてください。
トラブルの原因と対処法を一望できる表
以下に、主な原因と対応策をまとめた簡易表を用意しました。問題解決の手がかりに役立ててみてください。
原因 | 主な対応策 | メリット/デメリット |
---|---|---|
Grammarlyなどアドインの競合 | アドインの無効化、アンインストール、ログアウト | 即効性が高いが、必要なアドインを使えなくなる |
Normal.dotm破損 | Normal.dotmのリセット(削除・リネーム) | Wordの初期状態に戻るが、ユーザカスタマイズも初期化 |
レジストリ不具合 | 該当キーの削除や初期化 | 大きく環境を変える可能性がありリスクもある |
Office自体の問題 | オンライン修復、再インストール | Office全般の破損を修復できる |
AutoSaveの影響 | AutoSave機能のオフ | クラウドへの自動保存が停止するので運用方法を検討が必要 |
解決しない場合の最終手段
上記の対策を順番に試しても改善しない場合には、次の手順を検討してみましょう。
- Officeの再インストール(アンインストール後に再度インストール)
- WordやOfficeのバージョンを確認し、互換性の問題がないか調べる
- Microsoftサポートやグローバルフォーラムなど専門家への問い合わせ
- 使用しているセキュリティソフトやメモリ関連の問題を調査する
また、論文やレポートで早急にWordの校閲機能をフルに活用したい場合には、ひとまず「Grammarlyをアンインストールまたはログアウト」→「Wordのスペル・文法チェックを活用」→「執筆が完了したら再度Grammarlyを導入する」といった運用スタイルでしのぐのが現実的な解決策となるケースが多いです。
まとめ:適切なステップで調査し、確実に原因を切り分けよう
Word 2021において「Hide Spelling Errors」「Hide Grammar Errors」が勝手にオンになる問題は、原因が複数存在することが少なくありません。アドインの影響やテンプレートの破損、レジストリの不具合などを一つひとつ切り分けていくことが解決への近道です。特にGrammarlyがインストールされている環境では、2024年4月頃のアップデートで同様の現象が多発したとの報告もあり、まずはアドイン側での対処を最優先に試してみるのが望ましいでしょう。
校閲機能が正常に働かない状態は、文章の品質を落とすだけでなく、執筆時間や労力の増大にも直結します。ぜひご紹介した対策を活用して、Wordによる校閲がスムーズに行える環境を取り戻してください。書類作成やレポート提出に余裕を持たせ、ストレスなく執筆を続けられるよう、しっかりとチェックを重ねていきましょう。
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