TypeScriptのmapメソッドで配列要素に型を指定する方法

TypeScriptにおいて、mapメソッドは配列の各要素に対して指定した関数を適用し、新しい配列を生成する便利な手法です。しかし、TypeScriptでは型の安全性が重視されているため、mapメソッドを使用する際にも適切に型を指定することが重要です。特に、大規模なプロジェクトやチームでの開発では、型を明確にすることで予期しないエラーを防ぎ、コードのメンテナンス性を向上させることができます。本記事では、mapメソッドを使用する際にどのように型を指定し、コードの安定性を保つかを詳細に解説します。

目次

mapメソッドの基本構文

TypeScriptにおけるmapメソッドの基本的な構文は、JavaScriptと同様です。mapは、配列の各要素に対して指定したコールバック関数を実行し、その結果から新しい配列を生成します。このコールバック関数は、引数として現在の要素、インデックス、および元の配列を取ることができます。

const numbers = [1, 2, 3, 4];
const doubledNumbers = numbers.map((num) => num * 2);

console.log(doubledNumbers); // [2, 4, 6, 8]

上記の例では、mapメソッドが配列numbersの各要素に対して関数num * 2を実行し、要素を2倍にした新しい配列doubledNumbersが生成されます。TypeScriptの場合、このmapメソッドにも型を指定しておくと、さらに安全にコーディングができます。

型を指定する理由

TypeScriptでmapメソッドを使用する際に型を指定することは、コードの安定性と可読性を高めるために非常に重要です。型を指定する主な理由として、次のような点が挙げられます。

1. 予期しないエラーを防ぐ

型を明示的に指定することで、TypeScriptのコンパイラがコードの型チェックを行い、間違った型が使われた場合にエラーを警告してくれます。これにより、実行時エラーの発生を未然に防ぎ、プログラムの動作が予測可能になります。

2. コードの可読性を向上させる

型を指定することで、他の開発者がコードを読んだときに、どのようなデータが期待されているのかが明確になります。特に複雑なプロジェクトやチームでの開発では、型指定はコードの理解を助ける重要な手段です。

3. オートコンプリートと型推論のサポート

型指定を行うと、IDE(統合開発環境)によるオートコンプリートや型推論がより正確に働くようになります。これにより、効率的にコーディングできるだけでなく、ミスを減らすことができます。

4. メンテナンスのしやすさ

型が明確に指定されていると、コードを変更する際に誤った変更を防ぎやすくなり、長期的なメンテナンスが容易になります。データの構造や期待される値が変更された場合でも、型のチェックによって適切な修正が行えます。

このように、型指定は単なる保険ではなく、プログラムの堅牢性と開発の効率を向上させるための強力なツールです。

型推論と明示的な型指定の違い

TypeScriptでは、型推論という強力な機能が備わっており、多くの場合、明示的に型を指定しなくてもコンパイラが適切な型を推測してくれます。しかし、型推論と明示的な型指定の違いを理解することで、より柔軟で正確なコーディングが可能になります。

1. 型推論の自動機能

TypeScriptは、変数の初期値や関数の戻り値などから自動的に型を推論します。以下の例では、numbersという配列の型はnumber[]と自動的に推論されます。

const numbers = [1, 2, 3, 4];
const doubledNumbers = numbers.map((num) => num * 2); // TypeScriptはdoubledNumbersの型をnumber[]と推論

この場合、mapメソッドのコールバック関数の引数numの型も自動的にnumberと推論されます。単純な操作では型推論が十分に機能しますが、複雑な処理や異なる型のデータを扱う場合には、明示的な型指定が必要です。

2. 明示的な型指定

複雑な配列や異なる型の要素を操作する場合、型推論だけでは不十分なケースがあり、明示的に型を指定することで、正確な型安全性を確保できます。

const mixedArray: (number | string)[] = [1, 'two', 3, 'four'];
const numberStrings = mixedArray.map((item): string => item.toString());

上記の例では、mixedArraynumberstringが混在しているため、mapメソッド内で各要素を文字列として処理するために、明示的にコールバック関数の戻り値の型をstringと指定しています。

3. 複雑なオブジェクトやデータ構造の型指定

データがオブジェクトや複数のプロパティを持つ場合、明示的に型を指定することが推奨されます。例えば、オブジェクトの配列を操作する際、正しい型を指定することで、各プロパティに対する誤った操作を防ぐことができます。

type User = {
  name: string;
  age: number;
};

const users: User[] = [
  { name: "Alice", age: 25 },
  { name: "Bob", age: 30 },
];

const userNames = users.map((user): string => user.name);

この例では、Userという型を定義し、mapメソッドでUser型の配列からnameプロパティを抽出しています。明示的な型指定により、エディタが各プロパティを正しく認識し、コードの安全性を高めることができます。

4. 明示的な型指定の利点

明示的に型を指定することで、TypeScriptの型チェック機能がさらに強力に働き、意図しないデータ型の使用によるバグを未然に防ぐことができます。特に、複数のデータ型や異なる構造を持つデータを操作する場合、型推論に頼らず、明示的に型を指定することが重要です。

型推論は便利な機能ですが、複雑な場面では明示的に型を指定することで、より正確で堅牢なコードが書けるようになります。

mapメソッドでの型指定の具体例

TypeScriptでmapメソッドを使用する際に、配列の要素に型を指定することで、より安全なコーディングが可能になります。ここでは、具体的なコード例を通して、mapメソッドで型を指定する方法を説明します。

1. 基本的な型指定の例

配列の各要素が特定の型を持つ場合、その型を明示的に指定することで、誤った操作や予期しないエラーを防ぐことができます。以下は、数値の配列に対してmapメソッドを使って新しい配列を生成する例です。

const numbers: number[] = [1, 2, 3, 4];
const doubledNumbers: number[] = numbers.map((num: number): number => num * 2);

console.log(doubledNumbers); // [2, 4, 6, 8]

この例では、配列numbersと新しい配列doubledNumbersの両方に対してnumber[]という型を指定しています。また、mapメソッドのコールバック関数内で引数numにもnumber型を指定し、戻り値もnumber型であることを明示しています。

2. オブジェクト配列の型指定例

次に、オブジェクトの配列をmapメソッドで処理する例を紹介します。この場合、オブジェクトの各プロパティに型を指定し、適切な処理を行います。

type Product = {
  name: string;
  price: number;
};

const products: Product[] = [
  { name: "Apple", price: 100 },
  { name: "Banana", price: 80 },
];

const productNames: string[] = products.map((product: Product): string => product.name);

console.log(productNames); // ["Apple", "Banana"]

この例では、Productという型を定義し、それをproducts配列に適用しています。そして、mapメソッドで各オブジェクトのnameプロパティを取り出し、新しい配列productNamesを生成します。これにより、型の安全性が保たれ、意図しないエラーを防ぐことができます。

3. 型エイリアスを使った型指定例

より複雑な型を使う場合、型エイリアスを活用すると、mapメソッドの型指定がさらに簡潔になります。以下は、型エイリアスを用いてmapメソッドの型指定を行う例です。

type User = {
  id: number;
  name: string;
  age: number;
};

const users: User[] = [
  { id: 1, name: "Alice", age: 25 },
  { id: 2, name: "Bob", age: 30 },
];

const userAges: number[] = users.map((user: User): number => user.age);

console.log(userAges); // [25, 30]

このように、型エイリアスを使って複雑なデータ構造を簡潔に表現し、mapメソッドで型を指定することで、コードの可読性と保守性を向上させることができます。

4. 複数の型を扱う場合の型指定例

配列内に複数の型が混在している場合にも、明示的な型指定が重要です。例えば、数値と文字列が混在する配列を処理する場合、型の指定方法を工夫する必要があります。

const mixedArray: (number | string)[] = [1, "two", 3, "four"];
const stringArray: string[] = mixedArray.map((item: number | string): string => item.toString());

console.log(stringArray); // ["1", "two", "3", "four"]

この例では、numberstringの両方が含まれる配列mixedArrayに対してmapメソッドを使い、各要素を文字列に変換しています。このように、複数の型を扱う場合でも、適切に型を指定することで安全に操作できます。

型を明示的に指定することで、TypeScriptはより正確に型をチェックし、エラーを未然に防ぐことができます。

ジェネリック型を使用したmapメソッド

TypeScriptのジェネリック型は、柔軟性と型安全性を両立させる強力な機能です。mapメソッドでもジェネリック型を使用することで、さまざまな型に対応した汎用的なコードを記述することが可能です。ここでは、ジェネリック型を使ってmapメソッドをより柔軟に利用する方法を紹介します。

1. ジェネリック型とは

ジェネリック型は、特定の型に依存しない関数やクラスを定義するために使用されます。これにより、異なる型に対して同じロジックを適用できる柔軟なコードを記述することができます。mapメソッドでも、ジェネリック型を使用することで、入力と出力の型を自由に指定できます。

2. ジェネリック型を使ったmapメソッドの例

以下の例では、ジェネリック型を使ってmapメソッドで配列の要素を変換する際に、任意の型に対応するようにしています。

function mapArray<T, U>(array: T[], callback: (item: T) => U): U[] {
  return array.map(callback);
}

const numbers = [1, 2, 3, 4];
const strings = mapArray(numbers, (num) => num.toString());

console.log(strings); // ["1", "2", "3", "4"]

この例では、mapArray関数にジェネリック型T(入力の型)とU(出力の型)を使っています。これにより、どのような型の配列にも適用できる汎用的なmap関数を定義しています。

3. 複数の型変換を行う場合のジェネリック型の活用

ジェネリック型を使用すると、異なる型への変換も安全に行えます。次の例では、オブジェクトの配列を別の型に変換する際にジェネリック型を活用しています。

type User = {
  id: number;
  name: string;
  age: number;
};

type UserSummary = {
  id: number;
  name: string;
};

function mapUsers<T extends User, U extends UserSummary>(users: T[], callback: (user: T) => U): U[] {
  return users.map(callback);
}

const users: User[] = [
  { id: 1, name: "Alice", age: 25 },
  { id: 2, name: "Bob", age: 30 },
];

const userSummaries = mapUsers(users, (user) => ({
  id: user.id,
  name: user.name,
}));

console.log(userSummaries); // [{ id: 1, name: "Alice" }, { id: 2, name: "Bob" }]

この例では、User型からUserSummary型への変換を行っています。ジェネリック型TUを使うことで、異なる型のデータを安全に処理することができます。

4. ジェネリック型と型推論の併用

ジェネリック型を使用しても、TypeScriptの型推論が働くため、明示的に型を指定しなくても適切に型を推論してくれます。次の例では、型を指定せずにジェネリック型を使ったmapメソッドを定義しています。

function mapItems<T, U>(items: T[], callback: (item: T) => U): U[] {
  return items.map(callback);
}

const booleanArray = mapItems([1, 2, 3], (num) => num % 2 === 0);

console.log(booleanArray); // [false, true, false]

ここでは、mapItems関数が入力として数値の配列を受け取り、出力としてboolean型の配列を返しています。このように、ジェネリック型と型推論を組み合わせることで、型安全で柔軟な処理が可能になります。

ジェネリック型を活用することで、mapメソッドの柔軟性と型安全性を高めることができ、異なる型を扱う複雑な処理にも対応できる汎用的なコードを記述することが可能です。

型エイリアスを活用した型指定

TypeScriptでは、型エイリアス(typeキーワード)を使用して、複雑な型を簡潔に表現することができます。特にmapメソッドのような配列操作で複雑なデータ構造を扱う際には、型エイリアスを使うことでコードをより読みやすくし、再利用性を高めることができます。ここでは、型エイリアスを使ったmapメソッドの型指定方法を説明します。

1. 型エイリアスとは

型エイリアスは、特定の型に別名を付ける機能で、複雑な型定義をシンプルにするために使われます。特にオブジェクトや複数の型を含む構造では、型エイリアスを活用することで、コードの可読性と保守性を向上させることができます。

type Product = {
  id: number;
  name: string;
  price: number;
};

このように、Product型というエイリアスを作成し、それを使ってコード内の複数の場所で同じ型を使えるようになります。

2. 型エイリアスを使ったmapメソッドの例

次に、型エイリアスを使ってmapメソッドに型を指定する方法を見てみましょう。

type Product = {
  id: number;
  name: string;
  price: number;
};

const products: Product[] = [
  { id: 1, name: "Apple", price: 100 },
  { id: 2, name: "Banana", price: 80 },
];

type ProductSummary = {
  id: number;
  name: string;
};

const productSummaries: ProductSummary[] = products.map((product: Product): ProductSummary => {
  return { id: product.id, name: product.name };
});

console.log(productSummaries); // [{ id: 1, name: "Apple" }, { id: 2, name: "Banana" }]

この例では、Productという型エイリアスを使って商品の情報を表し、それをmapメソッドで加工してProductSummaryという新しい型に変換しています。型エイリアスを使うことで、型の再利用性が高まり、コードが見やすくなっています。

3. ネストした型エイリアスの活用

型エイリアスは、ネストされたオブジェクトや複数の型を含む構造にも適用できます。以下は、さらに複雑なデータ構造に対して型エイリアスを使用する例です。

type Address = {
  city: string;
  country: string;
};

type User = {
  id: number;
  name: string;
  address: Address;
};

const users: User[] = [
  { id: 1, name: "Alice", address: { city: "Tokyo", country: "Japan" } },
  { id: 2, name: "Bob", address: { city: "New York", country: "USA" } },
];

type UserLocation = {
  name: string;
  city: string;
};

const userLocations: UserLocation[] = users.map((user: User): UserLocation => {
  return { name: user.name, city: user.address.city };
});

console.log(userLocations); // [{ name: "Alice", city: "Tokyo" }, { name: "Bob", city: "New York" }]

この例では、Address型とUser型という二つの型エイリアスを作成し、それを使用してユーザーデータを管理しています。mapメソッドでUser型からUserLocation型に変換する際も、エイリアスを活用してコードの見通しをよくしています。

4. 型エイリアスとジェネリック型の組み合わせ

型エイリアスは、ジェネリック型とも組み合わせて使用できます。これにより、さらに柔軟で再利用性の高いコードを記述することが可能です。

type ApiResponse<T> = {
  data: T[];
  status: string;
};

type Product = {
  id: number;
  name: string;
  price: number;
};

const response: ApiResponse<Product> = {
  data: [
    { id: 1, name: "Apple", price: 100 },
    { id: 2, name: "Banana", price: 80 },
  ],
  status: "success",
};

const productNames: string[] = response.data.map((product: Product) => product.name);

console.log(productNames); // ["Apple", "Banana"]

この例では、ApiResponseというジェネリック型を使って、APIから返ってくるデータの型を柔軟に管理しています。Product型と組み合わせることで、APIのレスポンスデータを簡潔に表現し、再利用性を高めています。

型エイリアスを活用することで、複雑な型の構造を整理し、mapメソッドの型指定も明確かつ簡潔に行うことができます。これにより、コードの可読性や保守性が向上し、長期的なプロジェクトにおいても効果的です。

mapメソッドにおけるエラーハンドリング

mapメソッドは非常に便利ですが、実際に使用する際には、適切なエラーハンドリングが重要です。特に型を使用しているTypeScriptでは、型のミスマッチや予期しないデータによってエラーが発生する可能性があります。本セクションでは、mapメソッドを使った場合に、どのようにエラーハンドリングを行うかについて説明します。

1. 型エラーの防止

TypeScriptを使っている場合、コンパイル時に型エラーを防ぐことができるのが大きな利点です。しかし、動的に生成されるデータや外部APIからのデータを扱う場合には、予期しない型が紛れ込むことがあります。これに対して、mapメソッドの前に型チェックを入れることで、実行時エラーを回避することが可能です。

type Product = {
  id: number;
  name: string;
  price?: number;
};

const products: Product[] = [
  { id: 1, name: "Apple", price: 100 },
  { id: 2, name: "Banana" }, // priceがない
  { id: 3, name: "Orange", price: 150 }
];

const validPrices = products.map((product) => {
  if (product.price !== undefined) {
    return product.price * 2;
  } else {
    console.error(`Product ID ${product.id} の価格が存在しません`);
    return null;
  }
});

console.log(validPrices); // [200, null, 300]

この例では、priceが必ずしも存在しない可能性があるため、事前にpriceの存在チェックを行い、エラーが発生した場合にはnullを返すようにしています。このように、型チェックを行うことで、予期しないデータが含まれていた場合でも実行時エラーを防ぐことができます。

2. try-catchを使ったエラーハンドリング

場合によっては、mapメソッド内でエラーが発生することがあります。TypeScriptでは通常、型安全性によって多くのエラーを防げますが、ロジック上のエラーが発生する可能性もあります。そのような場合、try-catchブロックを使ってエラーをキャッチし、安全に処理を進めることができます。

const numbers = [1, 2, 3, null, 5];

const doubledNumbers = numbers.map((num) => {
  try {
    if (num === null) {
      throw new Error("数値がnullです");
    }
    return num * 2;
  } catch (error) {
    console.error(error.message);
    return 0;
  }
});

console.log(doubledNumbers); // [2, 4, 6, 0, 10]

この例では、nullが含まれている配列を処理しており、nullに対して数値演算を行うとエラーが発生します。それを防ぐために、try-catchブロックを使い、nullの場合にはエラーをキャッチして処理を続けています。

3. 非同期処理におけるエラーハンドリング

mapメソッドを使う場面で、非同期処理を行うこともあります。この場合、Promiseasync/awaitを使ったエラーハンドリングが必要です。非同期処理におけるmapメソッドの利用方法を次に示します。

const fetchData = async (id: number): Promise<string> => {
  if (id === 3) {
    throw new Error("データ取得失敗");
  }
  return `Data for ID: ${id}`;
};

const processData = async () => {
  const ids = [1, 2, 3, 4];

  const results = await Promise.all(
    ids.map(async (id) => {
      try {
        return await fetchData(id);
      } catch (error) {
        console.error(`ID ${id} のデータ取得に失敗しました: ${error.message}`);
        return null;
      }
    })
  );

  console.log(results); // ["Data for ID: 1", "Data for ID: 2", null, "Data for ID: 4"]
};

processData();

この例では、fetchData関数が非同期処理を行い、一部のIDに対してエラーが発生する可能性があります。mapメソッド内で非同期関数を使う際には、async/await構文を使用し、try-catchでエラーハンドリングを行っています。また、Promise.allを使ってすべてのPromiseが解決されるまで待つようにしています。

4. nullやundefinedの扱い

TypeScriptでは、nullundefinedが入ってくる可能性を考慮したコードを書くことが重要です。mapメソッドを使用する際、要素がnullundefinedである場合にどのように処理するかをあらかじめ決めておくと、予期しないエラーを防げます。

const items: (number | null)[] = [1, null, 3];

const validItems = items.map((item) => item ?? 0);

console.log(validItems); // [1, 0, 3]

この例では、nullが含まれている配列に対して、??(nullish coalescing)演算子を使って、nullまたはundefinedである場合にはデフォルト値として0を返しています。

エラーハンドリングを適切に行うことで、mapメソッドを使用する際にも、より堅牢で信頼性の高いコードを書くことができます。

応用例: 複雑な型の配列をmapで処理する

TypeScriptでmapメソッドを使う場合、単純な型だけでなく、複雑な型の配列を操作することもあります。特に、ネストされたオブジェクトや複数の型を持つデータを処理する際には、適切に型を指定し、データ構造を理解した上で操作することが重要です。このセクションでは、複雑な型を持つ配列をmapメソッドで処理する応用例を紹介します。

1. ネストされたオブジェクトを処理する

ネストされたオブジェクトを含む配列を操作する場合、各プロパティにアクセスして処理を行う必要があります。以下の例では、ユーザー情報を持つオブジェクトの配列から、住所情報を抽出し、新しい配列を生成します。

type Address = {
  city: string;
  country: string;
};

type User = {
  id: number;
  name: string;
  address: Address;
};

const users: User[] = [
  { id: 1, name: "Alice", address: { city: "Tokyo", country: "Japan" } },
  { id: 2, name: "Bob", address: { city: "New York", country: "USA" } },
  { id: 3, name: "Charlie", address: { city: "London", country: "UK" } },
];

const cities = users.map((user) => user.address.city);

console.log(cities); // ["Tokyo", "New York", "London"]

この例では、User型の配列からaddressプロパティにアクセスし、cityだけを抽出しています。ネストされたオブジェクトも、型を正確に指定することで安全に操作できます。

2. 複数の型を持つ配列を処理する

配列の中に複数の型が混在している場合、mapメソッドを使ってそれらを適切に処理する必要があります。以下は、number型とstring型が混在する配列をmapメソッドで処理する例です。

type MixedType = number | string;

const mixedArray: MixedType[] = [1, "two", 3, "four"];

const processedArray = mixedArray.map((item) => {
  if (typeof item === "number") {
    return item * 2; // 数値の場合は2倍に
  } else {
    return item.toUpperCase(); // 文字列の場合は大文字に
  }
});

console.log(processedArray); // [2, "TWO", 6, "FOUR"]

この例では、配列内にnumberstringが混在しているため、各要素の型をチェックしながら処理を行っています。typeof演算子を使用して、要素がnumberstringかを判定し、それぞれに応じた処理を行います。

3. オブジェクトと配列を含む複雑なデータ構造

さらに複雑なデータ構造として、オブジェクトの中に配列を持つ場合や、配列内にオブジェクトがネストされている場合があります。これらをmapメソッドでどのように処理するかを見てみましょう。

type Product = {
  id: number;
  name: string;
  categories: string[];
};

const products: Product[] = [
  { id: 1, name: "Laptop", categories: ["Electronics", "Computers"] },
  { id: 2, name: "Shoes", categories: ["Fashion", "Footwear"] },
  { id: 3, name: "Watch", categories: ["Fashion", "Accessories"] },
];

const productCategories = products.map((product) => ({
  name: product.name,
  mainCategory: product.categories[0],
}));

console.log(productCategories);
// [{ name: "Laptop", mainCategory: "Electronics" }, { name: "Shoes", mainCategory: "Fashion" }, { name: "Watch", mainCategory: "Fashion" }]

この例では、Product型の配列をmapメソッドで処理し、各商品から最初のカテゴリだけを抽出して新しいオブジェクトを生成しています。配列の中のオブジェクトや、オブジェクトの中にネストされた配列を操作する場合でも、型を明確にすることで安全にデータを処理できます。

4. 複数のプロパティを変換する例

複数のプロパティを持つオブジェクト配列を操作し、いくつかのプロパティを変換した新しいオブジェクトを作成することも可能です。以下は、商品データの価格を変換し、価格に税金を追加する例です。

type Product = {
  id: number;
  name: string;
  price: number;
};

const products: Product[] = [
  { id: 1, name: "Laptop", price: 1000 },
  { id: 2, name: "Shoes", price: 200 },
  { id: 3, name: "Watch", price: 150 },
];

const productsWithTax = products.map((product) => ({
  ...product,
  priceWithTax: product.price * 1.1,
}));

console.log(productsWithTax);
// [
//   { id: 1, name: "Laptop", price: 1000, priceWithTax: 1100 },
//   { id: 2, name: "Shoes", price: 200, priceWithTax: 220 },
//   { id: 3, name: "Watch", price: 150, priceWithTax: 165 }
// ]

この例では、mapメソッドで元のProductオブジェクトに新しいpriceWithTaxプロパティを追加し、元の価格に税金を加えた値を計算しています。...(スプレッド演算子)を使って元のプロパティを維持しながら、新しいプロパティを追加することが可能です。

複雑な型の配列をmapメソッドで処理する場合でも、型を明確に指定し、各要素に対する操作を適切に行うことで、安全かつ効率的にデータを変換できます。

mapメソッドを使った演習問題

ここでは、これまで学んだTypeScriptにおけるmapメソッドの型指定や応用方法を実際に試してみる演習問題を提供します。これらの問題に取り組むことで、mapメソッドの使い方に慣れ、複雑なデータ構造を処理するスキルを身につけることができます。

1. 基本問題: 配列の要素を変換する

次のnumber型の配列を用意しています。この配列をmapメソッドを使って、全ての要素を2倍にして新しい配列を作成してください。

const numbers: number[] = [5, 10, 15, 20];

// 問題: この配列の要素を2倍にして新しい配列を作成するコードを書いてください。

解答例

const doubledNumbers = numbers.map((num) => num * 2);
console.log(doubledNumbers); // [10, 20, 30, 40]

2. 中級問題: オブジェクト配列を加工する

次に、ユーザー情報を持つオブジェクト配列が以下のように与えられています。各ユーザーの年齢を1歳増やした新しいオブジェクトの配列を作成してください。

type User = {
  name: string;
  age: number;
};

const users: User[] = [
  { name: "Alice", age: 25 },
  { name: "Bob", age: 30 },
  { name: "Charlie", age: 35 },
];

// 問題: 全てのユーザーの年齢を1歳増やし、新しいオブジェクトの配列を作成してください。

解答例

const updatedUsers = users.map((user) => ({
  ...user,
  age: user.age + 1,
}));

console.log(updatedUsers);
// [{ name: "Alice", age: 26 }, { name: "Bob", age: 31 }, { name: "Charlie", age: 36 }]

3. 応用問題: 複数の型を持つ配列を処理する

次に、numberstringが混在する配列が与えられています。この配列をmapメソッドで処理し、numberの場合は2倍、stringの場合は大文字に変換した新しい配列を作成してください。

type MixedType = number | string;

const mixedArray: MixedType[] = [1, "hello", 3, "world"];

// 問題: numberは2倍に、stringは大文字に変換するコードを書いてください。

解答例

const transformedArray = mixedArray.map((item) => {
  if (typeof item === "number") {
    return item * 2;
  } else {
    return item.toUpperCase();
  }
});

console.log(transformedArray); // [2, "HELLO", 6, "WORLD"]

4. 発展問題: オブジェクトのネストを処理する

最後に、商品の情報を含むオブジェクト配列が与えられています。各商品の価格に10%の税金を加えた新しいオブジェクト配列を作成し、税金込みの価格を追加してください。

type Product = {
  id: number;
  name: string;
  price: number;
};

const products: Product[] = [
  { id: 1, name: "Laptop", price: 1000 },
  { id: 2, name: "Phone", price: 500 },
  { id: 3, name: "Tablet", price: 300 },
];

// 問題: 価格に10%の税金を加えた新しいオブジェクト配列を作成し、税金込みの価格をpriceWithTaxというプロパティに追加してください。

解答例

const productsWithTax = products.map((product) => ({
  ...product,
  priceWithTax: product.price * 1.1,
}));

console.log(productsWithTax);
// [
//   { id: 1, name: "Laptop", price: 1000, priceWithTax: 1100 },
//   { id: 2, name: "Phone", price: 500, priceWithTax: 550 },
//   { id: 3, name: "Tablet", price: 300, priceWithTax: 330 }
// ]

これらの演習問題を解くことで、mapメソッドの使い方に慣れ、様々なデータ型に対する処理を効率的に行えるようになるはずです。特に、複雑な型を持つデータ構造を扱うスキルが身につくことで、より高度なTypeScriptプログラミングに対応できるようになります。

まとめ

本記事では、TypeScriptのmapメソッドにおける型指定の方法について解説しました。基本的な型指定から、ジェネリック型や型エイリアスを活用した応用的な使い方までを取り上げ、複雑なデータ構造を安全に操作する手法を学びました。また、エラーハンドリングや実践的な演習問題を通じて、実際の開発に役立つ知識を深めることができました。mapメソッドを効果的に使いこなすことで、型安全なコードを書き、バグを未然に防ぐことが可能になります。

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