Windows Server 2019 のリモートデスクトップサービス(RDS)環境では、セッション中に画面が突然フリーズし、操作がまったくできなくなる問題に直面することがあります。一時的な切断と再接続で対処できる場合もありますが、恒久的な対策を講じなければ業務に大きな影響が及ぶ可能性があります。本記事では、フリーズの主な原因や実際に取るべき設定・検証手順を詳しく解説し、トラブルを最小限に抑えるためのポイントを紹介します。
RDSセッションがフリーズする主な原因
RDSセッションがフリーズする原因は多岐にわたりますが、以下の項目を中心に見直すことが効果的です。これらの問題点を洗い出すだけでも、トラブルシューティングの道筋が明確になります。
1. ネットワークの不安定さ
ネットワークの遅延や不安定さは、RDSセッションのパフォーマンスに直結する要因です。特に UDP 接続を併用している環境では、UDP パケットが正常にやり取りできないとセッションの再描画がうまくいかず、フリーズ状態のように見えることがあります。
物理ネットワークのチェック
- LANケーブルの断線や劣化
- スイッチやルーターの異常
- VLAN設定やVPNなどのトンネル構成
- 上流回線の帯域幅や混雑状況
これらのネットワーク要素に問題があると、RDSセッション全体の安定性に影響が出ます。まずはサーバー側やクライアント側を含めた物理的な接続、スイッチのポート設定、ファイアウォールのルールをしっかり確認しましょう。
DNS設定や名前解決の問題
リモートデスクトップでの接続が名前解決に依存している場合、DNSの設定ミスやレコードの不整合が原因で断続的にセッションが不安定になるケースがあります。FQDN が正しく解決できているか、サーバーやクライアントが参照している DNS サーバーに問題がないかを確かめることも重要です。
2. ユーザープロファイルの破損
特定のユーザーだけが頻繁にフリーズするのであれば、そのユーザープロファイルに問題がある可能性が高いです。プロファイルの破損は、ログイン時やアプリケーション起動時に必要な情報が正常に読み込めないことを引き起こし、その結果セッションが応答しなくなることがあります。
- 一度アカウントを削除・再作成し、新しいプロファイルで動作確認
- プロファイルリダイレクトを使用している環境の場合、リダイレクト先のストレージのパフォーマンスやアクセス権限のチェック
3. OSやドライバの更新不足
Windows Server 2019 で提供されるアップデートやドライバ更新を適用していないと、既知の不具合が残ったままの状態で運用されることになります。特にグラフィックドライバやネットワークドライバは RDP 通信に関わることが多く、最新のドライバにアップデートすることでセッションの安定性が大幅に向上する場合があります。
ドライバ検証ツール (Driver Verifier) の活用
Windows には「Driver Verifier」というコマンドラインツールが標準搭載されており、システム内のドライバ動作を詳しく監視できます。問題のあるドライバが見つかるとシステムイベントにエラーが記録されるため、不具合の原因特定に役立ちます。
verifier /standard /driver *
たとえば上記のコマンドを実行してから再起動すると、標準的なテストがすべてのドライバに適用されます。問題が発生しやすいドライバのみを指定して検証したい場合は、/driver
オプションに対象のドライバ名を指定できます。テストが完了したら、再度 verifier /reset
コマンドで Driver Verifier を停止しておきましょう。
4. RDSセッションのタイムアウトや再接続ポリシー
RDSホストのグループポリシーやローカルポリシーで、セッションのタイムアウト設定が短すぎると、特に通信が不安定な状態で一時的に応答が返ってこない場合にセッションが切断扱いとなり、フリーズに近い挙動が見られることがあります。
下記のようなタイムアウトに関する設定を確認しましょう。
設定項目 | 意味 | 推奨値 |
---|---|---|
切断セッションを終了するまでの時間 | 切断されたセッションを保持する時間 | 20~120分程度 |
アイドルセッション制限 | ユーザーが操作しない時の制限時間 | 30~120分程度 |
アクティブセッション制限 | アクティブな状態を維持する制限時間 | 環境によって適宜調整 |
再接続時の動作(前回のセッションに戻す) | 切断されたセッションに再接続するか | 有効化(Yes)を推奨 |
5. RDP の UDP 通信が引き起こす問題
RDPはTCPとUDPを併用しますが、ネットワーク品質によってはUDPが不安定になり、セッションがフリーズするように見えることがあります。こういった場合、UDPを無効化してTCPのみに限定すると、フリーズ現象が軽減または解消するケースが報告されています。
具体的な対策と手順
ここからは、実際にフリーズを起こす要因を絞り込み、対処していくための具体的な方法を紹介します。業務を支えるRDS環境を安定運用するため、ぜひ順番に試してみてください。
1. クライアント側で「Turn Off UDP On Client」を有効化
クライアントのグループポリシーを使用して、RDPセッションでUDP通信を無効化します。
- 「gpedit.msc」を起動し、以下のパスへ移動
- コンピューターの構成
- 管理用テンプレート
- Windows コンポーネント
- リモート デスクトップ サービス
- リモート デスクトップ接続クライアント
- 「クライアントでの UDP をオフにする (Turn Off UDP On Client)」をダブルクリック
- 「有効」を選択し、設定を適用
- PCを再起動してポリシーが反映された状態で、再度 RDS に接続して動作確認
もし UDP 通信による問題が原因だった場合、この設定変更だけでフリーズ現象が明らかに減少、あるいは解消することがあります。
2. ネットワーク診断とインフラの見直し
RDSセッションのパフォーマンスを確保するうえで、ネットワークは最も重要な基盤です。以下のような項目を確認し、必要な場合は対策を講じましょう。
回線の帯域幅とレイテンシの測定
- ping や tracert コマンドで、サーバーまでの往復遅延やパケットロスの有無をチェック
- ネットワーク診断ツールを使い、実際の帯域幅(下り/上り)を測定
もし通信速度が大幅に遅い、または途切れがちであれば、プロバイダ側の回線障害やVPNの設定不備を疑う余地があります。
ファイアウォールやプロキシサーバーの影響
- 企業のセキュリティポリシーとして特定ポートがブロックされている
- ウイルス対策ソフトのリアルタイム検出により通信が遅延している
- RDPのポート(通常TCP 3389/UDP 3389)が適切に許可されているか
最終的にはネットワーク管理者やセキュリティ担当者と協力して、RDS通信に必要なポートやプロトコルが正しく許可されているかを確認してください。
3. ユーザープロファイルの再作成
限定的に発生するフリーズが、特定のユーザーアカウントに紐づいている場合はプロファイルの再作成が有力な手立てです。
- サーバー管理ツールから対象ユーザーをいったん削除
- サーバー上のユーザーフォルダー(C:\Users\[UserName] など)も念のためバックアップを取得後に削除
- 再度アカウントを作成し、新規プロファイルでログイン
- アプリケーションやドキュメントが正常に利用できるかを確認
特にプロファイルのリダイレクト(フォルダリダイレクトやユーザープロファイルディスクなど)を採用している場合、リダイレクト先のNASやファイルサーバーの状態も併せてチェックしましょう。
4. OS・ドライバの更新とDriver Verifierの活用
サーバーやクライアント双方で、OSアップデート・デバイスドライバを最新の状態に保つことは、セキュリティだけでなくパフォーマンス面でも重要です。
Windows Updateとサーバー更新のポイント
- 定期的にWindows Updateを実行し、重要・推奨アップデートを適用
- サーバー環境であれば WSUS(Windows Server Update Services)などを利用し、更新プログラムをテスト環境で検証のうえ本番適用
- 重大な不具合の修正が含まれる場合は、なるべく早期適用を検討
Driver Verifierでの検証手順
- 管理者権限のコマンドプロンプトを開く
verifier /standard /driver *
を実行して再起動- フリーズ現象が再現するかをチェックし、イベントビューアでドライバエラーを確認
- テスト終了後は
verifier /reset
でドライバ検証を無効化
もし特定のドライバでエラーが検出されたら、そのドライバを最新バージョンにアップデートするか、ベンダーサイトから適切な修正パッチを入手します。
5. RDSセッションのタイムアウト設定を調整
セッション管理のポリシーでタイムアウト値や再接続動作を柔軟に設定することで、フリーズらしき現象が実は切断やアイドル制限だったというケースを防げます。
- グループポリシーエディタ、またはサーバーマネージャーの「リモートデスクトップサービス」設定を開く
- 「セッションコレクション」や「セッション制限」などの項目でタイムアウトと再接続設定を確認
- アイドル状態や切断セッションを切り捨てるまでの時間をやや長めに設定
- 「再接続時に前回のセッションに戻す」を有効化する
環境によってはあえて短めに設定している場合もありますが、その設定がユーザー操作中の通信断を誘発していたら本末転倒です。極端な値ではないか見直してみましょう。
改善状況のモニタリングと追加検討事項
対策を実施してフリーズが解消したとしても、しばらくは観察を続け、再発リスクを低減するための運用体制を整えることが大切です。
定期的なログの取得
イベントビューア(Windows ログ、アプリケーション、システム、リモートデスクトップサービスログ)にエラーや警告が残っていないか、決まったスケジュールで確認すると良いでしょう。特にネットワーク関連のエラーログや Kerberos 認証失敗のログが断続的に発生していないかをチェックしてください。
性能モニター (PerfMon) の活用
PerfMon(パフォーマンスモニター)を使い、CPU使用率・メモリ使用量・ネットワークアダプターのカウンターを可視化することで、フリーズ時に資源枯渇や異常なスパイクが起きていないかを確認できます。
代表的な監視カウンター
- Processor(_Total)\% Processor Time
CPU全体の使用率を把握 - Memory\Available MBytes
利用可能メモリ量が極端に少なくないかをチェック - Network Interface(*)\Bytes Total/sec
ネットワーク通信量に急激な増減がないかを把握
これらのカウンターをグラフ化し、フリーズ発生の前後でどのような変化があったかを紐づけて見ていくことで、トラブル原因の絞り込みが進みます。
Microsoftサポートやコミュニティの活用
もし上記の対策をすべて行っても状況が改善しない場合には、Microsoftのサポートに問い合わせるか、テクニカルコミュニティ(Microsoft Q&A、TechNetなど)で同様の事例を調べてみるのも一つの手段です。ユーザーによっては独自の特異な環境要因(セキュリティソフトや特殊なネットワーク構成など)が絡む場合があり、一般的な対策では解決できないケースもあります。
まとめ:根本原因を丁寧に探り、再発防止策を徹底する
Windows Server 2019 の RDSセッションで生じる画面フリーズは、ネットワーク環境やユーザープロファイル、UDP通信の問題などが複合的に絡み合って発生します。特に「Turn Off UDP On Client」を有効化することで劇的に改善するケースは少なくありませんが、それだけで解決しない場合はネットワークやドライバ、セッションポリシーなどの総合的な見直しが必要です。
一度フリーズ問題が解決したように見えても、その根本原因が明確になっていないと再発する恐れがあります。本記事の対策を参考に、段階的な検証と継続的な運用監視を行い、安定したリモートデスクトップ環境を実現してください。
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