Windows Server 2019でKB5034768適用後のBSODを解決する方法

サーバー管理においては定期的なWindows Updateが欠かせませんが、ときにアップデート後にシステムが起動不能となる深刻な不具合が生じることもあります。ここでは、Windows Server 2019にKB5034768を適用した後に発生したBSOD(0xc000021aエラー)問題と対処法を解説します。

Windows Server 2019のKB5034768適用によるBSOD問題とは

Windows Server 2019 Standard (Version 1809) をご利用中の環境で、KB5034768適用後に0xc000021aエラーコードのブルースクリーン(BSOD)が発生する事例が報告されています。さらに、このBSODは毎回の再起動時に繰り返し発生し、実質的にサーバーが使用不能になるという重大な障害を引き起こします。
問題が起きる条件としては、Hyper-V上に構築した仮想マシン(VM)上でMicrosoft SQL Server 2014 (64-bit) を稼働させている環境で顕著に見られる傾向があり、同じISOファイルから作成された他のWindows Server 2019 VMでは生じないものの、SQLが稼働しているVMのみBSODになるという特徴があります。

0xc000021aエラーコードの概要

0xc000021aエラーコードは、Windowsの重要なシステムファイルやプロセス(WinLogonやCSRSSなど)に異常があった場合に発生するとされています。多くの場合、以下のような原因が考えられます。

  • ドライバの競合や不整合
  • システムファイルの破損
  • アンチウイルスやEDR(Endpoint Detection & Response)などのセキュリティソフトウェアとの競合
  • 更新プログラム適用によるファイルの置き換え不備

今回の事例では、SQL Serverが稼働している状態でKB5034768を適用すると起こるため、単なるファイル破損とは異なり、アプリケーションやドライバ、あるいはセキュリティ対策ソフトとの競合が強く疑われます。

Xcitium(Comodo)EDRクライアントドライバとの競合

類似の報告として、Xcitium(旧Comodo)のEDRクライアントがインストールされている環境で「edrdrv.sys」が原因でBSODが発生したケースがあります。もし同様のEDRクライアントを利用している場合、以下の手順でドライバを無効化・アンインストールすることで問題が解決することがあります。

  1. セーフモードでの起動
    システムが正常に立ち上がらない場合は、Windowsの高度な起動オプションからセーフモードを選択します。
  2. セーフモードでWindows Installerを有効化
    以下のレジストリを追加することで、セーフモードでもMSIを利用したアンインストールが可能になります。
REG ADD "HKLM\SYSTEM\CurrentControlSet\Control\SafeBoot\Minimal\MSIServer" /VE /T REG_SZ /F /D "Service"
REG ADD "HKLM\SYSTEM\CurrentControlSet\Control\SafeBoot\Network\MSIServer" /VE /T REG_SZ /F /D "Service"
  1. Xcitium EDRクライアントのアンインストール
    セーフモードでログイン後、コントロールパネルやコマンドラインからアンインストールを実施します。
  2. 再起動して通常モードを確認
    上記のアンインストールが完了したら再起動し、BSODの発生が解消されるか確認します。

これらの手順は、Xcitium EDRクライアントに限定されるものではなく、ほかのセキュリティ関連ドライバが原因であっても似たプロセスをたどることがあります。セキュリティソフトやドライバが複数稼働している場合は、まず競合の可能性を疑ってみると良いでしょう。

KB5034768アンインストールの具体的手順

もしサーバーが起動不能の状態に陥った場合、修復を行うには次のようにWindowsの高度なオプションを利用します。

保留中の操作を取り消す

  1. 高度なオプションからコマンドプロンプトを起動
    「修復(Repair your computer)」→「トラブルシューティング」→「コマンド プロンプト」を選択します。
  2. Windowsフォルダーがあるドライブレターを確認
    通常、コマンドプロンプトの環境下ではシステムドライブとしてD:が割り当てられていることがあります。dirコマンドでWindowsフォルダーを確認して正しいドライブを特定してください。
  3. 保留中の操作を取り消すコマンド
DISM /Image:D:\ /Cleanup-Image /RevertPendingActions

上記を実行すると、保留中の更新プログラムの操作をキャンセルして再起動後に復旧することを試みます。

個別パッケージの削除

もし「RevertPendingActions」でも解決しない場合は、更新プログラムのパッケージを個別に削除します。

  1. 直近でインストールされたパッケージ一覧の確認
DISM /image:D:\ /Get-Packages

これによって、どのパッケージがいつインストールされたかがわかります。

  1. 削除対象パッケージを指定
DISM /image:D:\ /Remove-Package /PackageName:<パッケージ名>

KB5034768に関連するパッケージ名を特定し、上記コマンドでパッケージを削除します。

  1. 再起動して動作確認
    パッケージの削除が終わったらコマンドプロンプトを閉じ、再起動後にシステムが正常に立ち上がるかを確認します。

暫定策と今後の展望

本問題がビジネス継続に与える影響は大きいため、速やかな対応が必要です。現時点では、KB5034768を適用しないように設定し、他のセキュリティパッチのみを選択的に導入する方法が最も確実とされています。

  • PowerShellでの更新プログラム制御
    PowerShellを利用して、特定のKBを除外してダウンロード・インストールするスクリプトを実行します。Update Moduleなどを活用し、該当KBをブロックして他のみをインストールすることで、セキュリティレベルをある程度確保できます。
  • Microsoftからの公式修正を待つ
    マイクロソフトがKB5034768の修正版や追加パッチを提供する可能性があります。すでにフォーラムや各種サポートページで同様の報告が出ている場合は、公式な対応策がリリースされるまで慎重に運用しつつ状況を注視しましょう。
  • セキュリティソフトとの競合検証
    上記で紹介したXcitium EDRドライバとの競合以外にも、ウイルス対策ソフトやファイアウォール機能、バックアップソフトなどと衝突を起こす可能性があります。イメージバックアップを定期的に取得し、段階的にアップデートを適用するなど、検証を重ねる姿勢が重要です。

対策の際に注意すべきポイント

アップデート適用後のトラブルを未然に防ぐため、また万が一トラブルが起きた場合でも迅速に復旧できるよう、以下の点に留意するとよいでしょう。

SQL Serverとの関連を考慮する

今回の事例ではSQL Server 2014 (64-bit) を利用している環境のみBSODが発生しています。SQL Serverのバージョンやサービスパックの状態によっては、Windows Updateの適用時に関連するシステムファイルが書き換えられ、競合や整合性エラーを起こす場合があります。

  • SQL Serverサービスの停止
    一時的にSQLサービスを停止した上でアップデートを適用することで、問題が回避できる可能性があります。ただし、今回のケースでは停止しても解決しなかったとの報告がありますので、単純にはいかない場合もあります。
  • SQL Serverのバージョンアップ
    2014は比較的古いバージョンとなりつつあり、サポート切れが近いエディションも存在します。長期的な視点でSQL Serverのアップグレードも検討すると、類似の問題を回避できる可能性が高くなります。

Hyper-V環境での留意事項

Hyper-V上の仮想マシンはホストOSの設定やハードウェア仮想化技術にも影響を受けるため、物理サーバーとは異なる問題が生じる場合があります。

  • 統合サービス(Integration Services)の確認
    Hyper-VゲストOSにインストールされる統合サービスが最新状態でないと、仮想環境特有の不具合が発生することがあります。
  • チェックポイント(スナップショット)の活用
    更新プログラム適用前にチェックポイントを取得すれば、トラブルが起きた場合でも短時間で元に戻せることが多いです。
  • ホストOSとの併用アップデート
    ホストOS側の更新プログラムとの相性も考慮し、ホストとゲストで整合性のとれたバージョン管理が望ましいです。特に、Hyper-VホストとゲストOSで同時に大幅なアップデートが入る場合はテスト環境での事前検証が推奨されます。

障害発生時に備えたバックアップ戦略

BSODが発生すると、一部のケースではシステム復旧が非常に困難になることがあります。したがって、以下のバックアップ戦略を立てておくことが重要です。

バックアップ種類メリットデメリット
イメージバックアップOSごと含めた完全な状態で復元可能容量が大きく、取得・復元に時間がかかる
システムステートバックアップActive Directoryやレジストリの状態を保存可能完全復元には不十分な場合がある
アプリケーションバックアップSQL Serverなどのアプリケーション単位で保護可能OSとの整合性を保った復元が必要

システムに対する変更(特にWindows Update適用)前には、イメージレベルのバックアップを取得しておくと安心です。また、SQL Serverなどミッションクリティカルなアプリケーションについては、定期的なデータベースバックアップを実施することでリスクを最小化できます。

運用監視の強化とログの活用

アップデートが正常に完了したかどうかを確認するために、運用監視とログの取得は欠かせません。

  • イベントビューア(Event Viewer)
    システムログ・アプリケーションログを定期的に確認し、エラーや警告の増加がないかをチェックします。
  • PowerShellスクリプトの自動化
    監視やログ収集を自動化するためのスクリプトを組み、異常を検知したらメールやTeams通知を行う仕組みを取り入れると、早期発見につながります。
  • セキュリティソフトのログ
    EDRやウイルス対策ソフトが原因の可能性もあるため、それらのログも併せて監視することが重要です。

まとめ

Windows Server 2019でKB5034768を適用した後に発生する0xc000021aエラーによるBSODは、SQL Serverや特定のEDRドライバとの競合が疑われる複雑な問題です。実運用のサーバーが突然起動不能になってしまうと、ビジネス継続に大きな支障をきたすため、アップデートの適用には万全の準備が必要です。

  1. Xcitium(Comodo)EDRクライアントや他セキュリティソフトとの競合確認
    競合ドライバが原因の可能性が高いため、セーフモードでのアンインストールやドライバ無効化が一つの解決策になります。
  2. KB5034768をアンインストールして復旧
    コマンドプロンプトでDISMコマンドを使い、保留中の操作を取り消すか、パッケージ個別削除で回避を試みます。
  3. アップデートの除外または選択適用
    PowerShellスクリプトなどを活用し、該当KBのみブロックしつつ他のセキュリティパッチを適用するのが現実的な暫定策です。
  4. Microsoftからの情報収集とバージョン管理の徹底
    今後の修正アップデートを注視するとともに、SQL ServerのバージョンアップやHyper-Vの統合サービス更新など、トータルでのバージョン管理を行い、類似トラブルを回避する取り組みが望ましいです。
  5. バックアップ戦略の再評価
    イメージバックアップやアプリケーションバックアップを統合的に行い、最悪のシナリオでも迅速に復旧できる体制を整えておきましょう。

これらを踏まえて運用を進めれば、KB5034768に起因するWindows Server 2019のBSODトラブルを最小限に抑えることが期待できます。重要なシステムやデータを扱う環境では、まずはテスト環境での検証を行い、万全の体制を整えてから本番環境に導入しましょう。最終的には、Microsoftやセキュリティベンダーからの公式情報やアップデートを常にモニタリングしつつ、柔軟に対応策を検討していくことが大切です。

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